『フッ、誂えたように我等に向けたがごとき目標を立ておって。確かにこれは我等抜きでは達成できはすまいよ。──どうやら、魔法少女として討ち果たすべきものが見えたな、エア?』
──はい。グラシャラボラスの願い、魔法少女の皆様の祈り。正しく形に成す為にも、今は・・・
(うん。今まで通り、リッカちゃんらを信じよう。最後まで歩んで、道が拓けたら。ボク達の出番さ)
《さぁ、花道を進むがいい財どもよ。我等が歩むに相応しい道筋を示すのだ。さすれば貴様らの成果の結実、他ならぬ我等が約束してやろうではないか!》
(それはいいんだけどさ、そのカッコでかっこつけてもしまらないぞ、オマエ)
《ふはは、いつもよりゆるめの王も悪くなかろう?・・・ふと思ったのだが、セイバーめの魔法少女姿は無いのか?》
──クラスカードの魔法少女も見当たりませんね?やはり特別扱いなのでしょうか?
(嫌がらせに呼ばなかったに一票!)
《おのれ、最早許さん!・・・もしやとは思うが、自主的に登場を辞退したというオチではあるまいな?》
──・・・アルトリアさんに限ってそんなことは無いと思いますが・・・真実は闇の中にしておきましょう。星空の全てを見渡すことが出来ないように・・・
《うぅむ、照れ屋なのも考えものよな。ふはは、いつでも我が頭上に輝くがよい我の星よ!その輝き、我はいつ何時であろうとも愛してやろう!》
──アルトリアさん関係で王の頭上に輝くのは死兆星では?
《ふはは!爆死だけにか!よい、座布団を持っていけ!》
──はっ!?
(死兆星を墓穴から見ることになったね、エア!)
《ふははははは!痛み分けよなエア!さぁ黒幕よ待っているがいい、我が財を添え物と侮るなよ──!》
「はぁー、すっごぉい。古めかしい本が壁一面に・・・」
エレナ。墓守と名乗り、かつての昔は魔法少女であった事を告げる少女に導かれるまま屋敷の敷居を跨ぐカルデア一行。書斎と言われるその空間には、イリヤが感嘆を溢したように数多無数の本が整然と並べられていた。一切の乱れなくきっちりと、なんの綻びもなく整頓されきっており、一種の威厳や偉容すらも漂わせる程の壮麗な雰囲気すらも感じさせる光景が其処に存在していた。魔法少女となっている一同らも同じように見上げ、また観入るなか・・・カタカタと震えるステッキの姿に、アイリが声をかける
「どうしたの、ステッキさん?お腹でも壊したのかしら?すごく震えているけれど・・・」
『ももも、もんだいありません・・・だだだ、だいじょうぶです・・・しし、知らぬがほとけですからねはい~・・・ルビーちゃんたちに力を貸してくれた魔法少女達がどれだけ強き意志の持ち主か再確認しちゃいました・・・』
「変なルビー・・・。あ、ライオンの御人形さんがある!」
『──・・・・・・・・』
そこには、声を発する事なく沈黙せしライオンの人形・・・カルデアのエジソンと瓜二つな人形が鎮座していた。今にも動き出しそうな造形でありながら、埃の厚さから観て随分と安置されていることが伺い知れる。もう、ずっと前から此処にあったようだ
「それはあたしの元パートナーだけれど・・・言葉を発しなくなってからもう随分と経つわ」
「えっ、パートナー!?」
『──・・・・・・』
『・・・こんな異様な光景は始めてみたな・・・どうりで探査が内部に通らない筈だ。・・・リッカ君、所長。マシュ、皆。その部屋の書物は、全てが魔導書なんだ』
「えっ。──そんなかしこさ高めな本が全部!?」
「リッカにはちょっと毛色が違う部屋ね。・・・説明を願えるかしら、エレナ女史」
ひどい!と抗議するリッカをアルトリアが手持ちのガムで宥め沈静化しているうちに会話に入る。エレナは言葉にする。この廃墟が何であるのか、その、名の由来を事細やかに
「えぇ。死せる書架の国、その名の由来をお教えしましょう。・・・この国にいる亡霊、そしてこの部屋の無数の書物。その全てはかつて魔法少女だったものたちの成の果て。この世界ですら救われず、燃え尽きてしまった不幸な少女たちの墓標。あなたたちに力を貸した未だ希望と、魔法少女の義務に燃えていた魔法少女とは違う、不幸な少女たち・・・それらは『
