人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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入り口

アマテラス「ワフ、ワッフ!」

将門公『困窮に瀕した閻魔亭、我等もまた助力を行うべし。立場に、意味は非ず。等しく一丸となる局面也』

「ワフン!ワッフ・・・」

『温泉を堀当てる、と。──善き事也。ならば、水脈の看破は我が・・・』

紅閻魔「よ、よ、よ、ようこそおいでくださいましたでち──!!」

アマテラス「ワッフ!?」

将門『・・・畏敬は今は不要也。我等は助力に・・・』



最高級客室の間

アマテラス「ワッフ(チラシ制作中)」

『・・・格の高さも、善し悪し也。翁めにも伝えておかねば(アマテラスまんじゅう、雀まんじゅうを制作中)』



頼光「おや、これは・・・?」

金時「どーした頼光サン。これからリッカの様子を見に行くんだろ?」

「そうなのです。母として成すべき事を成すのです。ですが、これは・・・」

ピラッ

『肩叩き券』

『なんでも言うこと聞く券』

「!!」

『母になってくれて、ありがとう! リッカ』

「──ああっ・・・!!」

「ど、どうした頼光サン!?泣き崩れちまって!?」

「いえ、いいえ・・・私こそ・・・大切な娘を持つことが叶い、この上ない幸せですよ、リッカ・・・」

「こいつぁ──・・・ったく、ブラックゴールデンだぜ、リッカ・・・!」





リッカ「~♪」

オルガマリー「どうしたの?いいことあった?」

リッカ「えへへ。──親孝行!」


足掛かり!──感謝が集う場所を綺麗にしよう!──

「す、スゴいでち・・・!材料が、食材が、続々何処からかやってくるでち!?」

 

王が背負い、王が担うと決意した閻魔亭。それらを建て直す・・・根本的かつ抜本的な改築と改革を行うために、王はあらゆる世界より食材、そして材料を取り寄せ仕入れたのだ。部員ネットより送られしものを順次選別傷んだ箇所、老朽化している場所に木材を、そして食材をキッチンへと運び込んでいく

 

「番頭王さま!こちらが建て直しに必要な材木の必要数でチュン!」

 

「番頭王さま!こちらがキッチンに必要となる大宴会を想定した食材の総数でチュン!」

 

「番頭王さま!これが建て直しするべき優先順位をリストにしたものでチュン!」

 

「でかした猛樹!すぐにこの書類を持ち搬入に向かえ!必項!キッチンへは我が楽園の精鋭を配属させると伝えておけ!フェイカー!総指揮を貴様に預ける!万全に運用して見みせよ!む、よい精度だオルガマリー、シバ!すぐに我が改築しよう、穴や虫、カビがあるかどうかを即座に吟味せよ!慌てるな、いくら有能と言えど、急き逸れば万全な仕事など行えぬ!雑に行った100の仕事は65の見直しとやり直しが発生すると思え!優雅な疾走ではなく冷静かつ確実な牛歩を重んじよ!問題が無い場所の方が少ないのだ、十全に伝えることこそを至上とせよ!!」

 

 

 

「「「「「了解でチュン!!番頭王、万歳でチュン!」」」」」

 

黄金の羽織を着用し、番頭王と書き上げられたハチマキを締め、ギルガメッシュは雀達に的確な配置と指示を飛ばす。一人一人に誂えしカルデア裁縫部が作り上げた雀達に送る特注の衣装を渡し、黄金に輝く雀となりし従業員達が、テキパキと業務をこなし尽くしていく。その見違えるような手際は、王の誰よりも自信と確信に満ちた振るまいが、『絶対に大丈夫』と士気を極限まで高めていることに他ならない。ゴルドルフに託された雀達の人員帳簿により、一人一人の名前をしっかりと把握し、名前をしっかりと呼びきちんと向き合う。一人一人のスペックとノウハウをきちんと活かし抜く。基本にして忠実な真理たる『出来ることをやらせ、全力を出させる』事を完璧に行わせるその指揮により、雀達の実力は天井知らずに上がっていく

 

