人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルくん「あぁ、待ちわびた。待っていました!ようやく最後の、最高の見せ場がやって来たんですね。長かったなぁ。お会いする瞬間がもうすぐだなんて!わくわくするなぁ。楽しみだなぁ」

ミユ「・・・ギル。・・・もう、止めて」

「?」

ミユ「誰かに会いたいのなら、会いたいと告げればいい。こんな事をしてしていたら・・・その会いたい人に、迷惑をかけるだけ」

ギルくん「・・・・・・へぇ。正論を言える元気が出たみたいですね。お世話役の人がいたお陰かな?良いですよ、続けてください」

「こんなやり方、間違っている。あなたは気を向きたくて、悪戯を繰り返しているだけ。あなたが、一番あなたが求める人を困らせている」

「・・・・・・それで?」

「今からでも間に合う。私も・・・一緒に謝るから。今すぐ、こんな事は止め──」

その言葉を告げようとした瞬間──

「、ッ、ぁ──」

ギルくん「解っていませんね。『こうでもしないと、魔法少女達は永遠に廃棄されたままでしょう?』」

ミユの腹を貫き、内部にクラスカードをねじ込む。最後の鍵、イリヤに渡す最後の試練

「愉快な僕、そしてその至宝のエアさん。その二人でなくては君達のような魔法少女は永遠に破棄されたままの存在です。僕がただ会いたい、顔を見たいなんて理由で『お前達』の為に聖杯を使うわけ無いでしょう?」

「ッ、ァ、あ──」

「まぁあくまでついでなんですけどね。僕にとって魔法少女が消え去ろうが滅び去ろうがどうでもいいです。ただ結果的に──『お前達は装飾品に相応しかった』。エアさんがこれから挑む世界への挑戦。その練習と理念の自覚に相応しかった。だからこそ、魔法少女の廃棄場に目をつけた。──困らせている?一緒に謝る?ふふ、あはははっ・・・」

埋め込んだのは・・・【アヴェンジャー】のクラスカード、アンリマユ──

「──思い上がらないでくれるかな。高々歩く願いの捌け口が、僕の隣に立とうだなんて思い上がりにも程がある。君にはもっと相応しい役割があるんだ。役者の役割の逸脱を誰が許しましたか?」

【ッ、あああぁっ、ッあァ──!!】

「謝りたいならお好きにどうぞ。魔法少女の世界の破滅の引き金として、全てに謝り続ければいいでしょう。・・・まったく」

産み出される無限の残骸を無感情に見上げ、ギルくんは静かに目を伏せる

「──面倒をかけてごめんなさい、エアさん。でも、こうしないと魔法少女何て言うものに価値を微塵も見出だせないから。だから・・・ここに来てください。世界を、総てを救う戦いを始めましょうか──」




総てを救う戦いを始めよう!

「・・・・・・」

 

中立地帯、最早誰もこの場所にて戦いを挑むことの無い場所。初めて足を踏み入れ、徹底的にダメ出しされ魔法少女の一歩を踏み出した場所。その場所にて、最高のライバルより託された宝石。自分の道を、お尻を蹴っ飛ばす形で示してくれた女王。それが、彼女が存在した証を握りしめるリッカ

 

魔法少女の在り方、絶望と行き止まりに落ちたもの。世界に挑み、そして燃え尽きたもの。その中でも決して諦めず、挑み続けたメイヴ。自分をただの敵ではなく対等のライバルとして見てくれた魔法少女。その託された想いに目を落とし、静かに黙祷を捧げる。口にする言葉は無いけれど、もう十分に語り合ったからこれでいい。だからもう、何も口にする事は無いのだ。これ以上は、無粋と言うものだから

 

「あ、あの。リッカさん」

 

静かに佇むリッカを心配し、声をかけしはイリヤであった。彼女は今のリッカの気持ちを『哀しい』と判断した。友との永遠の別れ、通じ合いながらも殺しあったリッカへ、どうにか元気を出してほしいと思ったから。意を決して声をこえをあげたのだ

