人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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フォウ(ひょいっと!いやぁ盛り上がってるみたいだね!クライマックスって感じだ!)

──フォウ!?いないと思ったら!何処に行ってたの?

(ごめんよ、エア。ボクとエルで共謀して、皆を助けるための策を担っていたんだ。完全無欠のハッピーエンドの為にね)

──本当!?エルと二人でって・・・あ、もしかして!

《フッ、そう言うことか。どうやらあの猿めの行動をも読みきっていたようだな。流石は我が友、我が姫のペットよな》

フォウ(然り!ボクはこころも体もエアのものだ!)

──フォウも、閻魔亭の皆のために行動してくれたんだね!嬉しい・・・!ありがとう!

(あっ──親友なんだ、キミたちが頑張ってるのに、なにもしないわけないじゃないか──)

《ふはは、ならば後は我の裁定のみだが・・・。──む、猿の頭、蛇の尾、虎の身体・・・》

──むぎゅ~・・・ギル?

(アッアッアッ──(抱きしめられプレシャスタオルになって消滅))

《──あるではないか。腐りきった性根すら叩き直し浄化させる手段がな・・・!ふははははは!久方ぶりに、一肌脱ぐとしようではないか!!》

────あっ・・・!!



閻魔亭・御機嫌王裁判!!

「あぁムカつくぜムカつくぜぇ!!せっかく純朴なガキを騙くらかして遊んでたのによぉ!!なんなんだよテメェらは!コドモの遊びに割って入ってくるんじゃねぇよ!!」

 

 

猿の面にて猛り、呪詛を撒き散らす悪しき魔性。恨み辛みを吠えるおぞましき悪意を称えし閻魔亭に巣食っていた元凶が、いよいよもって姿を現す。その姿は──猿長者そのもの。一同の目には、そこに猿長者が二人いるようにしか見えない

 

「猿長者が・・・二人・・・!?竹取の翁が猿長者だったのですか!?」

 

「違うでち、マシュ。おそらく彼は、あちきと同じでち。──お伽噺の住人。弱者をいたぶり、笑い、食い物にするという悪役、正体のないもののけ。あの猿面は恐らく・・・」

 

そう──猿かに合戦。息を吐くように悪を成し、弱者を叩き殺し悦に浸り、己の悦を満たす役割を担いし外道。其処より出し存在こそがこれなのだ。物語に現れし、そして語られし猿。それが、この事件の犯人なのだ

 

「あぁそうさァ!善人どもに袋叩きにされたエテ公さぁ!だが──正体がばれちゃここまでだ。蛇!虎!帰ってこい、元に戻るぜ!」

 

「・・・まぁ、そうなるわよねぇ。ごめんなさいね、ゴルドルフちゃん」

 

「・・・・・・・・・」

 

三匹の怪異が融け合い、交ざり合い、やがて形を成す。猿の面、虎の身体、蛇の尾。それらはまさしく伝承に伝わりし正体の無い怪物。確固たる存在のない謎の代名詞、奇怪なるキメラ・・・玉藻がそれを、同類であるが故に見抜く

 

「初めから、三つに別れて閻魔亭に入り込んでいたのでしょう。・・・怨み募って正体無くし、性根ただれて夜の鳥。・・・なるほど、ロマンさんに叩き壊された武者避けの結界を張ったのはこういう事でしたか。あなた様を狩るには最適ですものねぇ」

 

【知ったような口聞くんじゃねぇスベタ!テメェと!オレと!どこが違うってんだ!同じ化け物だろうがよ、アァ!?今さら善人面したところで本性は変わらねぇよ!!】

 

【──正体見たり、夜の鳥。此処で──おぅっ!?】

 

瞬間の速業、雷位を放つ前に速く跳躍し、リッカを踏みつけガラスを突き破り、闇の帳を下ろし包囲から逃れ駆け抜けていく鵺。この期に及んで、あの怪物はまだ諦めていない。稚拙なる、それであるがゆえに強固である悪辣な遊びを

 

「──この足音からして、向かった先は奉納殿か。どうやら蓄えた神威を使い起死回生を狙うが目的と見える。苦し紛れの策としては上出来だ。浅知恵も侮れんな」

 

「追うわよ、皆!ここまで来て、たかが猿ごときにえんまちゃんの場所を壊させはしないわ!」

 

「──もちろんでち!閻魔亭は、皆で護るでち!!」

 

 

一同は鵺を追い、旅館を駆ける。慰安は、幕引きは、もうすぐそこなのだから・・・!!

