人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
『なに、言ってるの・・・皆を幸せにする魔法少女が、あなたの夢、でしょう・・・?だから、私はいつか、こうなる運命だったの。あなたが泣いたらダメでしょう・・・?』
・・・これは、夢・・・?胸が、苦しい・・・
『でもミラー!あなたがいなかったら、魔法少女なんて・・・あたし・・・!・・・ミラー、お願い、死なないで・・・!』
・・・これは、彼女の、夢・・・
『奇跡には、偉業には犠牲が伴うの。私一人で、世界の平和の礎になれるのなら・・・』
・・・とても、哀しい夢・・・
ミユ「──はっ・・・」
子ギル「居眠りですか?勿体ないなぁ。こんな面白い旅路なのに。退屈する理由が分かりません」
「今のは・・・」
「あぁ、夢を見ていたんですか?えぇ、それはきっと・・・『始まりの少女』の夢ですよ」
「始まりの、少女・・・」
「始まりの少女の固有結界、聖杯における特異点・・・魔法少女最後の地。その始まりの少女の夢ですよ」
「・・・・・・」
「魔法少女の概念、それは無情に現実に折れる華の名前。──それを変えられる者を、僕は待っているんです。だから・・・」
「・・・?」
「いい子にしていてくださいね。僕の願いに比べたら、君達の存在は石ころにもならない雑種なんですから」
「・・・っ!」
「さぁ、こんな僕を赦す必要なんかありません。来てください。そして見せてください。あなたが何を倒すのかを──」
「此処が、死せる書架の国・・・?」
海を渡り、宝石が指し示すままに脚を進めたリッカら魔法少女を出迎えし国。死せる書架の国。どんよりとした空、ロンドンの都市の様な建託物が立ち並ぶ厳かかつ文化的な町並み。そこに彼女達はたどり着いたのだが・・・
『・・・生命反応が全くない。名前通りの死せる国、冥界のような場所と言うことか。そこには敵も味方もいなさそうだけど・・・』
そう、ロマンの言う通り此処には生命の息吹が全くない。生きるもの、活動しているもの、何かを成そうとするもの。それらの存在の形跡が全くない。耳鳴りのするような静けさは一種の荘厳さすら感じさせる程だ。メルヘンのめの字もないこのうらびれた空間に、新たな魔法少女の登場など期待できそうにもないのだが・・・
「皆さん、見てください。あそこに黒く、巨大な壁があります」
アルトリアの示す向こう、そこにある湾曲しドーム状となっている黒き壁は、今いる国に隣接した、異なった性質の区域の現象であるとロマンは補足し、推測を告げる。その壁に阻まれ、あらゆる探知は意味をなさないと言う現象が起きているのが気掛かりではあるが・・・その答えを突き止められる要素は、未だ一行の手には収まってはいなかった
「どうする?ワールドエンドブレイカー撃ってみる?」
「止めときなさい。絶対跳ね返ってくるわよ。それより──」
ぐっちゃんが指差した先、イリヤの背後。其処に現れしものを告げる。生者ではなく、虚ろにこの国を徘徊する頼りない霊の存在・・・
「って、きゃあぁあぁ!?お化け~!?」
『────!』
「あぁそうだよね、お化けって怖いものだよね・・・それが普通の反応だよね・・・」
その擦れていない初々しいリアクションにほっこりしながら対処を行おうとしたリッカを、ぐっちゃんが制止する。どうやらあれは、敵意は無いようだと感じたようだ
「フラフラしているだけのようね、放っておきなさい。敵意も無いものをいたぶるのは悪趣味でしょう」
精霊、上位種の矜持として。弱者をいたぶり悦に入ることなど行わない。関わらない、必要がないならしない。謎は謎のままでいるか、そのうち解き明かせばいい。ぐっちゃんなりの持論を組み、リッカらは戦闘体勢を解除した
幽霊、ゴーストはそのままゆらゆらと徘徊し、黒い壁の方向へと向かい去っていった。戦闘の意思などなく、たださ迷っているだけの様子だ。再び戻った静寂に、イリヤはほっと胸を撫で下ろす
「あ、ありがとうございます、その、ぐっちゃんさん」
「・・・?何がよ」
「その、お化けさんを傷付けないでくれて。無愛想で怖い人かと思っていたけど、優しいんですね」
「・・・別に、優しいとかじゃないわ。精霊として、人間みたいな無益な殺生はしたくなかっただけよ。それだけ、それだけだから」
「ぐっちゃん先輩は本当に心優しき御方」
「先輩にはない慈愛を持つヒナコさんをこれからも宜しくお願い致します!」
「はっ倒すわよあんたたち!ここぞとばかりに弄らないの!敬いなさいよ先輩を!」
