人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イシュタル「あはははは!気分がいいわ!ほーらウルクにバカ王!食らいなさい!これが私からの大プレゼントよ!そーれそれそれー!逃げ惑いなさい!これが私からの恵み!ジュベルハヴリン!ブレッシングよ!!」


~ぽかぽか冥界エレシュキガル


エルキドゥ「はい、ハッピーバレンタイン。紅い華のチョコだよ。味わって食べてくれたら嬉しいな」

エレシュキガル「わざわざ渡しに来てくれたの!?嬉しいのだわ、ありがとう!」

リッカ「ほわぁあったかい。・・・ずっとぽかぽかできる・・・」

「えぇ、そうでしょう?いつでもいらっしゃい。死の安らぎを万全に保証するわ。待ってるから!」

「うん!ありがと!やっぱエレちゃんは話がわかるなぁ・・・」

キングゥ「・・・」

エルキドゥ「やぁ新型!」

「!?」

「ハッピーバレンタイン。はいラフムチョコ。食べていいよ?」

「要らないし必要性が感じられない!なんなんだお前は急に!」

「君とも縁を結びたいじゃないか。ダブルエルキドゥでメソポタミアを席巻しよう!」

「カルデアのマスター!この理解不能な兵器をなんとかしないか!」

「はいはい!ほーらエルキドゥ、ステイステイ~」

「いたたたそっちは僕だ!エルキドゥじゃないキングゥだ!」

「分かっててやってるんだよねー?」

「ねー!おいでよカルデアー!」

「誰が行くものか!冥界のガーデニングや舗装に忙し・・・あっ」

リッカ(ニヤニヤ)

エルキドゥ(ニコニコ)

エレシュキガル「いつも助かっているのだわ(*´▽`*)」

キングゥ「~~~~ッ!もう帰れ!お前たち人間は本当に・・・!!」

「僕兵器」

「私は女神!」

リッカ「私はビースト!」

キングゥ「あぁあ・・・うぁ~!!」


「「「いぇーい!♪(ハイタッチ)」」」


チョコ譲渡死線ウルク

メソポタミア、ウルクに激震走る──!!

 

~BGM 黄金の王(FGO)~

 

「状況を委細報告せよ!弾道を学者、軍師どもに急がせ兵士を迎撃に回せ!女子供は地下に避難させよ!あの駄女神め、此処に来て何を思い至った!」

 

人理を修復し、穏やかかつ緩やかに騒がしく過ごしていたウルクの民、そして我等が賢王に降りかかった青天の霹靂、突如として降りかかった災厄。空より来る、ほんのりと甘い香りをした七色のカカオ菓子チョコレート・・・エビフ山の山頂から激烈に飛来する超高速のお菓子が、ウルクのあらゆる箇所あらゆる人員へと飛来する異常事態に、ギルガメッシュは即座に迎撃、防衛の運びを取らざるを得なかった

 

「ディンギルは起動しているな!的が小さくそして高速にて迎撃もままならないだと!?たわけ!当てようと思うな!ネット弾に切り替えよ!アレは菓子を下賜しているに過ぎん!迅速に被害を抑え無力化せよ!む、菓子に下賜・・・ふはははははははは!!」

 

「王よ、笑っている場合ではございません!道路、家屋周辺の破砕被害が次々と挙がっております、頭部に直撃を受けた兵士や男性らは軽い脳震盪に!」

 

「たかが数百のスピードの飛来物が当たったところでウルクの民は死なぬ!ヤワな現代人とは違うのだ!気絶したものを下がらせ、キャッチできる精鋭を配置せよ!家屋は直せるが万が一もある、いびきをかいている民がいたならば即座に癒せ!神官を回すのだ!軌道計算は終わったな!この災厄は自然ではない、人災だ!必ず呼吸と途切れ目はある!腹に気合いを込め、ガ──!!?」

 

「あぁ!?王の腹にチョコレートが直撃を!?健在ですか!王!!」

 

「お、くぉ・・・!!我が腹筋大激痛・・・!だがシドゥリ、無理だと言うか・・・!我はもう限界だと!ウルクはもう戦えぬと!貴様はそう言うのかシドゥリ!!」

 

「おぉ・・・!王よ、ウルクは此処に健在です!」

 

