人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「列を崩すな。横入りをするな」


「割り込みする英霊に鐘の音は降り注ぐ。そこの黒髭――首を出せ」


召喚――四騎士編・アサシンの巻

「アサシン……暗殺者なぞをカルデアに招くのは気乗りはせんが、まぁ仕方あるまい。選り好みはこの際脇におく。馬鹿と破産は使いようと言うしな。懐刀代わりに精々使ってやれ」

 

 

アサシン……影に潜み、瞬きの内に生命を断つ暗殺者のクラス

 

 

器はこういうが、敵の暗殺者の狙いを先読みし、阻めるのはけして小さくないアドバンテージになる。決して無視できないクラスであるのだ。王は大体暗殺で死ぬし

 

「うん!よーし、可愛いアサシンがいいなぁ!」

 

「先輩……それは矛盾しているのでは?」

 

 

「我的に一番どうでもよいクラスだ。巻きで行け巻きで」

 

途端にやる気をなくす器。本当に気分屋だなぁ

 

「アサシンのセイバーなどいるはずが無かろう常識的に考えて……」

 

 

 

「よーし!召喚開始!」

 

 

サークルが光を放ち、回転を開始する

 

「さっさと済ませよ、我の本気はセイバーでだす」

 

「まぁまぁ、前哨戦だと思ってさ?ね?」

 

「……来るわよ!」

 

現れたのは――

 

「アサシン・ジャック・ザ・リッパー。よろしく、おかあさん」

 

ぼろ布を纏った、無垢なる少女であった

 

「――産まれ落ちる事の無かった怨霊か」

 

「ほわぁあぁあぁあ!!かわい――!!」

 

駆け寄り、抱きしめ頬擦りをするマスター

 

……ジャック・ザ・リッパー。確か……ロンドンの殺人鬼、だったか

 

 

「……幼女じゃない……」

 

「私がおかあさんになるんだね!よろしくね!ジャックちゃん!」

 

「うん。おかあさんについていく」

 

「ほわぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

「先輩落ち着いてください!落ち着いて!」

 

「守護らねば――守護らねばならぬ……」

 

マスターが正座にてジャックを抱き抱える

 

「――精々胎に潜り込まれぬよう注意するのだな、マスター」

 

「へ?」

 

―――可愛く見えても、あれは怨霊の類

 

手放しに信頼しては危険だと、なんとなく感じ取れた

 

 

「次だ次。そら回せ。回転数が全てだ」

 

「よーし!見ててジャックちゃん!えーい!」

 

「えーい」

 

回転サークルを回し、英雄を召喚する

 

「次はどんな亡霊が迷い出るものか……」

 

「アサシン=怨霊ってわけじゃないからね!?」

 

光が収まり二体目のサーヴァントが、姿を現す

 

 

「サーヴァント・アサシン。影より貴殿の声を聞き届けた」

 

白い仮面、漆黒の外套。アサシンらしいアサシンが影より出でる

 

「ザ・アサシン!凄い、どこから見てもアサシンだ!」

 

「その仮面は、山の翁のアサシンね」

 

「左様。わが悲願の為にも、貴方達に助力を……むっ!?」

 

アサシンがこちらを見定めた瞬間、凄まじい警戒を向けてくる

 

「黄金のサーヴァント……!?」

 

「なんだ、影に潜む砂虫風情でも我は知っているか。くれぐれも今の我以外の我に目線を送るなよ、処断するぞ」

 

「ど、どうしたの?」

 

「魔術師どの!あやつは良くない!すぐに裏切る不埒ものゆえ、すぐに契約を切るべきですぞ!」

 

「的を射てはいるな。だが間違えるな砂虫。我は道を違えた者を切り捨てはしても、共に歩むと誓った者の背を斬った事はない」

 

睨み付けられる視線を、さらりと流す器

 

「裏切る、と言うことは、共に歩む者の背中を切りつける行為を言う。言葉は正確に使うのだな、ハサンよ」

 

