人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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分担

リッカ 狩り

【猛獣の狩りなんてギリシャの皆や兄貴と沢山やってる!今更ヒヒや獅子がなんぼのもんじゃい!!纏めてかかってこぉい!!!】

ドレイク 開拓、探検

「おやおや、此処にいい水のみ場があるじゃないか。こっちにはいい洞窟・・・ははっ、ついてるねぇ!」

ジャンヌ 浄化 毒抜き 毒味

「辛いだけでは料理ではない・・・自らが美味しいからといって、相手も美味しいとは限らない・・・その鉄則を忘れないように・・・(モグ)あ、このキノコは美味しいですね!」

アイリスフィール 山菜集め

セイバーライオン 縄張り巡回

「突然のハードスケジュールではあるけど、大変な事は覚悟の上!やるわよ、セイバーライオン!料理が出来るようになって、皆を喜ばせたいものね!」

「がお!がおーん!!」

エレナ 食用・毒物チェック

「これは食べられる・・・これは毒あり・・・これは毒・・・ん、研究と通ずるものがあるのね!そうと解れば、乗り越えて見せるわ!」


分担にて生き抜く決意を固めた一同のヘルアイランドサバイバルは、生命の消滅と隣り合わせであり、今日を乗りきらねば明日がない状況においても誰も欠ける事なく日時が経過していった


ジャンヌ「ラー油・・・タバスコ・・・唐辛子・・・はっ!?いけませんいけません!主よ、辛味への誘惑からお救いください・・・」

「ドレイク。治療の薬草にこれが必要なの。探してきてくれる?」

「任せな!リッカに負けないよう、ガンガン探索してやろうじゃないか!」

「あら、そのリッカちゃんは?」

「がおん!」

「獣を狩りに・・・今日で五度目よ!?」

・・・そして、日程は半ばに差し掛からんとしていた──


地獄のレッスン・ヘルズキッチン~後編~

【ふぃ~・・・疲れたぁ・・・一休みしよっと・・・】

 

 

壮絶なるサバイバル、ヘルアイランドにてサバイバル生活を過ごし料理の心構えを叩き込み奮闘している人類最悪のマスター、リッカ。目の前に存在するものすべてが命を脅かす驚異、そして大切な糧である食料であるシビアな世界にて生き抜くか弱い乙女(でありたい)なリッカは、湧き水が溢れる地点にてフェイスオフを行い、食料調達の一息を入れる

 

今は丁度半分、15日目。各自思い思いのテーマ、目標を目指しそれぞれの精進を行いつつこのヘルアイランドを生き抜いている。食材を調達、吟味するチーム。料理の下ごしらえを行うチーム、安全を確保するチーム。各自の全力を尽くさねば即座に土に還らなくてはならないこの地獄を皆で懸命に生き抜いているのだ。リッカは猛獣、危険な要素を抹殺、排除する為の徘徊を行い、出逢った食材達を確保する役目を担う。自らがしくじれば、生き延びる為の栄養が不足し誰かが脱落してしまう。誰も脱落させない為に、リッカの背負った責任と使命はあまりにも重いが・・・リッカは元々全員でヘルアイランドを乗りきる覚悟な為、其処は大した重圧にもならなかったのである

 

小動物、友好的な動物にはなんとか警戒を解いてもらい、なつかせ、食べられる食物の場所を教えてもらい幸を分け合い。食物連鎖の上位にあるヒグマ、キメラ、スプリガン・・・会話不能であり狂暴かつ上質なタンパク源や食物繊維は積極的に狩りを行った。ドレイクと協力して追い込み、生身で心臓や肺を抜き取り、刀を振るい首を跳ね、血を左腕に飲ませ、出来るだけ五体満足で確保する。肉としての栄養、暖を取る毛皮、油などを纏めて手に入れられるために襲撃は望むところであった。──全員が全員、見たこともない黒いナニカに『殺さなければ殺される』と恐怖に駆られ襲い掛かってくるのに思うところは無くはないのだが・・・一部分だって無駄にしないことを誓い、リッカらが生きる為に生命をいただいているのだ。そうした生活を行い、今は何とか全員欠ける事なく半月を過ごせている。白と黒の鎧が返り血まみれになっているなか、血生臭い生存競争の一息といったところである。清らかな水面に、血塗れとなった鎧を纏う少女といったアンバランスな姿が映るのを認識しながら、ぱしゃぱしゃと顔をうつ冷たい水の感覚を味わう