 

 

かんしゃとは こころのしょさな けものかな

 

 

 

【────⬛⬛⬛⬛⬛!!!!おいおい本気かよ!わざわざ殺されに来やがった!面白ぇ、馬鹿は馬鹿でも救いようのねぇ馬鹿だったか!ならいいぜ、許してやるよ!!最後にやらせてくれんなら、ここまでのムカつきも帳消しってもんだ!!】

 

奉納殿にて吠えし、正気引き裂く夜の鳥。囀ずりながらも嘲る響きを宿せし猿の声がおぞましく反響する。数多無数の精鋭に囲まれたにも関わらず、だ

 

【母上も、トータさんも、将門公もあまこー達もいる!諦めた方が身のためだよ!】

 

「追い詰められた身で何をほざくか。我が知己を500年にも渡り陥れた罪、最早一度や二度の死で贖えると思わぬことだな・・・!」

 

リッカが吠え、現状の在り方を示すぐっちゃんもまた、最早己の力を隠しはしない。共に戦った者として、共に戦うものとして。その全てを振るう覚悟を示したのだ。友のために、後輩の為に

 

【はぁ?追い詰められたのはテメェらだ。長生きしすぎて頭にカビ生えてんのか?オレに敵うわけねぇだろ?こちとら500年近く閻魔亭の神気を集めてきたんだぜぇ?それがどんだけヤバイか、ちっと働いたテメェらでも分かるだろうがよ!チンケな英霊なんざ100人殺してもお釣りがくらぁ!!】

 

閻魔亭を成長させるための神気、500年もの間、それを吸い上げ己の力としてきた。満ち足りた力を、己の食い物としてきた。存分に私腹を肥やした猿が、今牙を剥かんとしている

 

【テメェら全員ぶっ殺して!この社をブッ壊して!雀どもを食い散らかして!!この遊びもお仕舞いだよォ!!】

 

猛る猿。吠える鵺。最早収まらぬと高まる気運に・・・されど、女将たる紅閻魔は自らの在り方と、使命を果たす

 

「能書きはもういいでち。刃でなければ収まらないのは分かりまちた。──猿面の怪異様。閻魔様の法廷に出るつもりはないのでちね?」

 

【ねぇよ。何でわざわざオレが辛気臭え地獄に出向かなくちゃいけねぇんだ?】

 

「では代理官として理由を問うでち。なぜこんな事をしたのでち。おまえ様がそこまで思い立ったのは、さるかに合戦で殺された復讐からでちか?ただ己らしく生きたというのに、悪役として在り方を定められたからでちか?」

 

【──】

 

相手の事情をおもんばかり、相手の立場を公平に鑑みる。そういった平等にて、理由があるなら減刑をもたらす。相手が、どれ程の悪辣なる外道であっても。理由や理屈を問われ、硬直する鵺。──そして、やがて。

 

【──ヒ、ヒヒ──キ──ヒャヒヒヒヒヒヒヒ!!!!