「……ぬぅ。何故か今の貴様からは、不穏な気を感じぬ……もしや、本当に……?」

 

「大丈夫だよ、ハサン先生!このギルは凄く機嫌がいいから!」

 

慌ててフォローするマスター

 

そうとも。ここは自分と器が居を構え、改築した居城。裏切る相手などいるものか

 

「気になるならば適当に散策するがよい。そして我の威光を見よ。貴様が隠れるような辛気臭い部屋はないと思いしれ」

 

「……ぬぅ……承った」

 

渋々ながら納得し、影へと消えるハサン

 

 

「――あんな虫けらまで使役せねばならぬのがつらいところよな。まぁ、裁量はマスター。貴様の仕事よ」

 

「がんばろうね、おかあさん」

 

「もちろん!よーし最後だー!」

 

 

「二体とも、悪属性ね……大丈夫かしら」

 

「善属性だけではいつか詰むやもしれぬしな。まあ見世物として飼ってやろうともさ。さぁ最後だ」

 

 

召喚のサークルが回転を始める

 

 

「わくわく、わくわく!」

 

「確かにこの瞬間はドキドキするよね、解るよ」

 

「わくわくするの?むね?たしかめていい?」

 

「へ?」

 

 

「さて、鬼が出るか、蛇が出るか……」

 

やがて、光が収まり……

 

 

「失礼する。召喚の箸休めに、軽食を持ってきた」

 

エミヤがお弁当をもち入室する。同時に――

 

「――また汚れ仕事か」

 

黒い鎧。赤いフード。右手にナイフを握った、詳細が掴めぬ男が立っていた

 

 

「……む?」

 

「まぁいい。いつもの事さ――君がマスターかい?」

 

すっ、とマスターに歩み寄る

 

「は、は、はい!」

 

「先に言っておく。僕は君達の事情なんて知らないし、知ったことじゃない。ただ、サーヴァントとしての務めを果たす」

 

冷たい、冷然とした態度、含まれる拒絶

 

「――それでいいんだ」

 

「あ、はい……よろしく……お願いします」

 

「――それじゃあ、用があれば使ってくれ」

 

「待て」

 

赤い暗殺者を、エミヤが呼び止める

 

「――貴様は」

 

「……」

 

「――いや、いい。よろしく頼む」

 

「あぁ」

 

それだけを交わして、二人はすれ違う

 

「ど、どうしたのです?エミヤ先輩?」

 

「……いや。何も」

 

複雑そうな表情を浮かべるエミヤを、器が冷やかす

 

「同郷の郷愁か?哀れなモノよな、抑止の使い走りというのは」

――抑止の、使い走り?

 

「……余計な詮索は無用だ。彼も私も、仕事は果たす」

 

「それはそうであろうよ。我のカルデアに無能は要らん。精々訪ね、泣き言に華を咲かせるがよい」

 

 

「……謎の」

 

「リッカ?」

 

 

「謎のフードマン……カッコいい……!!」

 

――マスターは幸い、彼を気に入ったらしい

 

よかった。マスターの印象が悪くなければ、きっとそのうち打ち解けられるはずだ

 

「おかあさん。いろいろみてきていい?」

 

「いいよいいよ!行っておいで!後でね!」

 

「うん。みつけてね」

 

ふわり、とジャックが姿を消す 

 

「……気配遮断持ち相手に安請け合いをしたものよな。精々さ迷うがいい」

 

「……あ!!」

 

「さて、――興が乗らぬクラスも終わったか。次は……キャスターにでもするか」

 

 

欠伸を噛み殺し、召喚は次のクラスへと移る……

 

 

「その前に、ご飯を食べましょう?」

 

「そだね、お腹減った!おにぎりはここに……あれ?」

 

「いただきます(もぐもぐ)」

 

「かわいいぃいいいいい!!」

 

 

――前哨戦は続くのだった




「抽選に外れたか・・・致し方無し」


「何れ、晩鐘はかの地を指し示そう。今は、唯闇に潜むのみ」

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