マシュとリッカに飛び掛かるぐっちゃんの姿を見て、自らの誤解を改めるイリヤ。どうやら皆、頼もしく優しい大切な仲間であることを再び強く認識する。あのゴーストから感じたもの、それを認識したイリヤにはあれが倒すべきものとはどうしても思えなかったのだ。だから、その判断は自分が下すべきものであった。それをぐっちゃんがすかさず行ってくれたのである
「皆、廃墟の中心に屋敷があるわ!行ってみましょう?」
アイリ、クロが偵察から帰還する。どうやら探索ポイントを発見したようだ。その報告を受け、一同が進むべき道を定義し定める
「よーし、じゃあ行ってみよう!遅れちゃダメだよ、イリヤ!」
「は、はい!ついていきます!リッカさん!」
それぞれ乗り物に騎乗、または浮遊し飛び立っていく。この国には何を待つのかを突き止め、そして特異点を攻略するために。少女達は死の静寂を突き進んでいく──
しずまって みみがいたいよ けものかな
~
上空から一望しても、黒と鈍色の配色以外に見られるものはなかった。ゆらめく焔のように徘徊するゴーストがいるだけで、そこに華やかさなど微塵もない。葬式や墓場、夜の静けさがまとわりつき耳が痛いほどである。まさに魔法少女達の行き着く果てとでも言うような有り様に、一同の背にうすら寒いものを伝わせる
本当に人っ子一人見られない。そんな静寂の最中を飛来していく魔法少女達、だが、一つの希望としては宝石が指し示した方角は進む方向と合っていると言うことだろうか。その先に必ず何かある。そう信じて見えてきた屋敷の前に降り立ち、耳鳴りのする静寂を振り切り顔を上げる
「此処が・・・廃墟の中心?」
小さな屋敷、誰も住んでいるようには見えない屋敷の門の前にリッカらが降り立つ。同時に宝石の輝きも消え去り、此処が目的地である事を告げているのだ。未だに人の気配はしないが、さて・・・
「よし!」
「いや良しじゃないわよリッカ、そこは拳を振り上げる場所じゃないわよね?」
「いやだってほら、廃墟なら力尽くじゃなきゃ入れないし、誰かが隠れてるなら何かしらアクション取る筈じゃない?ひとまずこっちから何かすれば変化が起きると思って」
「本当に廃墟ならそれでいいのだけれど、もしかしたら誰かが潜んでいたり、あえて接触を避けている場合もあるわね。その場合は・・・」
「どうしようもないじゃない。どうするのよ」
「こちらが会いに行くしかないわね」
「でしょー?」
「意気投合しない!結局やることは力押しじゃないの!インターホン鳴らすとか、呼び掛けてみるとか地道な努力を積み重ねてみなさいよ!」
「たのもー!!魔法少女のデリバリーですよー!!」
「いきなり叫ばないのビックリするでしょ!?あーもう、インターホン!インターホンくらいあるでしょ呼び鈴くらい!まずはちゃんと押してから・・・」
「ざんねん こわれている ようだ」
「よーし誠に遺憾だけど実力行使よ!リッカ、オルガマリー!やっちゃいなさい!」
「「了解!」」
成すべき事は成した。この手に限ると強行突破を成し遂げようとしたその時──
「・・・騒がしいのね。こんな魔力の枯れた荒れ地を訪れる魔法少女・・・本当に来るなんてね」
屋敷の門が独りでに開き、中から一人の少女がやってくる。理知的かつ聡明なれど疲弊した雰囲気、紫の短髪、動きやすげな軽装、アメジストの瞳・・・
「!この国の魔法少女さんですか!?『死せる書架の国』の!?」
「えぇ・・・その一人よ。応対が遅れてごめんなさい。気がつくのに遅れたわ。御詫びに、此処が何処かを教えましょう」
そう言って、屋敷の扉を開く。どうやら招き入れ、話をするようだ。この国、この場所の概要を、ただ告げる
「ここは魔法少女達の墓場。この廃墟の亡霊は魔法少女達の成の果て。あたしはただの墓守人。そして司書。女王でもなく、魔法少女だったのも昔の話よ」
「魔法少女の・・・亡霊・・・!?ナーサリーやメディアさんの世界の魂とは、違うの・・・?」
魔法少女達の成の果てと彼女は言う。この場所は如何なる場所であるのか。新たなる地にて、新たなる謎がリッカらを歓迎する。そこに広がるものは、果たして──
リッカ「あ、じゃあ話の前にさ、あなたの名前を教えてよ!ほら、大体察しはつくけど別人だろうからさ!」
「・・・亡霊に名前など不要ではないこと?・・・でもまぁ、名無しのまま話すのも面倒かしら。では・・・──エレナ。そう呼んでくださってよくってよ」
ぐっちゃん(やっぱりあのマハトマ好きと同じなのね、名前は)
「ただし、特に親しみを深めたい訳じゃないから勘違いしないこと。・・・ここじゃなんだし、私の書斎に案内するわ。全員変身を解いて。その方がいいわ」
クロ「なんだか随分とダウナーな場所ね。引き続き息が詰まりそう・・・」
『ルビーちゃんもどきどきの図書館突入!何が待つのか乞う御期待!・・・感じる悪寒が、気のせいであることを信じたいですがねぇ・・・』