人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ミユ「・・・ギルガメッシュ・・・」

子ギル「?なんですか?要望なら世話役の部員の方に仰ってください。各地にいる部員さんの奮闘で楽しんでいる僕に御用ですか?」

「・・・魔法紳士とは、なんなの・・・?そして、魔法少女とは、一体・・・」

子ギル「気になりますか?うーん、そうだなぁ・・・じゃあ、本質だけをお教えしますね」

「・・・」

「『奇跡に殉じて燃え尽きたもの』が魔法少女、『理想に振り向いてもらえず決起した妄執』が魔法紳士です。まぁ──」

「・・・!」

『崩れたクラスカード』

「魔法紳士の方を拾い上げたのは、僕なんですけどね?」


戦えない、総ての人達の為に

「改めて、ようこそおいでくださいました。皆様、どうか私とイアソンさまの城内へ──」

 

 

リッカの申し出た対話を『些細なすれ違い』と片付けあっさりと自らの居城へと招き入れたメディアリリィ。大海原と竜の国の中枢たる城へと招かれたカルデア一同は、彼女の後に付き添い無機質な城の通路を進んでいく。あらゆる箇所、あらゆる場所に『イアソンさまのお部屋』と書かれ意味ありげなドクロや火炎のマークが描かれている扉があるが、どんな用途なのか聞き出すのか一同は辞退した。何か機械が作動しているような音で、大体は察することが出来る為である

 

(イアソンさまってどうみてもアレよね、イリヤ)

 

(うん、あのギルガメくんのビミョーにローコストかつデッドコピーやアナザー、モドキっぽいマスコットの事・・・?)

 

ミシミシと体が軋むくらいに抱かれ顔面蒼白になっているマスコットを指し、イリヤとクロエが囁き合う。仲睦まじくは見えるがそこはかとなく危険な付き合いな感じがする二人を、何処か不安げに会話にて指摘する。どうにもなんというか、うっかり腕の一本や二本を千切りとってしまったような人形とその持ち主のような雰囲気がある、無邪気な残酷さを感じさせる彼女の風格に、イリヤは背筋がぞわわっとするような感覚を覚える

 

『あー、なるほど。城に招いたのはそういう・・・まぁ問題ないか。どのみち国に入った時点で魔術防御はかけてあるし。皆、気を付けて進むんだよ』

 

ロマンの意味ありげな呟きに一同は顔を見合わせながら、メディアリリィの導きによって玉座へと招かれたのであった──

 

さいこぱす たちがわるいよ ほんとにな いあそん

 

 

「なるほど、皆様の事情は分かりました。友を助けるため、魔法少女となって違う世界から・・・なんと勇気と行動力に満ちた勇者なのでしょう。イアソンさまにはないその雄々しさと魔法少女らしからぬ気迫に免じ、問答無用でブタに変えるのは止めますね。実は準備が出来ていたので城に招いたのですが」

 

「ファッ!?」

 

事情を話し、理解を示し笑顔で破滅の罠を用意していた事を平然と口にするメディアリリィの行為に本気で驚くリッカ。国を護るため、信頼できない場合を考えた悪意ゼロの言葉かつ行動に流石の対話スキルも一瞬の不覚を取った。笑顔と友好にて握手をしたらそのままナイフを脇腹に刺されたようなものだからだ。陥れる意思なく相手を罠に嵌める。モリアーティとは違った手練手管にオルガマリーが拍手と口笛を鳴らす

 

beautiful(お見事)

 

「お見事、じゃないわよオルガマリー!そもそもブタってあんたね!ブタはきれい好きでトリュフとか見付けてくれる有能な動物よ、人間の手前勝手なイメージで貶めるの止めなさい!」

 

「ヒナコさん!怒るところがずれていますよ!」

 

「もうあらゆるものがズレッズレなあんたに言われたくないわよマシュ!」

 

「良いですよね、トリュフ・・・高級食材、いい・・・ぶたさんを飼育して毎日食べたいです」

 

『まぁ効かないけどね。防衛魔術、即死、変化干渉耐性の魔術障壁はレイシフト時に皆に張ってあるし、そもそも気付いた瞬間に解除したからさ』

 

ロマン、後方のサポートにおいて無敵。御機嫌王と並び、最強の上のランク『無敵』を獲得しているのは彼ぐらいのものである。あらゆる総てを蹴散らし蹂躙し笑い飛ばす御機嫌王とは別の、『全てに於いて起こりうる前に因果を潰す』という意味で、彼に敵うものは存在しないのである

 

『いやー、神代の巫女姫さまに魔術王さま、ハイレベルな戦いすぎてついていけませんねー。将棋やチェスのプロの戦いを見せられている気分です』

 

「ルビーの万能ステッキの称号がますます危ない・・・ロマンおにーさんが味方で本当に良かったぁ・・・」

 