 

示されたのは、心からの笑いであった。愚昧を、無知を、愚かな善人を、心から蔑む嘲りのせせら笑いであった。聞くものを不快に、そして不愉快にさせる耳障りな哄笑であった

 

【この期に及んで情状酌量ってかぁ!?何処まで救いようがねぇのかねぇ、テメェは!!理由?復讐?なんでこんな事をしたのかってぇ?】

 

【──大体分かる。そんなの・・・【楽しいから】でしょ?】

 

【キヒャヒヒヒヒヒヒヒ!!分かってるじゃねぇかドブ龍サマよぉ!そうさ、楽しいからだよぉ!!幸せそうなヤツラを騙すのが一番楽しいからだよぉ!!特によわっちぃガキが必死に踏ん張ってるのを台無しにすんのは最高におもしれぇからだよぉ!!】

 

一見、背筋も凍るような自分勝手な理由だが、リッカには理解が及ぶ。さる中学の頃、自分を害した者たちに何度も問うた事があるからだ。何故、こんな事をしたのかと

 

帰ってきた理由と表情は皆同じだった。『楽しいから』『面白いから』と、それだけの理由で徒党を組み弱者を袋叩きにして追い詰める。なんの事はない──人間も、怪物も、一皮剥けば同じだというだけなのだ。其処に、心という奇跡が宿るか否かの違いがあるだけで

 

【一番面白かったのはカニ野郎をぶち殺した時だよなぁ!テメェらもおこぼれに預かれるとオレを見上げたバカ面!柿をぶちこまれた時の慌てふためいた顔!!親がおっちんだ時の周りのガキどもの泣き叫びっぷり!──そいつと同じくらい痛快だったぜぇ!この閻魔亭が見るも無惨になっていくのはよぉ!!正しいことが報われねぇのは最高だよなァ!どうにもならねぇと顔が曇ってくのは最高だよなァ!!これだから止められねぇよ!!こんな──最高に愉しいお遊びはなァ!!ギャハ、キヒャヒヒヒヒヒヒヒ!!ギャーッハハハハハハハハハハハァ!!】

 

その言葉に、その性根に、もはや弁明も説得も意味を成さない。──己が愉しいから、愉快であるから。その為に、全身全霊で威光を示した王を知っているからだ。そして──

 

「──あいわかった。地獄の沙汰は要らぬというのでちね。改心の余地はなく。減刑の機会も要らぬと」

 

──瞬間。紅閻魔の覇気が、気迫が、閻魔亭を震わせるほどに高まり抜く。見るものの心胆を砕き、嘘を見つけ、二枚舌を切り裂く閻魔がごとき威風と威厳を、その小さな身体にみなぎらせる

 

「であれば!その所業、閻魔に代わってあちきが裁く!!等括、黒縄、大叫喚!阿鼻無間の渡し舟、地獄の底まで真っ逆さま!!鬼の強面も震え出す、刹那無影の雀の一刺し──閻雀抜刀術!冥土の土産に味わっていけ!!」

 

【上等だァ!やってみやがれ雀野郎!テメェを引き裂いて、冥土の土産にしてやるよぉ!!】

 

 

【もう考えるのは止め──行くよ!マシュ、オルガ、ぐっちゃん!皆!!】

 

「はいっ!!」

 

「さぁ、ショータイムね。フィナーレはすぐそこよ──!」

 

「どちらが土産となるか・・・すぐに思い至らせてくれようぞ!下らぬ遊びは、此処で終わりだ!」

 

此処に、閻魔亭の未来をかけた戦いが幕を開ける。悪意か、善意か、悪逆か、誠意か。陰陽交わる最終決戦の火蓋が、切って落とされる──!!




温泉

ギルガメッシュ《ふはは!絶景に満ち、風呂に入り酒を飲む。これ以上の贅沢はそうあるまい!後は財、そして女将の仕事だ。我等はこうしてゆるりと羽根を伸ばしつつ、裁定の時刻に参ずるのみよ》

──今回ばかりは、ワタシも覚悟を決めます。入浴ではなく、王の玉体を浄める補佐として!従業員制服を纏いしは、その決意の現れです!

《よくぞ言った!では酌をし、背中を流し、風呂上がりの麦酒、そして『脱ぎやすい浴衣』を用意せよ!全てが終わりし頃合いに、我が威光は示されるであろう!!》

──はっ!王の心のままに!

(かつてないくらい、エアが覚悟を決めている・・・!一体、ギルは何をしようと言うんだ──!)

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