人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アカシック『・・・・・・』

ビーストifを作り上げ、結果的に人類最悪のマスターを鋳造する

そのマスターを招き、人類最後のマスターに相応しい力を与える

悪性に満ち溢れていたカルデアに放り込み、大幅に覚醒を促す

が、覚醒しきる前に爆破にてカルデア内部の澱みを一掃

マシュとリッカを霊脈に放り込むよう進言させ、結果的に王と姫を君臨させる

ソロモンの受肉した姿に気付かなかった

後に対処しきれぬと破棄を選択するも、監獄島にて獣を討伐され揺るぎない自己を覚醒させる


『・・・最早皮肉が心からの称賛にしかならない程に完璧だ。感謝を告げよう。君もまた、完全無欠の結末の功労者だ。レフ・ライノール』

(二千年遅すぎたと君は憤ったが・・・その遅れは、王と姫が半年で取り戻したよ。だから眠るがいい。魔神に覚醒しなくば、その身をもって偉業を食い止めた知られざる立役者よ)


黄昏の女神『──良かった。皆、幸せになってくれて』

『キミにも感謝しなくては。輪廻転生、その流出と覇道はかの魂を送り出す為に実に参考にさせてもらった。──あえて苦言を呈するなら、容量や性質上、その治世には破滅が確約されているのが無情だが』

『良いの。未来に繋がるものがあって、それを私が抱きしめられたなら。──あなたは、いいの?』

『僕に次など無いからね。君の慈愛は、まぁ。気持ちだけ受け取っておく』

『でも・・・』

『良いんだ。・・・君と同じさ』


・・・──あの魂(かのじょ)の幸せが、僕の幸せだ。君の理念が救い上げてくれた魂が幸せならば。僕が望むことは何もない

まだ旅路は始まったばかりだ。どうか挫けることなく進んでくれ。君の、君達の幸福と旅の無事を、を心から祈っている

それが・・・全能の奴隷たる僕の、唯一至上の願いだ


『辿り着いた今』

「うん、こうしてみるとあれだね!私がヤベーやつそのものだったね!」

 

 

記録の閲覧を終え、一旦一息をつくと同時にリッカが声をあげる。一歩間違えれば即座に覚醒していたことを鑑みると、まさに今こうしていられる事は様々な奇跡の産物、凄まじいまでの幸運がもたらされた結果であることを再認識したのだ。何か一つでも欠けていたら、何か一つでも食い違っていたら、自分は救う側ではなく、滅ぼす側であったのだ。あまりにも綱渡りかつ数奇な運命の運びに、そんな感想を上げずにはいられない

 

「なんだか私の自己主張が薄かったような気がします・・・!もっと大胆に、かつ積極的な後輩ムーブにて先輩にアピールかつアタックをかければもっともっと先輩は私にズブズブに頼って来てくれた筈です!」

 

マシュは紫なすびに変換する前のマシュを見て、やはり全てが稀薄に感じたようだ。一歩を踏み出す勇気が、そして決意がまだまだ足りていない。もっともっと輝く前の自分を応援したくなっているのだ。なすびがマシュにもっと輝くのですと囁いている

 

「レフ・・・ファインプレーしかしてないわね・・・どれだけ私を助けてくれたのかしら。やはり私の信じたレフはレフだった・・・?」

 

「あはは・・・有能なのは間違いないんだけどやること成すこと全部僕らに有利に働いてるね。悪魔は律儀とは言うけどさ、フラウロスってこんなタイプに設定したっけかなぁ・・・もう節穴通り越して芸じゃないかな、これ・・・」

 

オルガマリー、そしてロマンはレフのあまりの八面六臂の大活躍ぶりに驚嘆を示すばかりだ。やること成すことファインプレー、リッカを爆破から救い悪性を一掃し、マシュと廻り合わせ霊脈に招き大逆転のきっかけを作り出し世界を救う為の最高にして最強の英雄王──御機嫌王を呼び寄せたその手腕は、『人理修復の立役者』の名を冠するに相応しいであろう。最早乗り越え、消え去ってしまった結果だけ見れば大切な仲間に、静かに二人は黙祷を捧げる。特にロマンの感想は一言。『ドジっ子ムーブがあざとすぎる』である

