人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イリヤ「ほわぁ~。スッゴい豪華な場所なんだね、カルデアって・・・今まで見てきたどんな建物よりすごいや・・・」

クロ「違法建築とか、労力とか資産とかどうなってるのか凄く気になるんだけど・・・突っ込むだけ野暮か。あの大人になったギルがリーダーな時点で・・・」

「えっ!?あの王様大人のギル君だったの!?」

「気付いてなかったの!?」



子ギル「くしゅっ。・・・風邪かなぁ。ダメだな、体調管理はしっかりしなくちゃ。ですよね?」

ミユ「・・・っ」

「世話役も魔力も与えたんですから、そう睨まないでくださいよ。信じてあげてください。君の友達は必ず来るって。来てくれなくては困ります。『楽園に二人を送り付けたのはそう言うことなんだから』」

「あなたは・・・イリヤを・・・なんだと・・・」

「不思議な事を聞きますね。君はいちいちスプーンやフォーク、コップや食器に使うね、使っていい?なんて確認を取りますか?己の所有物に、いちいち意志の是を問いますか?」

「──・・・っ」

「えぇ、つまりそういう事です。『全ては僕のものなのだから、僕のものをどうしようが勝手でしょう?』」

「・・・英雄王、ギルガメッシュ・・・っ」

「うーん。悪い子のやり方はこれでいいのかな?安心してください。使えるまでは壊しません。まぁ、あの人の足手まといになるようなら、不良品として回収も已む無しですが・・・」

(頑張ってくださいね。今回の主役は君達じゃないけれど、何処まで食らいつけるか試させてもらおうかな──)


急がば回るブリーフィング

「──よし。頭の痛いことだが状況、そして我等が解決すべき問題を明確にするとしよう。魔法少女とやらの概念が幅を利かせる特異点、クラスカードなる置換魔術礼装の散逸による群雄割拠。それによる特異点の発生・・・大まかな状況と概念はこれでよい。どのみち挑み、解決する問題だ。誰が、何を、何の目的かなどを論ずるのはよい、いずれ解るものに頭を悩ませるは時間の無駄と言うものだからな。──問題は其処ではない。マスターが持ち帰りし情報の真偽よ」

 

リッカを回収し、そして送られてきた魔法少女二人。クラスカードという高位の魔術礼装、そして特異点の地図。何より、惨敗を喫したマスターという数多の情報量を整理するため、緊急のブリーフィングが開かれた。王もまた、この特異点の特殊性を認めているのだ。率先してブリーフィングを牽引している辺りからもそれが伺える

 

参加しているのはクラスカードの解析、特異点レイシフトの為に席を外しているダ・ヴィンチ、ロマンを抜いた職員、マスター。そして・・・

 

「い、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです!イリヤって呼んでください!」

 

「同じく、クロエ・フォン・アインツベルン。仲良くしてね♪」

 

配達されてきた少女二人。白髪赤眼のアルビノ風味で生真面目な少女、鏡写しが如く瓜二つな褐色で妖艶な少女。それぞれイリヤ、クロという名を持っているらしい。迅速な自己紹介が行われ、人となりが明かされたが、のんびり歓談している場合ではない。状況打開に対して、やることが多すぎるためだ。交流会を行う約束を取り付け、本題へと王が切り込んでいく

 

「単純な武力、戦闘力ではない・・・MS(魔法少女)力なる単位が必要である。コナハト☆メイヴとやらはそう言っていたのだな、マスター」

 

「うん!鎧も展開できない、力尽くでもどうにも出来ない・・・そんなルールがある、というかあった!結論からして私には相性最悪な部類の特異点だと断言できます!具体的には挑む資格すら無いレベルの!」

 

魔法少女力が無くては活動すらできない。マスターとしての役目を果たせるかどうかすら定かではない。そう言ったレベルの爪弾きを受けたとリッカは語る。今回の特異点は、どうにも一筋縄ではいかないようなのだ

 

「リッカを下げ、他のマスターをメインに据える、というプランもあるにはありますが・・・」

 

オルガマリーの言葉に、二つ返事で賛同するものはいなかった。今現在カルデアに所属しているマスターは誰もが精鋭かつ一流のマスターである。・・・が、そういった実力や実積といったものは勿論、彼女を本格的に作戦から外す、という作戦に根本的な不安と懸念が存在しているからである

 

「魔法少女力とか、よく解らないけど・・・頭ごなしにリッカを否定されてはいそうですか、とは言えないよなぁ」

 

