人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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朕「と言うわけで。縁を手繰り寄せ仕立てた駆体を楽園にプレゼント。後は召喚を待つのみだが・・・まぁあちらは英雄王が上手くやるだろうよ。召喚においては外さないのが通例なようだし、心配は無かろうさ」

(本来ならば汎人類史の姿で在るべきなのだろうが、実装されてないビジュアルはどうにもならんしなー。此処は戦闘力と我が秦の技術の売り込みも兼ねて零式の肉体にて楽園に参じてもらうとするか。何──)

「心配はあるまい。真に心通ずるなら、姿形は些末な事象であるが故!如何なる場所においてもその絆は永遠であると永世を統治した朕は思うのであった!フハハ、さて読み進め──・・・あまりハイテンションで読んでいい場面では無かったなぁ」

(んー、玉席混合とはいうが人の質が此処まで異なるとは。やっぱりこんな汚濁をも尊いと言える姫は驚嘆に値するという他ない。英雄王も裁定するというならこれらから目を逸らすのも許されぬ。ん~・・・)

「・・・惜しかったのぅ。我に挑んできたのがカルデア一行でなかったのなら、即座にこの星に秦を打ち立てられたというに。しかし・・・黒曜の龍に白金の姫。汎人類史が産み出した二つの至宝の存在を思えば、その歩んだ歴史は決して間違いでは無かったのやもしれんなぁ・・・」

(人の業、人の罪、人の悪徳・・・それを背負いながら輝き奮い立てし人類最悪のマスター!天晴れなり!)

「・・・朕もカルデア行きたいなー。いつになるやら。楽しみに待つとするか。しかしまぁ・・・」

「・・・やっぱり秦をこの世界に打ち立てるべきでは?(以下ループ)」


召喚編~極めて真面目な触媒、補強の結果です~

「さて、存分に楽園の威光と威厳を示したわけだが。何か今のこの在り方に物申すことはあるか、仙女?」

 

王の言葉がぐっちゃんに届けられる。要するに『こんな感じの楽園だけど、ノリについてこれてる?』といったニュアンスの質問であり、改めてぐっちゃんに問い掛けるのは確認と、分かりきった質問のようなものだ。答えは見えている再確認の様なものである。・・・返答によって、これから行うことは変わってくるが敢えてそれは伏せておく。その方が、後々の驚きは強くなるからであるがゆえに

 

「・・・無いわよ。油断、慢心とは無縁で何処までも広がり大きくなる楽園・・・人間の進歩と発展を司る様なこの施設に、挑む方が可哀想だなってくらいかしら」

 

「ふむ、それは当然よな。そしてその楽園をかつて在籍していたという曖昧な理由で利用しようとしていたのが貴様な訳だが」

 

「まだ引っ張るの!?解ったわよ、申しわけありませんでした!もう此処にずっといて頑張りますから掘り返さないでくれる!?──はっ・・・」

 

──その瞬間、ぐっちゃんは見た。『此処にずっといる』。その言葉を、確かな言質として受け取り笑みを浮かべる王の姿を。それこそが、最後の鍵だと告げるように

 

「その言葉、貴様の永い生・・・そして生前の貴様の『夫』にかけて違わぬな?この楽園を終生の居場所として定めた。そう言った旨の発言で構わぬのだな?」

 

「そ、それは・・・」

 

生前のぐっちゃん・・・そしてその傍らに在りし最愛の夫の無念。『此処でお前から離れてしまっては、此からのあてのない無限の放浪をせざるを得ないお前はどうなるのか』と吟った者の言葉を鑑みるようなその発言に、言葉に詰まる。確かに閻魔亭にて『あそこを最後の居場所にする』とは言ったが・・・此処で、改めて問われているのだ。妻の無限の放浪を、無双かつ比類なき予測と観測を担い、未来を憂いた夫の想いに報い、此処を永遠の終着にする覚悟は出来たのか。楽園はそれに相応しき場所であるのかと。王は問うているのだ

 

「ぐっちゃん先輩・・・」

 

「ヒナコさん・・・」

 

リッカ、マシュもまた心配げに視線を送る。彼女の選択次第では、ぐっちゃんはまたこの世界を放浪することになる。全ての神秘を暴かんとする、既知が満ち精霊が居場所を失ったこの世界にて、終わる事のない永劫をだ。その未来を鑑みれば、ずっと此処にいてほしいが・・・それは他ならぬ、ぐっちゃんが決めることなのだ。永い時を生きた彼女を引き留めるには、まだまだ時間と交流が足りない

 

「・・・・・・」

 