 

「アイツをバカにするのは止めなさい!バカにすればするほど、あんなのに爆破された私が惨めになるでしょ!一枚上手だったのよ、一枚上手だったのよ!!」

 

そしてレフに生暖かい感想が集えば集うほど肩身が狭いのがそれに爆発させられたぐっちゃんらAチームである。全力で警戒された上、対策を取られ爆破されたのでなにも可笑しくはないのだが、それでもやはり無念さはある。運命と言うものが真にあるならば、自分達は戦う前に屈しており目の前にいる者達こそが勝者である事は疑いようもない

 

加えて、自分は吸血を行う必要が無いものであり、力の充足や補充が出来ていなかった。即座に回復は叶わず、瀕死の重傷を負わされてしまい、そのまま冷凍保存されたのだ。何処をどう見ても敗北者でしかない自分の境遇を嘆かざるを得ない。なんか隅っこで本を読んでいた凝ったデザインのモブでしか無いのだから。情けないやら恥が高いやらで、見ているだけで顔から火が出る思いだ。レフを貶すわけにもいかない。彼を貶せば貶す程、それに一本取られた自分が情けなくなるだけだからだ

 

「こうしてみるとリッカ君はあれだね、奇跡に奇跡が重なってあそこを乗り越えたんだね。カルデアの悪性を食べていたせいか、人格というかキャラが全然違うもの」

 

「あーそっかぁ、やけに頭が冴えてたのはそういう理屈かぁ・・・カルデアの沢山のマスターの気持ちを受け取って変わってたって事かぁ。でも変わったって言うならマシュ程じゃないよ!誰この可憐系儚い後輩!チェンジで!!」

 

「何故ですか先輩!この新たに生まれ変わったNEW後輩!超マシュの何が不満だと言うのですか!今も昔もあなただけの後輩!あなただけの後輩なのですよ!しかも今では超絶パワーアップ!パワーアップして二倍お得ななすびなのです!」

 

「・・・まぁその。どうせ死にはしなかったけれど、的確な判断は感謝しておくわ。所長の椅子、立場にあぐらをかいていた訳ではないのね」

 

「・・・・・・・・・(曖昧な表情で沈黙している)」

 

「?どうしたのよ。だから冷凍保存の件で」

 

「『バカ言わないで!生きていればいくらでも弁明が効くからに決まっているでしょう!47人の命なんて、私に背負えるわけがないじゃない!』・・・でしたっけ?」

 

「リッカ、もう・・・!・・・はい。自己保身の為にやったまでに過ぎません。だから、御礼は結構です。宥められ、落ち着くまでこんな感じでしたから」

 

「あぁ・・・苦労していたのね、あんたも。なんというか、お疲れ様・・・」

 

そう、こうして皆で語り合える未来はまさに奇跡。一つでも運命が異なれば、殺し合いか滅亡か、破滅でしかなかった。あまりにも細い糸、あまりにもか細い可能性を当然の様に手繰り寄せ、完全無欠の結末を切り拓いた者。──それが、この楽園を作り上げ、そして此処にいる者達を問答無用で掬い上げたのだから、最早恩があるや感謝だけでは足りないほどに。万感の想いを懐かずにはいられなかった

 

「お姫様とギルが来てくれなかったら・・・私達まとめて終わってたんだよね。ギルが召喚に応えてくれたから、姫様が見守ってくれたから、私達は頑張れたんだな、って」

 

ただ強いだけでは、自分達は何処かで間違えていた。ただのサーヴァントであったならこれ程までに輝かしい自分にはたどり着けなかった

 

「はい、それは最早楽園の皆の共通認識です!誰一人、感謝を忘れた事は無いものだと断言します!」

 