 

「その、えっと・・・メイヴさんは、とても幸せだったと思います」

 

「──おぉっ?」

 

「だって、友達がこうして前に進んでくれるから。自分がやって来たことが、こうして確かな形になって繋がって続いていく。それは、とっても凄くて素敵な事だと。私は思うんです」

 

自分も、そうでありたいと思うから。例え自分が果てたとしても、ミユや、クロが自分の何かを受け継いでくれるなら。それならきっと、安心して眠れると思うから

 

「その、リッカさんとメイヴさんの友情は、なんだか私の思ってた魔法少女と全然違うのに。凄く熱くて、凄く輝いてて、凄くかっこよくて・・・」

 

だから、その二人の間に悔いや後悔なんて、あるはずがない。いや、あってほしくないと思う。話を聞いて、記録を見て。イリヤは本当にそう思ったから

 

「だから、リッカさんも元気でいてください。それはきっと、メイヴさんも望んでいることだと思うから・・・」

 

「──ん。ありがと、イリヤ!」

 

笑うリッカ。リッカはイリヤの振る舞い・・・誰かを労り、誰かをおもんばかるその在り方に自分には無い、或いは形に出来ないイリヤだけの魔法少女の姿を見た。戦う事も荒事も望みはしないけれど、いつだって誰かの事を思い誰かの為に駆け抜ける。その優しさこそ、魔法少女に本当に必要なのかもしれないから

 

「よーし!元気出てきた!さっ、最後の戦いに赴こう!友達を助ける準備はいい?見せてよイリヤ、次はあなたの番!」

 

「はいっ!私も帰ったら、ミユとリッカさんみたいに語り合いたいと思います!いっぱい話します!物理でッ!」

 

「あ、それは止めた方がいいと思う」

 

「本気のNG宣言!?」

 

最後の戦い前の、他愛ない会話。そう、リッカは確信している。自分の魔法少女としての物語はメイヴとの語らいで終わった。次のメインはイリヤであると。ならばこそ、自分達はこの小さい少女が羽ばたけるように障害を蹴散らすのみだ。邪魔なものは蹴散らし、勝利と未来をこの手に掴む。それこそが──

 

「魔龍少女、アジダハ☆リッカだからね!よーし、行こうイリヤ!皆が待ってるよ!」

 

「うひゃあぁ!?片手で持ち上げられてる私~!?」

 

ノスタルジックな空気に浸らせてくれない気遣いや細やかな魔法少女の仲間に笑顔を返しながら。リッカは最後の戦いに赴く──

 

かわいさと えがおがたいせつ しょうじょかな

 

 

『カルデアの皆さん、本当にありがとうございました。ミユ様に代わりお礼を告げさせてください。本当に、イリヤ様らを助けてくださり・・・』

 

ミーティング場所に戻ると、其処にはルビーの色違い、カラバリめいたステッキが礼儀正しく頭を下げていた。一同から話を聞いてみるとかのステッキはミユの愉快型魔術礼装『カレイドサファイア』なのだという。黒幕──子ギルが水先案内に任命し逃がしたと言う魔術礼装であり、ルビーの妹らしい

 

『堅苦しい挨拶は構わないさ。ボク達は人助けが趣味なんだからね!』

 

「正確には困難に挑み、乗り越えるのが愉しいという理念の下に行動しているの。その過程で妥協しないが故に結果的に総てを救う事になっている。あなたの主、イリヤの友達を救うのもその一環なのだから気にしないで」

 

『このように妥協を許さぬ人力TAS組織ですから遠慮は無用ですよサファイア!さぁ囚われのミユさんを助け!楽園の最高の施設でめくるめくイチャコラしちゃいましょー!』

 

あまりにも正反対な性格は、そういったコンセプトなのかバグが発生したのかはたまた個体値設定か。対極にも対極なステッキ漫才にイリヤが頭を下げまくる中、ギルガメくんが四つの宝石を空に浮かせ、真っ直ぐに黒きドームを見据える

