人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン『──!?皆、ちょっと待ってくれ!』

クリス【今度はなんだよ!?】

『・・・なんだこの魔力数値は!?量と質も桁違いだ!瞬く間に特異点を覆っていく!害はないみたいだけど──!』

なのは「皆、見て!あれは・・・!」

オルガマリー「残骸が・・・包まれて、空に・・・?」

クリス【どう言うことだ!何が・・・、ッ!?】

ビッキー【あ、あれ!?】

司令『イグナイトが、解除されただとッ!?』

リッカ『ホワァ』

はやて「あかーん!!?なんか消えとるでリッカちゃん何が起こっとるん──、・・・!?」

ビッキー「・・・声・・・?」

フェイト「頭の中に、直接・・・?」

マシュ「・・・この声は・・・まさか・・・!」

リッカ『・・・姫様・・・!?』



至尊絢姫エア

『全く呆れ、そして見上げたものよ。貴様は否定するであろうが・・・他者を省みず己の我を通すその様、まさに貴様は我の幼年よ。まぁ、貴様にとっては嬉しくもなんともないであろうがな』

 

【──⬛⬛⬛⬛!!!!】

 

この世総ての悪、不定形の怨嗟の化身となり己の身を使用したギルくんの行動と判断を静かに判断する妖精王ギルガメくん。このように回りくどい手段を取り、その過程で大掛かりに準備を執り行い総てを巻き込むような真似をやらかした幼年の自分の頭の悪い行いを楽しみながら自嘲する

 

『だが、無粋な批判や野暮な批評は此処に至っては行うまい。至宝をその目に焼き付ける、その願いを他ならぬ我が懐き、焦がれたのだ。我が懐くであろう願いを誰が否定できるものか。ゴージャスたる我も必ず同じ手段を取ったであろうよ。うむ、我はそういうことする』

 

至宝の原石を予期せぬ内に手に入れ、己が磨く事なく自ら比類なき宝石へと研鑽され行くその胸の高鳴りを思い起こす。その愉悦と高揚、見応えは手にしたものにしか分からない。使い途に困っていた石榑が、凄まじき速さにて目を見張るような輝きを放つ至高の玉石に変わっていくのだ。磨く必要のないその過程と進化を、目の前にて楽しみ続けた己がいうのだ、間違いは無いだろう。故にこそ──

 

『光栄に思うがいい。貴様の願い、嘆願を聞き届けてやろう。その汚濁に染まりきった身体と瞳にて焼き付けるがよい。森羅万象、この世界にて我が唯一『姫』と認めた我が至宝の輝き──』

 

【⬛⬛⬛⬛⬛────!!!!】

 

『──至尊たる英雄姫、その全容を此処に示してやるとしよう!!待たせたなエア、我が魔法少女よ!存分にその有り様を示すがよい──!!』

 

高らかに告げるギルガメくん。振り下ろされる巨大な汚濁の手。叩きつけられ潰されてしまう妖精王。あわやそのまま消滅か、などと思われた・・・──その瞬間であった

 

【──!?】

 

「──お待たせしました、ギルくん。やっと、こうして出逢えましたね」

 

振り下ろした右腕が、虹色の粒子になって天へと昇っていく。城を貫き、天へと屹立するかごとき虹色と白金色の魔力の奔流。特異点の何処にいようとも目の当たりにすることが出来るほどに膨大にして巨大、そして柔らかな輝き。それを目の当たりにした者が、根源的な畏怖にも似た感情を懐くであろう荘厳にして美麗なる暖かな輝きが、凄まじい勢いで周囲を包んでいく

 

同時に、その輝きに触れた残骸の右腕は柔らかに、そして穏やかに昇華されていた。だがその有り様に痛みも苦しみも介在しない。ただ、その事実をすんなりと受け入れ呆然と立ち竦んでいる。いや──目の前に現れた輝きに、目を奪われているのだ

 

黄金律と女性の豊満さを兼ね備えた肉体を白金の鎧に包み、総てを慈しみ愉しむ暖かな暖炉の火がごとき真紅の瞳。天の織物が、輝きそのものが形となったような長き金髪。ただ其処にあるだけで、あらゆる総てをありのままに昇華し穢れを祓うかのような微塵の汚濁もなき、白金色の輝きを万象総てに降り注がせる魂。例えこの世総ての悪に放り込まれようとも、毛先の一つも汚す事は叶わないであろう圧倒的なまでに清廉なるその姿

