人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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――主の御技を、此処に――!


ハレルヤ

「あっははははははははははっ!!燃えろ、燃えろ、燃えたぎれ――!!」

 

 

突きつける剣。憤怒を形にした剣がジャンヌに無数に飛来する

 

 

 

「焼けろ、朽ちろ、溶け落ちろ!これは私を焼いた火だ。これは私の憤慨だ――!!」

 

 

吹き付ける炎、魂を焼く憤怒と絶望の業火が聖女を包み込む――!

 

「懐かしいのではないかしら、私!覚えがあるでしょう!?この熱さ、この息苦しさ、この無念さを――!!」

 

踏み込み、ジャンヌを切り裂く弾劾の刃

 

 

魔女は叩きつける。絶望の叫びを

 

「この炎はフランスの欺瞞だ!」

 

ジャンヌは踏みつけ高らかに謳う

 

 

「この刃は民どもの嘲笑だ!」

 

ジャンヌは切りつけ、怒りを燃やす――!!

 

「この怒りは――尽きぬ復讐の誓願だ――!!」

 

 

叩きつけ、叩きつけ、叩きつけ

 

焼き払う、焼き払う、焼き払う――!

 

 

魂を薪に、心をくべて魔女は叫ぶ

 

 

この世の総てに、絶望を

 

欺瞞の総てに、弾劾を

 

あまねく総てに――憎悪の業火を――――!!!

 

 

「っ――!!」

 

「燃えろ、燃えろ、燃えてしまえ――!!白き私より更に白く!何も残らぬ灰になるまで――!!」

 

竜の魔女は、吼え猛る――!!

 

 

 

 

「――聞くに堪えん喚きぶりよ。余程アレの鋳造者の趣味嗜好が反映されているようだな」

――聴いているだけで、魂が焼けただれるようだ。あの魔女の、魂の叫びが、こちらの魂を焼き焦がしていく錯覚を覚える

 

「ジャンヌ……」

 

「――まぁ、無理もなかろうよ。あの小娘が迎えた末路は、端から見ればそれほどまでに凄絶だという話であろうな」

 

――あらゆる拷問、あらゆる凌辱

 

――かつての自分も、背筋が寒くなった時もあった

 

 

「私は許さない。私を売ったフランスを!私は許さない!私を焼いた司祭どもを!私は許さない!!私を助けなかったこの世界総てを――!!」

 

浮遊せし剣が、ジャンヌに飛来する!突き刺さる度に炎が吹き上がり、ジャンヌを焼き払う――!

 

 

「っづ――!!」

 

 

 

前に転がり、逃れようとするジャンヌを、魔女ジャンヌが蹴り飛ばす

 

「っあっ!!」

 

 

「逃がさないってんのよ!!」

 

振り下ろされる魔女ジャンヌの刃

 

 

呼応してジャンヌも自らも『紅蓮の聖女』を抜き放つ!そして、受け止める!

 

「当て付けのつもりかしら!その銘――!!皮肉ったらありゃしない!」

「っあぁあぁあ!!!」

 

「――紅蓮の炎で、私に張り合おうなどと烏滸がましい――!!」

 

背後、左右からも業火の剣が生成され――

 

 

「貫け――!!」

 

一息にジャンヌに突き立てられる――!!

 

 

「ぐぅうぅうぅうっ!!」

 

飛び散る鮮血、染められる純白

 

 

聖女に、黒き炎が迫る――!!

 

 

 

「やりおるわ。贋作の分際で。――元にした真作の威光にすがるにしても、余程念入りに打ち直したか」

 

 

「ジャンヌさん――!!」

 

「だ、大丈夫かな……!?私達、見てるままで……!」

 

 

「良かろうさ。ヤツが決めた戦いだ」

 

断言する器

 

 

「でも……!」

 

――マスターの気持ちもよく解る。明らかにジャンヌが劣勢だ。いくつも身体を貫かれている。心配する気持ちも痛いほど解る

 

 

――だが、揺らがぬ確信がある

 

「全く――仕方あるまい。同じ存在として、何か言ってやれ、『ジャンヌ』」

 

器がくい、と顎を指す

 

『はい!』

 

「わっ!」

「ジャンヌさん!?」

 

通信が繋がり、声を上げるジャンヌ

 

 

『大丈夫です!私が、私であるのなら絶対に負けません!私を、信じてあげてください!』

 

「ジャンヌ……」

 

「クク、言うではないか。根拠が聞きたいものだが?」

 

意地悪く笑う器

 

――流石に、これくらいは自分にもなんとなく解る

 

『根拠は明白です!『そちらの私には、私を信じるあなたたちがいる』のですから!私は旗を持ち、皆を鼓舞した女!』

 

ジャンヌは謳う。それが当然の真理だと言うように

 

 

『私の背中を見て奮起する方がいるかぎり、けして私は膝を屈しません!――それが』

 

 

「はぁああぁああ!!」

 

 

旗を振り払い、魔女の炎をジャンヌは振り払う――!!

 

『――剣の代わりに旗を取り、戦場に参ずる事を決めた――ジャンヌ・ダルクの生き方だから!』

 

「――だ、そうだ。やつめは旗持ち、率いるものがいる限り折れはすまいよ」

 

 

――そうだ。彼女は聖女、ジャンヌ・ダルク。フランスを救うため、自らの総てを捧げ戦った聖女

 

 

「たぁぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

 

旗を振り回し、炎を断ち切り凪ぎ払う!

