人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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???『・・・いいの?』

子ギル「全く構いません。僕が興味があるのはカルデア、エアさんであり、君達のような亡霊が何をしようとどうでもいいですから。好きなようにどうぞ。僕はそれを眺めていますから』

『・・・』

「ほら、其処にあるモノから魔力を吸い上げれば効率が良くなるんじゃないですか?躊躇わなくても良いですよ。あぁでも傷物にはしないでくださいね。『楽園の、三つの手土産の一つ』なんですから」

『・・・えぇ、そうさせてもらうわ』

ミユ「・・・いや、やめて・・・来ないで・・・!」

サファイア『み、美遊さま・・・!』

「脚本を書くのはなれていないけど、役者が最高ならば陳腐なものでもカバーは出来るはずですよね。さぁ、存分に楽しんでください。この世界の奮闘を、あなたと仲間達に捧げましょう──」


魔法大学生の矜持

『しっかりしてくださいリッカさん!此処であなたが立ち上がらなければ全てが終わってしまうんですよー!真相にたどり着く前に、困難に挑む前に膝を屈してしまうなんて貴女には似つかわしくないと会ったばかりのルビーちゃんでも解るんです!ネバーギブアーップ!』

 

人類悪の鎧、展開不能──そのあまりにも重く大きな枷。そして突きつけられたレベル制限的な壁の高さに、浜に上げられたアザラシ、栽培マンに組み付かれヤムチャされた自爆さんのように地に倒れ伏すリッカ。傷は深い、そして痛烈な格の違いに否応なくスヤァされてしまっているのである。チャンネルが違う。女の子に血生臭いライダーバトルを見せても泣いてしまうだけなのだ

 

「そうだよね・・・プリキュアオールスターズがオールスターズな理由は、プリキュア同士が戦ったら女の子達がガチ泣きしたからなんだよね・・・夢の対決とかは男の子の夢なんだよね・・・本当に申し訳無い、ディケイドの気持ちが解った気がする・・・」

 

定義が変わってきているとはいえ、魔法少女は愛と勇気と希望を胸に輝く女の子。キラキラしているもの。自分がそんな輝かしいキラキラを持っているかは・・・見てもらっている人に判断してもらうしかないのだが。それでも魔法少女力は実測なんと5。ゴミと罵られても仕方のない数値である。筋肉やパンクラチオン、悪魔将軍やゾロアスター。それらまとめて御呼びじゃない。告げられた事実・・・

 

勿論、その気になれば魔法少女を血祭りに上げたりパワーイズザベスト、コマンドーめいた対処は充分に可能だろう。邪龍の力なくともパンクラチオンはあり、女神の祝福はあり、鍛え抜かれた筋肉は消えていない。ナインライブズだって目白押しだ。ガチの肉弾戦なら負けないと自負している

 

しかし。魔法少女という土俵が用意されているのに、それらを無視し、踏みにじり、蹂躙することはできない。したくない。何故なら自分にとって魔法少女は聖域。か弱く小さな女の子が夢見、男の子だけのものであったヒーロー路線を開拓した偉大なるパイオニア、概念なのだ。解釈違いで蹴散らし、蹂躙するなど許されない。理解できないものを排斥する。それをした瞬間、今まで信じ、憧れてきた自分自身を裏切る事になる

 

敗北、慎んで受け止めるべし。己、潔く省みるべし。足りないものを足りないと受け入れなくては人間は前へと進めないのだから。でもそれはそれとして辛い。桁が違う格の強度を示され動けずにいるリッカに・・・

 

「・・・ん~。ん~・・・・・・」

 

コナハト☆メイヴは──なんと、不満げであった。先程までの快活さや気高さは何処へやら。不機嫌そうに髪を弄り、もどかしそうに足踏みをしている。何故不満なのか。何故苛立つのか。それは解らない。此処にいる自分と目の前にいる座礁したクジラのような女とは何の面識も無い筈だ。無様に這いつくばっているのだから、徹底的に鞭を振るい、這いつくばらせればいいだけの話なのに。そんな簡単な事を、何故自分は出来ないでいるのか?