 

「──はぁ・・・いつもの私って、本当に恵まれていたんだなぁ・・・」

 

このヘルアイランドに来て感じたこと、思った事。それは日常にて食べさせてもらえる料理、食事の得難さ、かけがえのなさ。毎日素敵な献立を考えてくれる厨房の皆の苦労と奮闘への感謝であり、豪華絢爛な食事の尊さに他ならなかった

 

このヘルアイランドにて、誰かが料理を用意してくれる、誰かが献立を考えてくれるなどという事は存在しない。作りたければ、食らいたければ食材を、食料を調達して料理を作り、体調を崩さないように献立を考えなくてはいけない。そして仲間である皆と力を合わせ、食べれるものと食べられぬものを決死の覚悟で割り出し、メモし、今日を生き抜かなくてはならないのだ。個人の強さだけでは生きることなど叶わない・・・シビアな自然に放り込まれて思い至る事が、感謝であることにリッカは驚き半分、そして・・・監獄島で感じたこともあるこの感情を、懐かしくも感じていた

 

「食べられればいい、お腹が膨れればいい・・・そんな簡単な誘惑を毎日断ち切って、誰かの為に料理を作る。それがどれだけ大変な事か・・・ちょっとだけ、解った気がする・・・」

 

そう、その気になればいくらでも料理は妥協できるのだ。面倒ならば火を通すだけで喰らうことはできる。怠く感じたならば生でかじり、そこらの薬草を胃に詰め込めばいい。ヘルアイランドにて、そんな手間隙を惜しむ事は、選択肢を選ぶことは出来る。──確実に死に至るものではあるが。だが、そんな極限状態ではない平時で、毎日違うメニューを考えて料理を誰かに振る舞う事は、どれだけの研鑽と奮闘が必要なのか

 

自分のためではない、食べてほしい誰かの為に。その理念の為に・・・より美味しいものを、より栄養がいいものを。健康を維持し、笑顔をもたらすことが出来るものを。下ごしらえを、手間隙を、調味料を、食材選びを。いつも何気無く食べているような料理に詰まる努力と戦いの意味と大変さを、作る側になって初めて感じることが出来たのだ

 

(エミヤも、キャットも、ブーディカさんも、母上も・・・こんな大変な事を毎日やってくれていたんだ・・・)

 

当たり前のように作られる料理など一つもない。さらりと適当に作られている美味しい料理など一つもない。笑顔になってほしい誰かの為に手間隙をかけ作られ、誰かに喜んでほしいが為に入念かつ手間隙のかかる下ごしらえを行い、誰かの幸せを願って一工夫を加える。──そして、それを毎日、ちょっとだけ違うものとして美味しいものとして作り上げる。その労力、その奮闘、その努力・・・それらのもたらす幸せな気持ちの得難さを、少なくとも自分は痛感していた。何気無くも、意識の外でも。これは間違いなく、剣や拳を振るうくらい。──それ以上に大変で、凄いことなのだと。極限環境にて漸く理解が及んだのだ

 

食材である動物たち、植物、作物も決して粗末にしていいものではない。生きている命、育まれた自然。それを口にし取り込むこと。命をいただくということ。自然の一部として、自らの糧にすること。其処にあるのは、好き嫌いや選り好みではない。確かな感謝と・・・心からの敬意なのだ。日頃から何気無く行っている挨拶の意味を、漸く本当の意味で受け入れ・・・呑み込めた様な気がしている

 

「気合い入れなくちゃ。私も」

 