「今までの作戦や特異点攻略の中核を担ってくれた彼女を、そんな理由で完全に戦力から外すのは・・・」

 

そう、単純にマスターとして彼女を頼りにし、信じて頼みとし続けていた。信じ、共に戦っていた。そんな彼女をあっさりとリザーブ、補欠扱いするのに誰もが抵抗を示していたのだ

 

「そ、そんな深く考えないでよ皆!ほら、チャンネルが合わないってだけで存在を否定されてる訳じゃないから!」

 

そう、彼女はあらゆる意味で主柱であり、中心であり、困難、特異点打破の為の大きな力であった。何より、どんな場所でも、どんな困難でも凛々しく、強く、たくましく。懸命に挑みそのすべてを乗り越えてきた。リッカがいたから、皆が頑張ってこれたという見解は、カルデア一員全員が共有していると言っても過言ではない。事実、この楽園のサーヴァント達はほぼ全てがリッカを信じ、残留を決意した者達だ。絆を紡いだ者達と契約を結んだリッカを外すという選択を取り、本当に完全無欠の攻略が出来るのだろうか。そんな不安が、カルデアの一員・・・長らく戦ったスタッフ達を包み込んでいる

 

 

(魔法少女だのメルヘンな話題でありながら、天下の楽園のこの沈痛さはどういうわけだねリッカ君!?)

 

(どれだけあんた、頼りにされていたのよ・・・いや、まあ解るけれどね)

 

(まさか、こんな形で皆に不安を与えることになるなんて・・・!藤丸リッカ一生の不覚・・・!!)

 

陥った不安と、これから取り組む事への難題さ。それの解決への不安が高まっていた──が

 

「全く、何を沈痛な面持ちをしているのだ、辛気臭いにも程があろう。この程度、頭を捻る必要もあるまい」

 

王、微塵も揺らがず。そう、難題であるのは賢く、知恵あるものが頭を捻るが故だ。思考が袋小路に入るが故だ。これは『始まり』と『動機』も、対処も単純であり、それこそ少女が頭の中で思い描く花畑の様に、さっくりきっぱりと割りきってしまえばいい。例えば──

 

「其処の。白いにんぎょ──イリヤと言ったな。うむ、初対面故呼ぶのに躊躇った、ははは」

 

「なんですかそのあからさまに都合の悪い事実から目を背けるような笑い!?な、なんでしょう、王様?」

 

「貴様は見たい番組を見る際、テレビのチャンネルが合っておらぬ場合はどのような手を取る?」

 

「え、あ・・・『チャンネルを合わせる』、ですか?」

 

その言葉にぐっちゃん、オルガマリーが弾かれたように顔を上げる。その真意に思い至りし者が少ない事を確認し、更に王は言葉を紡ぐ

 

「そして其処のフェイ・・・あぁいや、初対面な幼女よ」

 

(わざとね、あの王様。絶対何処かでイリヤ絡みで思い当たる節がある態度よ、アレ)

 

「貴様は適性が無いと判定を受けた。だがそれは決してゼロではない。──であるならば、なんとする?」

 

それは問い。単純な式の解を問う。それをなす事の意味、それを行うことの意義をただ問いかける。クロと呼ばれる少女は少し頭を捻り、同時に──

 

「──適性を獲得するのね!そう、今が足りないなら今から足せばいい、魔法少女でないのなら──」

 

然り!魔法少女となればよいのだ!至極単純な話であろう、ゼロでなければ1も100も同じことよ!──即ち!!」

 

王が席より立ち上がる。この特異点を攻略するための答えと真理は既に得ている。最早恐れる事など、懸念材料など何処にもない

 

「藤丸龍華!貴様の夢と願い、此処に成就させよ!これより楽園マスター各位、魔法少女の資格を獲得し全員にて特異点の攻略に当たれ!あぁそれと、オルガマリー、マシュも付き合ってやるがよい。少女の夢なのだ、多感な思春期盛りの女一人では寂しかろう?」

 

「ほぁっ!?わ、私が──魔法少女に!?マジで!?」

 

「先輩がいよいよその夢を叶えるときが来たのですね!後輩として、こんなに喜ばしい事はありません!全力でサポートします!」

 

「ゴルドルフさん、所長業務をお願い致します。もしもしメディア女史ですか?服装、礼装のデザインの依頼を頼みます。はい、特にリッカのものを入念に。フルプレートアーマーから、はい、バトルドレスに・・・」

 

「行動が早すぎないかね!?え、本当に!?皆テキパキ動き出したぞ!?本当迷いが無いな君達!?」

 

「魔法少女になる。端から聞いたら狂人としか言いようがない作戦だけど・・・まぁ絶対、手なんか抜かないわよね、あんたたちに限って」

 

魔法少女力が必要な特異点。不足ならば充足させる、困難ならば別の形で可能とする

 

──この世界に、達成不可能な難題など存在しません!皆で挑んで、いつものように乗り越えちゃいましょう!

