人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

670 / 2536
ギルくん「あぁ、もうすぐ此処に皆さんが来ますね。あっという間で、名残惜しいような気がします。待ちわびていた筈なのに・・・今まで拘束、御苦労様でした」

ミユ「・・・ここに、イリヤが・・・皆が・・・」

「はい、というわけでそこのステッキさん。道案内をお願いします。迷ってこれなかったでは哀しいですから。囚われの景品に、きっちり導いてくださいね」

『・・・っ。・・・美遊様、暫しのご辛抱を・・・!』

ミユ「サファイア・・・。・・・お願い」

ギル「僕も準備をしておかなくちゃ。とびきりのクライマックスを体験してもらわなくちゃ王の名が廃りますからね。あぁ、楽しみだなぁ──僕に何を告げてくれるのか。楽しみにしていますよ。エアさん──」


女王の意地──負けっぱなしじゃ終われない──

「──ようやく、ようやく来たようね。藤丸リッカ。いえ──魔法少女アジダハ☆リッカ」

 

雪華とハチミツの国。その中央に位置する城。メイヴの寄越した戦車の猛烈な特急により、あっという間に其処へと一同は導かれ、あれよあれよという間に玉座へと招かれた。くだらないイベントも、面倒な前戯も後回し、或いは不要と断じるが如く。リッカらを国の中枢、逃げ場のない興亡の決戦なる舞台へと招き入れたメイヴ・・・魔法少女コナハト☆メイヴが感慨深げに呟き、鞭を一鳴らしして魂に刻まれた宿敵の来訪を言祝ぐ。その瞬間を、それこそ永遠と言えるほどに待ちわびたと言わんばかりだ

 

「初めて会った頃のアナタとは別物。いいドレスに背負ったプライド、支える仲間達がアナタを魔法少女に変化させている。しっかりと存在を保たせている。いい、いいわ!禁欲して、支配も蹂躙も我慢していた私に相応しい仕上がりよ!えぇ、なら──持っていきなさい」

 

うっとりと呟き、傍にいるミニクーちゃんの溜め息も構わず、メイヴはとあるものをリッカに投げて寄越す。それは魔法少女としての願いと力の根幹。己の祈りと願いを叶える魔神の形見。巨大なる宝石──

 

「それがアナタ達の欲しがるものでしょう?いいわ、リッカの奮闘に免じて恵んであげる。これであの漆黒の城、空間に出入りすることが叶うわ。ファースト・レディを打倒することも叶うかもしれないわね?無論・・・」

 

「あなたを倒して、ここから出られれば、だよね。メイヴ」

 

「そういう事よ。狂い果てた魔法少女達も、差し向けられた魔法紳士も皆私がいただいちゃったもの。後はアナタが私を倒して国を出るか、私がアナタを屈服させて世界の支配と蹂躙を始めるか。二つに一つしか有り得ない、というワケ。お分かりかしら?」

 

そう、メイヴにとっては何よりも優先し、討ち果たし、越えなくてはならない渇望であった。此処ではない何処かで、この身は確かに目の前の女に負けた。戦い、戦い抜いてその果てに敗れた。その事実が、魔法少女たるメイヴを猛らせ憤らせたのだ

 

負けるのは百歩譲って良しとする。敗北したならば必ずや立ち上がり屈服させてやるために足掻けばいい。勇士であるならば必ずや振り向かせるために努力もしよう、懸命に抗うこともしよう。・・・だが、かつての自分が負けたのは勇士でも、男でも、英雄でもない。ただ、今を生きる人間であったという。そんな事実を、記憶ならざる記録を刻まれた魔法少女メイヴはどうしても容認できなかった

 

女。ただの邪魔者として蹴散らし殺すだけのもの。歯牙にもかけないただの邪魔者。そんな取るに足らない筈の存在に。あろうことか、なんということか『身も心も敗北した事』を受け入れた自分がいるということが、何をおいても納得できなかったのだ。

 

「アナタの顔と声を聞くたびに、私の心が雄々しく疼くのよ。体感した事の無い昂り、負けてたまるかと張り合う意地。なんの飾り気のない、子供のような稚拙な負けん気!女王の業務が何も手につかなかったわ、ファースト・レディの野望もグラシャラボラスの願いも何処かへ消えてしまったわ。だってそうでしょう?女王であり、魔法少女である自分が。『敗北の苦汁』をたっぷり飲まされたまま女王を名乗れるのかって話よ!」

 

負けっぱなしでは終われない、負けたままでは自分は自分でいられない。その為にも自らの手で自らの復讐を果たす。女王メイヴとしての誇りに、譲れぬ傷と汚れをつけたというならば。それらを全て叩き返してやらなくては何も始められないのだから

 

「夢も、希望も、愛も、勇気も!支配も隷属も全ては二の次よ。私は全身全霊を懸けてアナタを、カルデアの魔法少女たるアナタを倒して本当の意味で私を始めるのだから!」

 

