人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

64 / 2528
エピローグとなります。最後まで、お付き合いください!


「ここまでお疲れさま。まだ続くよ。メインイベントが残ってるからね(フォウ)!」


合唱

倒れ伏すジルに、歩み寄る

 

 

 

「……こんな、理不尽が……聖杯を、以てしても、こんな、馬鹿な……」

 

うわごとのように呟くジル

 

「ハッ、たわけめ。だから貴様は道化なのだ。聖杯一つで、我に太刀打ちが出来るなど思い上がりも甚だしい」

 

転がる聖杯を、拾い上げる

 

 

「こんなモノ、我にとっては酒を飲む道具でしかない。……決まって血生臭くなるのが欠点だが」

 

それを阻む余力は、もうジルにはない

 

「そら、マスター。これは貴様のモノだ。蓄えておけ」

 

無造作に、放り投げる

 

「あわわっ!」

 

『それは聖杯で間違いないわ。――オーダー、コンプリートね』

 

 

『やった!やったぞ!リッカ君達がやってくれたんだ!』

 

『……本当に、お疲れさま。マシュ、リッカ』

 

「そっちもね、マリー、ロマン!」

「ミッション、完了です!」

 

 

「……まだ、だ」

 

這いつくばり、血塗れになりながら、ジルは立ち上がらんとする

 

「まだ……私の背徳は……まだだ……!」

 

「――呆れたしぶとさよ。加減が過ぎたか。全く、慣れぬことはほとほとするものではないな」

 

はぁ、と溜め息をつく器

 

――それだけの、覚悟が。彼にはあるのだろう

 

自分は、その想いを。ただの悪とは断じれなかった

 

「――ルーラー、ジャンヌ。介錯してやれ。これは貴様らの不始末であろうが」

 

クイ、とジルをさす

 

 

「いい加減暇を与えてやれ。貴様らの副官であろう。――もうすぐ消え去るわけだがな。手短に、昔話に華でも咲かせてやれ」

 

 

「英雄王……」

「解りました!」

 

二人のジャンヌが、聖なる怪物に駆け寄る

 

「私は――」

「もういい、もういいのです。ジル」

 

そっと、両手をとる二人のジャンヌ

 

「貴方はもう、十分すぎるほどやってくれた。もう、休んでいいのです」

 

「ジャンヌ……」

 

「こんな小娘を信じて、この町の解放まで。――ありがとう、ジル。貴方がいてくれたから、私は最後まで、無念を抱くことなく走り続けることができた」

安らかに、語り聞かせるようにジャンヌは、ジルを労る

 

「また、どこかで。――貴方は、私の大切な同胞なのだから」

 

「ジャンヌ……おぉ、ジャンヌ……――」

 

「大丈夫ですよ、ジル!」

 

朗らかに、ジャンヌが告げる

 

「貴方を一人にはしません!もし貴方が、地獄に逝くとするなら――」

 

ぐっ、と。掌を握る

 

「その時は、私も一緒ですから!」

 

にっこりと、朗らかにジャンヌは笑った

 

「――いいえ、いいえ、ジャンヌ……」

 

二人のジャンヌの手を、確かに握り返す

 

「地獄になど、貴方を招かせるものか――貴方は、どうか主の御元に――地獄に堕ちるのは、私だけで――」

 

溢れんばかりの涙に、笑みを浮かべ……聖なる怪物、ジル・ド・レェは消えていった

 

「――さようなら、ジル」

 

「えぇ、またどこかで……必ず!」

 

 

 

「みなさーん!!」

 

 

声がする方に振り返ると、ヴィマーナがすぐそばに滞空していた

 

 

「退去が始まっておりますわー!約束、急いで果たさないとー!」

 

「フン、修正させたら即時退去とは余裕の無いことよ。者共乗り込め!最後の仕上げを決めるぞ!」

 

「うん!マシュ、ジャンヌ!」

 

「はいっ!」

「解りました!」

 

 

「ジャンヌ!貴女はやはりジャンヌでしたか!」

 

男の声、白き姿の、元帥ジルだ

 

「ジル……!まずいですね、今は……」

 

「私にお任せを!」

 

カルデアのジャンヌが告げる

 

「約束を果たしてください!私はカルデアに戻るだけですから!」

 

「――たのみます!」

 

 

「フォウフォウ!(はやくはやく!運転も楽じゃないんだから!)」

 

「乗り込めー!」

 

「よし、凱旋といくか!ヴィマーナ、浮上!」

 

カルデアの、ジャンヌを残して。ヴィマーナは上昇していった――

 

 

 

「ジャンヌ……!生きておられたのですね!貴女さえいてくれれば、私は……!」

 

「いいえ、ジル。私は死んでいます。ここは、泡沫の夢、間違ったフランス。私は滅び、貴方は狂う。それは、決まった歴史です」

 

「……やはり、貴方は、死しても……いや、死してなお……!」

 

「良いのです、ジル。――私が選び、私が選んだ生き方なのだから。――あなたが涙を流す理由は、何処にもないのです」

「おぉ、おぉ――赦してほしい、赦してほしい!ジャンヌ!」

 

「ジル……」

 

「私は貴女を裏切った!フランスは貴女の総てを裏切った!貴女を祭り上げておきながら、貴女の総てを切り捨てた――!!赦してくれ、赦してくれ――ジャンヌ……!おお、おおおおおおおお……!!!」

 

「良いのです、良いのです。ジル。総ては未来に、明日に繋がった。――それだけで、良いのです」

 

「ジャンヌ、ジャンヌ……!おおおおおおおお――――!!」

「去りましょう。笑顔で。せめて、笑顔で――」

 

