人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アラフィフ「──」

『蜘蛛と蝶のチョコ』

ホームズ「ははは、最早言葉もないようだね。こうなっては犯罪界のナポレオンも形無しだな」

「もうこれは私の勝利だ・・・最早私を止められるものは存在しない!マスターに生徒から貰ったチョコこそ、パーフェクトモリアーティを作り出す最高の要因なのだからネ!もう何も怖くない!我が生涯に一片の悔いも後悔もありはしないとも!」

アイリーン『本当、影響されやすいんだから・・・』

『シャーロックハットチョコ』

「遺憾ながら、モリアーティ程の逸材は早々現れはしない。──黙っておこう、オルガマリーが自らの師匠全てにチョコを渡していることはね」

『・・・知るとがっかりしてしまうから?』

「ふふっ、──初歩さ、アイリーン」


「我が悪逆に!迷い無し!!」

「バリツのしがいも、あるというものさ」

『あらあら。滝に落ちても助けてあげないわよ?』

「ははは、彼はシートに使うから、私だけは助けてもらいたいな!」

『もう。そういうところよホームズ』



当たり前の、得難き感謝を

「あははははははは!待って、ちょっと待ってくれ愛弟子!痛い、お腹痛い!まさかそんな目に遭っているなんて誰が予想できただろうか!私を含めた如何なる天才であろうと不可能だとも!まさかマシュがリッカちゃんに襲い掛かる日が来ようとは・・・!一昔前では誰も思い付きすらしなかっただろう!だって私が思い至らなかったんだからね!ダメ、お腹よじれそう!」

 

管制室にて先程巻き起こったマシュの暴走の報告を受けたダ・ヴィンチちゃんは腹を抱えて笑い続けている。内向的、受動的の見本のようなマシュがそのような真似に走ること。楽園にて起きた変化と騒動の奇想天外さに計算と予測を越えられた事実に、腹がよじれる程の爆笑を先程から繰り返しているのだ。天才が滅多に味わえぬ『新鮮』といった概念を存分に堪能しているが故の反応であるが、愛弟子・・・オルガマリーからしてみれば中々に複雑であった

 

「あんなはっちゃけぶりを想像できたら怖いですよ。それは最早天才ではなく怪物や仙人の類いだわ・・・」

 

「あはは、確かに!天才と言えど万能ではない。いや、私は万能だけどね?知り得ぬ事のいくつかくらいはあって然るべきさ。何故ならそうじゃないと技術と知識の向ける先が無くなってしまうからね?」

 

天才と呼ばれる人種は我が儘だ。余すことなくこの世の知識や知恵を追い求め、未知を容易く解明する癖に、際限なくそれを求め、欲する。誰よりも貪欲に、かつ誰よりも鮮やかに世界の理を解明し探求していってしまう。凡人はそれに追い縋ることしかできない、赦してくれないのだから本当に天才と言うものは始末におけないし、付いていく方はまさに、全力を出さなくてはならない。鼻唄混じりにて最先端を行くような人種に、あらゆる全てを講じなくてはならない事実。そしてそれを続けてきたオルガマリーは、そんな師匠の奔放な物言いに『らしい』と頷きながら息を吐く

 

「まぁそんな天才論は脇に置こう。今回このタイミングにおいては重要じゃないさ!──どうなんだい?愛弟子?」

 

「はい?どう、とは?」

 

「もう、連れないことを言うものではないよ?チョコさチョコ。君の本命は誰にあげるつもりなのかな?ダ・ヴィンチちゃん的に予測はつくけど、やはり答えは本人の声から聞いてみたいだろう?」

 

バレンタイン、誰も彼もが沸き立ち浮き立つ日。いつもきりりと真面目な表情を崩さない愛弟子の、数少ないエンジョイした顔を垣間見れるチャンスを彼は逃すまいと愛弟子、オルガマリーを問い詰める。天才の興味を引くまでに重要かつ楽しいイベントであるそれを逃す手はないと、ニコニコとした笑顔にて弟子をからかうように言葉を紡ぐ。そんな好奇心を丸出しにして問い質してくる師匠の子供っぽい一面に、オルガマリーは苦笑を漏らしながらも応える。──王は別格にして託すのは当然なので、それを抜きにしたチョコの在処は・・・

 

「其処まで知りたいのなら・・・はい、答えを示しましょう。どうぞ、師匠」

 

