人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ【数が多いなぁ!いや、別に苦戦なんかしてないけどね!】

オルガマリー「私達はともかく、アルトリアやアイリは危険だわ。魔力は無尽蔵ではないもの、撤退も推奨されるわね」

アイリ「大丈夫よ、まだまだ行けるわ・・・ッ!」

アルトリア「お腹が減って力が出ません・・・」

エレナ「じり貧というか物量が凄いわね、あと一手、あと一手があれば・・・」

ロマン『よし、こうなったらソロモン必殺『竜脈全遮断』と『魔術回路爆破』を・・・、・・・ん?』

オルガマリー「どうしたの、ロマニ?・・・!」


?「──なのはが大分間違った認識を伝えてごめんなさい。御詫びとして救援に参りました!」

オルガマリー「・・・ハイレグで、剣を振り回す魔法少女・・・いえ、魔法書記官・・・?」

?「いやぁ、ほんまごめんな~。最初からうちが行けば良かったわとか割りと真面目に考えてしもたわ~」

アルトリア「・・・あなたたちは・・・」

?「ったく、水くさいじゃねぇかリッカ!手を焼くんだったらLINEで後詰めくらい頼んどけって!世話のかかるマスターサマだな!」

リッカ【!】

?「やほー!お久し振りー!助けに来たよ、リッカちゃん!いやぁクリスちゃんに急かされちゃっ」

「余計な事は言うなッ!──まぁ、その、なんだ!祭りなら混ぜろって事だ!」

「二人とも・・・!」

「ロマンさんやったな?というわけで、時空管理局!特例で援護させてもらうで!」

風鳴指令『こちらも同じく救援を送った。・・・送ったというより、二名が先行したといったところだが・・・』

ロマン『あ、え、ぁ・・・ありがとうございます!』

「そんなわけで!反撃開始だよリッカちゃん!負けない理由を、拳に込めよう!」

【おうっ!真っ正面から蹴散らしちゃおうかビッキー!】

「あーもう、紛らわしい声してんなお前ら!ステレオかよ!」

フェイト「私の事は──金髪のソニックセイバーと呼んでください(キリッ)」

アルトリア「は?」

「なっ、先輩!?・・・違うのかよ!紛らわしいったらないなここは──!」




魔法少女軍団(プリズマ・コーズ)

「──ようやく来たんですね。お待ちしていました・・・と言ってあげるべきなのでしょうね」

 

水晶の城、玉座の間。城の長い長い通路を突破したイリヤとクロはついに辿り着いた。ようやく達した目標、ようやく手が届いた最後のゴール。その玉座に鎮座せし、拍手を送るは──

 

「・・・ギルくん・・・!」

 

「本当にお疲れ様でした。随分と疲れているようですが、それはもうすぐ報われますよ。本当に喜ばしいですね。僕としても君たち二人の努力と奮闘は評価していますよ。それなりに、ですが」

 

ギルガメッシュ、英雄王の幼少なる姿。この特異点を産み出し作り出した者。自分達を招き入れた張本人。ここまで辿り着いた二人への称賛を、拍手と共に贈る。・・・紅く冷たい瞳は、無感動に揺らめいたままに

 

「ギルくん・・・!ミユは、ミユはどこ!?」

 

「辿り着いた、おめでとうと言うなら願いを叶えてほしいものね。・・・返してくれないかしら?イリヤの友達を、ね」

 

その場に辿り着き、当然のように友の所在を要求するイリヤとクロ。此処に来た者の要求、困難を乗り越えた者達の願いを叶える事を欲する二人に、ギルくんはスッと静かに眼を細め、手を振り上げる

 

「欲しいなら御自由にどうぞ。ただし・・・」

 

鎖にて引き下げられる漆黒の魔法少女、怨念と憎悪により塗り潰され、意識を喪い残骸を産み出せし願いを叶える魔法少女・・・

 

「掃除は自分の手で行ってくださいね。僕としても、もうソレに興味はありませんから」

 

【──、・・・】

 

「ミユ──・・・!!」

 

黒いオーラに包まれているミユ、残骸を産み出す願望機となっている友達の惨状に絶句するクロ、慌てて駆け寄るイリヤ。その存在が汚染されており、その存在が害されている事が一目で解る有り様に、イリヤの胸中はかき乱される。何故こんな事を・・・それを告げる前に、ギルくんの言葉は静かに紡がれた

 

「全く、まさか此処にたった二人で来るだなんて計算違いも良いところです。君達との邂逅なんて取り立てて楽しみにする理由もない、君達の奮闘なんてあちらで飽きるほどに見ていた。何故そう、物語の中心でないと気がすまないのか・・・なんとも難儀なものですね」

 

「何を言ってるの!ミユを元に戻して!」

 

「此処まで辿り着いておきながら敵に慈悲を乞うのですか?まったく・・・迷いや悩みを産み出すと決意が直ぐに鈍るのが悪いところですね」

 

