人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ネロ「うむ、エリザベートに今回は華を譲ってやるとしよう!余らはテルマエローマとして、温泉に励まねばならぬからな!そちらはどうだ、偉大なる皇帝達よ!」


~男湯


ロムルス「風呂、温泉。それもまた、ローマに通ずる」

カエサル「いやはや熱い熱い。サウナとはあれだな、蒸し焼きの殺人部屋だな。一歩入れば汗がナイアガラが如くとは。痩せると力説するクレオパトラには申し訳無いが、何度も訪れたい場所ではないな!」

通りすがりのまぁ偉大なローマ「ウォオォオ、風呂ォオォオォオ!!」



「うむ!全く堪えず楽しんでいるようだ!やはりローマは、世界に通ずるのだな!・・・確か、余はいつぞやこうして誰かと入浴時間を競い合った日があるような、無いような・・・?」

(うむ、思い出せぬ。忘れるはずが無いのだが・・・えぇい!頭痛が振り返す、考えるのはやめだ!)

「こうなれば思い出すまで湯船に浸かるぞ!なんだか懐かしくも楽しい記憶であったような記憶だ、なんとしても思い出さねばな──!」


・・・──その後、茹で蛸のように逆上せ上がったネロ皇帝がジャンヌにより発見され、速やかにナイチンゲール女史に引き渡されたという──


デスメタル・エリザベート・ジャパン

かつて、王は言った。とある次元にてワカメ入りコッペパンを製作した際に、とある言葉を残した。此処ではない何処か、御機嫌王ではない英雄王ギルガメッシュが言葉にした真理がある

 

『醜いな。だが、ゲテモノの方が味は良い』

 

 

その言葉とはつまり、どんな美醜にも分け隔てなく価値があり(超好意的解釈)、どんな醜悪なものにも確かな旨味がある(超前向き解釈)と言うこと。この世にあるものは等しく価値があり、裁定される瞬間まで無価値なものはあり得ないという王の金言であるのだ。勿論、御機嫌王からすれば受肉により人の性質が疼き血迷った自分の愚かな戯言と鼻を鳴らし切って捨てる程度のものであるのだが

 

何故、今そんな話をするのかと言えば。昨日の豪華絢爛なマシュ☆コンの最中、同じようにとあるライブが行われていたのである。人の心を揺さぶり弾ませる愉快でポップでトレンディな二人の歌声と全く同時刻の裏にて、とある面子によるライブが行われていたのである。その主格が──まさに、その言葉を当てはめるに相応しいからだ

 

とある人は言う。アレは金星圏の生命体である。とあるサーヴァントは哀れんだ。何て哀しいサーヴァントであるのかと。とあるサーヴァントは憤慨した。ゴリラとクジラが合体したかのような荒唐無稽な歌声であると。とあるサーヴァントは絶賛した。天上の美声そのものであると。何処の王すら、歌声だけは絶賛を隠さなかった。歌を聞いた途端指導を決意したのだが

 

そう──この場にて始まりし、行われしライブはまさに地獄の宴。されどその席には満員の客が敷き詰められている。そう──どんなものにも需要がないことはあり得ない。まさに今、その真理が証明されようとしているのだから──!

 

 

「はぁいゴルドルフちゃん♥飲んで飲んで!アタシが徹夜オールで酌してあげるわ、特別よン♥」

 

「解った、解ったから近すぎる距離を離してくれたまえ!何故わたしは君と二人酒なのか・・・!」

 

蛇庄屋、そしてゴルドルフがなんとなく集まり二人仲良く(?)お酒を飲む一幕。蛇庄屋からしてみればゴルドルフの人間性に首ったけであるのだがゴルドルフからしてみれば全く以て覚えのないアプローチに困惑を露にしながらなんやかやで仲良く飲んでいる二人の前に・・・それは、現れた。

 

「──来たわ!こんにちは!」

 

 

「え?(誰これというアイコンタクト)」

 

「イヤン♥(私はいつでもOKヨン、というアイコンタクト)」

 

元気良く突如ライブの広間に現れた、紫のパンクでダークな衣装に身を包んだ真紅の髪と巨大な尻尾を振るわせた少女が高らかに挨拶を放つ。広間でなんとなく二人で飲んでいたゴルドルフ、蛇庄屋はまさに寝耳に水なセッティング、あれよあれよと言うまに現れた雀たちにただただ面食らうばかり。何が始まるんです?と言いたげな困惑ぶりに誰も構わず、あれよあれよと言う間に話とボルテージは高まり進んでいく