スッと、ラッピングされ整えられた包装の小包をオルガマリーは彼の眼前へと差し出す。突如の事態にうってかわってキョトンとするダ・ヴィンチに対し、こほんと咳払いを成し、いつもとは違う穏やかな口調にて、天才の教えの全てを賜った一人の魔術師、カルデアの所長はダ・ヴィンチに礼を紡ぐ

 

「ある意味で本命はあなたです、師匠。カルデアの設備を管理し、各設備を運用し、楽園を支えてくれるあなたがいてくれなければ楽園はこれほどまで快適かつ素敵なモノにはなりえなかったでしょう。あまりに完璧かつ分かりにくいまでに自然に行われている細やかな天才の日頃の御業に、バレンタインという日を借りて感謝を告げさせていただきます」

 

「──」

 

「カルデア所長として、一人の人間として。心からあなたに感謝しています。右も左も解らぬ私を、破滅の海に投げ出されたカルデアを、支えてくださり、護ってくださり・・・本当にありがとうございました。師匠」

 

天才の天才たる所以は『凡人には気付くことすら赦さない完璧』さにたり、天才の悲哀とは『それ故にほぼ誰にも感謝を向けられることはない』と言った事である。たぐいまれなる才能は理解と称賛、それ以上に敵意や嫉妬を招きやすく、あるいは無意識な依存や認識の固定化を引き起こす。天才の御業を『あって当然』とついつい認識してしまうのだ。華麗で鮮烈で、あまりにも自然であるがゆえに

 

でも、それではダメだとオルガマリーは考えたのだ。いる内に頼りきり、何も言わない、告げないということは間違っていると考えたのだ。いくらたぐいまれなき才能や実力を持っていようとも、其処に人格はある。れっきとした同じ人間であるのだ。喜怒哀楽を示し、先程のように泣いたり笑ったりする。自分になにかを教えてくれている時のように、優しく導いてくれる。かけがえのない人間であり、部品や装置では断じてない

 

「いなくなってから写真や想い出を前にあなたに感謝を告げる、あるいは偲ぶという真似は御免ですから、こうして共に顔を合わせている内に渡させていただきます。食べるなり解析するなり、どうぞ御好きなように」

 

包装を見る限り、いくつかプロテクトがかかっているのが目にとれる。巧妙なロックと仕掛けが施された、まさに自分の教えにて手掛け、伝授した才能を見せつけるような挑戦的なチョコである。解除しなくては食べられない、というのだろう。弟子に教えた、道具作成の技術。それをプレゼントにて示す粋な計らいだ

 

「ハッピー・バレンタイン。まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いいたします。どうかカルデアが役目を終え、皆がそれぞれの生活に戻るその日まで。私達をその叡智にてお支えくださいね」

 

「──あぁ。任されたよ、我が最愛の弟子。オルガマリー・アニムスフィア。あの愉快な王様が改革した君の人生の成果、心から愛し、支えていくことを誓うとも。万能の天才の名に懸けてね」

 

嫉妬は飽きるほどに受け取った。奇異の視線、歓喜の称賛も最早大量に獲得した自負がある。しかし、こうして面と向かって、自らを労り、また共に歩もうと告げた人物はどれ程いただろうか。魔術師であるならば、師の存在はあくまで研鑽の形態、手段でしかなく。根源に至るために不要な仁義や感情の動体は大抵切り捨てられてしまう

 

そんな折、人間が人間らしくある当たり前の感情にて、人格が歪まぬままにありのままの姿にて、等身大のお礼を告げられること。それは如何なる発明を称賛されるよりも、如何なる叡知を披露し凡人を感嘆させるよりも・・・

 

「ありがとう。君を弟子にとって心から良かったと思う。改めて、御疲れ様。君も、マシュも、勿論リッカちゃんも。私達にとってかけがえのない存在であること、忘れちゃダメだぜ?平穏な日常に立ち返る以外、私達の前からいなくなったりしないこと。・・・約束だよ?」

 

「はい。約束致します。・・・ですが」

 

「?」

 

「──自らを含めた財が欠けること、紛失する事を・・・あの王は絶対に容認なさらないでしょう。私達を財と呼んでくださり、至宝を懐く黄金の王がいる限り・・・消えたくても消えられませんよ、きっとね」

 

「あははっ!確かに!財を獲得し守護する!それが我の王道だと言って憚らないからね、あの愉快な王様は!いやぁ、これはお馬鹿な心配をしちゃったなぁ~。ダ・ヴィンチちゃん一生の不覚だなぁ~。よーし!じゃあ行ってくるね愛弟子!後よろしく!」

 

「え、ちょっ。何処へですか!?」

 

