人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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召喚編?です!ゆるくお楽しみください!

今回の話におけるとあるキャラ造形は、ナイチンゲールとギャグ漫画日和の曽良くんを参考にしております、


『疾風怒濤の不死戦車チョコ』

アキレウス「しゃあ!!ヘラクレス!先生!オルガマリーがチョコくれたぜ!」

『サジタリウスチョコ』

「どうやらヘラクレスにはリッカが、アキレウスにはオルガマリーが。私には合作をくださったようですね。喜ばしい事です」

『ネメアの獅子チョコ』

「うぅむ、リッカの手際も成長している事を実感する。これは良いものだ。なびく鬣は最早職人芸・・・」

「じゃんぬ店長のアシストとはいえ大したもんだ!ハッハァ!やっぱりオレらの弟子は最高だぜ!」

イアソン「ハン!ギリシャの英雄ともあろうものがほだされやがって!弟子がいるお前らはいいよなぁチクショウ!オレだけなんか弟子いないの悔しいんだが!」

ヘラクレス「お前は人に教える器ではなかろう。人の上に立つ器だ」

イアソン「なんっ──!お、おう?・・・、・・・あぁそうだ!そうだな!」

アキレウス(上手いな・・・)

ケイローン「大丈夫ですよイアソン。もうすぐ、あなたと気の合う方がカルデアに来ます」

「何ぃ?」

「そうですね・・・きっと、ライダーたるあなたと気が合う方ですよ」

ヘラクレス「ライダーのイアソンと」

アキレウス「気が合うぅ?」

「ふふっ、オルガマリーが迎えに言っていますので・・・会ってからの、お楽しみです」


不死鳥、楽園に舞い降りる!

「遂に来た・・・!」

 

楽園にて騒動と感謝が吹き荒れている頃合いにて、その場所に満を持して足を踏み入れんと決意し、そしてその資格があると認められし者が気合いと気迫を示した言葉を吐き、深呼吸にて空を見上げる

 

「いよいよ、この私・・・不死鳥のムジークことゴルドルフが楽園に招かれる時が来たのだ・・・!待ち続けレースし続けること幾星霜、練習に練習、修練に修練を重ねたこの私に、最早万全磐石なりし私に欠落や欠点など無いと言っておこう・・・!」

 

ゴルドルフ・ムジーク。かのフリージアに見出だされ、前々からスカウトを受けていた魔術師にして男性。楽園への参戦を今か今かと待ちわびながら準備とイメージトレーニングを進めており、ご飯も気持ちサブメニューを一品増やし、そして続けて託された特訓プログラムを真面目にこなし続けてきた愛すべき小心者。楽園に赴く条件として、自らに仕えるメイド達の同伴を決して譲らなかった愛すべき小物。その楽園にはない常識性と慎重さという要素を高く評価され、この度に漸くカルデアへと招かれる運びとなったのだ

 

長い、長い雌伏の時であった。途中でやっぱり無しと言われてしまわないか、自分は途中で蹴り出されたりしないだろうか。メイド達の人権を保証されるのだろうか。自分の要望はきちんと受け入れられるのだろうか。と言うかこれ全部夢とかじゃないよね?と教育役のトゥールに何度も訪ねては気付けのビンタをかまされる日々。だが、何も解らぬ事であっても、フリージアから渡されたソフトは決して無くさず、真摯に、真面目に挑み続けた。常人ではまともに完走すら出来ないコースを想定されたゲームをひたすらにハイスコア更新し続けた。そう、自分に出来る事を可能な限り突き詰め、やってきたのである

 

「今度こそ、私は失敗しないぞ。あの楽園で、家名に恥じない活躍をしてみせる。私を目にかけたフリージアの目が、間違っていなかった事を証明してやるのだ!」

 

準備万端なメイド一同と共に、庭にて待つゴルドルフは空を睨む。ようやく、28や29年にてようやく巡ってきた人生の転機、大いなるチャンスであることを、誰よりも理解し痛感しているからこそ。彼はあらゆる機転と覚悟を決め、腐ることなく真面目に待ち続けた。自分の成すべき事を成し遂げ続けたのだ

 

自分の人生はどん詰まりであった。誰にも愛されず、良き明日は無く、その代わりに哀れなる昨日も無い。妥協と諦めにて日々を過ごす日々。愛される事は無い。だって愛される方法なんて分からなかったから。誰かに好かれる方法なんて知らなかったから。深き喜びもない代わりに、目を覆いたくなるような絶望も存在しないどん底な日々を、漸く終わらせられるチャンスが巡ってきたと。ゴルドルフはその肌で、何よりも強く感じていたのだ

 

「私はやるぞ、トゥール・・・!かの楽園にて輝ける不死鳥として降臨し、誰よりも羽ばたき、このムジークの家名に恥じない活躍をしてみせる・・・!私の名を、忘れ得ぬ輝きとして永遠に記し、示して見せるのだ!人生を変えるラストチャンス、絶対にモノにするのだよ!私は!」

 

「そうですか。頑張ってください」

 