「そうだねぇ・・・そうだよね。ボクもオルガマリーも、きっと・・・特にボクはどう足掻いても最期には消えるしか、死ぬしか無かったんじゃないかな・・・」

 

「ロマニはともかく、私はレフに惨殺されているから論外ね。聖杯を賜してくれたギルと、姫様の慈悲が無かったらそれまでだったわ」

 

「・・・曲がりなりにも五体満足でいられたのは、まぁ・・・処置が的確であったからもあるわね。それを選んだから、私は禍根なくここにいるわけだし」

 

思い返せば思い返すほど、返しきれない恩義が見つかる。思えば思うほど、あの愉快な高笑いに、勇気が湧いてくる激励や叱咤が自分達を導いてくれたのだと痛感し、そして感謝の気持ちが積み重なっていく。姫を有した、あの愉快な王様がいたから、この辛いはずだった旅路は、未来の見えない苦行は、笑顔と愉悦の絶えない本当に楽しい旅路になれたのだと、始まりにある、誰もが精一杯だったあの頃を振り返り、更に強く、確かに再確認する一同。そして、その気持ちを懐いたならば。王が磨きに磨き上げた財達が、決して忘れぬ善き感情が示されるのは道理と言える

 

「──よぉし皆!集合!いいこと考えたー!」

 

楽園の皆に変えてもらった自分。そして皆の取る行動を思い付いたリッカが声をあげる。あの王に、姫に、この世の全てを手にする王に捧げられる何かがあると言うならば──やはり、『これ』しかないのだろう

 

「はくのんに連絡しなきゃ!えーと、ムーンセルへのチャンネルはー」

 

「ギルは・・・あ、今自室にいるわ。休憩中かしら」

 

「案外何かあくせくやっているかもだよ?この楽園で、一番の働き者だしね!」

 

「ドクターも模範にするべきだと思います!」

 

「・・・他のAチーム連中はこれからどうなるのかしら。・・・ま、あの王様の次だなんて、考えるだけ無駄か・・・」

 

ギルガメタブレットにてワンタッチ月との通話。かの王に、姫に捧げるものを託すため、一同は一致団結し物事へと取り組むのであった──




ギルガメッシュ・自室

──どう?フォウ、気持ちいい?痒いところ、ない?

フォウ(あぁぁ~。幸せだぁ・・・キミがボクに触れてくれているだけで、キミが笑ってくれているだけで、キミが生きていてくれるだけで・・・もうボクは何もいらないんだぁ・・・あぁ~・・・)

《すっかり骨抜きにされおって。最早人類悪、比較の獣の面影など何処にも存在せぬか。まぁ分かりきった事だがな。かつての荒んだ貴様など見る影も無いな》

(ボクはエアと出逢えて変わったんだ!なんならエアが傍にいてくれる限りボクは尊みくそざこビーストの称号を喜んで拝命するぞ!)

──ワタシも、フォウに出逢えて良かった。ワタシの、最初の友達になってくれて・・・ありがとうね、フォウ

(あっ──ボクはエアに感謝されただけで──)

『プレシャスサンドアートになるフォウ』

──フォウ──!?

《ふはは、最早安堵すら覚えるやり取りよな!・・・しかし、思えば遠くに来たものよ。向こう十年戦い続けてきたような感慨すらある──む?まだ一年其処らしか経っていなかったか?更に言えば修復そのものは半年で終わっていたか・・・?》

『通知』

《──ん?》

『ムーンセル現像屋より』

《──フン、温故知新というやつか。・・・今さら財の輝きを疑う事など無いと言うに。殊勝な奴等よな》

・・・ギルガメッシュのタブレットに転送されたもの。それは写真であった。いつものメンバーと、新たにやってきた先輩と共に撮られた写真

其処に映る者達の誰もが、心から、輝く様な笑顔を浮かべている。下には──

《──フッ。エア、フォウ。見てみるがよい。財どもの貢ぎ物だ、目を通しておくのだな》

『ギル、そして姫様!本当にありがとう!』と、皆の手書きにて記された電子メッセージが記されていた──

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