仕方ない、と右手をあげる。するとそれに呼応し、二つの影が現れギルくんの前へと顕現し現れた。原初の魔法少女、ファースト・レディ。そして魔法紳士の飽くなき妄執にて誓約を果たされし存在。契約の名を真名とする魔法少女・・・

 

「願いを叶える時が来ましたよ、ファースト・レディ。『テスタメント』。そこの二人を痛め付けるなり乗っとるなり御自由にどうぞ。適度に躾をしなくては、身の程が分からないようなので」

 

『──えぇ、解ったわ。数多の世界には私達魔法少女の救いを待つものが沢山いる。その総てを救うまで止まれはしないもの』

 

【報われない男たち、紳士達の願いに寄り添うのが私の使命。だけど私は寄り添うだけで決して応えない・・・──さぁ、あなたたちも行きましょう?永遠に賛美され、憧憬を一身に集める魔法少女の使命を果たしに・・・!】

 

イリヤとクロに襲い掛かるファースト・レディ、テスタメント。その思惑を察する前に突進をクロが双剣にて阻み食い止める。その理念や命題を掲げる二体の魔法少女の目論見に、合点がいかないながらも対抗と反撃を行ったのだ

 

「何よそれ、どういう事・・・!?救うとか、賛美されるとかどうなってるの・・・!?」

 

「言葉通りの意味ですよ。ファースト・レディはこの固有結界より解き放たれ総ての魔法少女を求める世界へと進撃し、テスタメントは求められるままに理想の魔法少女として在り続ける。その為に、この平行世界に繋がる固有結界を生成し、特異点として成立させた。私利私欲など介在する余地のない、崇高な命題です」

 

ギルくんはそう語った。ファースト・レディの願いは救われぬ魔法少女達を待つ世界を救うための魔法少女軍団を確立させて全平行世界へと進撃すること。テスタメントは数多無数の紳士達、男達総ての『理想の魔法少女』という誓約を果たし魔法少女の概念を永遠とすること。それこそが本懐であり、願いだと言うのだ

 

「魔法少女は魔法を使い、膨大な術式を行使する少女達の総称。魔法を操る希望と奇跡の象徴。──しかし知るのです。戦いの果て、戦いの先に訪れるものがなんなのか」

 

「・・・ッ」

 

「絶望の結末。想いを寄せた異性は他者と結ばれ、戦い抜いた先に待っていたものは退屈な日常。奇跡を願い思い上がった者への罰として魔法少女は魔女の烙印を押され、新たな魔法少女に倒される。そんな世界の剪定に敗れた者達、奇跡の代償と残骸の概念、それを魔法少女と呼ぶのです」

 

思い上がった者へ絶望を。目映き奇跡には暗い代償を。羽ばたく理想には重石となる現実を。誰かの願いを叶えど自分の願いはけして叶わない、自分の想いはけして報われない世界の異物。それが魔法少女だとギルくんは見定めたのだ

 

「奇跡を信じ燃え尽きた魂。けれどいくら魔法少女が燃え尽きようとも世界は、それを信じるものたちは求め続ける。自らの理想を、けして穢れぬ概念を。故にこそ、魔法少女は生まれ続け世界に破棄され続ける。魔神が嘆いたシステムの真実がこれです。そして──」

 

『そして、そのシステムと真実を私は変えてみせる。捨てられた者達を束ね、それでも世界が求める魔法少女を求める願いに応えてみせる。魔法少女の概念がある限り、それを求める人がいる限り。・・・その為に・・・』

 

【私という存在が産み出された。テスタメント・・・誓約と盟約。誰もの願いと理想を写し、微笑み、しかし決して応えない永遠無垢な魔法少女。願い焦がれた無数の想いに微笑み、決して汚れない蓮のような永遠の概念たる私を、彼は産み出したのよ】

 

それこそがギルくんが考えた魔法少女の救済であった。燃え尽き、破棄された魂の残滓をファースト・レディの力で怨霊と妄執の軍団に変え総ての平行世界に送り込み世界を回す燃料とする。魔法少女の概念が脅かされぬよう、『誰もが理想とする魔法少女』という概念と象徴を作り上げ、この特異点に魔法少女としての魂を縛り上げ呪縛する要石とする

 

魔法少女になった瞬間にこの墓標たる特異点に流れ着く事を宿命付けられ、奇跡の代償に魂が無に還るまで世界を滞りなく運営する燃料とする。総ての魔法少女が、概念そのものが燃え尽きぬよう男や少女が懐き続ける妄執をテスタメントが束ね、また平行世界にて魔法少女を産む──魔法少女を世界の燃料として活用する自転車操業、概念としての永遠の奉仕

 

魔法少女の存在を、世界への燃料として有効に活用する。一度の願いを叶えた代償として永劫の世界の守護者として意味と価値を持たせる。何度燃え尽きようと、何度消え去ろうとも永遠に少女達は世界を救い続ける。その願いは永遠に消えることなく世界に刻まれる。それこそが──

 