 

「げぇーーー!?あ、あれはメタルバンド・シュラのエリザJさん!?なんでこんなところにエリザベートさんがチュン!?」

 

「信じられないチュン!鬼界のスーパーアイドルであるエリザベートさんがうちらの宴会場でライブをしてくれるチュン!?」

 

「マジチュン!?破壊の化身と名高いメタルモンスターの声が聞けるのかチュン!?」

 

「ボクたちのかつての日々の祈り(ストレス)が届いたんだチューン!!エリザベートさん、景気付けと新たな門出に一発お願いしまチューン!!」

 

雀、跳べや跳ねるやの大騒ぎ。どうやって作ったのか、和風メタル基調の服装にてアゲアゲなエリザベートが叫ぶ。マイクパフォーマンスと言うやつである

 

「煩い家畜ども、罵倒(せいえん)デストローーイ(ありがとう)!!今夜もまとめて丸焼きにしてやるぜぇーい!!」

 

 

「「「「「チュチューン!!」」」」」

 

「凄い!凄いわ!こんなに歓迎されたの初めて!お風呂に行っちゃったネロは惜しいことをしたわ、やっぱり地道なネット配信が功を奏したのかしら!雀しかいないけど!なんか座布団敷き詰められてるけど!」

 

人の顧客は皆ライバルユニットの方へ行っている・・・そんな残酷な真実をつゆほども気にせず手を振るエリザベートに、ますますもって雀達のオーディエンスとテンションは高まっていくのだ。種族の違いはあれど、ライブの不文律は揺るがない。客と一緒に作るがライブであるからだ

 

「いつもと違う衣装、鬼格好いいチュン!おニューのドレスチュン!着物とメタルの相性は抜群チュン!!」

 

「そ、そう?やっぱりそう思う?私も『これ本気でUKのトップ狙えない?』とか思っちゃったって言うか!よーし、暖まって血が冷えてきた今、ぶちかましちゃいましょうか!」

 

マイクを手に取り、そこら辺を徘徊していたクリスティーヌ狂いのF、そして最早自分が誰かすら分からないほどにアヴェンジな炎に身を委ねた通りすがりの変身音楽家Sを加えた、地獄を揺さぶり楽しむエリザベート・ジャパンの絶叫が口火を切る

 

「オープニングナンバーは、日本有数の悲恋を歌ったこの魔曲!『病み姫☆ストーキングドラゴン』!盛大に嘘つき坊主をディスっていくわよー!!」

 

「「「「「イエーーーーイ!!焼き尽くせ安()ューーーン!!!」」」」」

 

放たれる歌声、竜の息吹。異界化された肺から放たれるダメージ7の7乗たる破滅的なドラゴンの絶叫。インド像500頭を容易く昏倒させガラスを粉々に破壊する程の超音波破壊音響効果歌に、広間は即座にタイフーンに巻き込まれし地獄絵図・・・否、最高にロックな空間を織り成し作りだす

 

「ヒュー!!最高だチューン!まるで嵐の中を飛んでいるような気持ちチュチューン!!」

 

「疲れも記憶も健康もまとめて消し飛ぶチューン!閉塞感なんて此処には存在しないチューン!!」

 

「・・・雀達は・・・この状況を、楽しんでいる、だと・・・!?」

 

大変なところに紛れ込んだと退室しようとしたゴルドルフではあるが時すでに遅し。楽しみ、飛来している雀達に、部屋のすべてを震撼させる歌声にただ圧倒されることしか出来ないのである。その凄まじすぎる光景に、とりあえず蛇庄屋を避難させる辺り魔術師としては余りに向かぬ存在であることが垣間見える。すなわちそれが彼の本質なのだ。人の本質を掴むのに有用なのは、やはり窮地なのである

 

 

 

「サイッコー!私の歌についてこられるファンが地上にいたのね!続けていくわ『恋のレットナード・チェリーパイ』!テクノアレンジで、電子に変換してあげる!!」

 

壊れ行く畳、吹き飛ばされ始める壁。あまりにクールでホットな歌声に舞い飛ぶ雀。今、此処にロックが生まれ出ずる。ハートフルでハード、デッドでダイな一時のボルテージが限界を突破する