 

慟哭する元帥を……聖女は、暖かく迎え入れた――

 

 

 

「――もう、全てが終わってしまうのね。名残惜しくて、死んでしまいそうよ」

 

マリーが、寂しそうに呟く

 

「修正された特異点の出来事は、無かったことになる。この数奇な共闘も、夢と消えてしまう」

 

「そんな――」

 

「そう言うものだ。出逢いと別れ、これはけして切り離せぬ。どんな存在であろうとも、だ」

 

――そうだ。必ず、別れはくる

 

だからこそ、出逢った時間が尊いんだと、自分は思う

 

「何を塞ぎこんでいる。顔をあげぬか」

 

「えっ?」

 

「たわけめ。『別れは避けられぬ』が、『別れを笑顔で迎える事はできる』という事であろうが。簡単な理屈だ」

 

そうだ。尊い時間は、最期まで。

 

笑顔で迎えて――また逢おう。必ず、生きていればチャンスは来るんだから

 

だって――死んだ自分にだって、チャンスがあったんだから、間違いない

 

「――よぉし思い付いた!」

 

マスターが声をあげる

 

「写真とろう写真!皆で!」

 

「いい案です!先輩!」

 

――それはいい。ナイスアイデアだ。それなら、記録がずっと残る。確かな記録が

 

「お願いギルえもん!道具だしてー!」

 

「ははは、仕方あるまいなぁこの雑種君はぁ。良かろう!カメラの原典くらい余裕よ!」

 

「まぁ!記録が残るのね!?何て素敵!ジャンヌ、アマデウス!やったわ!」

 

「うん。そんな奇跡もあるなんて、生きてみるもんだ……!」

 

「ちょっと!当然アタシがセンターよね!?」

 

「阿呆か貴様は!ゴージャスたる我がセンターに決まっていようが!」

 

「あんですってー!?」

 

「うるさいですね。私はマスターの傍に、こう、ぴっとりと」

 

「では、カメラは僭越ながらこの聖ジョージが」

 

「すまない、俺は端でいい……あまり役には立てなかったからな。本当にすまない」

 

「またそれか貴様!そういえば合鍵を返せ!」

 

「ジャンヌ、一緒にね?こう、指を絡ませて、顔を近づけて……」

「ま、ま、マリー……!」

 

「ヒュウ!密着密着!いいぞぅ!最高だ!」

 

「フォウ!(誰の美しさに抱かれよう?選り取りみどりだ!)」

 

「アタシよ!」

「我だ!」

「アタシ!!」

「我だ!!貴様はどさ回りにでも行け、バラドルめが!」

「アーイードールー!アタシはポップでキュートなアイドルだから!」

――仲いいな、この二人……

 

「喧嘩しなーい!ほらマシュ寄って寄って!」

「は、はい!」

『ちゃんと、笑顔よ?』

『いいなぁ!僕も写りたかった!』

 

「貴様にはマギ☆マリがいよう(笑)」

 

『またそうやって馬鹿にする!』

 

「まぁまぁ。何枚でも取りましょう。――さぁ、はい」

 

 

「我がセンターだ!!!」

「あっ抜け駆けとかゴージャスあんた――!!」

 

 

「「「「「「チーズ!」」」」」」

 

 

 

――消えぬ記憶。消えぬ記録。

 

 

時に消えても、確かな絆は、いつまでも此処に――

 

 

「写真は撮ったわ!あとは歌ね!アマデウス!」

 

「ほら、出してくれよピアノ、あるだろ?王様」

 

「無論あるが態度が気に食わん!はっ倒すぞ貴様!」

 

「無礼講無礼講。――さて、じゃあ。約束を果たそうか、マリア」

「えぇ!――今度はしっかり、巡り会えたわね!みんな大好きよ!ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

「ヴィヴ・ラ・ウルク!ふはは、よい響きだ悪くない!カルデア職員の合言葉にするか!」

 

「ヴィヴ・ラ・ウルク!」

「先輩!?」

「すまない……歌は得意ではないんだ、すまない……」

「ニーベルンゲンの歌とかモロであろうが!」

「それは神話の名前なんだすまない」

 

「謝るなと言うに!音楽家!リクエストしてやろう!これを弾け!」

 

「なんだいこれ?」

 

「我お気に入りの、カーニバルなファンタズムのエンディングテーマだ!歌詞の前向きさが実にいい!旅の締め括りにぴったりだ!」

 

「アタシがボーカル!?」

「キャストオフするぞ駄竜!!マスター!令呪だ!」

「おっけい!!」

「い――――――や――――!!幽閉と同じくらいいや――!!」

 

「ハッ!美を探求するものとして格の違いをしれ小娘!さぁ貴様ら、我は美声においても頂点に立つということを教えてやろう――!」

 

「歌、ですか……あまり歌は……」

「楽しく、キラキラ歌いましょう?歌はそうなの、それでいいの!」

「……はい!」 

 

『時間もない!フルコーラスで歌うには今すぐ歌わなきゃダメだ!』

 

「では、指揮は私が」

 

 

「じゃあ行くよ!聞け!天才の腕を!」

 

 

「はい、せーの!」

 

 

「ぼぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!!!!!」

「おのれこの駄竜が――――――――!!!!!!」

 

――あぁ

 

 

――こんな素敵な別れで、本当に良かった――

 

 

華やかで、賑やかで、楽しい時間は過ぎて行く

 

 

――そして、歴史は正しい姿へと……――




カルデアに帰還だ!


愉悦部員の皆!ワインは持ったな!!


往くぞぉ!!

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。