 

『さて、穴熊も飽きた頃合いであろう。貴様の遊戯に最後の締めをくれてやる。我が財に相応しき舞台を整えているかどうか──さぁ、最後の見せ場だぞ』

 

その言葉を切欠に、ギルガメくんは厳かに宝石に触れる。四つの宝石の所持者であり、この特異点の覇者、そして最後の戦いに挑むに相応しき資格を持つことを示しし時──それは、起こった

 

「・・・!宝石が・・・!」

 

宝石が輝きを増す。四つの宝石が共鳴し、互いが互いに輝きを助け合い互いを輝かせ、そして最後には辺りを塗り潰すほどに煌めきを発生させ、そのまま放たれた輝きが真っ直ぐに──

 

「く、黒ドームを貫きました!?これがソーラ・レイなのですか先輩!」

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!見てみなさい、見えたわよドームの中身!」

 

黒の結界が吹き飛び、その内側に在りし国が、全貌が露となる。寒々しい結晶と星空。そしてその中心に座する、ガラスの城。誰一人として住民が存在しない孤高の風景。それこそが・・・

 

『・・・はい。彼処こそがミユ様の囚われている居城。ファースト・レディなる存在とそれを呼び覚ました者がいる居城です』

 

「あそこが・・・!」

 

ついに見えた、皆の力にてたどり着いたゴール。友が待ち、この騒動を巻き起こした黒幕・・・ギルくんが待つ、全ての始まりにして終わり・・・

 

今すぐ飛び出したい気持ちはある。今すぐ向かいたい気持ちがある。でも、そんな逸る気持ちをぐっと抑え、頼もしい仲間達と顔を見合わせる

 

「皆さん、ここまでたくさん助けていただいて、本当にありがとうございました。・・・あそこに、ミユが、ファースト・レディが、ギルくんがいる・・・!」

 

自分一人で出来ないことがあるのなら、皆で力を合わせて。一人一人が強くて、みんなで協力できるなら。きっと出来ないこと何て無いはずだ

 

「だから、お願いします!最後まで、私達に力を貸してください!絶対、ミユと・・・ううん、魔法少女の皆を助けましょう!」

 

力強くサムズアップを返すリッカ。大船に乗った気持ちで任せてくださいと胸を張るマシュ。入念にロマンやダ・ヴィンチと打ち合わせを行うオルガマリー。ストレッチしているぐっちゃん。パンケーキを無心に食べるアルトリア、クロにイリヤの世界の話を聞いているアイリ。それぞれの気持ちは、きっと一つだ

 

「行きましょう!世界も、ミユも!両方を助けるために──!」

 

いよいよ見えた、魔法少女達の最後の戦い。決意を新たにした魔法少女達に呼応するように、最後の戦いの幕が緩やかに、厳かに上がっていく──

 




エレナ「・・・大きな魔力の流れを感じる。ファースト・レディの下へこの世界に満ちていた魔力が集結している・・・いよいよ、レディも本気で・・・」

クロ「──それだけじゃないわ。魔法紳士を倒した場所から黒い柱が上がって・・・ファースト・レディのお城に・・・!」

ギルガメくん『──フン、出迎えの準備は万端なようだぞ?そら見るがいい。空の青すら見えぬほどの有象無象の出撃だ』

魔法少女達の魔力の残滓、魔法紳士達の理想と怨嗟。そして──

ギルガメタブレット・エア『敵反応確認、ステッキ型使い魔、総勢5684体。残留型思念6845!来ます!』

リッカ「空が三、黒が七ってヤツ?でも残念──」

一同が頷き、一直線に真正面から突っ込んでいく。恐れも不安もありはしない。無量大数の勇気と希望に比べれば、一の絶望も那由多の敵も等しく取るに足らない

イリヤ「待っててミユ!今、迎えに行くから──!!」

今こそ、最終決戦。平行世界全ての魔法少女の存亡をかけた戦いが始まる・・・!

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