人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

627 / 2530
武蔵「うぇっ・・・飲みすぎた・・・うぇっ、おぇえ・・・」

ドレイク「うっぁー、頭いたい・・・こりゃもうだめさね・・・あー、もう無理、死ぬぅー・・・」

メアリー「あぁ、海賊ってダメ人間だって再認識・・・」

アン「良い子の皆は、真似しないでくださいまし・・・おろろ・・・」


紅閻魔「リッカ、良く見ておくでち。酒に呑まれたダメな大人になってはいけまちぇんよ」

リッカ「は、はーい・・・」





騎士王「味噌汁、焼じゃけ、惣菜、白米・・・なるほど・・・日本食、最高ですね・・・」

征服王「ぐぉおぉお・・・がぁあぁあぁ・・・ぐぉおぉお・・・」

シータ「ラーマ、あなたは脱ぐの?」

ラーマ「え、いや、僕は・・・」

オジマンディアス「──」

ネフェルタリ「──すぅ・・・」

エルキドゥ「あれ?ギルは何処かな?寝顔に落書きしようと思っていたんだけど・・・」

フォウ(あぁ、エアなら──)


ダブル・アンチ・エイジング──さぁ、あなたの凝りを教えて──

「ふぅ・・・これからどんな無茶ぶりがされるか解らないし、身体の凝りくらいは此処で清算しておかなくちゃね・・・」

 

一日を経て、空前絶後の大宴会を行った楽園一同の大騒ぎを、従業員の立場にて支え乗りきったぐっちゃんことヒナコ。この閻魔亭が無事に明日を迎え、乗りきった事実を噛み締めながら増築されたエステルームの奥の寝台、日陰にある自分専用のルームに寝そべり、係である雀、変成に従業員服を渡し寝そべる。そう、なんの憂いも無くなった今、ようやく取り組むことが出来るのだ。これから先、恩を精算する際に前線に出ねばならない日が来るかもしれない。その為にも、此処で疲労は取り除かなくてはならないのである

 

手間のかかる・・・否、規格外の後輩も現れた今、自分も無様を晒すわけにはいかない。カルデア職員として、一人の先達として遅れをとっては示しがつかない。いつもの様に無気力のままでいられないのだ。全力と絶好調にコンディションを保たなくてはならない

 

「ぐっちゃん、いつものコースチュン?」

 

「えぇ。これから先、もっと忙しくなりそうだからね。溜まりに溜まったものをなんとかしたいの。いつも以上に気合いを入れてお願い」

 

もう何度も世話をされている為、従業員もぐっちゃんも手慣れたものだ。コートを預け寝そべり、ゆっくりとうつ伏せになる。雀の手作業、丹念な手によるアンマにて、背中と、其処から全身に通ずる凝りの治療が行われる。紅閻魔からの優待の許可を貰い、今日一日は休みと整体の許可を得たのである

 

これから自分は何処に向かうのか解らない。カルデアに行くのか、この場を支えていくのか。真祖、精霊は義理堅い。交わした盟約は決して違えず確実に実行、遂行する。その為の健康作りは蔑ろに出来ない。雀のアンマ、達人コースを存分に施術されながら、仙人の技を受けていくぐっちゃん。紅閻魔に勝るとも劣らないその腕に、たまらぬと声を漏らす

 

「あぁ、えんまちゃんもそうだけど・・・この為に生きてるわよね・・・閻魔亭のアンマは仙人の技・・・たまらないわ・・・」

 

極上のアンマに感嘆を漏らし堪能していたぐっちゃん。──その隣、カーテンを隔てた隣の寝室から、黄金がごとき自我と輝きを持つ声音がぐっちゃんの耳に届けられる

 

「ほう?その間抜けな声音から察するに、此処の整体は余程有能と言うことか。ふはは、専属の整体師がいなければ我も厄介になっていたやもしれぬな。ふむ、言うまでもないが我の玉体に触れる資格を持つものなど全人類に二人とおらぬのだからな」

 

「え・・・ちょ、あんた!御機嫌王・・・!?」

 

まさにそれ、鮮やかに閻魔亭を救った王そのものの声ではあるが・・・それをかの声音は否定した。此処にいるのは、ヤツではあって我ではないと

 

「あの愉快な我と我は別物よ。我は此度開通したこの旅館にて専属の整体師に整体を依頼せし王以外の何者でもない。貴様より先に此処に顔を出したが故待機中であったに過ぎぬ。貴様と目的はそう変わりはせぬがな」

 

「あー、クラス違いってこと。サーヴァントってそんな感じの同一人物との再会があったりするのね。・・・人間は不思議な術を考え付くのね、本当」

 

