人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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小説執筆中に、隣で友人がバンドリの二周年放送を見ていて、その企画に『ストーリー総文字数』なる記録があったのですが、二年間で248万くらいだったそうです(記憶違いだったらすみません)

ともすれば文字の羅列でしかないそれが、受け取る人達がいてくれれば二年間の思い出の詰まった誇らしい記憶になる。そこに、作り手と受け取り手の絆を感じられずにはいられません

皆様、いつも本当にありがとうございます。300万を越える文字と思い出を紡げたのは、皆様がいてくださったからに他なりません

我ながら、『いつも御礼いってんなこいつ』と思っておりますが、感謝の気持ちは減らないので問題ないと信じています!

長々と申し訳ありません!本編をどうぞ!これからも共に歩んで参りましょう!


リッカ「行こう!皆!あ、エレナはここで待ってて!」

エレナ「・・・分かってるわ。私が行っても・・・」

「違う違う!『休んでる魔法少女の先輩たちを守ってあげて!』それは、あなたにしかできない戦いだから!」

「・・・!」

「じゃ、行ってくる!すぐ帰ってくるから!」

「・・・──あの子・・・」


魔法紳士青髭──審美眼EX──

【今再び!我は崇高なる使命と理想を胸に立ち上がろう!!おぉ豊かなる胸を好む者は集うがいい!たおやかな金髪を欲するものも集うがいい!私が率いる!私が統べる!我等の狂おしき渇望は必ずや天に、聖女に届く!!】

 

 

見た者の正気を削り取り、狂気を誘発させるおぞましき海魔に埋まりし魔法紳士、青髭が高らかに叫ぶ。それは理想の魔法少女の条件、同志を呼び募る呼び掛け。頼んでもいないのに高らかに静寂を切り裂き天を震わし叫び奉る祈り、願い。それこそが──

 

【故にこそ!我等は終末の楽器に勝る声音にて叫ぶのだ!!おぉ──聖女よ!!神風魔法少女ジャンヌの降臨を──!!!

 

 

「聞いてもいないのに性癖と嗜好を叫んでるんだけど、あのおじ様・・・アレ、バーサーカーじゃないの?」

 

『最近はしゃべらないバーサーカーの方が珍しいとは聞きますが、あんなに意識が明瞭なら精神汚染が有力かと。ほら、サイコパスはまともな人がなるのが怖いのですし?』

 

「ジャンヌさんって・・・あの、美味しいスイーツを振る舞ってくれた人?えへへ、美味しかったなぁ・・・」

 

いろんな意味で認識の齟齬が起きてはいるものの、この状況は容認していい場合ではないのだ。巨大なる魔物が唸りをあげており、国を蹂躙せんと蠢いている。恐らく、魔法少女ジャンヌ降臨の為の魂食いを行わんとしているのだ。触手を伸ばし、霊を・・・魔法少女の魂を捕らえんと錯綜している。手をこまねいている状況ではない。早急な対処が求められている

 

「クラスカード、『シャーロック・ホームズ』。──初歩的な事だ、友よ」

 

見ると即座にオルガマリーが推理、推論、宝具を展開し現状打破の策を練り上げる。持論を勿体振る事はしない。必要なのは迅速さ、正確さ、そして鮮烈なるスマートさだからだ

 

「リッカ、マシュ、ヒナコさん。それぞれ火力に秀でたカードで進行を食い止めてくれるかしら。リッカはジャンヌ・オルタ、二人はバーサーカーが適任ね」

 

【「「了解!」」】

 

暗黙の了解でなのはのカードは護るべき国が無くなってしまうのでやむなく封印。早急にカードをインストールした三人が陸路と空路から海魔を滅多撃ちに蹂躙する

 

バーサーカー、ランスロットの戦闘機、そして両手に持ったバズーカを撃ちまくるマシュ。甚大な損傷と損壊、再生速度をやや上回る勢いで片端から最新兵器の宝具を叩き込んでいく。その苛烈さ、激しさは内に秘めた激情を現すが如く他の追随を許さない

 

【先輩ぁあぁい!!素敵で無敵なマシュ・キリエライトをよろしくお願いしまぁあぁあぁす!!!】

 