(それってつまり、やろうと思えば戦うまでもなく敵を無価値、無力化できるって事よね。・・・楽園の中でも格が違うのが二人の王様ってわけか・・・ラッキーだったわね、力を貸してもらえて本当に・・・)

 

『・・・──・・・』

 

「・・・分かりました。『そこの魔法少女には嘘をつくだけの知性がない。その胸のようにまっすぐな、公正な性格だ』という御言葉に従います。お話いたしましょう、魔法少女なる方々」

 

「ちょっとそこのイアソンくんに抗議していいかしら!イリヤちゃんはきっと将来美人になるのよ!きっと!」

 

そんなこんなで対話の始まる一幕。・・・誤解なく言葉が通じるならば、後は極めてスムーズであった。意思さえ通じれば、争いに至るへまと愚は犯さないが故に

 

「皆様が戦う理由は友達の奪還、この特異点の平定・・・私達の穏やかな生活を害さないと言うのなら、その道行きを手助けし、応援するのも決して吝かではありません。あなたたちと同盟を結べば、決して理不尽な侵略に屈さずに済むでしょうし。イアソンさまもあなたたちは絶対に敵に回すなと告げております」

 

「当然です。魔法少女ですから」

 

「ですので──はい。大海原と竜の国、その王女メディアは皆様に協力することを誓いましょう」

 

やったねなのはさん!ガッツポーズを行うリッカ。やはり戦いの意志を削ぎ落とし、戦いの無意味さを伝えることは最適解であった。こんなにもスムーズに意志が、想いが伝わる・・・!魔王の手解きを受けたリッカが、ますます高みへと昇った瞬間であった

 

「・・・ですが、一つだけ。その同盟を結ぶ前に一つだけ、お願いを聞いていただいて宜しいでしょうか?」

 

「──魔法紳士の討伐ですね」

 

オルガマリーが本題に切り込む。なんの事はない、初歩的な推理だ。『武力』と『抑止』を目当てに同盟を結んだならば、協定として『自分の手に負えない障害の排除』を提案してくるのは想像に難くない。魔法少女が手に負えぬ相手、先に戦った魔法紳士がこの国にもいることと考えれば予想は容易いのである。簡単な証明をひけらかすのは嫌味なので、解だけを彼女は告げるように心掛けているのだ

 

「素晴らしい頭の回転ですね!はい。──この国に現れた魔法紳士はそれはそれはおぞましく、醜悪で。魔法少女はたちただ逃げ惑うことしかできません。でも私はこの国の王女として逃げることは許されませんでした。回復系、メディカルな魔法少女な私は攻撃手段に乏しく一生懸命戦いました。精神治療の一環としての精神攻撃、神罰系ブタ変術。箱庭世界の幽閉など、その程度。戦いは過酷なものでした。私はこの通り非力な魔法少女でしたから・・・」

 

「・・・詩や芸能で王宮に召し抱えられている傑物が『でも私は武力ありませんから無能です』と言っているようなものね。謙遜も度が過ぎたらイヤミよ、イヤミ」

 

「ヒナコ先輩、しーです、しー」

 

『・・・・・・』

 

『イアソンくん・・・指摘しているんだねボクには解るよ。株で大損して光を失ったシバみたいな眼がデフォルトなんだ彼女、怖いよね・・・』

 

「魔法少女たる私はあらゆる手を尽くしました。何をしても気持ちの悪い声をあげ『サイコパスロリの責めとかむしろご褒美www』『やさしく!時には強く!そしてブタを見るような目でお願い致しますなぁ!』と喚く紳士を刺して、刺して、刺して・・・」

 

「・・・ん~?」

 

なんか聞き覚えがあるぞ~・・・?リッカは首を捻る。同士であり尊敬する大海賊、そしてアニメを見る際にいつも隣で見所やグッズを紹介、説明してくれるリッカのカルチャーベストパートナーと極めて酷似しておられるような、そうでないような・・・

 

「正直疲れ果ててしまいました。私は思いました。何処かに都合よく強い方が現れて、あの魔法紳士の無限ガッツを剥いでくれないものかと想いながら溜まりに溜まったプラモデルを消化し続け・・・ついにあなたたちが現れてくださいました。これもきっと、イアソンさまの御導きです」

 

別に導いてないんだけど、と告げた彼の頭にチョップが炸裂し昏倒するイアソンくん。パチリ、と異次元へ繋がる魔法紳士空間を開き、深々とメディアは頭を下げる

 

「お願い致します。魔法紳士を打倒し、穏やかで平和な私達の暮らしを取り戻してください。その暁には・・・この王女メディア、皆様に心からの献身と協力を御約束します」

 