 

いや、むしろ怒りが沸き上がってきた。たったさっき自分が這いつくばらせたのに、無様にのそのそしているのに。

 

 

無様な姿ね(なにをしているの)

 

 

そんなものよね(そんなものじゃないでしょ)

 

自分の中の何かが、霊核の何処かが、目の前にいる知らない誰か(最高のライバル)の醜態に憤っている──

 

「──はっ!?そうだっ!!何もできないなら、戦うことが出来ないなら!言える言葉が残ってる!一つだけある!!」

 

ガバリ、と一転し立ち上がり、起き上がったリッカ。何を決意したのか。魔法少女力5のゴミが生意気・・・そう考える自分とは裏腹に、心は何故か踊っていたのだ。そうこなくちゃ、と。その心境が、自分自身が。まったくさっぱり理解できない

 

「あら、無様な命乞いかしら?みっともない泣き言かしら?良いわよ、女の子らしく振る舞えば焼け石に水くらいはマシになるかも知れないわね?」

 

「よーし、言うよ!絶対に言えないと思ってた一言!いつか言えたらいいなと思ってた至高の一言!言うぞ~、言うのは今しかない!!」

 

『リッカさん!?なんだか嫌な予感がするのですが・・・!?一体何をするつもりなのです!?なんとなく、物凄くズレた事を仰有るような──』

 

何をするつもりなのか。何を言うつもりなのか。状況打開の何を行うと言うのか。何処か心待にしたような気概にて、すぅ、と息を吸うリッカの二の句を聞き届け──

 

「──くっ!殺せ!!!」

 

「──・・・・・・」

 

『なな、なんと──!?』

 

絶妙になにかを大いに勘違いしたかのような、現在進行形でお前は何を言っているんだと突っ込まれるような。誇り高すぎる身柄確保依頼、降伏宣言に今度こそ、コナハト☆メイヴは空中にてずっこけた。そしてなけなしのMS力が更に音を立てて、ディドゥーンと下がったと確信する。5から3くらいだろうか。150㎞のスピードボールに書かれていそうな数字である

 

『違います!違いますよリッカさん!それは魔法少女ではありませんプリンセスナイトです!やっぱりチャンネルが致命的にずれきっているのですよリッカさん!』

 

「負けた際のプロフェッショナルには対魔忍もいるけど、感度3000倍の声なんて出せないし体感したこと無いから解んない・・・ならば姫騎士しかないよね!それに負けた身なら囚われるのが通説!極めて遺憾なれどピーチ姫ムーブが出来る筈!待ってみよう!助けを!!上げるんだ!ヒロイン力を!!」

 

『なんというポジティブシンキング!ルビーちゃんさぁ浚え!と仰有る乙女初めて見ましたよ!?ですが諦めないでくださーい!まだ囚われるのには早すぎます!予定調和やヤラセが疑われてしまいますからもう少し!もう少しだけやってみましょう!抗いましょう、絶望に!!』

 

やいのやいのと騒ぎ立て、しかして負けた事への絶望など微塵も感じさせないその姿。敗北を受け入れ、どんな形であれ自分の研鑽へと繋げるその姿勢。形ややり方は致命的なまでに不細工で見ていられないが、女王たる自分から見れば大いに解る。自分だってそうなのだから

 

──今のこの現世に、彼女ほど自分を磨き、女性らしく在ろうと自分を高めている人間はどれ程いるのだろう?少なくとも自分には覚えがない。覚えがないから──

 

「──あぁ~!もー!!いい加減にしなさいよね!やることなすことブレてないけどズレズレ!そんなんで貴女!このメルヘンな世界を生きていけると思っているの!?いいえ!無理ね!!」

 

敵に塩を贈る、アルスターに蜂蜜を贈る。自分に相応しい宿敵となる可能性があるならば、そこに介在する余地は出来るだけフェアネスに、だ

 

「もう!何処まで世話を焼かせるのあなたは!初対面なのに!初対面なのに凄く腹がたって仕方ないわ!こんなヘンテコな相手を認めるなんて、何処の場所で何をやらかしたのよ私は!もー!!」