【おぉお紫のジャンヌ!紫のジャンヌ!!その救世の願いが詰まった豊かなる胸が何よりの証!!おぉ我が願いが既にこの様な形で叶うとは──!!】

 

海魔を火の海に焼かれながら恍惚に目を潤ませるジル。本来なら有り得ない誰彼構わぬジャンヌ認定。彼に備わっている芸術審美が理想によりねじまがり発揮されていないのだ。その醜態は何よりジル自身が有り得ぬと断ずるもの。魔法紳士は似て非なるものだと認識し痛感しつつ、じゃんぬの姿となったリッカが剣を振り上げる

 

【曇った目、歪んだ審美をこれで糺して上げるよ!──焼き尽くしちゃえ!じゃんぬ!!】

 

呼応させ、立ち上る火柱。じゃんぬの憤怒を具現化した苛烈なる火柱に火焔。夜闇と絶望、憎悪をくべて燃え上がる焔に、感激し涙を流すほどに感じ入るジル。最早戦っているという認識すらないかもしれないほどに自らの理想に陶酔しきっている

 

【おぉ──おぉ──これが我が聖女を焼いた炎、我が聖女を害した焔・・・!それを他ならぬあなたが!ジャンヌあなたが振るうとはなんたる後世の皮肉!神よ、最早あなたの手より聖女は解き放たれたのです!!この熱こそがその証──!!】

 

 

「付き合ってられないわね・・・阿片でも吸って閉じた世界でやってなさいよ・・・!」

 

最愛の夫・・・項羽のカードを展開するが、比類なき汚物に使用するのを躊躇ったのか限定展開における覇気の放射。──ただそれのみ、それだけの攻撃により、蠢いていた触手は分解霧散し吹き飛び、寂れた建造物のガラスが全て割れ飛ぶ程の武威を示す。暴風のような覇気の奔流はぐっちゃんを中心に、災いの根幹足る海魔の末端を消し飛ばしていく

 

【おぉ──世話焼き!世話焼き先輩のジャンヌ!それは例えるなら学舎にて甲斐甲斐しく世話を焼いてくださる美人の先輩の様な!素晴らしい!!しかしジャンヌ人付き合いを恐れ召されるな!勇気を出して!歩み寄るのです!!】

 

「何よその具体的なアドバイスは!余計な御世話だっての!ほら、さっさと次に進みなさいよオルガマリー!」

 

再生に専念する為攻撃も捕食も叶わぬ状態に持ち込む。今まで様々な強敵と戦ってきたのだ、今更大きいだけの存在にかかずらい苦戦する道理はない。第一段階の御膳立てを完遂した事を確認するオルガマリー。その計画の王手を迅速にかけていく

 

「アルトリア、これから海魔の中心足る青髭の座標を教えるわ。イリヤ、クロ、アイリの援護を受けて、ベディヴィエールの宝具にて青髭を一閃しなさい。それでチェックメイトよ」

 

「エクスカリバーは範囲と被害が不味いと言うことですね。了解です。アルトリアカッターでデッドエンドしてあげます」

 

「幸い、この夫婦剣はあーいうグロいのを斬るために作られたの。ばっちり周りの肉をカットしてあげるわ!」

 

「任せて!片っ端から手榴弾とか投げちゃうから!」

 

「は、はい!負けられないから、怖がってなんていられない!」

 

三人の同意を受け、アルトリアがベディヴィエールのクラスカードを手に取り夢幻召喚の準備を行い、魔力放出による中核の一閃を執り行わんとした・・・その時であった

 

【む、むむ──!?あなたは!おぉ──その気高い眼差し、たおやかな金髪間違いない!あなたこそは──!!】

 

「ほぇっ!?」

 

想定外、かつ計算外な事態が起こる。排除すべき肉の防御を解除し、隠すべき本体を展開し、アルトリアに対し言葉を投げ掛けて来たのだ。ジルの目に写るもの、それは怪訝な顔をしているアルトリアのみ・・・

 

「何を・・・、・・・──まさか」

 

精神汚染のスキル、それの厄介さと悪辣さを思い至ったオルガマリー。次に起こる悲劇と惨劇を最小限、最低限に納める手を先んじて打つ。『レオナルド・ダ・ヴィンチ』のカードをインストール、被害を想定、相殺に必要なエネルギーを生成し──それは、起こった

 