その渾身の決意を、さらりと世話役メイド、『トゥール』に一蹴され受け流される。メイド達の身の回りの物資を計算し、忘れ物が無いか確認し、ゴルドルフのバイタルに異常が無いのかどうかの確認に明け暮れているなか、都合32回も同じ呟きに事細やかな反応を返す暇など無いのだから

 

「人生を変えるも何も、私達は休暇をしに赴くのですよ。ゴルドルフ様は休日の過ごし方の何を以て皆を見返すのです?誰よりも精力的に休日を過ごすのですか?」

 

「ぐぬぬ・・・!」

 

トゥールの言う通り、今回はあくまで休暇・・・緊急ではなく平時の補充要員として見出だされたに過ぎない事実を突き付けられる。で、でも配属なことに変わりはないし・・・!といった苦し紛れな言葉も、あくまで来賓からであり、重要な役職にすぐに就ける筈もないでしょうと楽観を悉くに打ち砕かれていくゴルドルフ

 

「・・・だ、大丈夫かな?履歴書に一応レーサーの経歴を書いてきたけど、大丈夫だよね?あ、腐った肉も霜降に変えられる事も書いた方が・・・」

 

「そんな小手先の技術で評価が覆るのなら、そもそもゴルドルフ様の評価などあってないようなものでしょう。小物はまず、自らの矮小さを認める事こそが脱却と成長の第一歩なのです」

 

いつものように猛烈に辛辣なこの教育メイドの言葉に、最早何も言い返せず静かに俯くゴルドルフ。そうだ、自分はまだ何も、誰にも認められるような功績を成し遂げてはいない。そんな自分が何を取り繕い、何を誇示すると言うのか。トゥールの言う通り、小物に出来ることは、まずは自分が取るに足らない事を呑み込むことなのだ。・・・それをするまで、トゥールに躾ビンタをお見舞いされ続ける必要があったのだが

 

「そうだな・・・あぁ、その通りだ。どんな場所でも、身の程は弁えんとな」

 

入念な教育、そしてフリージアとの対話を経て、己を偽ること、自らの小物さを厭うこと、相手と自分を騙すような嘘をつかない事を覚えたゴルドルフ。そればかりは小物のプライドと言うべきか。自分が何を示すべきかは自分を見る人間が決め、自分が何を成すべきかは己の生きざまが決めるのだ。ならばじたばたする必要もない。ただ信じ、ただ己が出来ることをやるしかないのだ。今まで自分のやってきた事、積み重ねてきた事は悉く失敗してきたのだ。改革は痛みを伴う。不死鳥も復活する為には灰にならなくてはならない

 

「それさえ忘れなければ、ゴルドルフ様の閉塞感に満ち溢れた人生にも必ず光は射す筈です。今はうだつの上がらない魔術師としても人間としても水準に達しているとは・・・・・・・・・、まぁ辛うじて言っても大丈夫でしょうが」

 

「フォローのジャブを顔面ストレートかました後に言うのは止めてくれないかな!?」

 

「教育係ですので」

 

「おかしいな、教育係やメイドって一般判定でこんなに毅然として微塵も甘やかさないものだったっけ・・・」

 

・・・だが、容赦のない讒言と諫言の嵐を突き付けているということは、決して彼の傍から離れずに、見捨てずに己の使命を果たし続けている事に他ならない。どんなに彼が見苦しく、どんなに彼が小心者で、どんなに彼が無様でも。トゥールを含めたメイド一同は決して彼を見捨てなかった証拠である。──言葉には出さないが、彼女らは知っていたのだ。交渉の際、自分等の身柄を同伴させる事を告げたことを

 

「まぁ、至らぬ部分は私達が支えます。ゴルドルフ様は何憂う事なく、己の愉快な矮小さと持て余すガッツを存分に発揮なさってください」

 

その為の自分達なのだ。なんの見処も無い、愛すべき部分が欠片もない救いようのない人間ならば、自分達がこれほどまでに世話に精を出すことなど無いのだが・・・メイド達は、それを伏して語らない。いつか自分が自分を認める日が来るか、誰かがそれを告げる日が訪れるまで。──言葉にしたら絶対に増長を招いてしまうとメイド一同は理解しているが故に

 

「う、うむそうだな!そうだね!割りと行く前に精神がフルボッコされてしまったけれどね!そうだな、此処まで来てじたばたしても仕方あるまい・・・!よぉし!いつでも来たまえフリージア!此処に不死鳥は!ゴルドルフ・ムジークはいるぞぉ!!」

 

「その様ですね。御待たせいたしました」

 

瞬間、いつのまにか何もない空間より『転移』を行い現れし存在が現れる。コートに身を包み、静かに佇む少女が、一瞬にてゴルドルフ達の眼前へとやってきたのだ

 

「!?」

 

「楽園へ迎える準備が出来ました。どうぞ、頭上の宝具、ヴィマーナに御荷物を積んでください」

 

「え、あ、いや・・・君、おまっ、いや、君は・・・!」

 