ぐっちゃんはその質問に深く思案し、黙考した。目を閉じ、二の句を告げることなくただ考えを巡らせている。管制室に訪れる、長い長い沈黙。対立か、共存か。そして──その答えは、息の詰まる沈黙と共に、闇が晴れるかの如く示された

 

「・・・今更よ。あれだけ御世話になって遁走とか有り得ないでしょう。私は恩の返し方くらいは知っている。そして──この場所の凄さもよーくわかっているわ。だから・・・」

 

だから、と答えを示す。永い、永い放浪の果て。ついに見つけた場所。──生前の夫が懸念し続けた最後の無念を晴らす場所には、相応しい場所であると答える

 

「・・・いさせてもらうわよ。そして・・・手間のかかる後輩やあんたたちの死に際を看取ってあげる。それくらいの義理は、果たしたって別にいいわよね?・・・いいわよね?」

 

どうかしら、まさかダメとか実は私も不死でした、とかは無いわよねとアイコンタクトを図るぐっちゃんであった──そんな杞憂は、最早語るまでもないとばかりの返礼がやって来る

 

「勿論!これからも宜しく!不死身のぐっちゃん先輩!」

 

「ヒナコさんには私と先輩のグランドオーダーベストマッチ活躍ストーリーの語り部になってもらわなくてはならないのです!途中離脱は困りますよ!」

 

「何それ!?私語り部!?」

 

リッカとマシュは当然受け入れ、オルガマリーもまた、王の裁定がそうであるならと納得し目を閉じる。スタッフ一同もまた同じく。今更不死がどうのと気にする者などいない。大事なのは己の意思に他ならぬが故に、だ

 

「と、とにかく!許してもらえるなら、私は此処にいさせてもらうつもりだけど!何よ今更、それがどうかしたの?」

 

「──フッ。いやなに、救済を用意するも帰化する意志を見せられねば空振りに終わると言うのは虚しかろう?救いというもの、安寧と言うものは本来合意の下に示されるモノであるからだ」

 

その意志を以て、その決断を以て──今回の目玉たる召喚が行われる。縁は此処にあり、決断も此処に在る。ならば、裁定の結果を此処に示すのみだ。召喚サークルを回し、今こそ清算の決済に至る時である

 

「仙女、これから喚ぶ輩の縁を持っているのは貴様だ。真に再会を願うなら繋いだ縁を更に磐石にする歌でも歌うがいい。──そら、貴様に贈られた歌への返歌があろう?此処で一つ歌ってみせよ」

 

「!?なっ──!?御機嫌王、アンタ・・・!!」

 

その意味。そして理解する。王が何を企み、何を召喚しようとしているのか。そしてその為に、ずっと待ち望んでいたその再会の為に・・・

 

「?なになに?歌とか歌えるのぐっちゃん!凄い!聞かせて聞かせて!」

 

後輩やカルデアスタッフの前で・・・

 

「あ、その、えと・・・~~~っこの、この──!!」

 

まさか──愛と恋慕に満ちた返歌を朗読させられる羽目になるなんて・・・!これが罰だというのか。虎の威を借る狐になった事への返礼だというのか。まだ償いが足りないというのか・・・!

 

「どうした?中華は義侠の国であろう?熱烈に別れを惜しまれたのであろう?よもやそれに対して素通りなどという選択はしていまい?返歌の一つも残さぬまま傍を離れてはいなかろう?(ニヤニヤ)」

 

(違うこれただ愉しいからやってるだけね──!!ぐぬぬ、なんて事・・・!軽はずみな発言が、此処まで自分の首を絞めるなんて・・・!!)

 

待つとは言った、償うとも言った。だけどまさかこんな形で再会を自分で演出する羽目になるなんて思わなかった。だが、此処で召喚を失敗すれば、もう二度と会えないかもしれない

 

夫足るもの、唯一度の無念。彼に懐かせてしまった後悔を取り払うのは今しかないのだ。ならば──恥も外観も、最早投げ捨てるしかない。今必要なのは、自らの矜持では無いのだから・・・!