【色気の無い方のジャンヌ!色気の無い方のジャンヌではありませぬか!!おぉお私は何れ程に満たされれば良いのか!!あなたが神かあなたこそ神かァ!!】

 

「────」

 

あっ・・・。一同の反応とリアクションが一致した。致命的な地雷を踏み抜いた。最早鎮めるべきは魔法紳士等ではない。逆鱗を踏みにじられた赤き竜のマスターであるのだが・・・

 

【比べるべくもない平らな胸がその証!!実に残酷な勘違いなど私は致しますまい、それが!転生の後にあなたが取った姿であるというのなら!私は総てを受け入れましょう!!清貧(ひんにゅう)もまた素晴らしき美徳(ステータス)であると!!おぉ、おぉ、この胸の高鳴りをなんと表現するべきかァ──!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あ、アルトリアちゃん?大丈夫?気にしないでいいのよ?ほら、あの人大分アレな人で話が通じない人だからあなたの魅力なんて何一つ・・・」

 

青ざめながら宥め、鎮静させようとあの手この手で励まし、落ち着かせようとするアイリ。その努力、常識的な観点からなる諫言と助言と制止は──

 

「────大丈夫ですよ、アイリスフィール。私は冷静、極めてクールです。病原菌が蔓延る村で自分だけが狂っている事に気付いていない少年くらいクールです。だからこそ、極めて冷静かつ客観的に・・・」

 

手にしたのは──三枚のアルトリアのカード、そしてベディヴィエールのクラスカードをインストールし──

 

「極めて冷静に──討伐します(ぶっころします)

 

「やだ!全然冷静じゃないわこの子──!」

 

黒き聖剣、白き聖剣、そして勝利すべき黄金の剣。そしてそれらを束ねる銀の腕が高らかに掲げられ──今、騎士王の冷静で的確な判断が炸裂する──!

 




ロマン『はっ──!?み、皆待避だ!はやく範囲外から逃げるんだ!三つ、いや四つの聖剣解放なんて下手をすれば特異点が保つかわからない!巻き込まれたらただじゃすまないぞ──!!』

リッカ【マシュ!ぐっちゃん回収はやく!】

マシュ【了解です先輩!!先輩もお早く──!】

「え、ちょ、あんなキャラだったのアルトリアって──!?」

アルトリア「輝ける生命の奔流、邪悪を断て。個人的に極光を判定させ、不敬者を完膚なきまでに消し去る光を──」

イリヤ「なんだか凄く物騒な事言ってるー!?落ち着いてアルトリアさん!聞き流してー!?」

ルビー『この適合率・・・!まるで同一人物のようなシンクロぶりです!まさか聖剣まとめて召喚からの一斉とは!?フィードバックとか大丈夫なんですかねぇ!?』

クロ「ダメね。女の子には譲れないものがあるのよ。デリカシーもなく男に踏み荒らされたら・・・もう、やるしかないじゃない?」

「なんでそんなに納得してるのー!?」

「『約束された(エクスカリバー)』──」

振り上げられんとされる手刀、下から上へ放たれる魔力の放出を刃として、眼前総てを叩き斬る規格外の一撃を──

ロマン『えぇい、こうなったらいちかバチかだ!所長!その海魔空中に転移させますから軌道を──!』

そのロマンの提案に、頷く暇は無かった。魔力が解放されるのと、オルガマリーの魔力塊が放たれるのは同時で

「『滅殺の剣(アガートラーム)』──!!!!」

「『万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)』──!!」

叩き込まれた膨大の光の激流、計算しきった軌道反らしと相殺、入射角に撃ち込まれた魔力が弾け──

【おぉ──!!!!】

空中にロマンの手で移動された海魔、ジルが最後に見たのは、かつてのように──目映く輝く穢れなき光──

雲を吹き散らし、夜空を切り裂き、放たれた必殺の一撃。空を走る光が消え去るに数分の時刻を要し、世界に魔法紳士がいた痕跡が完全に消え去る頃には・・・

「──スッキリしました」

疲弊にへたりこむ一同と、シャッキリとご満悦なアルトリアであった・・・

・・・余談だが、王の聖剣を指揮する立場という畏れ多くも程があるクラスカードの使われ方をされたベディヴィエールもまた申し訳なさにて瀕死となったと言う──

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