「世界へ奉仕し、世界を救う『魔法少女軍団(プリズマ・コーズ)』。何かを救いたいという使命に殉じる魔法少女。それらを束ねるファースト・レディ。そして魔法少女の概念を守護するテスタメント。誰も犠牲にならない、魔法少女達に本懐を果たさせる僕なりの救済こそが今回の目的です」

 

ギルくんの願いと狙い。それは魔法少女の亡霊という『無駄』を間引く事。何も成せない、最早何もできない魂に役割を与えること。世界に価値を見せつけ、魔法少女という概念、犠牲を意味ある事にすること

 

其処に魔法少女達の意志は介在しない。世界の総てを救うまで、世界の総てに届くまで永遠に酷使され続ける。人類の守護者としての責務と奉仕を、理想の担い手として永遠に行う

 

「どうです?ただの矮小な少女が世界を救う軍団となる。君達魔法少女の有効な使い方だと我ながら思うのですが。それを阻む理由がどこにあるのですか?」

 

ギルくんの紅い眼が、イリヤとクロを射抜く。ゾッとするほどに冷たい眼光、それは使い途のない道具や人形の有用な使い方を考える無垢な子供のようで──




イリヤ「そんなの、そんなの酷い!魔法少女の皆の気持ちは何処へ行くの!?そんなの、魔法少女になった皆が可哀想すぎるよ!」

ギルくん「可哀想?変な事を言いますね。魔法少女は一度『道理をねじ曲げている』。ならばその代償を払うのは当然でしょう?」

イリヤ「えっ・・・!?」

「魔法少女・・・それらは無力な少女が懐いた祈りを叶える力に叶える姿。その力の恩恵を受けることを了承したからこそ魔法少女は生まれるのです。誰かを救いたい、何かを成し遂げたい、何かを助けたい・・・『その力を振るう』という事は、ズルをしているようなものなのですから」

イリヤ「どういう、事・・・!?」

ギルくん「この世界にどれだけ叶わぬ願いが満ちていると思いますか?歩きたい、歌いたい、ただ生きたい、幸せになりたい。それらがどれだけ聞き届けられず消えていくか考えた事はありますか?」

クロ「聞き流しなさい!詭弁よ!」

「生命が終わる瞬間まで渇望し叶わなかった魂。それとは対称的に、即物的な願いにて力を授かる魔法少女。不平等だと感じた事はありませんか?その力は、無数の叶わぬ無念が欲した力と感じた事はありませんか?」

イリヤ「そ、それは・・・」

「助からない命、輝く命。不平等だとは思いませんか?願いを叶える翼を持ち、輝く魔法少女・・・それらはほんの一握り。そんな選ばれた者だけが奇跡を叶え、穏やかに日常を謳歌するだなんて、不公平ではないですか。何故貰った、授かっただけの力を振るっているだけの者が楽をしているんです?──まぁ、世界は人間に優しくなりましたので、仕方ないのかもですがね」

イリヤ「・・・不公平・・・ずるい、ってこと・・・?」

ギルくん「力には責任が伴うものです。力を、責務を負うならそれを全うする義務があります。世界から力を貰ったのなら、代償はしっかりと払うべきです。己の願いだけを叶えて、叶え終わった後はお咎めなく日常に戻り生を謳歌する。・・・そんな魔法少女の在り方が、僕は気に入らないわけです」

クロ「無茶を言ってくれるわね・・・!」

子ギル「甘ったれるな、と言うことですよ。借り物の力に自惚れ、貰った力で何かを為す。責務も何もかもをいつしか忘れ、やがて浅はかな絶望に染まり消えていく・・・」

それ故に、魔法少女という概念に意味を見出だせなかったギルくんが作り上げた世界へ捧げるシステム。魔法少女の魂を有効活用するためのシステム。一度殉じた使命を、永劫背負わせる業

「──そんな甘ったれた魔法少女(おまえたち)が気に食わない。だからこうして、僕は魔法少女の在り方を定める事に決めたんです。擦りきれるほどに世界へ奉仕する。それが奇跡を叶えた者の報いであり義務なのですから」

イリヤ「そんなの、そんなの・・・!」

ギルくん「友達を助けたい。ありきたりの願いですね。叶えても構いません。奇跡を叶えるとよいでしょう。ただ・・・」

ミユより溢れる憎悪、怨念の残骸。そのものらが、亡霊の残骸が告げているのだ

【──何故、あなただけが】と

ギルくん「しっかりと責任はもってもらわないと。この世界にその願いを持つ者達は無数にいます。さぁ、その願いを全て叶える為に頑張ってもらいましょうか。嫌だ、なんて言いませんよね?」

イリヤ「ぅ、あ・・・ぁ・・・」

「【自分だけが叶えばいい】・・・そんな考えを、まさか持っていないでしょう?君は【魔女】ではなく『魔法少女』なんだから」

ギルくんの言葉が、イリヤを揺さぶる。魔法少女としての根底を揺るがす、恐怖と断罪の言葉が──

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