「よくぞ言った!エアの一日整体一泊二日メソポタミアツアーを体験するまで我は死なん!!防衛ネットを展開せよ!かの駄女神の善意(ぼうぎゃく)、全て跳ね返してくれるわ!!見ているがいいエア、これがお前が敬愛する王の勇姿だ──!!」

 

いつもより気持ち多めにジグラッドに降り注ぎ破壊されていく居城、殺意に満ち充ちたチョコの直撃にもめげず、ウルクは、善き都市は戦う。人類が自立し、神との訣別を果たしたがゆえに、今更神に屈する道理などない。王はその総てを描けて女神に挑む・・・!

 

 

 

「女子供は下がらせろ!働き出のある男が盾になれ!家屋にくるヤツは撃ち落とせ!自分に向かって飛んでくるやつをキャッチするんだ!」

 

「食べれる砲撃ってなんだよ!?恵みか!?恵みなのか!?」

 

「知らん!女神の考えなんか分かるわけないだろ!大体町の壊滅やウルク滅亡なんていつもの事だ!つべこべ言ってないで迎撃だ迎撃ィ!」

 

民達もまた奮起し、そして女神の暴虐に立ち向かう。平均時速150キロで飛来するチョコが一直線に向かってくる、あるいは驚異的な運動エネルギーをもって襲い来る。そんな意味不明なトラブル、アクシデントにもめげることなく立ち向かう人の見本たち。ギルガメッシュが治めるに相応しき人間達が、懸命に力を合わせ災厄を生き抜く

 

「俺達の施設はいい!ブイン族の区画を守り抜け!俺達を救ってくれた恩人たちがいた証だ、絶対にやらせるな!!」

 

「鍛冶工房、桜の木、マンゴー畑に壁画を守れ!女神だろうがやらせはせん!やらせはせんぞぉ!!」

 

「マルドゥーク黄金像にティアマトラピスラズリ像もだ!毎日ピカピカにしてんだ、けちつけさせるかよ!」

 

「俺、帰ったらビール飲むんごへぁ!!」

 

「止めろぉ!フラグ立てるのは止めろぉ!!」

 

「大使館だ!!大使館もやらせるな!リッカらがいつでも帰ってこられる家を壊させるな!!」

 

「くそぅ、なんて卑劣なんだイシュタル!ラマッス仮面もアジダハリッカもいないタイミングを狙うとは!だからイシュタルはイシュタルなんだ!」

 

「バカ野郎!神官に聞かれるぞ!走れ走れ、被害や指示を王に御報告するのだ──!!」

 

男手がてんやわんやの大騒動。右へ左へと奔走し飛来するチョコを受け止め、キャッチし、あるいは無力化する。そこに込められた思いを無下にしないために

 

「あうっ!」

 

「あぁ、おやおや・・・大丈夫かい?」

 

避難していた子供、誘導していた花屋のおばあちゃんが立ち止まる。子が転んでしまったのだ。避難に脚を止める、それは即ち・・・

 

「いかん!危ない!!」

 

一直線に二人に飛来する女神の弾丸。無惨にも二人は撃ち抜かれ──

 

「・・・おや?」

 

だが、そうなるとされた予想を覆す事態が起きた。子供、老人めがけて飛来したチョコは寸前にて勢いを失い、ふわりと二人の懐に入っていったのである。まるで、優しき手渡しのように

 

「わぁ・・・!」

 

「あぁ、やっぱり女神様は悪いだけじゃないんだねぇ・・・こうして、弱い人の事も考えてくれているんだねぇ」

 

「──女子供には優しいそうだ!王に報告しろ!もしかしたら子供達を屋上にて受け取らせるのがいいのかも知れん!!」

 

 

その事実を知った民達は即座に動き出す。女神にも一片の情が残っていたのかと膝を叩く気分ではあったが今はそれどころではない。都市全体に被害が及んでいるのだ、無駄にしていい時間はない

 

ナピュシュテムの牙を打ち上げ、ネットが空を飛び交いチョコを確保する。的確な人材雇用と役割分担を徹底した人間力の極致が発揮され、チョコの確保数が大量に増えていく

 