エコー。魔法少女の残響。かつてあった少女たちの名残。その残滓に過ぎない者達の亡霊の名称がそれだという。リッカらに力を貸した、まだ世界と希望を信じた霊達のネガ、あるいは反対。全てを諦め、堕ち果てた少女達の姿がこれだというのだ
「こうやって本になって、疲れた心と体を癒して眠っているの。魔法少女の多くは本が大好きだから。──あたしがこうして皆の管理、墓守をやっていられるのは、魔神が作り上げた国と力の象徴たる『宝石』を所持しているから。それだけ。・・・この世界が、特異点、固有結界が混同して成り立っているのはご存知かしら?」
特異点を産み出している聖杯の他に、それを補強している固有結界、それを作り上げているものがあるという。魔法少女を迎え、癒す筈の場を掌握している魔法少女がいるという
「固有結界の元凶、それは亡霊たちが囁く最初の魔法少女『ファースト・レディ』。世界の中心にある閉鎖空間、黒い壁の向こうにいる、と言われているわ。あの壁は聖杯の守護と結界の合わせ技で護られていて突破も破壊も、探知も不可能よ」
「えっ。メイヴじゃないの!?てっきりいつものメイヴクオリティかと!」
あれだけ自信満々だったからまた特異点を巻き込んだ決闘のお知らせかと思った・・・そう告げたリッカの意見を、エレナは否と告げる
「メイヴは魔法少女の一人。クラスカードの蹂躙にも、魔法少女達の戦いにも負けなかった強大な。でも、ファーストレディとは違う。・・・あなたは何故メイヴに拘るのかしら?聞かせてもらってもいい?」
「あ、はい!私はメイヴちゃんに借りがあって、こっちの子は・・・」
その返答を受けて、リッカはできるだけ分かりやすく事のいきさつを説明する。自分達は特異点を是正するために戦うこと、そしてイリヤの友達を救い出すために力を合わせている事。そしてメイヴは、自分達がより強き魔法少女になった瞬間に戦いを始めるといったスタンスであることだ
「・・・戦争と争いが好きなメイヴがおとなしいのはそういうわけか・・・平行世界の縁がメイヴに影響を?ファーストレディの影響すらはね除けるなんて・・・」
『ボクからも一つ。君は随分平行世界に対する飲み込みが早いんだね?』
英雄達の召喚、そして平行世界の縁。それらを容易く飲み込むエレナの知性に舌を巻くロマン。本来ならば平行世界の管理は魔法の域だ、力付くで交信を開いた御機嫌王でもあるまいに、それほど博識なのは驚くべき事である
「それは当然よ。神智学の知識もそうだけど、魔法少女の多くは様々な平行世界からこの場所へたどり着いた。あたしたちはもう、自分の世界では様々な理由で魔法少女ではいられなくなった存在なのだから」
ここに来るしか無かった。他に行き場所は無かった。そんなエレナら魔法少女達を受け入れる最後の流浪の場所がここだという。ここならば、望むのであれば魂だけでも魔法少女としてあることができる場所。終着の地・・・それをとある魔神が安息の地へと変えたのだという
「グラシャラボラス・・・彼は言ったわ。『終着なれど、平穏であれ』・・・そんな願いを受け、この場所は『魔法少女の誇り』を懐いた魂はお菓子の国や竜の国へ。疲れ、傷ついた魂はここへ来るようになっていたのだけれど・・・まさか、あなた達のような鮮烈な魔法少女が此処に来るとは驚きね」
正と負の差はあれど、共通しているものはある。それは願いを、奇跡を頼り自らを燃やし尽くした事。そして願いに殉じ消え去った事。二度と自分達の世界には、自分達の願いの先は見えないことであったとエレナは語る。燃え尽きておらず、今なお輝く魔法少女は珍しいと
「・・・・・・本当なら。本当なら、あなたたちに全てを任せて、知らぬふりを決め込んでいればいいのかもしれない。けれど、静かに沈黙していた筈の亡霊たちが囁くの。そして、告げているわ」
「・・・?」
