人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガメくん『ふははははは可愛らしいではないか幼獣よ!そんな甘噛みしかできぬ有り様で我に挑むと?片腹痛いわッ!!』

ミニクーちゃん【テメェも人の事を言えた義理か。御得意の財宝もまともに使えねぇんじゃテメェに何が残るよ】

ギルガメくん『ハッ──』

ミニクーちゃん【ッ、──】

『──嘗めるなよ狗畜生風情が。貴様の行う戦法なぞ、全て塾で受講済みよ!!

──あっ!ここケイローン塾でやったところです!

【・・・塾なんか通ったのかテメェ】

『動物会話が要りようだったのでな』

【・・・・・・】

『・・・・・・』

──えーと、クー・フーリンさん対処マニュアルは・・・『ホットドッグは別に狗の肉を使っているわけではありません』・・・えっ!?そうだったのですか!?

【シャアァアァア!!!】

『ふははははははは!!!』

ゴルドルフ『とりあえずマスコットのレベルじゃないよねこの戦いの規模!?なんで殴りあいの余波で辺りが吹き飛んでいくの!?』

ぐっちゃん「ポケットモンスターよねこれ!?」

イリヤ「どうやって介入すればいいのー!?」



ケルトを体現せし女

【はぁあぁあぁッ!!】

 

「うふふ、あははっ!」

 

玉座にて行われる決戦、互いのプライドを懸けた全身全霊の戦い。魔法少女としての己の矜持をぶつけ合い凌を削り、魂を叩きつけ合う二人の女子。魔法少女であるが故の特殊な力、クラスカードを使用した英雄の力を振るい互いを倒すために最大火力を叩きつけ合う

 

リッカはアルターエゴ、沖田ちゃんのカードを使用し、極限の歩法により、メイヴのインストールしたセイバーカード『フェルグス・マック・ロイ』の型破りかつ出鱈目な剣術と打ち合う。髪が腰まで伸び、それを束ねた黒甲冑と身の丈以上ある煉獄を振るい、超高速の剣にて剛力極まる剣を打ち払っていく

 

「そうそう、その感じ!じゃあ避けなさい、当たったら終わるわよ!」

 

ジャケットを上半身裸の上から着込むという攻め攻めな姿のメイヴ。力の限りにカラドボルグを振るい、剣ごとリッカに叩き付け吹き飛ばす。空中にて投げ出された形となるリッカに向けて──

 

「『愛しき人の虹霓剣(フェルグス・マイ・ラブ)』──えいっ☆」

 

可愛らしく、可愛らしいのは掛け声だけな虹色の大回転フルスイングをリッカに向けて叩き込む。それは天と地を大回転させ地形を完膚無きまでに破壊する超絶剣技。アルスターサイクルの誇る無敵の勇士フェルグスが得意としていた宝具、虹色の螺旋の奔流であった

 

【ッ──!!】

 

巻き込まれたらどうなるかなど語るに及ばず。極地による空中移動にて力尽くで攻撃範囲から逃れ体勢を整え壁を蹴り顔を上げたリッカの目には、驚愕なる光景が広がっていた

 

背後にあった城の外観が、豪奢なる城が消し飛んでおり──否。『遥か向こうに見えていた山が叩き斬られていた』。震え、鳴動する山の崩落が耳に届く。本来の使い手が、怒りに任せた腹いせの雑の一振りで三つの丘を切り裂いたのだ。それを深く知り、相性を完璧に獲得しているメイヴであるならば──

 

「避けてくれたのね、お利口よ!さぁ、ガンガンいらっしゃい!」

 

【今更山が斬られたくらいでぇっ!!】

 

こちとらウルクで大怪獣決戦を繰り広げた女子である。スケールの感覚ならとうの昔に狂っているのだ。恐れなんてコーンフレーク山盛りをかっ食らう勢いで飲み干している。当たらなければどうということは無いのだ。ならば当たる前に一気呵成に倒すのみ!

 

【はぁっ!!】

 

短い掛け声と共に瞬時に間合いを詰め、剣を直撃させるレンジに移行し、大太刀と思えぬ異次元の太刀筋を展開しメイヴを圧倒せんとするリッカであったが──

 

「ごめんなさいね?『もう観ているの』、それ」

 

信じられない事は更に続いた。アルターエゴ、抑止の守護者たる沖田ちゃんの剣技が『全て見切られている』。薙ぎも、払いも斬りも打ちも。全てを髪の毛一つ立てず優雅に髪をかきあげるメイヴに傷一つつけられない。──太刀筋を見切っているというのには語弊がある。メイヴは女王なのだ、戦士の技術は拙くて当然だ。ならば見えているのは──

 

【──未来視・・・!】

 

「正解!それと私は生理的に無理だから使いたくは無いけれど。相手がアナタだもの、特別よ♥」

 

『親指を舐め』、極限まで高まった智恵にて『見据えた未来を実行する』。メイヴが行うその動作にて察するリッカ。──サーモンありなん!鮭だけに!