「全く以て同感よ。しかし貴様の間抜けた声音を聞いておれば、何れ訪れる至福の時の期待も高まると言うものよ。わざわざ忍で脚を出向かせた期待を裏切りはせぬ確信はあるが・・・心待にしていた刻と言うものは長く感じるとは真であったな。しかし──」

 

カーテンの向こうの王は告げる。その整体、まだ完璧に解すには至っておらぬのではないかと。その溜まりに溜まった凝りは、達人コースであっても抜けきれていないものであると

 

「見たところ不老不死なようだが・・・その頑健さでは溜まりに溜まったものは生半可では落とせまい。うむ、やはり不老不死は人の世には余るものか。蛇めの盗み食いにて得られなかったは正解であったな。いや、別に負け惜しみではないぞ」

 

「ぐぬ・・・そうなのよね。こんな背中の凝りに一生付き合わなくちゃだなんて・・・不死身の苦しみって想像以上にキツいのよね・・・でも、閻魔亭でもダメなら他にアテが無いのよ・・・なんとかしなきゃね・・・」

 

妖精、精霊であるからこそ、生半可な存在で整体は叶わないという。ならばどうすればいいのかと憂鬱になりかけた時、雀の変成が鳴き声を上げる

 

「心配はいらないチュン。女将さん、部員の皆様がぐっちゃんの為に、血行を良くして凝りをほぐせる達人の中の達人を招いたチュン」

 

「え、ほんと!?そんなのがいるの!?」

 

それは願ってもいない申し出だ。この凝りを癒せるのならば、この際誰であろうと構わない。なんとしてもリフレッシュ、アンチエイジングを完遂せねば始まらないのだ

 

「その達人って人、呼んでくれるかしら!私もそれに懸けて見るわ。お金や代金に糸目はつけないわ、癒されたいの!」

 

「お悩み解決だチュン、必ず受けきるチュン!──先生、出番だチュン!!」

 

「・・・む、この気配。こちらも望みの者が来たようだ」

 

王の席、そしてぐっちゃんの席にそれぞれのアンマ、整体師が現れる。二人の為に仕立てられた存在、片や──

 

「応」

 

「!!!!!??」

 

静かに落ち着いた、年齢を重ねた大樹がごとき風格と覇気をみなぎらせる老人、黒眼鏡をかけ紅い中華の衣装に身を包んだ謎の好好爺、達人の名を戴く存在が、ぐっちゃんの前に現れたのだ。達人、アンマ師というにはあまりに高い気風と達人の中の達人と呼ぶに相応しき体捌きに、ぐっちゃんは戦慄すら覚える。まるで、一度触れれば粉々にされてしまいそうな覇気が肌を粟立たせる程だ

 

『──御待たせ致しました、賢王。ウルクより御足労、真にありがとうございます。偉大なりし王の疲れを取り解すため、至高の玉体に触れる無礼を御許しください』

 

隣から響き渡る、柔らかで清らかな清流、春風がごとき声。全てを慈しみ受け入れる慈悲と慈愛に満ちた振る舞いの整体師の玉音が響く。姿は見えないが影からして長身の女性だろうか。確かに全ての疲労を昇華して貰えそうだ。──こちらに設えられた達人のあまりの落差も合間って、ますますもって自らに仕立てられし達人の存在が意味不明であると声を上げる

 

「うむ、よいぞ。赦す。存分に我を癒せ、エア。──あぁ、寝たとしても手は止めずとも良い。我が無防備を曝そうと、お前ならばなんの心配も無かろうよ」

 

「いやいやいやこれ!?これがアンマ師!?嘘よね!?こんな虎みたいなヤツがそんなわけないでしょ!?もっとおぞましい何かじゃないの!?」

 

「そう構えるな仙女よ。儂も貴様も初対面。掛かり付けになるに不足はあるまい。──何、女将に頼まれたのでな。『旧い友人を助けてやってほしい』とな。──友情は大切にするものだ。とくに、貴様のように長く生きる者共はな」

 

(まさかのえんまちゃんの気遣い・・・!嫌がらせなわけないわね、でもいくらなんでもこれは──!)

 

「ま、待って。ちょっと待って!まだ心の準備がまだよ!待て、来るでない!お腹いたくなってきたからまた別の日に──ハッ!?」

 

本能的に危機と危険を感じとり部屋を後にしようとしたぐっちゃんを、他ならぬ雀、変成が抑え込む。逃げようとしたぐっちゃん、それはよくないと抑制を以て制止したのだ

 

「それは良くないチュン。どんなに痛くても耐えるチュン。御客様の健康を第一に考えた結果、達人コースは途中で止める事はできないチュン」

 

「へ、変成──!!確かリッカが言っていたな、本当に裏切ったのか──!!」

 

「喧しいわ精霊!我の至高の休息を阻むでないわ!覚悟を決め、アンマを受ければ良いだけの話であろうが!!」

 

