人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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数刻前


将門公『──委細承知した。その様に行い、全てを解決に導かん』

アマテラス「ワッフ!」

ギルガメッシュ『仕損じるなどとは思っておらぬ。その神威、今こそ示す時だ』




虎名主「・・・紅ちゃん・・・」

蛇床屋「あーあ、きっともうすぐお仕舞いよネェ・・・もうちょっと、久し振りのばか騒ぎに浸っていたかったんだけど」

猿長者「・・・虎、蛇」

「!」

「あら・・・どうしたの?」

「──ボロは、出していないだろうな──」


推理ミステリは手に取った瞬間全てが解ってしまう王

「よし、主要の面子は顔を出しているな。この場にて話す事柄は門外不出、他言無用と心得よ!これより、この閻魔亭に溜まった膿を摘出するための会議を執り行う!各員、心して励むがいい!」

 

天守閣、ギルガメッシュが鎮座せし玉座が在りし閻魔亭を一望できる天辺なる場所にて、カルデアの重要人物、そして閻魔亭の女将が招かれ会合を執り行う運びとなる。豪華絢爛に生まれ変わった閻魔亭、それが未だに侘しい理由。その根本的な解決を図るための最後の仕上げの指揮を、王自らが引率し、成し遂げようというのだ。いよいよ以て大詰めたる様子に、一同の緊張と高揚は否応なしに高まる。この問題をどうにかせねば、完全な改革は夢のまた夢なのだから

 

「概要は概ね把握している。さる事500年前、竹取の翁が持ち込んだ五つの宝。『仏の御鉢』『蓬莱の玉の枝』『火鼠の衣』『竜の珠』『燕の子安貝』・・・まぁ細かい名称はどうでもよい。問題はこれらが何者かに奪われ、その犯人が見つからず翁は貴様ら閻魔亭に賠償を求めた。それは間違いあるまいな?」

 

「な、何故それを知っているでちか・・・!?こ、これから話そうと思っていたのに・・・!?」

 

そう、この閻魔亭が侘しい理由は此処にある。かつての500年前の状況は──

 

 

『誰か!誰か来ておくれ!私の、私の大切な宝物が消え失せているのだ!』

 

『一大事でチュン!一大事でチュン!』

 

『落ち着くでち!今閻魔亭を封鎖ちまちた!何があったのでちか!?』

 

『な、何がも何も・・・私の大切にしていた五つの宝。それが綺麗さっぱり消え失せているのです。紛れもなく此処にあったはずの・・・』

 

『あ、アタシじゃ無いわよ!?調べてもらっても構わないわ!そうよね、猿!?』

 

『あぁ。しかし・・・あれほど輝いていた宝が、綺麗さっぱり無くなっているとは・・・』

 

『・・・──今調べ終わりまちた!侵入者の形跡はありまちぇん、必ずこの中に犯人がいるでち!』

 

『それは良かった。すぐに発見をお願い致します。・・・ですが、もし下手人が見付からなければ、それはこの閻魔亭の過失として責任を取っていただくしかありません。よろしいですな?閻魔亭の紅閻魔様・・・』

 

『・・・!』

 

 

「──そうして結局の所盗人は見つからず、責任の所在を閻魔亭に問われた。唯一無二の宝の賠償として法外な借金を背負わされ、この閻魔亭を育てる神気を利息の片にされた。物盗りの烙印を押された宿からは客足が遠退き宿は寂れ、いつしか閻魔亭はその稼ぎを翁に捧げるだけの自転車操業に成り果てた・・・フン、お前ともあろうものが、随分と下らん詐欺に引っ掛かったものよな」

 

「チュ・・・詐欺・・・?」

 

──はい。これは明らかなる詐欺。不当なる交渉。閻魔亭を台無しにすることを目的とした手法であることだと断言します。この一連の事件に、真実などありません

 

王、姫の言葉は暴く。この一連の事件の稚拙さと、粗削りながらおぞましき悪意を。そして──それら全てを覆す道筋を。だが、一人相撲ではならない。事細やかに、説明を果たす必要があるのだ

 

「我にとって誰が犯人か、誰が何を行ったか等は議論する価値もない。そんなものは取り組み、挑むと決意した瞬間に明らかにするものだからだ。故に、説明はすべき者に一任してやるとしよう。──考察班!」

 

『あぁ。これは実に初歩的な認識を利用した、稚拙かつ単純なトリックだ。笑ってしまうくらいにね』

 

その様子、その事件の真相を暴きしはカルデアのシャーロック・ホームズ。事件の解決において右に出るものはない名探偵が、鮮やかに事の在り方を暴く

 

