人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ミニくーちゃん【しゃらくせぇ、そろそろ終わりにすんぞ】

ギルガメくん『なんだ、もう音を上げたか?最強使い魔の座は我に譲ると言うことか?まぁ我は最強などどうでもよいが。やつに見上げられるに足る我であればそれでよい』

【抜かせ、オレもんなもんに興味はねぇ。ただ──敵は仕留めるだけだ】

『ハッ。楽しみも愉悦も嗜好もなくただ走りただ死ぬ王道・・・貴様が気に食わぬ理由に合点がいった。貴様の王道、我と真逆よな』

【おうよ。殺して走って倒れた場所がオレの結末だ。テメェのように図太く生きるつもりはねぇんだよ──!】

迫るミニくーちゃん。魔法少女達の攻撃を余さず受けながら微塵も意に介さないその怪物ぶりが、ギルガメくんに迫る

オルガマリー「ギル!!」

『──たわけめ。愉しみ無くしてなんの生であろうか。愚直にして難儀な男よな、貴様は』

【──ッ】

・・・その王道もまた是。言葉にしないが、御機嫌王は決して他者を拒絶、断絶しない。断罪、裁定は王の責務であり、個の感傷は介在しない。故に──

──『クー・フーリンが突撃した際には天の鎖が有効です。ルー神の息子である彼の神性に突き刺さるでしょう。使いどころは慎重に』

その律儀さ、潔さに心から感服したエアが躊躇いなく使用を決意した天の鎖に絡め取られ、使い魔のクー・フーリンが完全に沈黙する。生殺与奪を握られた時点で──

【・・・ちくしょうめ】

『光栄に思えよ?我が至宝、二つが貴様を捕らえたのだ。うむ、不動のNo.2を名乗るがよい。一位になりたくば英雄時間のマスコットと変身アイテムの声音を勤めてから出直すのだな!ふはははははは──!!』

『やっぱり最後はそれなんだね』と、エルキドゥの呆れ笑いが響くような必勝法にて、ギルガメくんは勝利を納めるのであった──


焦がれる想いの名前は何──?

『はああぁあぁあァッ!!!』

 

【せぇええぇえい!!!】

 

ぶつかり合う光と闇、白と黒、駆け巡り螺旋を描く対極にして決して違わぬ二つの武力。お互いの全身全霊を懸けた最高最後の姿による、縦横無尽の高速戦闘が雪華とハチミツの国の国土にて繰り広げられ二人の魔法少女がおのれの全てを懸けた意地の最終決戦が発生していたのだ。

 

黒き夜空に流星の如く、白き地平に彗星が如く。破壊と絢爛の二重奏が存分に披露され何者も立ち入ることが出来ぬ境地、最高最速のしのぎ合いとせめぎあいがまるで舞踊が如くに展開されているのだ。数瞬瞬けば彼方にて火花が散り、轟音轟けば大地に亀裂が走り砂塵が巻き上がる。最早城に収まらぬ規模に達するほどの武力は、やはりアルスターサイクル最強の二名に連なるものの宿命なのやもしれない

 

『もっと!もっと!!もっと輝けぇえーッ!!』

 

流星の如く、星の速さの如く疾走し何者もすがれぬ光速の槍を振るうはリッカ、コンラの力を纏いし人類最悪のマスターである。おのれの声すら、世界の全てすらも置き去りにするような超光速のコンラの槍を振るい、狂なるメイヴを鮮やかに、きらびやかに打ち据えて行く。有り得ざる姿、あり得なかったもしものifの姿。父を越える可能性の姿の具現は、転じて不可能である光速の移動と無双の槍を実現せしめる。強きものあれど、たくましきものあれど、光そのものを破壊し触れることが出来ないように、コンラとなりしリッカに触れられる魔法少女は、今や目の前のメイヴ以外には存在しなかった。黒く紅く唸る槍と、光そのものとなりし千変万化の槍が無数に打ち合い続ける

 

【凄い!凄いわ!弾けて飛び散って、色んなものがぐらぐらして!これが戦いなのね、これが決戦なのね!最高!最高よ!なんて素敵──!】

 

意識も、理性も、総てが破壊衝動に苛まれながらも微塵も揺らがずにメイヴが狂槍を振るい続ける。鮮やかさと美しさを誇る槍とは対称的なクー・フーリンの槍。振るえば大地が抉れ肉が飛び散り持っている腕が破壊されていく。軌道にあるもの全てを吹き飛ばす鏖殺の槍。コンラの生命を奪った槍。故にこそ因果が働き、如何に速くともコンラの生命に確実に届き傷付ける。本来ならば勝負にすらならないそのアドバンテージを覆しているのが、その愛する者の最高の武器であったのだ

 