 

「「「「壊れても構わないチューン!!デッドでチューン!!!」」」」

 

ただし、それは比喩表現ではない。ボルテージが高まるごとにひび割れていく床、天井。屏風は引き裂かれ襖は吹き飛び、地鳴りや振動が部屋中に伝わっていく。絶え間ない爆音が轟き、ドラゴンブレスもかくやな大咆哮は雀も部屋も分け隔てなく消し飛ばしていく。

 

「やーん!♥激しいわ!ゴルドルフちゃんの燃え上がるハートみたい!私の燃え上がるソウルにガンガン来るわよォ!セイ!!さらにセイ!!気合い入れて歌いなさいなトカゲちゃん!!」

 

「何故煽るのかね!?い、いかん・・・!このままではせっかく積み上げ助け守り立てたこの宿が跡形なく吹き飛んでしまうやも知れん!それはまずい、非情にまずい!リッカ君らに連絡は間に合わんか・・・──えぇい!許せライブを楽しむ諸君!そして破滅的ドラ娘よ!」

 

頑張りが無下になってしまう。今までの努力が水泡に帰してしまう。それだけは、それだけは決して容認できはしない結末だ。故にこそ、彼は常日ごろ疎んじ卑下していた己の唯一の魔術、攻撃の魔術を披露する。それはすなわち鉄拳魔術。勇気と共に振るわれるゴルドルフ渾身の一撃──

 

「許せエリザベート!!──ゴッフパンチ!!

 

「あいたぁーー!?」

 

振るわれた鉄拳、勇気ある一撃により鳴り止む破壊と破滅のデスメタル。なんとか平穏と平静を取り戻さんと駆けたゴルドルフの命を懸けた制止は、此処に形となり結実する

 

「ふぅ、ふぅ、良くやった私!やれば出来るな私!良くやった、お疲れだ私・・・!」

 

「カッコいいわよー!ゴルドルフちゃーん!♥」

 

その献身を、心から称える蛇一匹。そんな事実に喜ぶ暇もないほど憔悴しきったゴルドルフは、へたりとその場に座り込むのであった──




「ちょっとーーー!なんなのよー、ライブの邪魔をしてー!私、イベントホールが完成したから盛り上げてほしいって呼ばれて来たんですけどぉ!」


ゴルドルフ「す、すまない・・・!本当にすまない!だが、君の歌声にこの広間は狭すぎる!見ろ、あの武術を極めたかのような警備員も止めに入っていただろう!」

警備員(中国武術A+++)「・・・・・・」

「歌のジャンルとニッチさは認めよう、だが屋内は止せ!野外ステージにて続きを行うのだ!外ならば誰も文句は言うまい!」


「野外ステージ!そうね、やたらスモーク炊いてたあそことか、いいかも!ちょっとさむいかもだけど、すぐにアタシのライブでハートもボディもマックスにしてあげるから!じゃあね、ボンレス!また素敵な夜に会いましょう!」

そういって、野外へと駆け抜けていくエリザベート。きっと外で、雷鳴なる歌声を披露するのだろう。──人知れず閻魔亭を護ったゴルドルフの奮闘は・・・

「カッコよかったわよぉ、ゴルドルフちゃん!今の勇姿でまだまだ飲めちゃう!さぁ、今夜は寝かせないわヨン♥」

「何度でも言うが!私は君になつかれるような事をしたかね──!?」

より強く、蛇床屋の心を惹き付ける結果となりましたとさ──

~旅館 温泉

永遠の刹那「いやー・・・もう何もしたくない。糞野郎相手に耐え抜くなとか映画撮影とか頭のおかしい奴等のクッションとか二度と御免だ。もう座とか渇望とかないこっちにずっといていいんじゃないかな・・・正直こっちの世界観の方が拡張性抜群で幅広く展開できるし・・・パンテオンいつになるか分かんないし・・・」

(誰も困らないだろきっと。マリィや皆だけ呼び込んでもうグランドフィナーレで──)

エリサベート「ごきげんよう!!歌うわ!!」

永遠の刹那「──は?」

・・・不運にも隣の男湯に居合わせた哀れな刹那さんは、ドラゴンブレスライブに徹底的に付き合わされ、血涙を流しながら悶え苦しむ羽目になりましたとさ

『マリィも招かなかったバチが当たったんだな』と、安らかに納得しながら・・・

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