(今回の前書きの童話は部員の方に寄せられた文を掲載しております。ネタ提供、ありがとうございました!)
むかし、むかし…………ある所にとても偉い王様がいました。
王様はとてもお金持ちで毎日宝石があしらわれた服や黄金の鎧を着ていました。
しかし、ある時王様思いました。
「このような衣もそろそろ飽きた。何か変わった趣向のものがほしい」
思い立った王様は街に御触れを出しました。それはこのような内容です。
【この我が纏う衣を貴様らに作らせてやろう。我が纏うに相応しいものをつくる自信があるもののみやってくるがいい】
これを見た職人達は大慌てで服を作り、王様がいる宮殿まで持って行きました。
「駄目だな、全くなっておらん」
しかし、どれも王様が気にいる服はありませんでした。
遊び気分で御触れを出した王様でしたが、こうも面白みにかける服ばかりでは飽きるというもの。
もう辞めようかと思ったその時でした。
職人を名乗る男が服を作らせてくれと王様に進言してきたのです。
「ふん、このような催しにも飽きてきた所よ。我の満足行くものでなかったらその首を撥ねるぞ」
職人はさっそく作業に取りかかりました。そして、待つ事数時間…………職人が出来たといって再び王様の前に現れました。
こちらをお納めくださいと差し出しますが、その手には何もありません。
「貴様…………我を待たせるに飽き足らず、騙したというのか!?その不敬、万死に値する!!」
しかし、男は表情を一切変えずにこう語りました。
これは愚者には見ることが出来ない服だ。王様以外に着こなす事は出来ない………と。
「我に見えぬという事は貴様は我を愚者と言いたいのか!?」
貴方が見えぬのは、貴方様が真なる王であるが故に愚者たる自分が作ったものが目に入らぬだけなのです。そう語る男に王様は渋々納得しました。
男の指示通りに見えぬ服を着てみると思っていたよりも気持ちが良く、まるで湯浴みをしている時のような開放感に包まれました。
大層気に入った王様は凱旋パレードをする事にしました。
男は王様から報酬を貰うといつの間にか姿を消していました。
しかし、服を作った程度の雑種が居ようといなかろうと王様には大した問題ではありません。
パレードが始まると人々は王様の姿を一目見ようと大通りに押しかけました。
王様は男が作った服を着て高らかに叫びました。
「今の我はこの上ない程上機嫌だ!!故に貴様ら雑種には我を仰ぎ見る許しを与えよう!!」
賑わう人々は騒然としました、それもそのはず。
「我の新しい衣は愚者たる雑種には見えぬ故、致し方無いが…………貴様ら新たな王の姿に歓喜しても良いのだぞ?」
王様は服を着ていないのです。全裸なのです。しかし、全裸とはいえ王様の身体は神が作りし最高傑作。
至高の肉体美を前に人々は言葉を失ったのです。
「美し過ぎる肉体美というのも考えものだな…………せっかくのパレードが盛り上がらぬでは無いか」
こうして王様は暫くの間、全裸で過ごしましたとさ。めでたし、めでたし
~
アンデルセン「何がめでたしめでたしだバカめ!おめでたいのはお前の頭だ!テロリズム的に全裸を見せつけられリアクションを求められる民どもに感情移入すれば夜にしか眠れん!一から十までお前だけしか得をしていないぞ、馬鹿なのか!いや愉快な馬鹿だったな!よし、あの姫さんのシチューをよこせ!」
ギルガメッシュ「ふはは!至高の芸術を目の当たりにした時、人は一様に絶句し平伏するという真理をよくぞ鮮烈に描いた!見事だ童話作家!金貨をやろう!」
アンデルセン「センスは最悪だが編集やスポンサーとしては最高だなお前は。またいいネタが思い付いたなら俺に見せろ。酒に酔い潰れたテンションで面白おかしくしたためてやる。安心しろ、個人出版だからな。バッドエンドは勘弁してやる」
──この本、眠る前に読み返します!もう一冊!もう一冊ください!
フォウ(流石ギルガチ勢だね!王様が裸体晒してるだけの本を楽しめるなんて流石としか言いようが無いや!)