防御はメイヴが、攻撃と速度はリッカが勝る。互いが互いにぶつける最大最速の槍のつばぜり合いが人智を越えた規模と速度で巻き起こる。瞬間移動、金色の流星群が如き軌道をリッカが描けば、血染めと漆黒の破壊の嵐にて迎え撃つメイヴ。互いに傷を負い、互いにダメージを受けながら、最早言葉もなくその決戦に没頭し続けている

 

互いに容易なる戦いではなく、また代償も大きい。リッカはコンラに宿るあまりに膨大な能力と有り得ざるランサーの力を引き出すため、並みの魔術師ならば10は干からびている魔力を一秒単位で消費している。ルーンと光神の力の顕現に、絶えず身体を焼かれているような感覚を捩じ伏せて戦っているのだ。コンラの了承なく使えばルーの怒りにより蒸発する事に比べればこれは余りにも軽いデメリットと呼べるものだが、そこに介在する苦痛に貴賤は無い。常人ならば発狂するほどの熱を。光速移動による思考の高速化の情報処理の反動もリッカは捩じ伏せているが故の戦闘力であるのだ

 

そしてそれはメイヴも同じこと。バーサーカーのクラスカード、そして聖杯により道理をねじ曲げたクー・フーリンのオルタナティブ。二つの無茶を通したクラスカードの使用のツケは甚大かつ膨大だ。燃焼している魔力が加速度的に高まり、肉が裂け骨が砕けていく。動く度に発狂死するほどの激痛が刻まれ、身体が消えていく喪失感が襲い来る。最早立つことですら偉業と言える自己崩壊と激痛をも快感と気迫に変え、この瞬間の全力を叩き出しているのだ

 

互いに死力を振り絞った決戦、互いに全力を尽くす戦い。この先に元凶が、逃れられぬ消滅が待っていようとも。この戦いを躊躇う事など二人には考え付きすらしなかった。例え動けなくなろうと無念に消え去ろうと関係無い。待ちわびた、待っていた宿敵より一歩でも先へ行く。ただそれだけがリッカとメイヴの望む全てであった

 

【リッカ──!!】

 

『メイヴッ!!』

 

負けられない、負けたくない。己の全てを懸けて、己の全てを込めて。死すらも傷すらも今の二人を阻むことは出来ないだろう。互いが互いを求め、互いを超越しようと刹那の前の自分より強くなる。意地を通すため、張り合うため。魅力的な自分を見せるため。ただそれだけの子供の喧嘩のような戦いに、二人の女が命を懸ける

 

『勝つのは私だ!リッカ系女子の虜になれっ!!』

 

あなたはあなたのままでいい。自分を魅力的じゃないなんて言うな、あなたを信じている者達へ無礼になるのだから。──その言葉をくれた誇り高き女王へ高らかに宣言するリッカ。彼女はメイヴを心の底から敬愛し、尊敬し、その存在に感謝していた。誰の目にも奔放に、自分こそが世界一の女と信じて疑わない。自分の魅力を、そして女子としての在り方を偽らない、卑下しない。まさに女王そのものな在り方に感動すら覚えていたのだ。そして、そんな歴史に名を残す女王が『あなたは既に魅力的』と太鼓判を押してくれた時の喜びは、きっと何をしても表せはしないだろう

 

だからこそ、自分が勝つ。魅力的と言ってくれた女王に、彼女が知り得ぬ勇士と共に倒す。彼女が自分を認めてくれたように、彼女もきっと、自分にとって唯一無二の『喧嘩』が出来る相手だから──

 

【勝つのは私よ!私の愛に跪きなさい!!】

 

藤丸リッカ。自分が欲しくて欲しくて堪らなかったもの、欲しても手に入らなかったものをあっさりと手に入れた女。預かり知らぬ場所で起きた出来事かもしれない、自分でない自分が体験した事でしかないのかも知れない。殺したいほど憎たらしく、跪かせたいほどに忌々しく、そして──どうしようもない程に魅せられた生涯最高のライバル

 

彼女が魅力的でない筈がない。彼女が美しくない筈がない。見た目ではない、スタイルとかそんな話じゃない。自分に妥協しないその生き方、自分を決して媚びさせないその気高さ。それを持っているからこそ最愛の人はあるがままに彼女を好んだ。見せ付けるように私の野望と夢を砕いてくれちゃった。

 

忌々しい、とも思った。あんなにもあんなにも願って、聖杯にまで託した願いをあっさりと叶えたあの子が

 

憎たらしい、とも思った。自分の全てを込めても、何をどうやっても歯向かってきた、立ち向かってきた、屈服とは無縁のその不屈さが生意気で生意気で仕方なかった

 

同時に──英霊になれて、サーヴァントになれて本当に良かったと誇らしくもあった。勇士達の時代、私の時代。未来に繋がる過去。私達が生きた時代がリッカの時代に繋がり、時の果てに私が挑むに相応しいライバルに出逢えたのだ。アルスターサイクルにすらいなかった、自分と対等に戦う女と言う宝に!