そして、それを料理する立場になるのなら・・・生半可な覚悟であることは許されない。食べてもらう人のために、糧になってくれた生命の為に、何より、自らが生きるために・・・半端を自らに許してはいけない。──理解する。料理とは感謝。生命とは敬愛、そして・・・

 

「生きるって・・・美味しいって事なんだね。教官」

 

そう理解したとき、心から沸き上がる気持ちに思い至る。生きていてほしい人達がいる。感謝してほしい人達がいる。御礼を告げたい、一緒に生きたい人達が、沢山いる

 

「キュキュ、キューン!」

 

「!」

 

心を通わせた小動物達が、凶悪な猛獣の接近を告げる。これから始まるは、どちらかがどちらかをいただく為の生存競争。ある種純粋で、雑じり気のない命を懸けた戦いだ。この生活の中で、打算も思惑も挟まらない純粋な生命のぶつかり合い、・・・自然の織り成す美しさを、なんとなく感じ取れた気がするのだ

 

「ゴガァアァアァアァ!!!!」

 

【──】

 

猛り狂い、威嚇を繰り返す身の丈を越える巨大な虎、獅子に相対し静かに息を吐く。休息は終わり、また生きる為の戦いが始まる。

 

糧になるわけにはいかない、死ぬわけにはいかない。何故なら、自分はこの試練を乗り越え料理上手となり、そして──感謝を示したい人達がたくさんいるのだから

 

【──今日も、生命をありがとうございます】

 

怒りはなく、恐怖もなく。あるのはただ、穏やかな感謝のみ。こうして今日もまた生命をいただき、自らの糧とする。──そうしてまた、自分は生命を繋いでいく。目の前の存在に、また自分は生かされる。そして、これを乗り越えた後も──自分は、皆に生かされるのだ。一人で生きていける人間なんていないから。皆と、一緒に生きていくのだから

 

だから──剣を取る前に、拳を握る前に。まずは御礼と感謝を。この生命を、決して無駄にしないために。決して無下にしないために

 

「「「「グォオォオ!!!!!」」」」

 

だから──両手を合わせて、目を閉じて。今まで生かしてきてくれた生命の全てに感謝を込めて・・・

 

【──いただきます!!どっからでもかかってこぉい!!!】

 

心の所作足る祈りを終え、獅子や虎、ヒヒと大立まわりを開始するリッカ。──生き延び、そして明日を生きていく為に

 

 

・・・長いようで、あっという間なヘルアイランドでの一ヶ月は忙しなく過ぎていく

 

「分かりました!!辛いだけではないのです・・・味には甘い、苦い、すっぱい、しょっぱいがあるのです!それら全ての味覚を極め、最高の料理を作り、皆を笑顔にするのです!いつも頑張ってくださる、英雄王にも──!」

 

 

「アハト翁がどれだけ的外れかつ妙な方針であったのかよぉーく理解できたわ!セイバーライオン!絶対に皆で生き延びるわよ!相性、気性、ベストマッチが大事だってことを絶対に忘れないようにね!」

 

「がおん!!」

 

「このマハトマ溢れる自然で、いがみ合いや喧嘩、直流や交流なんて不毛ね・・・どっちもあって、どっちもいいのよ。伝えてあげなきゃ!世界はこんなにも──簡単だってね!この教室、よくってよ!」

 

「おや、もうすぐ終わりかい・・・ようやくココナッツジュースや湧き水にも慣れてきたってのに。──しかし参ったね。アタシ、料理はいいが食べさせる相手はいなかったか・・・シンジみたいなヤツがいたなら存分に毒味させんだけどねぇ。あはは!早まっちまったよ!」

 

【必ず皆で帰還しよう!振る舞うんだ、感謝の気持ちを──!!】

 

・・・それぞれの答えを得ながら、地獄のレッスンのホームルームを生き抜く一同。やがて一ヶ月の期限が訪れ、一同は帰還する。感謝と幸福溢れる、楽園へと──




閻魔亭

紅閻魔「よく戻ってきたでちね。まさか受講者全員が初日を乗りきるだなんて初めてでちよ。お前たちは根性があるでち!」

「「「「「ありがとうございます!教官!」」」」」

「此処を乗りきった以上、心構えには変化が起きているはずでち。料理に関しての心がまともになったなら、必ず変化は起きるでち。更なる上達と研鑽を望むなら、もう一度ヘルズキッチンの門をたたきなちゃい!」