『王?御体に障ります、大声は控え御自愛ください』

 

「う、む。すまぬな。──有象無象の雑種風情に一時を阻まれるのが赦せぬ故な。手は止めずともよいぞ・・・我は寝る・・・」

 

「さて、ではこちらも始めるか。多少痛いぞ、暴れるなよ?」

 

「えっ、あっ待て、待って──ちょ、待って・・・!り、リッカ!先輩の危機よ、なんとかしなさ──」

 

・・・其処から先の景色と風景はまさに境界線、カーテンを分けた冥界と天界、天国と地獄そのものといった様相であった

 

『どうか、時間までごゆるりと。英雄姫の名に懸け、身体を万全の状態に・・・王?』

 

「──・・・、・・・・・・・・──」

 

『・・・御休みなさい。どうか、良き夢を見ることが出来ます様に・・・』

 

謎の姫Aによる丹念かつ入念、柔らかかつ穏やかな整体により、穏やかな寝息を立てあらゆる責務

を忘れ無防備かつ安らかに眠りにつく王。その労りに満ちた整体を続行し、静かで癒しに満ちた一時を送るメソポタミアの賢王

 

「──憤!!覇ァッ!!」

 

「あぎっ──ひぎいっ!!おごぉ、あ、ぉおぉお!あぐっ、んぉおぅ──うぐ、んんんぅう──!!」

 

激烈、そして熾烈。一撃一撃が此正に疲れを殺す至高の一手。一撃あらば事足りる烈火がごとき一撃、否アンマが炸裂していき、ぐっちゃんの断続的な絶叫が響き渡る。無論、それは気持ちよさの声ではない。凝りが絶滅していく断末魔だ

 

「どうした、まだ始まったばかりだぞ。歳を経ているのだ、大抵の事は辛抱せい──はぁあっ!!」

 

「げ、限度があろう!!何故だ、席が一つ違うだけで何故──あがぅう!!おぐぉおぉ!!がぁあぁあぁ──!!!」

 

背骨が軋み、背中が爆裂するような衝撃。肺の空気が全て吐き出される。骨格そのものを揺るがされるような激痛に、悶え叫ぶ事しかできないぐっちゃん

 

(痛い!!だがそれ以上に──私の凝っていたところを的確に!!悔しい、でも──!!)

 

「そら勢いを増すぞ、殺す気で放つが死ぬなよ──!!」

 

「んぐぅううぅうぅう!!!」

 

(気持ち良し──!!この果てに、私の肉体の全盛期が──!!)

 

一撃一撃此必滅。疲れと凝りを抹殺していく二の打ち要らずの内臓、魂を揺るがす一撃に、ただひたすらに悶え狂うぐっちゃん。天上の柔らかさに、意識を手放す賢王

 

「七孔憤血──撒き死ねぇい!!

 

「おぁあぉおぉおぉおぉおぉおぉお──!!!」

 

「──エア・・・エルキドゥ・・・」

 

『・・・一体、どんな夢を見ているのでしょう。ふふっ、リラックスしていただけて、何よりです──』

 

一時の整体は、二者二様。穏やかかつ激しいアンチエイジング×2は、滞りなく進んだ──




ぐっちゃん「おぉ・・・おぉ・・・ぉおぉお・・・ふーっ、ふーっ、ふーっ・・・これほどの屈辱、痛みは味わった事がない・・・っ、項羽様以外にこんな悲鳴を漏らすなんて・・・!」

達人「だが調子はよくなっただろう?まだ右肩が残っている。望みとあらば追加料金で承るが?」

ぐっちゃん「く、くっ──癒せ!!いい機会だ、此よりは楽園か閻魔亭にて働く身、隅々まで揉みほぐすがいい!!」

達人「承知した。──さて、(凝りを)殺すか──!」

ぐっちゃん「あぐぅっ、ひっ、ぎぃいぃ!!んぉおぅう、あ、がぁあぁあぁ──!!」


賢王「──おぉお、最早羽根が生えたかのような身体の軽さよ。まさに生まれ変わったに相応しい成果よ!でかした!その敬愛と腕前、微塵も衰えておらぬな!」

──王のためならば、粉骨砕身にて献身する覚悟です。いつでもおいでください。その身を癒せることは、何よりの光栄であり・・・王のお役に立つことが、ワタシにとっての愉悦なのですから

「──フッ。ウルクにてクルージングの予定は明けておくぞ。またいつでも来るがよい!ふははははははは!!よし、驚天動地の二週間徹夜に挑むとするか──!!」

──む、無理はしないでくださいね!?またのお越しを~!

二人の玉体が癒される朝の一時。響き渡る絶叫と哄笑が、高らかに響き渡った──

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。