しかし、其処はやはり女神の神威。最善最高の策をもってようやく乗り越えし土俵に立つ。ウルクの全て、ただ一人でも抜けてしまえば瓦解する防衛戦にてようやく遣り過ごすことが叶う程の攻撃は更に激しさを増していく

 

「はっはー!なんか菓子で気絶したヤツはウルク民だ!気絶しなかったヤツは訓練されたウルク民だ!まったくメソポタミアは地獄だぜ!!」

 

「怖くて盾から顔が出せねぇ!いつ終わるんだよこれ!?」

 

「決まってるだろ!女神が飽きるまでだ!あぁくそ、これだからイシュタル様は読めないんだ!くそぅ、負けねぇぞ!ウルク魂を見せてやる!!」

 

「埋まってた宝石を発見!!」

 

「駄目だ!」「駄目だ!」「駄目だ!」

 

「わー!イシュタルさまありがとー!」

 

「あら、甘い・・・素敵な味ね、これ」

 

「男子と女子で対応違いすぎないか!?」

 

「うぅん、男には愛と試練。女には優しさ子供には労り。これだからイシュタル様は読めないんだよなぁ」

 

「言ってる場合じゃない!!防げ!明日の為に今日を生き抜くんだ!」

 

「希望の最後は死に非ず!!」

 

「死んでたまるかよ!俺はまだ充分に生きちゃいないんだ!」

 

「アイルビーバック」

 

「ウルクは滅びぬ!!何度でも甦るさ!!」

 

「死にませぇえぇえぇえん!!!」

 

 

虹色の輝き、生命の律動、舞い散るチョコレート。男の汗と怒号、女の支援、子供の笑顔、王の過労。それら総てが問われ、生死の境に試される。朝より始まりしウルクの長い一日は、日が頂点に登る昼を越え、そして穏やかに沈み始める夕暮れを経て・・・

 

 

「王よ、報告いたします・・・。砲撃の勢いは先程より弱まり、計算と推測によれば、全員分のチョコレートなる菓子が配られたと・・・」

 

「うむ、そうか。──人災は死者無く、建築は穴が多数、か・・・女神の暴虐にしては奇跡的に被害が少ない方ではあるな。よし、建築業者を見繕え!あの駄女神の被害、二日で建て直すぞ!」

 

ようやく終演を迎えた突如とした無差別大爆撃。その終結を、ギルガメッシュが宣言しようやく日常へと立ち返るウルク。家屋が穴空きチーズと成り果てていようと、人が喪われておらぬのならばいくらでも復旧は可能である。二度と取り返せぬものはない。それならば被害は会って無きようなものだ。──となれば当然、何故このような真似を女神が思い至ったのかだが・・・

 

「このやり口、度の過ぎた悪戯めいた手法はエルキドゥの手口に酷似している。もしやリッカめは振り回されただけなのやも知れぬな・・・しかし解せぬ。エルキドゥとイシュタルは不仲極まりない筈。手を組むなど天地が返ろうともあり得ぬはずだが・・・む?」

 

そう思案しながらチョコレートを口にしていた時、とあるものが目に写る。チョコレートの包装に、巧妙に言葉が彫られている

 

「・・・」

 

見るとこれは、触れれば意味が伝わるように術式が組まれているようだ。イシュタルはこのような回りくどい真似をするような者ではない。訝しみ、そしてその言葉の意味を、財の魔杖にて翻訳し宙に浮かび上がらせる

 

「──む?」

 

すると、それに呼応するかのようにウルクの各地から輝きが浮かび上がる。どうやらギルガメッシュの包装に呼応して文字が浮かび上がるように細工が施されているようだ

 

「・・・何の趣向なのやら。どれ、カルデアを問い質すか否か、確かめてやろうではないか」

 

シドゥリもまた、浮かび上がる文字を見詰めている。其処に書かれていたのは、果たして──




『君の見定める道、そして見定めるべき人は今も価値を示しているよ。最新の未来で、今も変わらず、ね』

「・・・──」

『君は僕と語ることは無いというけれど、僕は君を決して忘れることはない。君の孤高に傷をつけた事、そして・・・共に語り、共に笑い、共に戦ったこと。君から貰った無二の価値を、ずっとね』