「『あなたたちをしんじてみよう』と。かつての輝きを見たのか、それとも眩しいから引き寄せられているだけなのか、それは解らない。・・・けれど、魔神が、グラシャラボラスが告げたのよ。私に、魔法少女たちに。だから私達は、世界から弾かれた少女たちはこうして、僅かな想いを燻らせている」
『・・・何を告げたんだい?その魔神、グラシャラボラスは』
「・・・──『魔法少女達に過ちなど無い。過ちがあるとすれば、奇跡と願いの対価に犠牲を要求する世界の取り決めそのものだ』と。・・・だから私達は願っているの。だから、こうして・・・最後の希望を、手放せずに持っていた」
そして見せるは、魔法少女に託された魔神の宝石。数多の魔法少女に託し、力を宿らせなければならなかった宝石。少女達の祈りを束ねた、輝く玉石
「・・・これを託す前に、一つ聞かせて。あなた達は、『負けない』覚悟がある?メイヴにも、ファーストレディにも、走り抜けた先に絶望しか、魔女となる未来しか待っていない魔法少女の運命にも」
・・・──それを託すものの資格を問え。己ではなく誰かのために全能を手放すが如く、無垢なりし魂在るならば、この宝石は真に魔法少女達に平穏をもたらさん──
グラシャラボラスはそう告げ、自らの魂、肉体、精神の全てを捧げ宝石を練り上げた。いつかその命題が、真に尊く者の手により成し遂げられる事を信じて
そして、相応しきものに託すまで。お前達は在るがままに振る舞うがいい。それが世界に、他者に翻弄されしお前達の奪われた権利と自由である
故にナーサリーは魔法少女達と仲良く遊び、メディアは国を作り流れ着いた魔法少女らを保護し、エレナは疲れ果てた亡霊を守護し、メイヴはひたすらに己を磨き上げた。グラシャラボラスの、魔法少女達への手向けと自由として。そして、魔法少女達の希望と願いが詰まった宝石を真に扱うことの出来る者たちが、彼女らと心を通わせ手にすることを願って
「どうかしら。・・・答えを聞かせてちょうだい。あなたたちが救いたいのは友達?世界?私達?」
その願いに、命題に。相応しい者達か否か。気が付けばかたかたと本が、魔法少女達が揺れている。その視線は・・・イリヤと、リッカに向けられている。理屈は無用だ。ただ、メイヴと惹かれあう少女と、友達を求める少女の答えを望んだのだ
「ビシッと言ってやりなさい、リッカ」
「イリヤ?いつものアレよ、アレ」
「おうっ!!」
「う、うん!」
拳をばしりと鳴らすリッカ、驚きながらもエレナを見つめるイリヤ。その答えは・・・──
エレナ「・・・・・・」
リッカ「行くよ、イリヤ」
イリヤ「はい!せーの!」
リッカは息を吸い、全てに告げるように叫ぶ。イリヤもまた、負けないように声を上げる
「私達は運命と戦う!──そして勝ってみせる!!」
「ミユも、魔法少女の皆も、世界も・・・!私達は、何も諦めない!!」
エレナ「──・・・・・・そう。それが、答えなのね」
アル『──・・・、・・・・・・』
「・・・此処にいる子達も、決して運命を指をくわえて見ていた訳じゃない。けれど、力も願いも及ばなかった。・・・力だけでも、願いだけでもダメなのなら、両方を持つあなたたちになら。きっと」
そうしてエレナは託す。命題の鍵、それを成し遂げる一欠片。そのピースが一つ。諦感と、それを打ち砕く希望が詰まった宝石
「ヴリル、と名付けたわ。持っていって。それさえあれば──」
それを、受け取ろうとした瞬間──
【おぉなんと!なんと麗しく輝かしき想い!願い!それらを想うと胸の高鳴りが抑えられません!それを、それをこの手で汚すことを想うと──あぁ──!!】
廃墟に響き渡る狂気の声。見守っていた一同を我に返らせる程の叫び。一同が弾かれたように外に出ると──
【おぉお報われぬ子らよ!愛されぬ子羊よ!その悲嘆、その悲劇!私が余さず救い上げよう!さぁ集え、此処に集え!今此処に!我等が主へ!少女達の哀しみと嘆きを捧げよう──!!】
エレナ「魔法紳士・・・!いつの間にこんな・・・!」
それは、廃墟に蠢く巨大なる海魔。魔法少女の無念を食らい尽くす巨大なる紳士の具現──
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