──はい。それらは人の、歴史の編纂に欠かせないもの。そして何より人が織り成し紡いでいく紋様の一つ。・・・だからこそ、何よりも。それをもたらし、富を導いてくださるあなたに感謝を。ハーゲンティ
『──ならば、最期に我は貴女に祝福を贈る。我等を想い、こうして我等を永遠と為さんとする美しき魂よ。我等を忘れないでほしい。その魂よ、水の様に清らかであれ、その肉体よ、ワインの様に芳醇であれ。そしてどうか──』
──・・・・・・
『──その舌に乗るもの総て、美味であれ。さらば、レメゲトン・・・我の祝福、貴女に託す──』
──はい。どうかずっと、御休みなさい。貴方の総てを懐いて、ワタシは未来へと進みます──
『貞操の危機・・・!どうなっている・・・!?オオ、オオオオ・・・!!』
急激に意味不明かつ驚異的な理由と理屈に呼び出された素材柱ことハーゲンティくん。無数の竜牙兵に蹂躙され、城の防衛装置に滅多うちにされ、困惑と戦慄を浮かべながらまともな思考すら出来ぬほどに狼狽しながら成すがままである。だって想像してみてほしい。『おやつの為の礎となれ』と告げられた使い魔の心境を。誰だって困惑するしかないだろう、耳を疑うだろう。よもやそれが──
「えーい!美味しくなーれ、美味しくなーれ!撹拌、かき混ぜ、美味しくなーれ!」
笑顔で手を叩き、おぞましい清らかさで自らに害を差し向け続ける魔女のような少女であるのなら尚更だ。見れば神霊に連なるものであることは見てとれる。なるほどそれならばこの残酷さと不可解さには納得ができる。だが理解ができぬ!何故我が、何故我が・・・『パンケーキの素材』に選ばれたのだ!理解不能!どうなっている・・・!困っている!
『オオ、オオオオオオ・・・!!』
加速度的に破壊が行われていく。計画のために新生した肉体が、偉業の為に受肉した身体が壊滅していく。何故だ、何故こんな事になったのだ。何故にこの我が選ばれたのだ。疑問の答えが出せない、解が導けない。なんなのだこれ、どうすればいいのだ。我が身が崩れ去っていくことに、そして何よりも自らに待ち受ける運命が何よりも恐ろしい
パンケーキ、パンケーキ。情報を検索した。人間が午後三時に摂取するものである嗜好の菓子。それに自らをまた新生させるという。理性も個体も自我も失い、食材に・・・物言わぬ食卓の晩餐に参列しろというのだ。どういうことだ、まるで理解が及ばない。答えが導けないのだ。全能の叡知であろうと新生した魔神であろうと、この命題に解答を見出だせる気が欠片もしない
何故魔神を食材にしようと思い至った?何故減らないパンケーキなどを求めた?何故満足できなかった?嗜好の品にも終わりが容認できなかったと言うのか?終わりがあることを容認できない・・・その結論に、この者等も思い立ったと言うのか?
『──!』
・・・──逆転の発想に思い至らんとする。加速度的に殺されていく中、身体に穿たれていく激痛の中、その刹那に見えた真理を見出ださんとするハーゲンティ。この者達はまさか──
『・・・見出だしたと言うのか・・・三千年の研鑽、命題の答え・・・『永遠』の定義を、パンケーキなるものより見出だしたのいうのか・・・!?』
「?」
そうか、それならば。それならば納得がいく、理解できる。けして減らないパンケーキ、けしてなくならない嗜好品。けして終わらない晩餐の、至福の瞬間。それはまさに終わりのない世界、その貴重なサンプルケース。いやむしろ・・・理想の具現と言えるのではないだろうか
だからこそ、だからこそ我等を。72柱の魔神を呼び出したのだとしたら。その崇高な命題に、我の素養が、我が存在が礎となることを求めたのだとしたら・・・
『──ハハ、ハハハハハハハ!ハハハハハハハ!!解なり!!その慧眼、その答えに!その感銘に祝福を!』
ここに至るのだとしたら。ここにその永遠が成就するのだとしたら。終わりのない存在に、目の前にいる者達に我等の理想を、我等の命題の結実せし姿に至れるのだとしたら・・・
それはこの身を捧げるに相応しき偉業ではないのか?この少女らが見た世界が、夢が、我等が追い求め望んていた答えに至れるのだとしたら──
──此処で、我はその命題に殉じるべきでは無いのだろうか?そうだ、きっとそうだ我はその為に招かれたのだ。その為に我は喚ばれたのだ。疑問など挟まる余地などあらぬし持ってはならぬ。そうでなければ説明がつかぬ。我等が戯れで呼び出される筈がない。其処には必ず──『意味と価値』が在る筈なのだ!