するりと手袋を取り、リッカに向けて投げ付ける。それこそが始まりと告げるように、それこそが礼儀だと表すように。かつてのように、決闘の礼をリッカに向けて厳かに行う

 

「来なさいリッカ!私がアナタの前に立ち塞がる最強の魔法少女──。ファースト・レディなんかに、紳士の契約に渡したりなどしない。アナタを倒して跪かせるのは、私なんだから──!」

 

「──望むところ。その為に私はここまで来たんだから!」

 

その手袋を、逃げることなく掴み取るリッカ。その渇望がメイヴの源泉であるように、自分自身も譲れない想いで此処にいる

 

目の前にいる相手が自分との戦いを望み、熱望している。倒さなくては、乗り越えなくては終われないと。熱く激しく求めている。護るべき国すら脇に置き、護るべき宝石すら投げ渡し、ただ尋常なる決着を一途なまでに願っているのだ。それに答えずして何が女子か、何が魔法少女か。その想いを受け止めるための力は、既にこの手にあるのだから

 

「アナタを倒す、魔法少女メイヴ!ここでどちらかが倒れなくちゃ進めないなら──あなたを越えて先に進む!魔法少女と、私達の未来の為に!」

 

「ふふっ、魔法少女らしい大きい夢ね。それでこそ──さぁ、纏めてかかってくるといいわ!」

 

一対一の戦いなどにメイヴは頓着するつもりは無かった。仲間がいるなら仲間に頼り、力を合わせるなら合わせるがいい。乗り越えるならば全身全霊を。その決断に異を唱えはしない。沢山の相手にめちゃくちゃにされるのも、特別に認可、容認しようとも。その果てにある勝利は、きっと座に刻まれる程に輝く筈だから

 

【──いや、悪いが俺も含めた外野には別で争ってもらうぜ。具体的には俺が相手だ】

 

短く呟き、その覇気と殺意に満ちた小さな身体を以て笑うミニクーちゃん。正直なところ、今のメイヴは最高に傑作の馬鹿っぷりを見せ付けている。大局よりも、支配よりも。自分の誇りをかけて相手を乗り越えようと意気込んでいる。要するに──

 

【女の挑戦を阻む野暮はしねぇよ。好きなようにやりやがれ、メイヴ】

 

「ありがと、クーちゃん。──愛してるわ」

 

【ケッ、飽きるほど聞いた。さっさと蹴散らして道草を終えやがれ。やることなすこと、山積みなんだからよ】

 

『フッ、そうでなくてはな狂犬。貴様の棘と我の財、どちらか鋭利に輝くのか決めるのも一興よ』

 

ギルガメくんが降り立ち、一同に号令をかける。リッカ以外の魔法少女が戦闘体勢を取り、たった一人の使い魔、ミニクーちゃんに挑まんと走り出す

 

「クーちゃん、任せるわね。──さぁ行くわよ、リッカ!背負うものが多ければ多いほど強くなるのが魔法少女!この魔法少女の国を巡ってアナタが何を背負い、どんな魔法少女になったのか・・・!私に見せなさい!」

 

「何度だって乗り越える!困難も限界を越えて、勝利と未来を掴む!それが、私の決めた魔法少女としての歩む道だから!」

 

手にしたクラスカードをインストールし、己の姿を彩る二人。最愛のケルトの勇士達の力を束ねたクラスカード、深く絆を結んだクラスカード。その儀式を以て・・・

 

「さぁ──」

 

「勝負しようか!!」

 

重く螺くれた螺旋の剣、巨大な刀、煉獄をつばぜり合い、二人の魔法少女が互いを真っ直ぐ見詰め火蓋を切る

 

此処に、一つの決着。最強の魔法少女を決める女の戦いが幕を開ける──!!




イリヤ「エレナさん、下がっていてください!あの使い魔は、私達がなんとかします!」

エレナ「イリヤ・・・」

イリヤ「リッカさんみたいにカッコよくは言えないけれど・・・私にも、皆にも!譲れないものはあるんだから!だから、絶対負けられない!」

エレナ「・・・えぇ、魔法少女って、そういうものよね・・・」

イリヤ「だから見ててください!一歩だって譲らない、諦めないんだから・・・──!」

ルビー『燃えたぎるイリヤさん!そして始まる最強決定戦!勝つのは果たして!明日の更新で、お会いしましょ~!』


ミニクーちゃん【なんだテメェのその格好は。使い魔の真似事なんかしやがって。何に仕えてやがる】

ギルガメくん『解らぬか?まぁ無理もあるまい。少なくとも、我が仕えるに値する魔法少女など一人しかおらぬのだがな。まぁそれはよい──どちらが真に最強の使い魔か、雌雄を決するも悪くなかろう!』

【抜かせ、テメェも俺もふざけたナリで取り合う王座があるかよ──!】

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。