「有給消化に決まっているだろ?愛弟子の研鑽の成果を片手間でやるなんて私のプライドが許さない!バッチリ解読して感想を絵と手記とレポートにて解明するから楽しみにしてるんだよん♪それじゃあ引き継ぎよろしく!チャオ~♪」

 

「え、ちょ!嘘でしょう!?貴女がやっている仕事なんて完璧にまだ出来る筈が・・・!師匠!師匠~!!」

 

いつも以上にうきうきと足取りを弾ませ軽やかに駆け抜けていくダ・ヴィンチちゃんに、物理的な意味で置き去りにされるオルガマリー。天才のハチャメチャな思考回路はやっぱり完全に理解などできないなど理解し・・・

 

「ふぅ、いいお湯だったなぁ。リフレッシュできるって最高だね!おや所長こんにちは。レオナルドが今まで見たことのないような笑顔で走っていったけど、何かあったのかい?」

 

「・・・何もないわ。ただ、感謝という当たり前の事をしただけよ。ほらロマニ、手を貸しなさい。カルデアが天才におんぶにだっこではないということ、見せ付けてやるわよ!」

 

「え、え?なんでいきなりやる気なんだい!?ちょっと席を外していたら師弟そろって何があったのかな!?」

 

そんなロマンのゆるふわな感嘆もまた、カルデア職員が望み、護ったもの。いつもと変わらぬ過労気味のドクターに・・・

 

「はいチョコ。シバにゃんが本命なのだから義理よ義理」

 

「わぁありがとう!やったぁ!胃もたれしない普通のチョコだ!鼻血を出さないですむぞぅ!」

 

「・・・まさか本当に受け取ったの?ラクダチョコ・・・」

 

そのあまりの愛とカロリーの重さに、ちょっぴり戦慄するオルガマリーなのであった。──この後はロマンと他愛ない話を行いながら、ダ・ヴィンチちゃんの抜けた穴を力を合わせて乗りきりましたとさ──




工房


「私の弟子からの挑戦状!これは応えない訳にはいかないね!よーし、ダ・ヴィンチちゃん全力で頑張っちゃうぞ~!」

『超一流大学の試験と論文、問題集』

「ふふん、楽勝楽勝!これくらいはウォーミングアップにすらならないぜ愛弟子!さぁどんどん行こう!」

『定理解明・12桁の掛け算割り算』

「ふむふむ、これこれ!ちゃんと出来なきゃ天才を名乗るに相応しくはないからね!さぁこんなものかな?これくらいなら天才の私には御茶の子さいさ──」

『仮面ライダークウガの、劇中における呼称は?』

「えっ?」


仮面ライダーアギトにて物語の鍵となった船の名前は?

仮面ライダー龍騎にて、契約カードを三枚所持しているデッキは?

仮面ライダー555にて、アクセルフォームの高速移動の限界は?

仮面ライダー剣にて、ブレイドのキングフォームの異常性は?

仮面ライダー響鬼にて、怪人が大量発生する季節は?

仮面ライダーカブトにて、最後まで装着者が安定しなかったゼクターは?

仮面ライダー電王にて、ゼロノスのカードのメリットとは?

仮面ライダーキバにて、ダークキバのウェイクアップ3はどんな技?

仮面ライダーディケイドとは?

「え、これって・・・」

仮面ライダーWにて、ファングメモリとマッチするメモリは?

仮面ライダーオーズにて、メダルを破壊できるコンボは?

仮面ライダーフォーゼにて、コズミックステイツの変身条件は?

仮面ライダーウィザードにて、パンチを行った回数は?

仮面ライダー鎧武にて、ゲネシスドライバーを壊す際の指令とは?

仮面ライダードライブにて、超デッドヒートドライブとデッドヒートマッハ、どちらが強い?

仮面ライダーゴーストにて 前のマコト兄ちゃんみたいだとはどんな意味?

仮面ライダーエグゼイドにて、ムテキゲーマーの本編放送最後の活躍はどんなもの?

仮面ライダービルドにて、仮面ライダービルドの最強フォームは?(映画もあり)

仮面ライダージオウにて、仮面ライダーシノビの頭部の流用スーツは?


「・・・もしかして、これ全部解かないとダメなのかい!?」

『自分の見識を拡げるためにも、解る範囲で解いてみてください。半日でロックは解除されます(問題製作 リッカ)』

「ぐぬぬ・・・!解った良いだろう!天才の名に懸けて!全部クリアしてやるとも!見ていなよオルガマリー、例え特撮であろうとも!私の叡知からは逃げられないのさ──!」

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