「補修は個別に行うな、我が総て目を通す!まずは何より外観と部屋の異常を報告せよ!僅かな汚れを見逃せば、それにより100人来客と満足が消え去ると思え!接客とは信頼と感謝の積み重ねだ、軽んじる事は許さん!」

 

「「「「はいでチュ!!」」」」

 

「サーヴァントどもは集まっているな!よし、これより先に、向こう数ヵ月は安泰となる量の材料を確保させるぞ!解らぬ事が在れば即座に訪ねよ!人種や種族の違いにて敬遠などと言う真似は赦さん、我以外の総ての価値は等しい!我の他に上も下も優位も劣等も在りはせぬわ!!」

 

「「「頑張るでチュー!!」」」

 

忙しなく羽ばたき、サーヴァントと雀が協力し、互いのノウハウを、出来ることを、能力を把握し合う

 

「天草さん!拭きかたは力は要らないでチュン!静かに、激流に身を任せるでチュン!」

 

「えぇ、分かりました。聖杯は欲しいですが、何より困っているものを見過ごすわけには参りませんからね」

 

「えぇい!」

 

「あぁジャンヌさん!雑巾をねじきってはいけないでチュ!最低限の力でいいんでチュよ!」

 

「我等忍ーズも力をお貸しします。天井裏のネズミ、清掃を万全に行いましょう」

 

「「「御意に!」」」

 

「頼りにしているでチュ!柱をかじるネズミを追い出してやるでチュン!」

 

それぞれの担当にて、それぞれの成すべき事を行う。手と手を取り合い、万全の協力体制を作り上げる。一度力を貸すと決めたのならば、一切の後腐れ無く力と財を振るい懸命に建て直しに尽力するのが楽園スタイルなのだ。そして成すべき事を成すと言う行いは、この寂れきった旅館を建て直す最適解でもあるのだ

 

(見たところ、この場所には沢山の『感謝の気持ち』が満ちていた事を感じるね。きっとボク達のやるべき事は、まずこの場所に感謝の気持ちを招き入れること、呼び込むことだと思うな)

 

フォウの言う通り、この旅館に満ちるべき『感謝の気持ち』をまずは取り戻す事が先決である。宿を満たし、満ちる神気こそが宿の風格となり、万物を満足せしめる空間が形作られるのだ

 

──その為には、まずは雑用を初めとした沢山の事象に真面目に取り組む事!笑顔にて、おもてなしの準備を整えること!一丸となり、取り組む事!全身全霊で、皆様を迎え入れる準備をいたしましょう!

 

ふよふよと浮かび、帳簿と浴衣を着用し提出されたリストを即座に整理整頓し、成すべき事の優先度を把握し王に提出するエア。きっちりと着こなし、仕事としての正装として万全な態勢ではあるものの、黄金律の肉体、袖から覗く白き玉体、黄金の絹のような髪、穏やかな暖炉がごとき豊満な胸のエビフ山に押し上げられた膨らみを目の当たりにし、フォウはエア専用のシャンプー、ボディーソープ、コンディショナーを残し消滅し復活したのだがそれはいつもの事なので当然のように受け入れられている

 

「よし!これより食材を収集するメンバーを選定する!各自己に課せられし職務を全うしつつ我の沙汰を待て!サーヴァントは我の指示に、雀どもは紅閻魔の指示に従うのだ!不明な事象、起こりしトラブルは即座にリーダー、もしくは我と女将に報告せよ!己の判断にて解決しようなどとは露にも思うな、対応は責任あるものに任せておけばそれでよい!職場においては『余計な手出し』こそ悪と知れ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

人も、サーヴァントも、そして雀達も。一様に王の激と指示に従い動き懸命に使命を全うする。誰にでも出来ることを、誰よりも万全に執り行う。それこそが最も大切で、最も全身全霊で成すべき事であると王は誰よりも鮮烈にその輝きで示しているのだ。その姿に応えねば、最早この世に報いるべき存在など有り得ないと見るものに確信させる程に

 

「誰よりも偉いのに、誰よりも働いているでち・・・。一人一人を気遣って、問題を完璧に把握して指示を飛ばして・・・これが、楽園を作り上げた王の力なのでちか・・・」

 

「ホント、呆れるしかないわよね。・・・馬鹿みたいね、意地なんか張るものじゃ無かったわ」

 