 

愛しい私の未来視(コンホヴォル・マイ・ラブ)、そしてクラスカード、フィン・マックール。未来視と智恵の二点セット♪回避と先読みは完璧よ!」

 

かつての夫、そして生理的に無理な嫉妬に狂った騎士団長。その宝具とクラスカードの合わせ技。起こす効果は絶対回避。愛しきものの力を惜しみ無く使い、リッカの行うべき行動、そして取るであろう行動を完璧に予測しているのだ。豪奢で高貴な鎧を纏うメイヴの投げキッスは余裕の現れだ。全てを見ているとの挑発なのだ

 

「さぁ、私の本気を見せてあげると言ったでしょう!こんなものじゃないわよ!」

 

クラスカード、限定展開。『ディルムッド・オディナ』の二本の槍を持ち飛び掛かるメイヴ。魔力防御を貫く破魔の紅薔薇、与えたダメージに治癒不可の効果を持つ必滅の黄薔薇の二本責めでリッカを生い立てる。その付属効果が厄介に過ぎるため、リッカは回避に専念せざるを得なくなってしまう。何より、クラスカードとの同調、MS力が圧倒的なまでに高く、凄まじいまでの能力解放に繋がっているのだ。これほどまでの宝具使用など魔力の枯渇を起こして然るべきなのに、そんな素振りは欠片も見せない──否。文字通りメイヴは全てを懸けている。魔力の全て、己を構成するエーテルの全てを使用し。燃え尽きる蝋燭のように戦っているのだ。何故そのような真似をと聞かれればメイヴは答えるだろう。──燃え尽きる寸前が一番輝くからだと!

 

【ッ、はぁッ!!!】

 

「あら、凄い!」

 

沖田ちゃんの剣にかけて、負けっぱなしで終われる筈がない。気迫一閃、アルスターサイクルと比べどうしても同調力と嫉妬と簒奪の騎士達への嫌悪感から乱雑な扱いとなっていたディルムッド、フィンの槍を一瞬の隙に捩じ込む形で叩き斬る。攻勢であった状況から一転、丸腰になったメイヴにリッカは情け無用と幹竹割りにて一刀両断しようと試みたが・・・──更なる手札を、メイヴは所持していたのである

 

【──!!】

 

「ありがと、フェルディア♪愛しているわッ!」

 

身体を刀が透過することは無かった。フェルディアのクラスカード、セイバーの力を使い何者も通さぬ鋼鉄の肉体を再現し防御していたからである。コンホヴォルはともかく、フィンの智恵などまるきり期待していてなかったため、懐にコノートの勇士、フェルディアを偲ばせておいた。未来視くらい、この宿命の相手は回避するであろうと確信と信頼をもって。油断も慢心も無いメイヴの戦い。あらゆる力が、あらゆる勇士がこの女王の力。その言葉とその称号のに矛盾は無い。文字通り『メイヴ大好き連隊アルスター』なる魔法紳士達を力尽く、そしてたった一人で薙ぎ倒したメイヴであるからこそ取れる、覇者の戦法である。なんのことはない、この女王は勇士を支配するものであるから──

 

「行くわよフェルディア!『愛しき私のラリアット』──!!!」

 

【うぁあぁあっ!!?】

 

リッカの御株を奪う、力任せのラリアット。鋼鉄の肉体を生かした力こそパワーの渾身の一撃。喉元に直撃したリッカの身体が空中で三回転し、受け身を取れぬほどに凄まじい勢いで叩き付けられ、甚大なるダメージをもたらす。フェルディア、クー・フーリンのライバルにして親友。その一撃は、決して軽いものではない。まともに大理石の床に叩き付けられ、肺の空気が全て吐き出され血へどを吐くリッカ

 

【──強い・・・ッ!】

 

勇士として、女王として。勇士の、戦士の全てを我が物としている。未来視、回避、硬化、火力・・・全てを兼ね備え、惜しみ無く振るう。戦士としてではない、女王の意地と矜持にて好き嫌いも、何もかもを投げ捨ててただ勝つために。これが魔法少女コナハト☆メイヴ。支配と女子の意地が形となった存在──

 

「えぇ、そうでしょう?次は絶対に無いわ。私が勝つ。その為に戦っているのだもの。その為に戦ってきたのだもの」

 

仰向けに倒れているリッカに、馬乗りとなり顔を近付け瞳を覗き込む。全く知らないのに、覚えが無いのに。この女こそ私のライバルだと疑わなかった相手。──瞳を見て、危うく魂が抜かれそうな感覚を味わいくらりとしてしまった。メイヴはその眼差しにこそ満足を示す

 

微塵も諦めも恐怖も見えない金色の瞳。幻想の竜種のような黒く細い瞳孔。アイコンタクトでもしているのか、オシャレな紋様。じっと見詰められていると、どうしようもなく身体が昂ってくる程に凛々しく、雄々しく、自分の事を見上げている

 