 

「ちぃ――!!」

 

――彼女がフランスの為に戦う限り

 

降り放たれる無数の刃

 

「おぉおおお!!!」

 

「やぁあぁあぁあ!!!」

 

旗を丸め、槍のように振り払う!

 

――旗の下に集う同胞がいるかぎり

 

 

「ぜぇええやぁあぁあぁあ!!!」

 

旗を地面に突き刺し、勢いをつけて魔女ジャンヌに叩きつける!

 

「ぐぅうぅうぅう!!」

 

――彼女が、彼女であるかぎり

 

「――たぁあぁっ!!」

「がっはっ――!!?」

 

つばぜりあい、刹那の交差で頭突きをかまし、魔女ジャンヌをぐらつかせる――!

 

 

「ぜぇえぇえぇい!!」

「ッ、負けるものか――!負けるものか――!!」

 

――例え、相手が自分自身だろうと!

 

「お前なんかに!私なんかに!お前なんかに――!!」

 

炎を吹き放つ――

 

そこに突っ込み、からだごと突っ切る!!

 

「奇遇ですね――」

 

旗を、――叩きつける!!

 

「私もです――!!」

 

――けして、退きはしないだろう!

 

「ジャンヌ――ダルクゥウゥウッ!!」

「さぁ――覚悟なさいッ!!」

 

 

――それが、ジャンヌ・ダルクという英雄なのだから――!!

 

 

『それに――彼女は、一人じゃありません!』

 

「一人じゃない……!?」

 

 

『頼もしい、先輩がついてます!』

 

 

 

――

 

 

――しっかり前を見るのよ。ちょっとの傷なんて無視しなさい

 

(はい!)

 

 

「ぜぇえぇえぇい!!」

 

放たれる炎を、身体を丸めて掠めさせる

 

――当たる場所は最低限に!

 

(はいっ!)

 

 

降りかかる刃を、冷静に見据え回避していく

 

「何っ――!?」

 

――そのまま踏み込む!脇は締めて、視線はまっすぐ!

 

(はい!!)

 

肺すら焼く獄炎を、掻き分け、腕で流し、少しずつ、少しずつ前進していくーー!

 

 

「な、何よこいつ……!なんで、なんで止まらないのよ!」

 

炎を放つ、放つ、放つ、放つ

 

――へっちゃらよ、こんな小火。私のタラスクを思い出しなさい!

 

(もちろんです――聖マルタ!)

 

――ジャンヌの所持するスキル『啓示』。そのスキルが今最大限発揮されている!

 

 

「はあぁぁあぁ!!」

 

一息に――距離を詰めていく!

 

「この感覚――!お前は何者かの力を借りている――!?」

 

――いいわ、その調子。あんたなら、あんたならできるわ!

 

 

(はい――!ありがとうございます!)

 

強く、強く、拳を握る

 

――啓示を与える、声のままに

 

――聖マルタの祈りのままに――!

 

「あなたもジャンヌ・ダルクならば、解るでしょう!」

 

――だってあんたは、私の後輩……

 

「私に力を貸してくださる、この声の主が――!!」

 

「声の、主――!?」

 

 

「はぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――――――!!!!」

 

猛進、邁進――一直線に魔女へ向かう!

 

 

炎を振り切り

 

絶望を振り切り

 

――復讐に堕ちし自分に目掛け――!!

 

 

「ッッ!!『吼え立てよ』――!!」

「遅い――!!」

 

 

ジャンヌは一息に、必殺の間合いへ――

 

――アタシの祈りを受け継いだんだから!

 

拳を握る――強く、強く、強く!!

 

――ぶちかましなさいっ!!ジャンヌ・ダルク!!

 

 

「てぇええやぁあぁぁあぁあ!!!」

「ッッッ――!!?」

 

 

 

――そして、放つ――!!

 

 

「――――『ハレルヤ』――――!!!」

 

 

渾身の、全身全霊の祈りを――!!

 

 

 

「がぁあ――――ぁあぁあぁあっ――――!!!??」

 

 

顔面に、渾身の祈りを受け――

 

「――せぇえぃっ!!」

 

振り抜くと同時に、魔女ジャンヌが吹き飛ばされる!!

 

「がは――っ!!」

 

 

玉座に叩きつけられ、沈黙する魔女、ジャンヌ

 

 

 

――まだまだフォームが甘いけど、悪くなかったわ

 

 

啓示の声が、遠ざかっていく

 

――今の感触、忘れんじゃないわよ。ジャンヌ

 

 

――祈りの聖女が、再び時の果てに消えてゆく

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……はぁっ……」

 

 

「……な、によ……今の、……今の……」

 

 

「――今、貴女を穿ったのは……私の力ではありません。――あなたが呼び出し、あなたが狂わせた――祈りの聖女」

 

「――聖女……バーサーク……ライダー……?」

 

「えぇ。聖マルタの……祈りです」

 

 

「……何よ……意味、解んない……――炎の中でも……突っ込んでくるとか……」

 

――英霊は、けして成長はしない

 

 

――ただ、その魂に、何かを受け継ぐことはできる

 

「――貴方に感謝を、聖マルタ」

 

――ジャンヌ・ダルクは、確かに

 

 

――聖マルタの祈りを、受け継いだのだ――




ハレルヤ(祈りを届ける聖なる言葉)

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