『500年前、宝は無くなりそれを見たものは竹取の翁、そして長年宿泊していた猿長者一人のみであり、『従業員』は誰も見ていなかった。その発言を鵜呑みにした君達は、多額の負債と不当な取り引きを押し付けられた。此処に落とし穴と真実があった。・・・理解はできたかな?』

 

「・・・それは・・・?」

 

「──!『従業員は見ていない』のよね!?長らく泊まっていて顔馴染みだから見落としていたけれど、『猿長者が真実を言っている保証はない』じゃない!」

 

ぐっちゃんの言葉に、その通り。とホームズは頷く。本来信頼すべきは雀の発言、従業員の目撃情報である。その宝の一つでも実際にそこにあり、そしてその具体的な形を把握する事だったのだ

 

『猿長者の発言も実に曖昧かつ不明瞭だ。『あれほど輝いていた宝』などとぼかし、ただの一つも具体的な形を言えていない。竹取の翁が至宝ならば、決して具体的な形を言えない筈がない。輝いていたと言うなら尚更ね。それほど輝きを目にしておきながら、形を言えないという事は・・・導き出される結論は一つだ』

 

「・・・盗まれていた宝は、実際には存在すらしていなかった・・・?」

 

「そういう事だね。念のためボクも千里眼で500年前の当時を視てみたけど、風呂敷の中には『最初から』何も無かったよ?」

 

初めから、宝の在り方や所在などどうでも良かったのだ。翁の目的とは、この閻魔亭を乗っとること。閻魔亭を破滅に導くこと。──それ故に。自らが騒ぎ立てる事により破滅の引き金を引いたのだ。在りもしない宝を、盗まれたのだと

 

──一度宝物庫の中を徹底的に捜査、確認しましたが、かの翁の仰有る宝は入っておりませんでした。王の財宝にはカルナさんの槍のような『原典に登場していない、または使用されていない宝具』ヘラクレスさんの十二の試練のような『逸話を昇華したもの』アキレウスさんやジークフリートさんの『肉体などの宝具』は貯蔵されておりません。──『かぐや姫』の童話からも、この宝物は婚約者たちへの無理難題であり、実際に用意できた者は一人もおらず、ただの一つも本物は存在していない・・・

 

エアは全身全霊を込め、宿にて休む間もなく徹底的に宝物庫を検分した。微塵も見落としがないよう、不眠不休で財を改めた。王が仮眠を取ったのは、エアの献身と疲労に報いるためのものであったのだ。其処を狙ってきた翁の手法は、ギルガメッシュの夢に現れたマーリンにより御破算となったわけだが

 

「証拠は原典にこそある。『五つの宝』の原典を所持しているなどとは虚言も甚だしい。何故ならば『我が持っておらぬ』のだからな!ふはは、これ以上の証拠はあり得まい!」

 

発言の矛盾。王の用意できない財宝の原典。そしてだめ押しにロマンが垣間見た風呂敷の空。これら全てが導き出した事。──500年前の取引は、虚飾と虚言に成り立った空手形がごとき事件であると

 

『悪辣さと陰湿さは評価するが、どうにも手段と動機が浅知恵の域を出ていないのが残念だネ。──マスターの故郷にはいなかったかネ?猿、虎、蛇の三匹が合体していたようなキメラが、ネ』

 

「──鵺!母上から教えてもらった!猿の頭、虎の体、蛇の尻尾の妖怪が日本にはいたって!」

 

リッカが真理に、答えに至る。・・・そう、その特徴に合致している者たちがこの宿にいる。蛇庄屋、虎名主。──そして、猿長者。最早語るまでもない。その場にいなかった虎名主、その事件にいながら無関係を貫き荷担しなかった蛇庄屋を候補から外せば・・・浮かび上がる容疑者、共犯者など一人しかいない

 

「つまり、猿長者さんが頭目たる鵺・・・蛇さん、虎さんに別れ、閻魔亭に忍び込んでいたと言うことですか!?」

 

「間違いないわ。言質も取ってある。──アイリーンの力を借りて、録音したものよ」

 

記録の端末を開き、提出するオルガマリー。其処には猿長者に扮したオルガマリー・・・アイリーンに胸中を説く虎名主、蛇庄屋の言葉が記されていた

 

『・・・猿。もう退き時だ。これ以上は500年前の悪ふざけなどで許されはしない、子供の遊びでは済まなくなる・・・全てを話し、俺達で裁きを受けねば・・・』

 

『一応、義理で付き合ってはあげるけど・・・あの王様を嘗めてると本気でまずいわヨン?今の内に切り上げて逃げ出すなり、手伝うなりしなくちゃ取り返しがつかないんじゃない?あなたが陰湿なのは解るけド・・・相手が悪すぎるわよ』