 

人類史、その総てを喪いし興亡の危機にて産み出された奇跡、王の予想を越え至尊に至った唯一無二の英雄姫。小さき王が一目見るため、破棄された魔法少女を救うことで謁見の機会を狂おしく望んだ天上天下にただ一人の存在──

 

「──はじめまして、幼少の英雄王。ワタシの名はエア。──英雄姫、ギルガシャナ=ギルガメシア。敬愛する英雄王に、名前と姿、愉悦の総てを賜りし者です」

 

誰もが平伏するような輝きと美貌を湛えし英雄姫が行ったもの。それは素朴な挨拶であった。ぺこり、と御辞儀を汚濁に染まりきったギルくんに、躊躇いなく行う。エアにとってそれは当然であった。どんな姿であろうと、どんな存在であろうと。英雄王への敬愛だけはいつ如何なる時にも揺らがない

 

【──、──!?】

 

同時に、英雄姫が行う次の行動も最速かつ迅速であった。やると決断したのならば微塵の迷いも躊躇いもなくそれを選び取り行う。その判断と行動こそ彼が認めし理念と信念──慢心も驕りも介在しない、『無駄』の一切ない生きざまであるが故に

 

「──、あ・・・」

 

目にも止まらぬ速さでクラスカード、ランサーをインストールし。これまた比類なき朋友の鎖を展開し中核たるギルくんを救出し、そっと抱き止める。まず、英雄姫の成し遂げたかった事。それは何より、泥にまみれたギルくんの身柄の確保であった

 

「怪我はありませんか?幼少の英雄王。御無事で本当に良かった。あの三倍を持ってこなければ染まらぬ事は心得ておりますが、大丈夫だからといって心配しなくていい理由にはなりませんよね」

 

「あ、は、はい。その・・・ありがとう、ございます」

 

目の前に微笑む絶世の美女たる姫。彼女は心から自分の身を案じてくれていた。これだけの事を行い、傍迷惑であると断じられても仕方無い事をした自分を微塵も憎むことなく恨むことなく、批判の一つも行わず、心から心配し、真っ先に自分を救出したのだ

 

「少し、お待ちくださいね。あなたが顕現させてくださったものを、何とかして参ります」

 

「は、はい。その、えっと・・・」

 

「ふふっ──積もる話は、また後で」

 

そっとギルくんを下ろし、目線を合わせ恭しく頭を下げる。子供であろうと微塵も礼節を翳らせないその有り様に、言葉も喪いギルくんはただ目を見張る。至宝と大人の自分が何度も告げていたが、想像を遥かに越えていた。その輝き、その在り方。確かにこれ程の魂と女性は、生前のウルクにすら存在しなかった『姫』の名を冠するに相応しき──

 

「──お待たせしました、ギル。行くよ、フォウ」

 

『うむ、存分にその輝きを示せ、エア!──出でよ珍獣!貴様の姫の晴れ舞台だ、貴様がおらずしてなんとする!』

 

『プレシャス』のクラスカードをインストール、召喚せしは姫の無二の親友、守護獣フォウであった。いつもの小さき姿ではなく、姫の身体を乗せ運ぶ美しく雄々しく輝かしい姿、至尊絢姫エアの守護者としての姿を取っていた。愛しげにエアにすり寄り、親友の晴れ舞台を心から祝福する

 

『ようやく呼んでくれたね、エア!久し振りの顕現だ、迅速かつ思いっきりやろうじゃないか!そこのギルガメくんとは違うところを見せてやる!』

 

『ほざいたな珍獣風情が!だが赦す、使い魔の本分を逸脱せぬならそれでよい!──さぁ彩るとしよう、我が姫にして至宝の輝きをな!!』

 

姫と王、獣が頷き合う。己が為すべき事を理解し、三者三様に決意を以て目の前の存在へと行動を起こした

 

『受けとれ、エア!今一度、我が剣にてこの世の不条理を切り裂いて見せよ!』

 