中居の服を着込み、あちらこちらに駆け回るぐっちゃんが、紅閻魔と共に肩を竦める。つくづく、格の違いを見せつけられている気分だと。──そしてそれが、この上なく頼もしいと。なにより・・・

 

「ヒナコせんぱーい!これ何処置くのー!」

 

「あぁその洗濯物と重箱はそれぞれ・・・何個重ねもちしてるのよあなた!?重くないの!?」

 

「全然?いいトレーニングだよ?」

 

「ふふふ、せんぱ・・・り、リッカせんぱいを甘く見てはいけませんよ!かのリッ、リッカ先輩は人類が、カルデア自慢の人類悪マスターなのです!魔猪であろうと指先一つでダウンなインファイターマスターなのです!しかしデメリットとして真っ当な女子としてはカウントされません!」

 

「あっはははは!そゆこと!だがなすび、後で女湯に沈められる事を覚悟するよーに!悪霊を治める供え物にしてあげるよ!先輩も手伝ってね!」

 

「あー、はいはい分かったから!リッカもマシュも持ち場に戻りなさい!見てわかったでしょ、あんたらの王様は怒らせたらスゴいんだから!ほら、一緒に行くわよ!」

 

「「はーい、ヒナコ先輩!」」

 

手を引かれ、ぐいぐいと連行されていくヒナコの姿に、思わず紅閻魔は笑みをこぼす。──王様が怒鳴ったときはどうなるかと思ったが、今はこうして、皆に力を貸してくれたのだ。まだ未来は見えないし、どうなるかもわからないと言うのに・・・

 

「引っ張らない、引っ張らないの!先輩として慕ってくれるのは嬉しいし、感謝してるけど!もうちょっと敬ってもらえないかしら!」

 

「ヒナコ先輩マジリスペクトッスよー!マジパネージョン!」

 

「とてつもなくエモいですよ!ヒナコさんの嘆願と祈願、忘れません!こんなに義理堅かったなんて・・・誤解していました、ごめんなさい!」

 

「ま、まぁ・・・私も、ね。意地を張ってたってのもあるし、避けすぎたってのもあるし・・・ありがとう。──力、貸してもらうわね。後輩二人」

 

「「いいですとも!感謝を閻魔亭に!」」

 

「・・・、・・・?」

 

「もー!其処はいいですとも!でしょー!」

 

「まだまだ先輩の先輩というには経験不足ですね・・・さながら浸けなすび・・・熟成しきっていませんね・・・」

 

「い、いきなり振られたってわからないわよぅ・・・!なに、カルデアってそーいうのなの?しきたりなの?」

 

「「へいよーカルデラックス!」」

 

「へいよー!?」

 

「・・・長い間交流していなかったぐっちゃんに、大切な友人が二人も出来たでち!これほど、嬉しいことはありまちぇん!よーし、あちきも負けてはいられないでち!」

 

「──ははは、こんなに旅館が騒がしいのはいつ以来でしょうか。まるでかつての宿が帰ってきたかのようですなぁ」

 

頑張るでち!と決意を燃やす紅閻魔に、声をかける猿の仮面を擁した存在が顔を出す。彼は長い間この閻魔亭に泊まり込み、ゆるりと休んでいる得意様『猿長者』である

 

「あの王と名乗る輩、果たして本当にこの閻魔亭を救えるかどうか・・・楽しみにさせていただきましょう。ほらほら、紅閻魔殿も脚を止めてはいられぬのでは?」

 

「そ、そうでちた!おーい、あちきにも出来ることはあるでちかー!?」

 

てちてちと走り去っていく紅閻魔の姿を、微笑ましげに猿長者は眺める。かつての賑やかさに、てんてこまいな彼女を見つめながら

 

「どうか頑張ってくださいな。そう、頑張れば頑張るほどこの閻魔亭は綺麗に、立派になる。そうすれば、この宿も所持者も・・・誰よりも喜ぶ筈なのですから・・・」

 

静かに呟きながら、猿長者はみるみる内に綺麗になっていく閻魔亭を見て一人静かに、満足げに微笑みを絶やさず、愉しげにほくそえむのであった──

 

 

 