《ふはは!良い!増刷を赦そう!しかしオチが弱いという意見も解らんでも無い。──こういった結末はどうだ?》
~
パレードを楽しむ最中、王の真正面に輝くような出で立ちの女性が現れ、そっと紅い布を差し出しました
「む?なんだ貴様は。我の魅力に目が眩み拝謁に参った生娘か?」
王の言葉に、金髪紅眼の女性は、何怖じる事なくこう言いました
『至高の玉体を晒し、王が風邪を引きませぬように。その身には、私には何も纏われているようには見えませぬ』
数多の絶句と静寂が満ちる中、その女性は静かに布を献上致しました。虚飾や威光に惑わされる事なく、王の身をただ正直に案じていたのです
『どうか、いつまでも健勝でありますように。我等が王よ』
「──ふははははははは!!我が身を案じ供物まで捧げるか!良き献身だ、気に入った!」
『へっ?』
そのままその女性を隣に招き、全裸の王と共に町中を歩んだ女性はたちどころに有名となりました
『王の裸体をおもんばかりし聡明な女性』として、後世にいつまでも語られる女性。その顔は、恥ずかしさと照れで真っ赤になっていましたとさ──
~
──正直者が得をしましたね!裸の王様の傍に寄り添う栄誉を賜りました!ありがとうございます!
(エアが晒し者にされるのかぁ、たまげたなぁ・・・)
アンデルセン「ははははははははははは!!いいぞ、メリーバッドエンドと言うやつか!正直者が歴史に名を遺すのだ、いい教訓だ!皮肉が利いているぞ!」
「完全無欠のハッピーエンドであろうが!王のそばにてパレードを堪能するのだ、何の不満が生まれようか!」
──王よ、世間一般には全裸ではしゃぐ王の隣にいることを歴史に遺されし事態を生き恥と言うのです
《フッ、だがエアよ。お前には御褒美であろう?よいぞ?もそっと近くに寄るがよい!》
──太陽に近付きすぎたイカロスのような真似は慎んで辞退させていただきます!
フォウ(キレキレだねエア!次はフォウの恩返しをだね・・・)
アンデルセン「しかし今日は筆が乗る。──何か揺り返しで悪夢のような出来事が起こらなければいいが。というか、なぜ今日になってお前が訪ねに来るんだ御機嫌王」
「フッ、知りたいか?決まっていよう。──愉悦の為だ!」
アンデルセン「愉悦だと?──待て、貴様、お前・・・まさか──」
ギルガメッシュ「察しが良いな?──そのまさかよ!!」
「──ふぅ。楽園なる場所へ赴くと言えど、持ち込むものは極めて少なく。改めて、自らの質素さには笑ってしまいますね」
とある修行僧より借り受けた一軒家。生活に最低限必要なるものしかなく、極めて清楚かつ清貧なる部屋の一角にて、一つのアタッシュケースしかない門出の荷物を用意し、それでも楽しげに声を弾ませる女性の姿がある。黒き僧衣に身を包み、僅かな身の回りのものしか持たず、しかして絶世の美貌と徳高き気品を兼ね備えたたおやかなる者。その表情は無垢な少女がごとき、彼女の下に細やかな救いを求める者が後を絶たぬ『現代の聖人』とまで謳われしセラピスト。誰かを癒し、魂を潤す事に長けし、常日頃誰かを救うために奔走する者・・・その名を、殺生院キアラと言う。ほんの僅かな嗜好の品、心の支えである『お医者様』と共に写った写真、細やかな楽しみの童話集を保管しつつ、彼女は準備を進めていたのだ。──準備と言えども、持っていく荷物は見ての通りほんの僅かなのだが
本日、自分は赴くのだ。オルガマリーと名乗る女性に誘われ、人類そのものを救う組織と謳う施設、人理保証機関『カルデア』へと。セラピストとしての腕を見込まれ、戦闘や異常事態にて疲弊した場合のメンタルケアを行う為の役割を任命されたのである
「・・・」
これを聞いた際、キアラはすぐに訊ねた。『前線にて立つものは生粋の軍人や、戦闘に馴れた傭兵であるのか』と。覚悟の決まっている精鋭なればよし、生死を潜り抜けたプロフェッショナルであるならばそれもまた良し。それならば、自分の成すべき事は精神を鼓舞し、時には励まし、焚き付け奮い立たせる事であり話は簡単だ。──だがオルガマリーは違うといった。そういった精鋭は、戦いの舞台にすら上がれなかったと
『今の楽園に集うものは、生まれも育ちも越えて自らを極限まで高めし精鋭を越えた精鋭です。下手な軍人、特殊部隊を遥かに上回る実力と覚悟を見せるでしょう。──でも』
でも、とオルガマリーは付け加えた。そう、いくら精鋭であろうとも。いくら覚悟を決めて力強く振る舞おうとも、『心の傷』を完全にはね除けるのは不可能なのだ