「たまらないわ、たまらない──!現代に、こんなつまらない時代にあなたみたいな女がいるなんて!・・・ねぇ、だからこそ。そんなものじゃないわよね?」

 

まさかこれで終わりな筈がない。こんな一方的では張りも何も存在しない。どれだけこの瞬間を待ちわびたのだと思っているのか。どれだけこの瞬間を待ち望んだと思っているのか。後は特製の蜂蜜酒を口移しでもしてあげれば、こちらの勝ちだと言うのに──

 

「私が知らない、でも焦がれたあなたはそんなものじゃないでしょ?やられっぱなしで、何もできずに私にかしずく筈がないわよね?」

 

【──・・・】

 

「・・・何黙ってるのよぅ!女王がこうやって話し掛けているのよ!答えなさい!こーたーえなーさーい!」

 

倒れ込むリッカの頬を引っ張るメイヴ。先程の充足感は何処へやら。この目の前の存在の、不甲斐ない姿など見ていたくない。胸の矛盾のままにリッカに激を飛ばす

 

「何をなすがままにやられてるの!あなただって魔法少女になったんでしょう!?認めないわ、認めない!『あなたを意識していたのが、私だけなんて認めない』!」

 

【メイヴちゃん・・・】

 

「ねぇ、強いでしょう?たぎるでしょう?燃えるでしょう?あなたとの決戦に相応しい私になったでしょう?」

 

そう、決戦なのだ。ライバルとの戦いなのだ。だからこそこんなにも自分は高ぶっている、自分は満ち足りている。その感覚は本物だ、狂おしいまでに。だからこそ、なればこそ──

 

「言わせないわよ、『全部私の独り善がり』だなんて!自慰だなんて言わせないわ!あの人以外に、『私の事が眼中に無い』なんて言わせないんだから!」

 

この感覚は互いに繋がるものであってほしい。私も気持ちいいのだから、あなたにも気持ちよくなってほしい。一人遊びではダメなのだ。対等とはそういうものだから。ライバルとは、友情とは、きっとそういうものだから

 

「ほら、立ちなさい!私にあなたを攻略させなさい!いつまで寝ているのよ!立たないと本当に殺すわよ!はやく!はやーく!」

 

【あいたたたっ!?】

 

ビンタの乱れうちにてリッカを気付けするメイヴ。勝つならば初見殺しでは意味がない。全てを出しきり満足して逝きたいのだ。不完全燃焼とか有り得ない。ましてや待ちに待った戦いなのに!そんな『少女』のようなプライドに──

 

【──うん、ありがとう。こんなに私に張り合ってくれる英雄がいてくれるなんて、本当に私は幸せものだよ】

 

リッカの決意、その言葉をメイヴに告げる。ようやくやる気になった。その確信を得たメイヴは手を差し伸べ、リッカががっしりと掴み立ち上がる

 

【手加減とか、舐めプとかするわけ無いよ。だってメイヴは・・・】

 

「・・・」

 

【メイヴは、私のこと『あなたはあなたのままでいい』っていってくれた大事な友達だから】

 

その言葉。ライバルと感じていた相手のその言葉を、もしかしたら──それだけを

 

【だから──本気でいくよ。あなたの為に、力を借りてきたとっておきがあるんだから!】

 

「──えぇ、かかってらっしゃい。リッカ・・・!」

 

それだけが欲しくて、もう一度、骨も肉も砕けるような、どんな会瀬よりも熱くなるその触れ合いをこそ、自らは求めていたのかもしれない

 

メイヴの胸に沸き上がる充足感。それを受け止め噛み締めながら。リッカに呼応するようにそのカードを手に取る。最愛のあの人、自らが心から信じるあの男のカードを

 

【──インストール!!行くよ、コンちゃん!!】

 

「私に力を貸して、クーちゃん!」

 

ランサー、そしてバーサーカーのカードを高らかに、厳かに自らに取り込み解放する──!

 




リッカ『──!!』

長く伸びた髪、金色に輝く瞳、右腕に刻み込まれたルーン、鍛え抜かれた身体をピッチリと覆う水色のケルトの戦闘装束。オレンジ色の髪が、腰に届くほどに伸び金色の槍を所持する、クラスカードの本懐、『英霊』となる命題のもと、メイヴを倒すために借り受けた最高の切り札──ランサー・コンラとなりしリッカ

【愛しているわ、クーちゃん・・・!この魂を捧げる程に!】

全身に無数の棘、海獣の鎧を纏いバーサーカーとなりしメイヴ。体に紋様が浮かび、赤黒く脈動する槍を持つ恐ろしくも雄々しき・・・最愛のクー・フーリンへと変化する

『──このカードの持ち主から伝言。『絶対に倒します』!!』

【やってみなさい・・・!私とクーちゃんの愛と絆!たかが小娘の二人が越えようだなんて思い上がるんじゃないわよッ──!!!】

光のごとき絢爛の軌跡が、獣のごとき怒濤の疾走がぶつかり合う。──決着は、待ちわびた時間とは裏腹に一瞬にて訪れる・・・!

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