人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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日常回です!そしてそれを利用した楽園とカルデアが変貌を遂げる前のお話です!


どうか、のんびりお楽しみください!その次は、アポクリファイベかプリズマコーズを予定しております!


かつての、獣の胎動
始まりへ、思いを馳せよう!


「・・・まぁ、今更だけど改めて。芥ヒナコ改め、項羽様の妻・・・虞美人よ。虞美人草って聞いたことあるかしら。アレの元ネタよ、元ネタ」

 

 

召喚、改築を終え、めぼしいイベントもまだ起こらぬ間隙の時間、細やかな平穏の時間。そんな平穏を食堂にてご飯を食べていたら顔を合わせる事となったぐっちゃんの突然の自己紹介を受けることになったリッカ、オルガマリー、マシュの三人。食事中の突然の真名開帳に、目を丸くして言葉を失う一同に、慌ててぐっちゃんがフォローを入れる

 

「わ、悪かったわね突然で。項羽様が『これから苦楽を共にする同志、真名や素性を明かし更なる友好を深めるべし』って言われたから・・・一理ある提案だったし・・・」

 

「本当突然!でも旦那様の言う事に素直に従うぐっちゃん・・・良妻み・・・良妻み溢れる・・・」

 

「中華の謎多き美人・・・まさかそんな方を招いていたなんて。ますますおとうさ・・・マリスビリーの考えていたことが解らないわね。何を目的に貴女をスカウトしたのかしら・・・」

 

「ヒナコさん、眼鏡を御揃いにしますか?いいフレームを紹介しますよ!」

 

それぞれの反応、これもまた三者に別れる。不老不死や精霊など、異なる存在であることをまるで頓着しない、ある意味で能天気な三人の反応に改めて呆れと安堵の籠った溜息を吐き、そのままリッカの向かいに座り食べていたショートケーキのイチゴをパクリと摘まみ食うぐっちゃん

 

「ファッ!?じゃんぬケーキのイチゴが!」

 

「固いこと言わないの。先輩として味見よ、味見」

 

「先輩のイチゴに何て事を!私はあーんしてくださいますか先輩!」

 

「ふふっ。はいリッカ。ワタシのショートケーキあげるわ」

 

「ショチョー!デキる女は違うなぁ!マシュは見習ってどうぞ!頭がビーストな後輩はこれだから!」

 

途端に賑やかに、騒がしくなる四人。最早其処に外様、内縁といった区分けや遠慮はない。困難を乗り越え、共に戦い働いた財達の輝きがただ其処にあり、誰が目の当たりにしても華やかな『女子会』の様相が広がっていた。互いの立場、正体などによる差別や偏見など介在しない、楽園に擁されし財としての共通認識による砕けた空間が其処に展開され、親睦を深める気安く和やかな空気に満ちる。先輩、後輩、所長としてのカルデア職員たちが、他愛の無い会話に興じる光景に、通りかかった職員、サーヴァント達がにこやかな笑みを浮かべる程だ。紆余曲折にて結ばれた縁の結実が、此処にあった

 

「・・・でも、此処に来てから本当に色々変化が起こったわね・・・私は聖杯になったし、マシュはデミ・サーヴァントになったし・・・」

 

「はい所長!其処は『自他共に認めるオンリーワン後輩』といった呼称に改めてもらいたいと進言致します!」

 

「そう(無関心)私は人類悪からマスターになれたしねー。此処にいる四人、全員もう普通の人間って訳じゃないのかな?」

 

そう、此処にいる四人は最早一般人と言うには少し異なる存在へと変身した経歴を持っている

 

藤丸リッカは、人類の必要悪より産み落とされし人類悪『ビーストif』から人類を救う楽園のマスター『藤丸龍華』となり

 

オルガマリー・アニムスフィアはマスター適性の無い、精神的に限界を迎えヒステリックな所長から、聖杯を核として新生し名実ともに楽園の所長・・・そして『アイリーン・アドラー』の疑似サーヴァントと転身を遂げた

 

マシュ・キリエライトは円卓の騎士『ギャラハッド』と融合せしデミ・サーヴァントとなり、今までの旅路にてリッカを護り続ける

 

そして、ぐっちゃんこと芥ヒナコは精霊種。真祖に極めて近しい存在である。楽園の財として変貌したカルデアにのみ、存在が許容されるであろう経歴を、全員が獲得している事となる

 

「・・・改めて聞いてみると、凄いことになってるわねアンタたち・・・」

 

「あはは、英雄王の財だからね!生半可じゃやっていけないよ!何か一芸に特化しないとね!」

 