 

「──あぁあぁ解ったわよ!歌ってやるわよ!よーく聴いてなさい!これが虞美人たる私の想いの籠った返歌よぉ!!」

 

半泣きになり、耳まで真っ赤になりしぐっちゃん。天空の美酒、いと旨し。別に趣味なだけではない。召喚の成功の為の致し方のない手法なのである。マインド・コラテラル・ダメージなのである。王は別に酔狂でやっている訳ではないのである。天空の美酒、いと旨し

 

漢兵已略地(漢兵、已に地を略し)

四方楚歌聲(四方は楚の歌聲)

大王意氣盡(大王の意気は盡き)──

賤妾何聊生(賤妾、いずくんぞ生を聊んぜん)・・・!!」

 

やけくそ気味に召喚サークルの前にて叫ぶぐっちゃん。中華の言葉なら、ワンチャン意味は通じまい。それならばあえて思いきり・・・といった意図であったのだが

 

「おや、それは虞美人が夫に吟った返歌だね?『どうして私一人がおめおめと生きておられましょうか』という意味の歌で、夫の項羽が『自分が死んだあと、お前をどうすればいいのだろう』と吟った歌の返歌とされているよ」

 

「・・・熱烈ですね、ぐっちゃん」

 

「あぁあぁぁあぁあ!!解説するなー!!」

 

ダ・ヴィンチが補足を加え、オルガマリーが追い討ちをかける。あまりの辱しめに転げ回るぐっちゃん。意味がある合理的な愉悦であるのが尚質が悪い。

 

「あぁ、不老不死だから交流あるんだよなそりゃあ・・・」

 

「ヒナコさん、お熱かったのね・・・」

 

「良妻だったのかぁ・・・未亡人、イエスだな!ムニエルポイント進呈!」

 

「殺しなさい!!いっそ殺してぇ!!」

 

意味をバッチリ知られてしまったぐっちゃんの真意が、最早全員に知れ渡ったところで・・・

 

「先輩!御幸せに!」

 

「ラブラブっぷりを見せてください!先輩との参考にしますので!」

 

「うぁ~!!あー!あー!!」

 

「ふふははははははは!!よくぞ吟った!これで御膳立ては整った!いざ現れよ!!此処に参ずるがいい──我が楽園!万象を叶え我が威光を示す場所であるとな!!」

 

そんなこんなで、ぐっちゃんの評価を確定したと同時に現れしは──虞美人の夫。そして、中華の武において今もまだ最強の呼び声高き武将

 

「おお、妻よ……このような形で再会が叶うとは」

 

誰よりも合理的かつ、遥か人が追従できぬ未来を見据え続けたが故に、そのあまりの判断の冷徹さと合理性の真価を見抜けるものがいなかったが故に、バーサーカーとして喚ばれし者

 

「そうか、汝は最早寄る辺なきままに彷徨う事はないのだな。ああ……生涯唯一つの無念が、今ここに報われた」

 

中華における最強格の存在、覇王とまで呼ばれし天下を縮めたもの。

 

「で──でかぁあぁあぁ!?」

 

「はっ!?げっほ、えほっ、ごほん!!──あぁ、項羽さま。お待ちしておりま──その、お姿は・・・!?」

 

見上げるような巨大なる人馬の四肢、数多の腕を持つ、汎人類史の彼とは異なる駆体を持つ──『項羽』が、楽園へと参ずるのであった──




(──ほう。汎人類史の存在にどこぞの異聞帯の姿が割り当てられたか。いずれ結ぶであろう縁をも引き当てるとは、我ながら楽園の精度が恐ろしいな。さて──)

全てが終わり、歓迎パーティーに全員が席を外した今、王の戦いが一人行われる。今こそこの戦いに決着をつける為に、長らく続いたセイバー召喚の義を執り行うために

「さぁ、数千年の感動の再会を果たし空間には荘厳かつ運命に出逢う的な気が満ちていよう!運命の出逢いには相応しき気運だ!さぁ現れるがよい、今こそ勝利の凱歌を歌わせよ!──参列の時だ!セイバー!!」

高らかに上げる声音。確信を以て回される召喚。今こそ巻き起こる召喚にて現れしは──

『──コードネーム!謎のヒロインXX!就職面接に来ました!こちら履歴書になります!宜しくお願い致します!』

「誰だ貴様はアァアァーーー!!」

盛大にニアピンどころか意味不明な際モノ、色物の召喚に、王は理解不能と絶叫を上げるのであった・・・──


王の自室

『英雄王、セイバーさん召喚おめでとうパーティー』

──あ!ギルの声が・・・どうだったかな?今度こそ成功したかな?『感動の再会に乗じこちらも勝負をかける』と仰有っていたから、きっと成功した筈・・・!

(あぁ、やはり今回もダメだったみたいだ)

──えぇ!?


(ニアピン王の宿命には勝てなかったよ・・・)

──お、王!ギル!御無事ですか!ギルー!


・・・この後大分心にダメージを負い、エアの膝枕にて『つらい、我はつらい』としか言葉に出来なくなった王の復活に、一日を要したという

NG召喚(人)、次の機会へ保留

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