 

 

オルガマリーの確保した物的証拠も揃い、最早言い逃れなど赦されぬほどに明らかにされた真実。・・・情状酌量の余地など何処にもない

 

「・・・以上の発言から、これは猿長者の率先した計画であることが判明しました。言い逃れはできません。──敵は鵺、この閻魔亭に巣食いし猿頭の怪物です」

 

全ての真実は明らかにされ、最早取り繕う事は出来ないほどに全容は掴まれた。初めからこれは、閻魔亭を陥れるために組まれた浅知恵にして一人芝居ならぬ猿芝居。──最早、借金も利息も意味を為さない。悪質な詐欺であることは、火を見るより明らかである

 

(・・・過去を覗き見るとか矛盾を暴くとか変装して聞き出すとか原典が無いとか・・・もうえげつないくらいの追い詰めっぷりに乾いた笑いしか出ないわね・・・)

 

王の財に偽りなし。一人一人が王が有するに相応しき輝きを放つ財であることは最早微塵も疑い様はない。──全ての欺瞞と疑惑は晴れた。ならば後は、裁定と断罪しか残ってはいない。王らの慰安旅行を阻んだ狼藉者の末路は、今此処に定まったのだ

 

「ふふははははははは!!たかが猿ごときが我を謀ろうなど2400万年早い!事件などは後から追うものではない、俯瞰して全容を掴むものだ!ならば我が行う事はただ一つしかあり得まい!」

 

そう。これより始まるは捕物帖。付け上がりし猿面の甲斐を、徹底的に追い詰める起死回生の妙手に他ならないのだ──




ギルガメッシュ「解らぬ点、合点がいかぬ箇所は遠慮なく質問せよ。我が完膚なきまでに応えてやろう。──無いようだな。ならばこれより!逆転ゴージャス裁判を執り行う!裁判長、検事は我!弁護人不在の結果ありきの裁判をな!何、理不尽?たわけ!!我に仇なした時点で死罪に決まっていようが!!」

紅閻魔「閻魔様も真っ青でち!?で、でもどうするでちか?初めから無い宝など、どうやって用意すればいいか・・・」

モリアーティ『いいやミズ・紅。これはまともに取り合うまでもない案件だ。どうせ揃えた所で、『私がなくしたあの宝ではない』などと言うに決まっているからネ!誰だってそう言う。私だってそう言う!』

ギルガメッシュ「相手の土俵になど乗らずともよい──と言いたいが。此処まで来たのだ、最後まで同じ立場で叩き潰してやるとしよう。そう、利点を崩し、優位を奪い、心身ともに完膚なきまでにな」

紅「みなちゃま・・・」

ゴルドルフ「と、とは言うが。500年前の現地の事件などどう突き付けるというのかね?どう考えても時効、過ぎた時を戻しでもしなければ・・・」

ギルガメッシュ「──ほう、流石はオルガマリーが見出だした人材よ。雑種上がりの財とは思えぬ慧眼よな」

「な、なんだって・・・!?」

リッカ「誉められたんだよ!やったねゴッフさん!」

ギルガメッシュ「単純な話よな。過去に起きた事件など、過去に赴き解決させればよい。──竹取の翁を呼び立てよ!!二日も要らぬ、今この場にて、全てを完済してくれるわ!!

リッカ「よーっし!!燃えてきたぁ!!」

ぐっちゃん「・・・私の玉の枝も、正確には神樹から取ったものだから、あくまで『似たもの』でしかないのよね。これ。そっかぁ・・・盲点だったわ・・・」

紅「え、閻魔大王様も真っ青の働きぶりでち・・・!あちきは、どれだけ返せない恩が溜まっていくのでちょうか・・・!」

ギルガメッシュ「案ずるな。裁きの一刀は貴様に任せる。我はそれ以外の全てを担当するということだ。──さて、覚悟はできたか、紅閻魔よ」

ぐっちゃん「え、覚悟・・・?」

紅閻魔「・・・──はい。ごきげんおーと、財のみなちゃまに・・・託しまちゅ」

そういって、御機嫌王に渡されしは・・・

「・・・ちょ、えんまちゃん・・・!?」

由緒正しき閻魔亭、正真正銘の『権利書』──

ロマン「いやぁ、こんな形でソロモンの力が役に立つとは嬉しいなぁ」

シバにゃん「不当取引とか許しませんねぇ~・・・念入りに契約の場を用意しまぁす♪」


──全ての準備は整いました。さぁ・・・建て直しと盛り立ての総仕上げと参りましょう!
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