「一芸にというか、人間として極めないと埋もれてしまうと言うか・・・まぁ、此処で人類の未来を救う以上、生半可な存在じゃいられないと言うのもあるわね。・・・私は、ギルの情けと言うか、先見の明ね、うん」

 

「ふーん・・・もうアレね、最初の自分って思い出せないんじゃないの?そんなに変わったというか・・・変身しちゃったら」

 

そう、自分が始まりをもう思い出せない様に、自分自身が本来どのような存在であったか、どのような人間であったのかを忘却しているのでは無いかとケーキを注文せしぐっちゃんは告げる

 

「カルデアに来たばっかりの自分とか、覚えてる?なんというか、自分だけど全然違う自分・・・もうそんな認識なんじゃないかしら」

 

人は短い生で、目まぐるしく変化する生を生きる者。齢20にも満たない目の前の三人が歩み、そして忘れていった自分のかつての在り方をなんとなしに告げてみたのだが・・・

 

「私は余裕がなくて・・・拒食症とノイローゼ、ヒステリーを併発していたわね。それはもうカリカリしていたわ。レフしか頼れる相手がいないと本気で信じていて・・・」

 

「私は今とそんなに変わらないと思います!今も昔も、私は先輩の後輩ですよ!マシュっとお側に寄り添います!」

 

「私は・・・んー。気楽すぎて馴れ馴れしかったかぁ・・・笑顔が気持ち悪かったかもしれない。今となってはそんな感じかも?」

 

カルデアに来た頃の自分、カルデアに来てからの自分。少なくとも、完全に合致しているという事は有り得ない。変わりし自分、変わらなかった自分。それを思い返す事により・・・

 

「──じゃあ見返してみる?記録!ロマンに頼めば見れると思う!どうせなら劇的ビフォーアフターを皆で楽しんでみようよ!」

 

それを見たいと思うのは、ある意味当然の帰結であった。リッカが元気よく手を上げ、ロマンにアーカイブ、ライブラリを拝見させてもらおうという結論を高らかに告げる

 

「ぐっちゃん先輩のイモい服装の頃とか、ヒステリックオルガマリーとかスタンダードマシュとか久し振りに見たーい!」

 

「は、はぁ?見たいって言うけど、そんな平常時の記録なんてわざわざ残してる筈が無いんじゃない?」

 

「ロマニ、聞こえる?『カルデアレフボンバー事件』から初のレイシフトのライブラリ記録は残っているわね?・・・良し。今から五分後に放送室で放映できるかしら。──問題ないそうよ」

 

「残してるの!?楽園ってなんでこう『こうだったらいいな』が必ず実現するのかしら・・・!」

 

「では、私は椅子や御茶請けを用意してきますね!午後は皆で観賞会の時間ですね!ヒナコさん!是非協力をお願い致します!」

 

「わ、分かったわよ!分かったから押さないで!意外と力強いのねアンタ!?なんでリッカの為すがままなの!?」

 

「先輩に・・・スパンキングされなくてはならないという使命を背負っているのです・・・!」

 

「リッカ!この頭のネジが飛んだ後輩を何とかしなさい!早く!?」

 

「遊び相手が出来て良かったねぇ、マシュ・・・さ、行こっかオルガマリー!」

 

「そうね。私御気に入りの珈琲と、リッカ達用の紅茶を用意しなくちゃ」

 

「ナチュラルに見捨てないでくれる!?あ、ちょ、ちょっ、ちょっと──!?」

 

・・・そんなこんなで垣間見る事となった、かつての始まり。楽園ではないカルデアへの追憶

 

其処は御機嫌王も、英雄姫もいない──全てが動き出す前の物語──

 




五分後

リッカ「わー、カルデアがものさびしー!全然キラキラしてない!楽園じゃない!」

マシュ「私がなんだか消極的です・・・もっとガッツリ!ガッツリ行きましょう!」

ぐっちゃん「あー、読んでた読んでた。本を読んでる相手に話し掛けてくる輩はいないしね・・・」


オルガマリー「ありがとう、ロマニ。手間をかけさせたわね」

ロマン「いえいえ。懐かしい映像なのでとっておいたのです。ほら、全然違うでしょう?今の楽園と、ね。その違いを見つけるのが面白くて」

「そうね。あなたの秘密のサボり場とかね」

「ギク・・・!」

「さぁ、私が講習している間にリッカと何をしていたのか・・・じっくり見せてもらいましょうか」

「あは、あはは・・・やぶへびだったよリッカちゃん!」

「んー、この残念さ!確信を以て言えるのは・・・あの頃からロマンは全然変わってないって事だね!」


・・・此処から暫し向けられるは、人類史が焼き払われる寸前のカルデア──

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