 

そう、王はこの騒動を起こした者を逃す気はない。何故ならば、王の紅き眼は目の当たりにし、また捉えている

 

《──良かろう、下らぬ催し、子供の遊びに付き合ってやろうではないか。そして知るがいい。そちらの物語に何故成人の我が招かれなかったのかという真理をな──!》

 

その単純明快な理屈を、道理を睨み返し。楽園は、ゴージャスは即座に対策を打って出るのであった──




数十分後


ダ・ヴィンチ「お待たせー!いやいや、仮面ライダーにはまっていたのが功を奏したお陰だね!しっかりバッチリ!完成したよん!」

『MSデバイス・ストレンジ』

オルガマリー「師匠、これは?」

「リッカちゃんが持ってきてくれたクラスカード、あるだろ?アレは使用者の肉体を媒介にして英霊の座にある英霊と使用者の肉体を置換し・・・まぁ要するに!『使った人間を英霊にする』という礼装なのさ。英霊による聖杯戦争を宛にできなくなった何処かの名家が作り上げたんだろうね、大方」

マジカルルビー(原作何巻を得てたどり着いた結論にもう辿り着くとは・・・!やりますねぇ!)


「で、これはそれをインストール・・・要するに、MS力を媒介にしてクラスカードを使うための変身ツールと言うわけさ!特に形や変身の姿に決まりはない。自由自在に設定していいよん」

イリヤ「え!?変身後の姿も変えられるんですか!?凄い!羨ましい!あのあの、私の分も作って貰いたいんですけど!」

『そんなイリヤさん!?ルビーちゃんを!ルビーちゃんを捨てるのですか!?』

ロマン「まぁまぁ、これからどんな姿になるかは皆が決めることなんだ。所長、これを渡しておくよ」

『ブランククラスカード×7デッキセット』

『──ほぁー!?まま、まさか!クラスカードを真っ白なまま再現したと言うのですか!?デジマです!?』

「うん、だって魔術で練られたものだろ?なら僕に作れない道理はない。全ての魔術は・・・ボクが、編纂した、ものなんだから(ドヤァ)」

イリヤ「か、カッコいい・・・!出来るおとな、すごーい!」

(よし!!魔法少女に好印象だぞぅ!ボクのイメージ、大幅アップだ!)

ギル「白紙な理由は明白だ。『使用者に、使用する英霊の力を選択させる』という腹積もりであろう?」

ロマン「そういう事だね。置換先をいじって、カルデアの霊基にしておいたから、カルデアにいるサーヴァント達と話し合って七クラスのクラスカードをそれぞれが揃えてほしい。勿論、合意の上でね」

「・・・変身の為のメンバー選出、ですか。リッカはともかく、私とマシュは少なくなりそうね・・・」

「まぁ揃えられるだけでいいよ。なんならボクを登録するかい?」

ギル「貴様が契約などしてなんとする!魔術の王たる自覚を持たぬか、たわけ!」

「えぇ!?召喚術くらいが出来る程度だよ!?魔神使役くらいやらせてあげたいじゃないか!」

イリヤ「(ポカーン)」

「良かったわね、イリヤ。ミユやギルへの処罰、速攻で決まりそうよ?」

「──十分くらいで私の苦労や恥じらいが全て砕かれたの凄い・・・」

──皆様の変身した姿・・・!凄く楽しみです!どんな姿なのでしょう・・・!

(──ギル)

《無論だ、解っておるわ》

「ロマン、我にもそれを寄越せ」

「え、いるのかい!?君が!?」

「たわけ、我ではない。──だが、使う瞬間は必ず来るのでな」

──?

マシュ「あれ?そう言えば・・・先輩は何処に?」

「あぁ、リッカなら・・・」



~指導室

リッカ「宜しくお願い致します!高町教官!!」

なのは「そ、そんなに緊張しないで?単純に戦法や概念を説明するだけだから・・・!」



オルガマリー「講習よ。高町教官とね」

マシュ「──そんな、先輩・・・!頭を冷やしてしまうのですか・・・!?」

イリヤ「高町って・・・!?え、ひょっとして──!?」

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