それは、一人一人に記された言葉。エルキドゥが作り上げ、個人個人に異なるメッセージを書いたチョコレートを、全員に向けて作ったのである

『エアもギルも、皆と元気にやっているよ。──君に新たな唯一無二の存在が現れたことは、僕にとっても素敵な出来事だ。・・・僕は君を見ているよ。未来の楽園、天文台で、ずっとね』

「──フン・・・」

『これは、懸命に働く君への贈り物だよ。たまには休んでほしいな。君の心配をするくらい、許される筈だよね?・・・それじゃあ、また。今度は、エアや君、そして僕の新しい仲間を紹介するね』

「──我は別に連れてこずともよい。・・・全く、回りくどい真似をしおって。貴様はまこと、変わらぬな・・・」


『シドゥリ、いつもギルをありがとうね。彼が懸命に働けるのも、君の補佐と献身があってこそだ。彼は言わないだろうから、僕が代わりに言わせてもらうね。こほん、・・・本当にありがとうね。君こそ、ウルクにおける彼の右腕に相応しい女性だよ』

「エルキドゥ様・・・」

『君は僕の事を、ついぞ兵器と呼ぶことは無かったね。いつも、優しい人だと。心があると。・・・作られた僕にそんな声をかけたのは、君と彼くらいなものだ。どうか、その心を喪わないでほしい。それは君が、人が持つ素敵な、大切な部品なのだから』

「っ・・・っ・・・」

『僕の大切な、友をよろしく。ありがとう、大切な君へ』

泣き崩れるシドゥリに、王はただ声をかける

「──いかんな、雨が降ってきたようだ。シドゥリ、少し席を外せ」

「・・・雨、ですか?」

「あぁ、雨だ。・・・後に呼ぶ。暫し休息を取るがよい」

「・・・はい、王よ」

「──全く・・・」



『彼が治めるに相応しき、善き人達へ。君たちと過ごせた事は、とても喜ばしき思い出として胸に刻まれているよ。──君達が、人類としての原型であってくれて良かった。本当に、ありがとう』

「エルキドゥ様・・・!」

「おぉ・・・なんと物騒なプレゼントなのか・・・」

「ありがとう、ありがとう・・・甘さが、身に染みる・・・優しさが、労りが・・・」

ウルクの民達にも、また同じく言葉が贈られる。その祝福の言葉に、陽も沈みしメソポタミアに、感銘と感涙の声が木霊し続けたという

・・・そして、件の本人たち、リッカとエルキドゥはというと・・・


~静かな森林

『フワワの墓』

「うん。仕事は果たしてくれたみたいだね。やっと静かになった。・・・皆、喜んでくれればいいけど」

リッカ「そだね!・・・でも、何で直接渡さなかったの?エルキドゥならイシュタルに頼らなくても・・・」

エルキドゥ「それはほら、・・・恥ずかしかったし」

リッカ「恥ずかしかったぁ!?」

「まぁ、それも半分だけど。・・・ほら、あんなのでも、縁は紡いでおけば何かの役に立つかも知れないだろう?」

「・・・エルキドゥ・・・」

「ま、僕にはどうでもいいことだけどね。──お疲れさま、リッカ。僕の依頼はおしまいだ。本当にありがとう。──あ、そうだ。目を閉じて?」

リッカ「・・・?」

エルキドゥ「・・・はい、これでよし。目を開けてごらん?」

リッカ「・・・!」

『花の冠』

「本当はギルの方が上手なんだけど、これくらいはね。──僕からの御礼と受け取っておいてほしいな」

「エルキドゥ・・・」

「色々、付き合わせてごめんね。でも、本当に楽しかった。──君がマスターで良かったよ。ありがとう、リッカ」

「・・・うん。私も、私も本当に色々振り回されたけど・・・楽しかった!だから・・・」

「ん」

「──これからもよろしくね!エルキドゥ!」

「こちらこそだよ、リッカ。さぁ帰ろう。皆ののバレンタインは、まだ終わっていないからね」

こうして、笑顔と共に二人は帰還する。ウルクにハチャメチャと、プレゼントを残して

──後にこの話を聞いた御機嫌王が愉悦ローラーし、エアがエビフ山と賢王の慰問に赴くことを決意したのはまた別のお話──

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