ギルくんが解放せし王の財宝、その波紋に手を突っ込んで姫に一つの宝を渡す。それは世界を切り裂く覇者の剣、エアの銘の元となった無銘にして無二の剣──

 

「『乖離剣エア』──お借りします、ギル」

 

手にした瞬間、その刀身が白金色に輝き虹色の暴風を精製し放ち始める。激しいながらも輝かしく優しき風が、その余波のみで残骸の身体を穏やかに解き昇華させていく

 

『いつでもいいよ、エア!思いっきりやってみせてくれ!』

 

フォウの身体から、輝かんばかりの虹色の粒子があふれでる。それは瞬く間に辺りを、天と地を満たしつくし姫の行う戦いを補佐する高濃度のプレシャスパワー・・・万物を認め不可能を可能にする新エネルギーを放出する。比類なき輝きに比較の獣が触れ討ち果たされた事により生まれた予期せぬ力。人類悪を人類愛に昇華させた純粋なまでの希望の結晶を、一瞬にて特異点の総てに満たす

 

「ありがとう、フォウ。──クラスカードを託してくださった皆様、申し訳ありません。これは害し、排除する戦いではなく・・・労り、明日へと繋げる戦いだから」

 

静かに頷き、浮遊せし乖離剣を両手を添え包むように持ち、空中へと浮かび上がる。満たされたプレシャスパワーに共鳴し、生成される風が、輝きが勢いを無限大に加速させていく

 

「だから──行うのはただ一度だけ。ワタシが出来るのはいつだって、何かを労り、美徳を認め尊び重んじる事」

 

自らの宝具、対界宝具なる真名を開帳する。冠位は手向けに手放したが故、全能の行使は叶わぬけれど。その乖離剣は世界の『不条理』『理不尽』『無理』を切り裂く。その世界の在り方を重んじ、行き止まりになってしまった世界へその先を示し、実現不可能な現象を実現不可能なままに可能とする、世界そのものに働き、希望と未来を産み出し未来をその世界の人々に託す対界宝具

 

それを起こす規模は宝具の持ち主の持つ可能性、行える未来への実現可能な認識と力に準拠する。一般人がこの宝具を発動したとして、行える事は精々明日を良き方向に導き頑張る、程度のもの。対人の認識できる未来を良くする程度のものだ。──しかし。総てを見通す王、人間の可能性を総て収めた蔵、その王に認められし魂、世界に働きかける剣。それら総てが揃いし時、それは森羅万象に作用し世界の理不尽を切り裂く力となる

 

「──えぇ、そうです。貴女には、貴女にだけは・・・『それ』をしてほしかった」

 

ギルくんは見ていた。いつか切り捨てられた世界に対峙したとき、その世界を滅ぼすか否か等という葛藤にその魂を曇らせてほしくない。その世界が行き止まりだと言うのなら、その世界総てが挑めば明日を掴めるよう示す力を身に付けてほしい。困難と理不尽を希望と奇跡の対価に要求する世界に、決して屈しないでほしいと願ったから。今はまだ特異点のみの作用だけれど。このまま大人の自分が傍にいてくれるなら、きっと

 

「──至尊を詠う 

 

縁は出逢い、紡がれ

 

歴史を織り上げ死を越える」

 

 

──基は英雄姫が手にした、尊重の理。万象の王に転生した彼女だけが持ち得る理不尽の昇華と世界そのものの尊重。ランクは存在しないが、便宜上定義するならば★。転生者たる彼女が示す宝具。それこそは──

 

「──『人理を照らす、開闢の星(エヌマ・エリシュ)』──」

 

 

放たれる虹色の暴風、魔法少女の墓標たる固有結界を満たし尽くす尊重の一撃。フィードバックを自分から受け止め、プレシャスパワーを精製し続けるフォウ、特異点の総てを見通す王。三位一体の宝具の開帳にて、世界が白金と虹色の輝きに満たされ──

 

 

──本当に、お疲れ様でした。あなたの奮闘と意志に、心からの敬服を。どうか教えてください。貴女が望む願いはありますか?誰に示されるでもない、貴女だけの願いはありますか──?