「「「「「「ありがとうございます!教官!」」」」」」

「それでは、今日は解散でち!各々、自主管理を怠らないようにするでちよ!」


──そうして、ヘルズキッチンの初級を乗り越えた全員は、ちょっぴりの成果を各々で示した


『フレンチ、サラダ、トースト』

ドレイク「しょうがないからアンタで構わないか。アンタなら頑丈だし問題ないだろ。ドレイク様の初の手料理、味わって食べな!」

黒ひー「オッ、オフッ・・・オゥフ、ば、BBAのてりょ・・・おそれ、おそれ多し・・・」


『オムレツ・スクランブルエッグ』

「「うまーい!!」」

エレナ「そうでしょう?そうでしょう!あの特訓は、伊達ではなくってよ!」


『ヘルシーサラダ』

アサエミ「・・・・・・」

アイリスフィール「・・・・・・」

「・・・旨いな」

「!やったわ!!」

「がおーん!!」


『激甘、激しょっぱ、激酸、激苦麻婆』

「大丈夫です!もう辛くはありません!栄養価も抜群ですよ!過ちを受け止め、更なる進化を果たした私の成果──どうぞ、召し上がれ!」

──あ、味付けはおいおい抑えてくださると信じます。信じています・・・!あなたの上達と躍進に、心からの祝福を──!

「──レパートリーを増やすのはよい!だがいい加減・・・!麻婆から離れぬか──!!!」

(完食の後、このあと暫く味覚を封印する王と姫であった──)


そして・・・

『卵焼き弁当』『しょうが焼き弁当』

マシュ「おいふぃい!おいふぃいれふ!おかわり!おかわりれふ!」

リッカ「はいはい、作りおきしてるから遠慮なく食べなさい。もっと肥えておっ、凄いデンジャラスになりなさいなすび」

オルガマリー「本当に美味しいわ・・・!リッカ、特訓の成果が出ているわね!さすがよ・・・!」

「んー?えへへ、まぁね。──まぁ・・・」


食堂

『いつもありがとう。皆で食べてね リッカ』

『エミヤキャラ弁』『ブーディカキャラ弁』『タマモキャットキャラ弁』

「・・・そうか。君も随分と、大人になったようだな・・・」

「わ、凄い出来!・・・あの子、何かが変わったのかな?」

「御主人は変わらぬ。ただ──気付いたのだ。キャットは思い至る」




『母上 愛してくれてありがとう』

『三段おせち』

「まぁ──リッカ、あなたは──母は、母は嬉しいです・・・!よよよよ~・・・!」

「リッカ・・・!たまげたぜ、こいつぁヘルランニングも伊達じゃねぇってこった!」


『じゃんぬ 好き』

『スペシャルリッカ肉丼』

じゃんぬ「うっ、ぐっ──!!(魅了即死)」




「──料理は感謝、だからね!」

オルガマリー「・・・私も受けようかしら・・・」

リッカ「あ、まずはエミヤからにしよ?」

「そ、そうね・・・」

マシュ「先輩の手作り・・・手作り御弁当!やはり私が、オンリーワン後輩・・・!」

「ん?いや、毒味役には最適かなって」

「毒味!?」

オルガマリー「もう。自己主張が激しすぎると引かれるわよ。全く、誰があなたを変えたのかしら」

マシュ「先輩と所長です!先輩と所長ですー!」

リッカ「・・・いつもありがと、マシュ。オルガマリー」

「?リッカ、何か言った?」

「べっつにー!じゃあごゆっくり!なすび!残したらしばく!」

「残しません!お皿も食べます!!」

「それは流石に引くから!!」



紅閻魔「ふふっ・・・そこのあなたも、いつでもお待ちしていまちゅ。門下生、いつでも募集しているでちよ!」

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