その姿は、魔術師であるならば一応知っていて然るべき存在。天体科、アニムスフィア家の当主。キリシュタリアの劣化、血縁だけの御飾りと時計塔にて嘲笑されていた・・・

 

「フリージア・・・と名乗った方が通りが良いでしょうか。ゴルドルフさん。御待たせいたしましたね。積もる話は、また楽園にて」

 

「お、オル──」

 

その正体を口にする前に。オルガマリーの魔術によりメイド全員はギルガメッシュより借り受けたヴィマーナに転移され、ゴルドルフもまたその身柄を、ソロモン・・・ロマンが行う、魔術回路をビーコンにした転移にてカルデアへと先んじて招かれる。令呪の空間転移と、カルデアのレイシフトを再現し重ね合わせたソロモン謹製の特殊転移魔術にて、あらゆる距離、時間旅行と平行世界転移を除いた移動を実現したのだ

 

「忘れ物は無いわね。なら行きましょうか。ロマニ、お願い」

 

『分かりました。そのまま楽にしていてくださいね、所長』

 

忘れ物がないか一応グルリと確認し、オルガマリーもまた、俗世を後にし楽園へと帰還するのであった。──新たな仲間達を、楽園に招き入れながら

 

「・・・役職どうしようかしら・・・」

 

そんな、細やかな配属先を考えながら・・・




数十分後

オルガマリー「はい、と言うわけで専属レーサーにしてスペシャルアドバイザー、ついでに精肉の錬金術師(ミート・アルケミスト)のゴルドルフ・ムジークさんです。新しい王の財がまた増えた事を喜ばしく思いましょう。拍手!」
 
カルデア一同「「「「「よろしくー!!」」」」」

ゴルドルフ「い、いやいやいやいや!いいのかこんなにあっさり!?私それはもう凄い覚悟と決意にて、針の筵から這い上がるモノローグをしていたんだよ!?」

ムニエル「アンタも財だ」

「受け入れるのが早すぎるだろう!まずは定番のグループ絡みの苛めとか、もっとこう・・・無いのかね!?」

職員「時間の無駄だよなそんなの」

職員「そうそう。私達は王の財の自覚を持っているわ。他者を蹴落とす暇があったら自分を少しでも高める覚悟よ」

「意識が高すぎる・・・!?眩しくて直視できない!」

オルガマリー「まぁいきなり王の財たる輝きを示せ、というのは酷でしょうし、少しづつ慣れていってください。あなたのその小心は、私達が出せない『安全策』や『慎重策』を提案できる才能があるのですから」

ゴルドルフ「な、なんだねそれは。嫌味か!?決断力が無いとかそういう事か!」

「リーダーとしての素養に溢れていると言うことです。リーダーはまず、部下や仲間を死なせないこと。退くべき時に退く事。私達は王の為なら躊躇いなく生命を懸けるので、そういった手段には疎いのです」

ゴルドルフ「わ──私が、リーダーに・・・?」

「御気づきで無かったのですか?あなたの在り方は極めて正しいリーダーのものですよ。ゴリラの主、シルバーバックも臆病で慎重です。誰よりも早く危険を察知し、生き延びるために」

「──」

「説明には色々御疲れでしょう。まずは自室で御休みになられてください。詳しい教育は、次の召喚までに終わらせましょう」

「・・・──」

「じゃあそんなわけで・・・皆、ゴルドルフさんの加入を祝して、かんぱーい!」

一同「「「「「かんぱーい!!」」」」」



ゴルドルフ私室前

「・・・」

──リーダーとしての素養に──

「・・・カルデアに来て数秒で私が認められるなんて聞いとらんぞ・・・これではどう頑張ればいいのか分からんではないか、まったく・・・まったく・・・」

(・・・まぁ、まずは自分に出来ることから始めよう。そうだな、リーダー、アドバイザーとしてまずは整理整頓や人員把握でも・・・)

ゴルドルフ私室 ゴージャスサーキット

「いや本当に私室にサーキットあるだなんて聞いとらんぞ──!?」

イアソン「ははは!来たようだな不死鳥のムジーク!貴様、やけにレースや帆に自信があるようだが・・・貴様の腕前などアルゴー号を動かしたオレの足許にも及ばんと言うことを教えてやろう!!」

「なんだかサーヴァントが物凄くフランクなんだが!?」

「さぁ着替え、マシンを選べ!歓迎の挨拶と新人いびり!同時にこなしてやろう!!」

「──良いだろう!楽園にて誰にも負けぬレーサーとしての腕前!見せつけてやるともだ──!!」

・・・こうして、イアソンなりの和睦を含めた24時間耐久レースにて、ゴルドルフは楽園の歓迎を受けた

人間の限界まで要求される疾走、英雄達を乗せた船を駆る腕前がぶつかり合い、終わる頃には・・・

ゴルドルフ「ナイスドライブ、イアソン君・・・!」

イアソン「やるじゃないかムジーク・・・!また必ず、互いの腕を競い合おうじゃないか。次は必ずオレが勝つがな!」

レーサー同士、熱く固い握手が交わされたという。この後酒場にてますます意気投合することになるのは、また別の話・・・

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