 

・・・その日、その特異点の在り方は変容する。魔法少女が流れ着く最後の漂流先であった魔法少女達の墓標は、あらゆる魔法少女達の可能性と魂を内包した『魔法少女の座』とも呼ぶべき場所へと在り方を示される

 

そして、輝きが世界を満たした刹那、魔法少女の魂と亡霊たちの魂に、何者かの声が響いたという

 

そこで、初めて魔法少女達は祈った。世界を救うではなく、使命ではなく。年頃の乙女の、ありきたりな願いを

 

ショッピングしたい、お勉強したい。大人になる準備をしたい、ずっと遊んでいたい──

 

そんな願いを、一人一人の願いを受け止め。姫は静かに微笑み──

 

・・・その輝きが収まる頃には、虹色のオーロラが空を彩る頃には。特異点に巣食う絶望と残骸は、余すことなく消え去っていた。

 

否、消えてはいない。そのオーロラこそが、残骸達が昇華され形を変えたものなのだから──




「──」

ほっ、と地面に脚を着け降り立ったエアが一息をつく。上手くできて良かった、とゲーティア以来の宝具の開帳の成功に胸を撫で下ろす

『世界の道理を切り裂く宝具、か。まことお前らしい。何も奪うことなく、しかし変えることなく。世界に住む者共に未来を託す宝具とはな』

そう、切り裂くのは理不尽だけだ。どうにもならない絶望だけだ。世界の人々が希望を目指さなくてはその世界は滅ぶだろうし、世界の人間の意識に作用する訳でもない。ただ、実現可能な未来を託す。如何なる結末をも尊重し、受け入れるが故に、世界の行く先はその世界に住む人々に託すのみである

「──はい。ワタシはただ、取り返すだけです。世の中にはどうにもならない事があるという取り決めから、輝く未来を」

そして、そっとギルくんに歩み寄る。この事件を引き起こした王に、エアなりのけじめをつけるためだ

「──覚悟は出来ています。でも、僕は怒られるのは初めてなので。どうか加減も手心もなくお願いします。罪と罰を知らなくては、怪物と変わりませんからね」

『こやつめ、叱咤など初めてゆえ心待にしていたな?』

「さぁどうでしょう。・・・お願いします、エアさん」

そっと目を閉じ、なすがままとなるギルくん。言い訳も逃げることもしない。自分を叱ってくれるエアに、従うことを示している

「──ギルくん」

「はい、なんなりと」

そんなギルくんに、エアは目線を合わせ、そっと頬に触れ・・・

「──皆に、一緒に。『ごめんなさい』しよう?」

「──・・・・・・!」

・・・一緒に謝ろう、悪いことをした皆に、一緒に謝りに行こうと。エアは告げたのだ。目を見開いたのはギルくんだ。彼女は被害者であり、身勝手な自分に巻き込まれただけだというのに

一緒に謝ろう、だなんて。自分のやらかした事にすら、寄り添う王ですらない自分にまで、こうしてくれるだなんて・・・

『──どうだ?熱望していた姫に、なんの落ち度もない姫に頭を下げさせる。重き罰であろう。拒否は赦さん。貴様はこれより、我らと共に魔法少女どもに謝罪行脚を行うのだ。それを貴様の罰とする』

『解るかチビギル。何かをやらかして誰の迷惑になるか。賢い頭でよーく考えろ!』

「──・・・はい。これは逃げるわけにも、断るわけにもいきませんね」

やらかした事を悔いる事が罰ならば。反省させることが罰ならば。自分にとってこれ以上ない罰だ。自分だけならいくらでも開き直れたというのに、貴女まで謝ってくれるというならば、王として決して誤魔化しはできない

「はい。・・・ごめんなさい、エアさん。僕が・・・悪かったです」

「──もう、しちゃダメですよ?逢いたいなら、いつでも言ってください。いつでも、大歓迎ですから」

「はい、エアさん。僕の負けです。部員の皆様の言う通り、笑顔で麻婆を食べさせていただきますね。──あぁ、かなわないなぁ・・・」

心から反省し、改める決意を固めるギルくん。──なんの暴力も振るわず、エアは幼少の王を討ち果たすのであった──

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