「──リッカさん!私、やるべきだと思います!えっと、同盟とか取り決めとかも大事だけれど!国やメディアさんが困っているなら・・・!」

 

イリヤの言葉に、力強くサムズアップを返すリッカ。そう、理屈や打算、利益なんてどうでもよかったりする。自分たちの戦いは見捨てない戦い、完全無欠のハッピーエンドのみ。その道筋に、助けてほしいと願う祈りがあるのなら・・・

 

「うん!その申し出、受けるよ!私達の目的のためじゃなくて、困っているメディアリリィとこの国の魔法少女の為に!」

 

「まぁ・・・!ありがとうございます!やはり対話やお話は大事ですね!話すだけで紡がれる絆、信じるものは救われるとは本当でした!」

 

『・・・』

 

リッカの判断に一同は頷く。ここで無視するようなリッカは知らない、フォローが大変ね、楽しそう!後で特産品を探しましょう、先輩がそう言うのなら!それぞれの所感を浮かべながら困難に挑む決意を固める魔法少女を見て、久方ぶりの心からの笑顔をメディアは浮かべる。その様子に、イアソンくんもまた何処かほっとしたような表情を溢すのであったとさ──

 




イリヤ「うん、うん!やっぱり楽園の皆と出逢えて本当に良かった!真っ直ぐ信じたことに突き進めるって本当に幸せだね、ルビー!」

『そうですねぇ。大人になったり利口になると王道や御約束を受け入れがたくなってしまいますから!この水戸黄門や暴れん坊将軍な展開を当たり前のように突き進める王道風味とそれを成し遂げられる痛快さが楽園の魅力なのやも!非情な選択なんて蹴散らす壊す吹き飛ばすなんて、イリヤさんの天職先では!』

イリヤ「ミユを取り戻したら、私達の世界に来てほしいかも・・・全部皆とならなんとかなりそう・・・」

クロ「それはそれで、イリヤの物語が丸々ギルガメシュ叙事詩になるわよね?」

イリヤ「うっ・・・も、モブやエキストラ枠を開けておいてほしいな・・・」

『自信を持ちましょう!ルビーちゃんがついてますよ!イリヤさんは私という運命に出会ったのですから!』

「鼻血採取からの詐欺紛いの運命とか嫌なんですけど~!?」

リッカ「よーし!じゃあ早速!!」

メディア「お待ちください。これから長い戦いに赴くあなたたちへ、私なりの気遣いと贈り物を用意させていただきます」

オルガマリー「?贈り物・・・?」

「はい、食べても食べても無くならない旅の心強い味方・・・『幸せのパンケーキ』を皆さんに!」

一同「「「「「──はい?」」」」」

ロマン『え、なんだいそれ。魔法?聖杯?聖遺物なのかい?』

メディア「グラシャラボラス様が託してくださった魔神柱の残留魔力。『72柱があるかぎり必ず再生する』という概念を利用した無限に食べられるパンケーキ、どうぞお持ちになっていってください!」

ロマン『(思考停止中)・・・・・・・・・えっ・・・?』

「グラシャラボラス様が仰っていたお勧めの魔神柱は・・・名前が一番美味しそうなこの方!メイプルハニ~、バニラクリーム~」

ヒナコ「え、ちょ、え?は?」

「カスタードベルホイップー!レッツサモン!魔の痕跡から出でよ、深淵の同属よ!」

ロマン『いやいやいやいやいやいや、嘘だ、そんなまさか。ギルガメシア姫との対話であの時魔神柱は総て昇華されたんだ、ここにいるボクももう『姫に昇華された彼等』は永遠に呼び出せない。向こうから顕現しない限りね。だから呼び出すなら本当に別世界の可能性しか──』


ハーゲンティ『誰ぞ・・・我が同属の因子を依るべに呼び出したるは誰ぞ・・・』


ロマン『嘘だーーー!!?』

リッカ「(゜ロ゜)」

オルガマリー「(゜_゜;)」

マシュ「(((((゜゜;)」

ヒナコ「(゜_゜)」

アイリ「q(^-^q)」

マストリア「( 〃▽〃)」

メディア「こんにちは。早速ですがパンケーキの材料になっていただけますか?」

『うむ、よい。よい言葉だ。我は72柱の魔神が一柱、ハーゲンティ。その願いは人への呪いに満ちて・・・──なんです?』


ロマン『逃げるんだ──!!ハーゲンティ早く逃げるんだ!其処の君には預かり知らぬ事だけど!ギルガメシア姫様に『貴女の舌に乗るものが総て至高であるように』と祝福を残し消えたこちらの君の願いを君が叶える必要は無いんだから──!!』

メディア「次の更新の前書きまでには終わらせたいですが、本編にまで長引いたらごめんなさい。では、レッツクッキン!」

『世界の終わりの予感・・・』

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