戦場や非日常に慣れきってしまった人間の姿を、キアラはその目で目の当たりにしてきた。平穏な日常に馴染めず、また何も成し遂げられる事が無いと無気力や怠惰に陥ってしまう者達。戦いに明け暮れ、それ以外の生き方を想像すら出来なくなってしまった少年たち。世界を巡り、尊い教えを伝え広めていく内に、そういった者たちの在り方を垣間見てきた
人の心は繊細で、かつ壊れやすい。他者に、他の要因に左右され、些細な事が大きく平静のバランスを崩してしまう。──未熟な人間同士の
僅かでも、少しでも。誇り高き者達の傷や疲弊、疲労を癒す一助を担いたい。話を聞くだけでも、親身になり故郷の話を聞くだけでもいい。何か、なんでもいい。自らが出来ることを駆使し、前線にて困難に挑み往く者達に、人類の未来を担い駆け抜ける者達の担う重責を、ほんの少しでも軽くできたのなら
「いつか、お医者様が仰有られた人類の未来の果て。其処に辿り着くまで、人類の皆様には滅んで戴くわけには参りませぬものね」
この世界には哀しみが、嘆きが、絶望が満ち溢れている。おぞましい裏切りや謀略が、打算や欲望が満ち溢れている。人類が未熟であり欲得や煩悩、艱難辛苦より逃れられぬ未熟なる証を目の当たりにしてきた。目を背けたくなるような愚かさを、セラピーや教えを説く最中で見つめてきた。その在り方を、何度嘆いたかも知れないほどに
でも、そんな一面から目を背けなかったからこそ、人類をこの上なく愛おしく、尊く感じることが出来たのだ。醜さの中に、とても輝かしく尊い心が、美徳が芽生えている事を目の当たりに出来たのだ
苦難には力を合わせ、絶望には轡を並べ、困難は心を重ねて立ち向かう者達も確かにいた。弱き者に手を差し伸べる者があり、報われぬ者達の為に奔走する者があり、どうしようもない理不尽を、何とかしようとあがき力を尽くす者達がいたのだ。そういった人達とも言葉を交わし、勇気を貰い、自分は人間という存在を信じる事を諦めることなく今日まで生きてきたのだ
「人類は未だ未熟。しかして誰かを労り愛する心を持っている。なんと──素晴らしきものでしょう」
かつてのお医者様が仰有られた事は真実であった。醜さも尊び、愚かさも受け入れる事が出来たなら、隠された、見えなかった本当の価値が見えてくると。世界には、哀しみを乗り越えられる素晴らしさが満ちていると。人類の未来は希望に満ちていると信じられたのだ
そんな人類を護るために戦う者達を、どうして見過ごし、看過できようか。かのお医者様が愛する世界を護らんとする者達を、どうして労らず、感謝を告げられずにおれようか。自らがお医者様にしていただいたように、当たり前にして簡単な、そして何より大切な事を行いに赴くのだ
──世界を護り、人々を護る皆々様に感謝と礼讚を。その気高き魂に、等しく祝福を。そして、ささやかなる癒しと安寧のお力添えを。自らがそうしてもらったように、今度は私が、誰かに何かを行う番なのだ
「・・・お見守りください、お医者様。あなた様より貰い受けたこの生命、あなた様の愛する世界の為に使い続けますが故に」
世界の何処を巡っても、白金がごとき輝きのお医者様は姿すら見ることが叶わなかった。自らが床に臥せていた最中、自らを救いたもうた彼女の姿が魂に在るが故、如何なる神仏も色褪せて見える程にかの出逢いは鮮烈であった。例え、那由多の彼方に赴こうとも、あの輝きを忘れることはない。鮮明に、思い返す事が出来るだろう
「──大悟の果てに、いつか巡り会えることを信じております。あなた様に救われた命に恥じぬ生を送ります故に、どうか、あなた様も息災でありますように・・・」
写真立てにて飾られた、小さき自分を抱き上げ菩薩のような笑みを浮かべる金髪紅眼の女性、心から楽しげに笑う自らの写真を強く抱きしめ、キアラは立ち上がりアタッシュケースを抱え歩み出す
「ガトー様。遅れ馳せながら、私も赴こうと思います。かの楽園に、人理なる紋様を護る者達に助力するために」
先にセラフィックス改革に駆け出したガトーと違い、セラピーの仕事を全て終わらせていたがゆえに大きく出遅れたキアラ。その遅れと不覚を、これから取り返すために胸を張って自宅を後にする
「──いつか、お医者様に出逢った時に御伝えしましょう。私はこの生き方を選んだこと、人の在り方を見つめる生き方を選んだ事を、心から誇りに思います」