一日目 正午

ギルガメッシュ「よし、昼までには清掃が完了したな!これでひとまず見てくれと拠点が清掃完了と言うわけか。よくぞ働いた!その奮闘、誉めて遣わす!」

「「「「ありがとうございまチュ!!」」」」

女将「雀たちは変わらず清掃、そして接客対応の復習に励むでち!御客様を、万全に迎えるでちよ!」

「「「「了解でチュ!」」」」

ギルガメッシュ「我等はその間、夕暮れまでに必要な材料を確保するぞ!改築は今日の深夜と朝までに終わらせてくれる!閻魔亭が抱えた問題は根深くも単純だ、一つ一つ終わらせてくれる!」


キッチン

エミヤ「配置、完了している。──別に、全員を満足させてしまっても構わんのだろう?」

ブーディカ「腕の振るい甲斐があるなぁ。任せなさい!」

タマモキャット「うむ、リリィにまけてはいられぬからナ。全身全霊を尽くす所存である」

トータ「ははは!もしもの時は任せておけ!いくらでも、美味しい飯を用意しよう!」


山 (山の幸確保部隊)

騎士王「了解しました。我等円卓の騎士にお任せください」

ベディヴィエール「ゲテモノは ちゃんと洗えば 食べられます」

アグラヴェイン「私の調べにて導き出された108のリラックス草案。試さずに楽園に帰るわけにはいきませぬな」

ガレス「頑張ろうね!モーちゃん!」

モードレッド「おぉっ!どっさりがっちり確保してやるぜ!!」

ランスロット「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

マシュ「頑張りましょうね、ランスロットさん!」


河 (河の幸確保部隊)

カルナ「川のせせらぎや自然に包まれながら、釣りや素潜りか。──心から楽しみ、皆のために尽くすとしよう」

アルジュナ(私は施されてばかりではない・・・カルナ、貴様には断じて負けん・・・!!)

ラーマ「川のそば、か・・・落ちないように気を付けるんだよ、シータ」

シータ「はい。ラーマさま。・・・目を、離さないでくださいね」

パールヴァティー「ふふっ、よろしくお願いいたしますね。乙姫さん!」

乙姫「こ、ここ、こちらこそ!よろしくお願いいたします!」

雀の幸確保部隊 (猛獣退治)

スカサハ「たまには、身体を動かすのもよかろう。行くぞお前たち。ワシに続け!」

メイヴ「フェルディアー!フェルグスー!私のために頑張ってー!」

「メイヴちゃん!!サイコー!!」

「はははは!たぎる!たぎるなぁ!!」

クー・フーリン「よしコンラ、競争すっか!どっちが先に100体狩れるかをな!」

コンラ「はい!コンラは負けませんよー!黒い御父様も!是非!」

クー・フーリン「・・・やるか」

スカサハ「・・・・・・(ショボン)」

フィン「ははは、これは珍しいものを見たなぁ。しおらしいスカサハ殿とは!」

ディルムッド「女性の争いの介在しない戦場。これこそ、私が求めし誉れ高き戦い!!」

スカサハ「・・・自業自得にしても、ハブられるのは辛いな・・・」

クー・フーリン「オラ何してんだ師匠!号令かけろや!」

スカサハ「──!よし!おぬしら!誰よりも成果を上げるぞ!影の国、ケルトの威光を示せ!戦え!戦え!!」

「「「「「「応!!!」」」」」」

ロイグ「まぁ、程ほどにな」




《順次配置は完了したか。よし、これで成果を出せぬという事は有り得まい。ギリシャ組は風呂掃除に回すか。悪霊とやらも対処せねばな。・・・──だが、その前に成すべき事、招くべき客を用意せねばな》

──?ギル、それは?

《フッ、完全無欠の結末に不可欠なモノだ。──再会の折に、舌足らずならぬ舌無しでは文字通り話にならん。──かの真祖めの肉体のデータを要する、か。まぁ今はよい、行くぞ、エア!なに気負うな。単純に、老人へ顔を出しに行くだけなのだからな》

──わ、わかりました!何処までもお供致します!

《ふはは!それでよい!さぁ、小さくはあれど確実な下準備と最適解を行いに行くぞ──!》

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