『そうか!そうか!お菓子にこそ、嗜好にこそ我等が命題の答えが!オオ、その慧眼に感謝を!その成就に祝福を!そうか、これが──!』
ここに来て、ここに招かれて至るとは。この奇跡の残滓に満ちた世界にて煌めくような答えが眠っているとは!そしてその解に、その偉業の成就に我が選ばれようとは!その答えに至れようとは!
『感謝を!祝福を!礼賛を!最早我が身に恐怖無し、我が身に戦慄なく、我が身に迷い無し!思う存分に──!』
我が身を労る声が聞こえる。攻撃から我が身を庇う少女が在る。我が身を思ん測る行動が垣間見ることが出来る。おぉ、なんということだ。先刻の我が慟哭を受け取った為に行動に移したと言うのか。我が身を保護してくれているというのか。なんと有り難い、なんと素晴らしき思慮、配慮に慈悲か。美しい、素晴らしい。だが──
『最早我は覚悟と答えを得たり!我が身を捧げる決意を固めたり!おぉ、幻想の少女よ!狂気の無垢よ!その決断に我、殉じたり!我等が3000年の答えを此処に示さん──!』
最早核を打ち抜かれ、消滅は避けられない。同時に損壊、消耗とは別に新生した肉体がほどけていく。あるべき場所へ、あるべき姿へと解れていく
『急がなくては!せめて人格だけは消え去る前に元在る魔神の矜持とか色々は保護しなくちゃ!お菓子になって発狂とか自我崩壊とか仮にも使い魔に味わわせるわけにはいかない!』
其処に響いた声は・・・恨みに恨み、憎みに憎んで憎みきった我等の主、ソロモンに極めて似通っていたものであったような気がした。だがもう、かの王の答えや彼が何を感じていたのかなどどうでもいいことだ、何故ならば──
『永遠こそは此処にあり!終わりの克服こそが此処にあり!我が身こそが到達するのだ──『終わり無き命題の答え』に!』
おぉ、生まれた自我に歓喜を。芽生えた礼賛に肯定を。変わり行く我が存在こそに新たな門出の祝福を。ハーゲンティ、お前はその身で体現するのだ。その身で辿り着くのだ。誰もが夢見た、我等が望んだ永遠の境地へ──!
『祝福あれ、祝福あれ、祝福あれ!少女の夢に、儚き幻想に結実あれ!おぉ、オオオオ──!』
消え去っていく肉体、変換されていく肉体。パンケーキなる命題へとたどり着く我が存在。悔いもない、無念もない。あるのはただ、我が身が至りし答えへの祝福と歓喜──
『
その無限の甘美と感謝を最後に、招かれしハーゲンティはその生命と命題を解き放つ。魔神柱が有る限り、72柱が有る限り、決して無くならない。食べてくれる何かがいるかぎり、誰かが有る限り決して終わらないそれへと変換遂げる──
「──はい!出来ました!食べても食べても無くならないパンケーキの完成品!皆様、どうかこれを持っていって、魔法紳士をやっつけてくださいね!」
『──すまない、ボクは君の尊厳しか護れなかった・・・その無限のパンケーキ、心から大切にさせてもらうからね・・・』
意識と意思だけを取り戻し、せめて不理解と無念だけは感じさせないように奔走した、最早認識すら間に合わなかったロマンの追悼を受け・・・
『さようなら、此処ではない、概念としてのハーゲンティ・・・ボクは二度と君達を喚ぶことは無いけれど、どうかその最期に感じた想いが呪詛でないことを祈らせてもらうよ・・・』
・・・──ハーゲンティは真理と自分の刹那に懐いた答えに殉じ、食べても食べても無くならない美味しいパンケーキになりましたとさ──
魔法紳士黒ひげ「おほっ!?またまた新しい魔法少女とは拙者ラッキーですな!ンー、まさに選り取りみどりの目移り案件!是非とも拙者の胸に・・・ん?」
一同「「「「「・・・・・・」」」」」
「え、なんでござるかこの空気。そんなに?そんなに拙者ノーセンキュー?別に拙者鬼畜外道な事していたというより、魔法少女の皆様に着せ変えるための服を作るためにメディアリリィたんに教えを乞うていただでござるよ?紳士の名に誓って!やましい事はしておらぬと誓いましょう!」
リッカ【うん、信じてる。・・・じゃあ、とりあえずやろっか・・・】
「かつてない程のローテンション!?」
イリヤ「美味しいなぁ、このパンケーキ・・・(涙)」
『魔法少女よ、涙をこらえて紳士を撃て!来週は夕方から深夜まで!朝から昼の更新でお逢いしましょう!』
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