そして、自らを絶望の淵より救ってくれた貴女に、いつまでも続く感謝を。いつか出逢うその日まで、ずっとずっと元気でいてほしいと
「では、参りましょうか。ええっと、確かオルガマリー様が伝えた転移の方法は・・・」
殺生院キアラ。有り得た世界では、愛欲の獣へとなり得た魔性菩薩。自ら一人を人間とし、それ以外を矮小雑多、虫とみなし快楽の道具として使い潰すもの
「うふふっ。私も成長したのですよ?いつか・・・今度は私が。あなた様に本や童話の朗読をすることが出来たのなら・・・ふふふ、遥かな悟りの道を進む励みになる夢でございます──」
──魔神は昇華され、至尊の魂に触れた彼女のその在り方に、最早二度と獣の兆しは無い──
オルガマリー「はい、殺生院キアラさんです。皆、悩みやメンタルケアはこの方に頼みましょう。ロマニの上位互換よ」
ロマニ「うわぁ酷い!でも、医療スタッフが増えるのは嬉しいな!よろしくね!キアラさん!」
キアラ「はい、此方こそ。皆様、遥かなる偉業大変お疲れ様でした。私もこれより、力添えを叶いたく存じます故、何卒よろしくお願いいたしますね?」
ゴルドルフ「セラピーだと?言葉を交わしてどうやって人の心が動かせると言うのかね?言葉を聞いているだけで高揚するリッカ君でもあるまいしやっぱりあれか?誘導的なあれかな?」
キアラ「ふふ、それでは一例を・・・」
~5分後
ゴルドルフ「私は今度こそ皆と仲良くしたいんだぁ!!(泣き崩れ)」
リッカ「ATフィールドが一発で中和された、だと・・・!?」
「人は誰も弱い部分を持つもの。それを私は癒すのみ。どうか、戦いにて荒んだのならば私の下へ・・・ソワカソワカ・・・」
リッカ(なんだろう、凄く親近感を感じる・・・!)
ダ・ヴィンチちゃん「あーキアラ氏?実はね、王から呼び出しがかかっているんだよ。行ってもらえるかい?」
キアラ「まぁ。噂の御機嫌王様から?光栄です。早速参りましょう!」
ゴルドルフ「案内は私に任せてください!誰かの役に立ちたいのです!好かれたい!」
ロマン「もうこれメンタルケアというか綺麗なゴッフだよねこれ!?」
オルガマリー「あはは・・・と言うわけで、仲良くしましょうね」
~アンデルセンの部屋
アンデルセン「(白眼)」
キアラ「あ、アンデルセン様!?アンデルセン様なのですか!まぁ、なんてこと・・・!?わ、わた、私殺生院キアラと申します!あなた様の描かれた作品の大ファンでして!その、此方にサインをお願いいたします!キアラちゃんへ、と!」
アンデルセン「────ははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!やってくれたなあの痛快な愉悦王め!まさか湖にアバズレを1000度叩き落として浄化するとは予想外だった!いやはや、これは参った!ははははははははははは!!」
「あ、アンデルセン様・・・?」
「分かったサインをやろうだからそのしおらしい態度は止めてくれ蕁麻疹と動悸と発作が止まらん勘弁しろ頼むお願いだ──っっっ!?」
「ええっ・・・!?アンデルセン様の眼鏡が割れて空中を一回転するほどに床で脚を滑らせ頭から床に──!?だ、大丈夫でしょうか・・・!?」
「よろしく頼むぞ綺麗で奇跡な『女』!──さて、お前を変えた存在の話を聞こうか。大方、どこぞの王の至宝なのだろうがな」
「はい!喜んで!──それでは、お話致しましょう。艱難辛苦より救い出してくださいました、尊く輝かしき女性の話を──」
~自室
──良かったね、キアラちゃん・・・会えて、良かった・・・
《・・・顔を会わせずとも良いのか、エア?》
──はい。彼女が楽園に馴染むことが出来るまで・・・そして、彼女が菩薩になれるその日まで。ワタシはただ、見守るだけでいいのです。彼女の歩みを、邪魔したくは無いのです
(菩薩は遠すぎるから・・・早く馴染んでほしいね、エア?)
──うん!いらっしゃいキアラちゃん!また逢えて、本当に良かった──!
どのキャラのイラストを見たい?
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コンラ
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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リリス(汎人類史)