 

ならどうして挑まずにいれる?ならどうして構わずにいれる?ならどうして乗り越えられずにいれる?自分に歯向かい、挑み、隣に立つそんな存在をどうして無視できる?

 

出来ない、有り得ない、認めない。女王の私が、女王であるこのメイヴが。『あの人』以外に屈するなんて。同じ女を『素敵』だと思ってしまうなんて。そんなの、認める訳にはいかないのだ!女子として、一人の女として!

 

【私の誇りを奪おうだなんて、許さないんだから──!!】 

 

心と愛は総てあの人に捧げた。残っているのは身体と矜持。身体はあの時に余さず蹂躙されて。残っているのは『こいつだけには負けたくない!』といった幼稚な、でも偽りのない熱い想いのみ

 

奪わせない、奪われたくない。でも──『奪い合う』事が出来ることがこんなにも嬉しい。支配も隷属も快楽も!今この胸に巻き起こる歓喜と情熱に比べたら些細なものでしかない!

 

【決着よリッカ!絶対、絶対絶対ぜーったい私が勝つんだから!!】

 

受け止めて、私の胸のこの想い!男には解らない、支配するかされるかの関係でしかない『愛』のやり取りでは決してない。想い焦がれ、届かないと不安になりながらもそれでも捨てられない、はじめて見つけたこの想い!私にこんな想いを抱かせた責任を取らなくちゃ許さない!

 

『おうっ!!魔法少女として!受けて立つッ!!』

 

この戦いの果てに解る筈・・・!この気持ちがなんなのか──想うだけで幸せな、それでいて絶対に譲れない、もどかしくて苛々して、鬱陶しいのに捨てられないこの気持ちがなんなのか──!

 

女としての矜持を懸けた戦い、二人の魔法少女。その決着が、今此処に訪れようとしていた──




『コンちゃん!行くよッ!今こそ!父さんのリベンジと父さん越えを果たそうよ!!』

練り上げた魔力が金色になるほどの放出と発生、そんな莫大な推進力と共に、全てを貫き穿つ、アキレウスの戦車にすら速度で追い縋る程の速度にて放つ至高の一撃を、メイヴ目掛けて放つ──!

『ブチ抜けぇ!!星照らす極光の槍(ルアヴァータ・ブリューナク)』──!!!』

【──・・・!!】

・・・──此処でメイヴは勝ちを確信する。リッカの使う力、コンラがいかに無双であれど逃れられぬ因果。刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)をインストールし、カウンターで突き刺せば勝負は決まる。英雄の死因は概念礼装といっていい絶対性を誇るがゆえに、コンラの力を借りたリッカも逃れ得ない

その為に、とっておきのとっておき──『クー・フーリン』のカードを隠し持っていた。限定展開しか出来ないけれどそれで充分。真っ直ぐ向かってくるならそれだけで。もとより因果逆転の呪い、放てば必中なのだから必ず勝つ

【──私の勝ちよ!リッカ!!】

『──!!』

解っていた。そうだと、解っていた筈だ。それをすればいいと、解っていた筈なのに

【これで決めちゃうから!愛しているわ、クーちゃん──!!】

その、全てを抜き去る光速の槍を迎え撃ったのは──

噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)──!!!】

・・・自らが望み、そうなってほしいと願った愛する者の、最高にして最強の姿となる宝具だった。それを使えば、光を掴むことは不可能だと解っていたのに

・・・──決着は、訪れた。

『──私の、ううん。コンちゃんの勝ちだよ』

耐久に特化したメイヴの姿、霊核を光の槍が貫いた。メイヴの身体を支えるようにして立つリッカが告げる

【・・・あー!悔し~い!また負けちゃった!もう、あんなにあんなに準備したのに~!】

胸を貫かれながら、逃れ得ぬ消滅を決定されしメイヴ。しかし、その声音と表情は晴れやかで・・・

『ねぇ、メイヴちゃん。なんで・・・ゲイ・ボルク使わなかったの?』

【何よ、分からないの?バカね。ライバルとの待ちに待った決戦だって言うのに、運命や因果に結果をあげてどうするのよ。それに──】

『・・・それに?』

【──あの槍!他の女にプレゼントされたものだから!そんなので勝っても嬉しく無いでしょ!他の女に頼って勝つくらいなら自分を貫いて負けた方が万倍まし!解った!?女王の意地よ!いーじ!あ、手を抜いたとか考えたら殺すわよ!】

『あははっ!メイヴちゃんらしいや!』

殺しあっていたとは思えないほどに、笑い合う二人の笑顔は爽やかだった──

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