 

怒りながら、苛立ちながら。メイヴはリッカの右手にとあるものを、左手に即興で作ったこの特異点のマップを握り締めさせた。利敵行為ではあるが頓着しない。魔法少女は、女王はいつだって好き勝手に希望と輝きを振り撒き、叩きつけるものだから

 

「いい!?徹底的に躾するつもりだったけど気が変わったわ!スタートラインにも立てていない相手を征服してもぜんっぜん気持ちよくない!!あんたの基地に帰らせてあげるから!其処でここに挑む準備を整えて出直してらっしゃい!次に逢うときは万全、立派な魔法少女になって私にかかってらっしゃい!いいわね!?」

 

「メイヴちゃん・・・」

 

「『魔法少女は万華鏡!足を引っ張る枷じゃなく、理想を思い描く筆にして其処へ飛び立つ翼』!忘れないで、それがあんただけの魔法少女への道を開くの!──返事!」

 

「は、はいっ!!ありがと、メイヴちゃ──」

 

「はい!さっさと帰る!!」

 

「ほわぁあぁあぁ~!?」

 

後ろを向かせ、げしりとお尻を蹴っ飛ばし強制退去させるメイヴ。ヘンテコなステッキも慌てて後を追い、基地──カルデアに帰還させた魔法少女は叫ぶ

 

「良いこと!私は雪華とハチミツの国で待っているわ!最高の自分、一番の自分をこの世界で磨いてやって来なさい!もし半端なあなただったなら、もう本当に許さないんだからね──!!」

 

・・・──かつて、アメリカで死闘を繰り広げた女王の記録は、座へと刻まれる程の鮮烈な衝撃の体験であった。自分から、欲しいものを鮮やかに奪い取った仇敵。真っ正面から、自分と戦い抜いた怒っても怒りたりない、悔しくて悔しくて殺してやりたくなる同姓

 

「──今度こそ、私が勝ってやるんだから!よく解らないけど、私以外のヤツに負けたら許さないわよ!」

 

意味が解らず、覚えもない怒りと決意に振り回されながら、メイヴは鼻をならし、用がないとばかりに中立地帯を後にするのであった──




管制室

リッカ「へぶ!?」

ルビー『むぎゅう!?』

ロマン「あ!帰ってきた!どうしたんだい急にいなくなったりして!探してたんだよ、さっき座標見つけたけどね!」

ダ・ヴィンチ「おや、その手に持っているものは・・・?ちょっと失礼?・・・クラスカード・・・そしてそっちは・・・愉快型魔術礼装・・・!?」

リッカ「あいたた・・・そうなの。──皆をあつめて、二人とも!この特異点──私だけじゃ攻略は無理!!」

ロマン「えぇ!?君が無理なら皆無理なんじゃ・・・ま、まぁともかく、緊急だ!全員集合ー!」

ルビー『あいたたた・・・それにしても、イリヤさんは一体何処に行ってしまったんですかねぇ・・・最早一生会えないとか、そんな・・・!』

ギルガメッシュ「何事だ!何故我の部屋に人形が二つも届けられている!何の皮肉か嫌がらせかは知らぬが、この我はバビロンチョップなどせぬわ!」

イリヤ&クロ『『(死~ん)』』

『なんとぉ!?脇に抱えられておられる両の御方は──!?』

──カルデアには郵便で少女が届けられるんですね・・・知りませんでした・・・!

フォウ(イエスロリータ、ノータッチ!!)



~メイヴの城


ミニクーちゃん【テメェ、なんで見逃してきた?生かして帰さないんじゃなかったのか?】

「そうね、なんでかしらね・・・殴っていいわ、ぶっていいわ。抉っていいわよクーちゃん」

【・・・】

「・・・本当に、なんでかしら。其処のところが、私にもよく・・・分からないのよね」

【──なるほどな。そうかよ、それなら止めるのは野暮ってもんだ。】

「?解るのクーちゃん?」

【おうよ。ケルトじゃいつものことじゃねえか】


・・・──ダチとダチの、殺し合いなんてよ

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