・・・実際問題どうしたものでしょうか。材料の一つも用意できないのではちょっと御手上げです
・・・──かくなる上は・・・この手しか無いようですね・・・
~楽園カルデア
アンデルセン「なに?リッカが平行世界のキアラ討伐に向かっただと?」
ギル「新王めが血相を変えて助力を乞うたのだ。余程切迫していた故二つ返事で貸し出してやったはいいものの・・・我等が挑むべきは別件なのだ、童話作家よ」
アンデルセン「だろうな。あのエロ尼が何か行動を起こすというなら、『必ず俺を爪弾きにする』だろう。大方・・・──見たくもない廃棄孔辺りにな」
ギル「──」
アンデルセン「その顔・・・廃棄孔にこそ何かがあるといった顔だな」
「然り。面白いものが見られるぞ?我がマスターですら及ばぬであろう『戦術』の極致にある新王めの出陣を初めとした数多の催しがな──」
──(もくもくと作業中)
『まるごしエアちゃん』『まるごしフォウくん』
「えーと。確かあなたたちはカルデアのマスターと合流したいんですよね。そしてこのビースト顕現案件をどうにかしたいということであっていますよね。分かっていますよ、ですから誠心誠意御案内し、導いて差し上げます。ですからしっかりついてきてくださいね」
言葉の友好的な響きとは裏腹に、何処までも気だるげで倦怠的な雰囲気を漂わせる『カーマ』と名乗るアサシン。真名をあっさりと明かし、そして自分はやる気が無いといいながら、その奉仕態勢は完璧と言えるものであった
「状況の確認もしておきます。この電脳空間はビーストⅢ、ラプチャーが自分の羽化の為に変化させたもの。サーヴァント、マスター、人間のリソースを使って本当の意味で顕現するための餌場のようなものなんです。容態はビーストですが、今はこの・・・えっと・・・」
『セラフ』
「セラフ。それに縛られているので顕現は出来ていません。だからビーストとして認められていない今、抑止力におけるグランドサーヴァントの派遣は期待しないでおいた方が良いですね。BB・・・あの頭が変になったそっくりさんが設定した128人のマスターとサーヴァントによる殺しあいのルールのせいで皆さん殺気立っているので、対話や戦闘のタイミングは見計らった方がいいと思います。まぁお好きにどうぞ、といった感じなんですけどね」
歩くのも面倒臭いと言うようなのんびりとした様子だが、その説明は親切丁寧であり、もたらされた情報は価千金なものだ。倦怠と奉仕、無気力と献身が同居している不思議な幼女の在り方に、白野とリッカは首を捻る
『BBが用意した現地ナビゲーター・・・?でもBBからそんな話は聞いてない。そもそもカーマってインドの男性神だった気がするんだけど』
カーマ。愛の神。恋慕の矢を操るインドの男性神。その逸話と顛末は神の理不尽と凄惨さを物語るにこれ以上無いほどのサンプルケースである
瞑想に耽り、外界の総てを遮断していた破壊神シヴァ。その妻パールヴァティーに気を惹かせるために神々が派遣したのがカーマである。カーマは神々に言われるまま、職務を全うし愛の矢をシヴァに撃ち放ち気を向くことに成功させる
・・・しかし。インドにおける瞑想は宇宙や悟りに繋がる神聖な儀式。それを邪魔すると言うことはマーラに殉ずる仏敵、万死に値する重罪にして禁忌であった。万物を流転させ同時に総てを破壊する神であるシヴァはその狼藉に怒り狂い、額にある第三の眼を開き、カーマをその存在毎完膚無き迄に焼き尽くした。職務を全うしたに過ぎないカーマを、である
シヴァの第三の眼、それは世界を焼き払う炎を放つ神威である。世界即ち宇宙。宇宙総てを灰塵に帰す威力の焔を個人が受ければどうなるかなど語るまでもない。カーマは万物一切を焼き払われ消し飛ばされ、灰の神、形無き者とすら形容されるに至るほどに滅殺されたのだと伝承には語られている。ハイパースケールに定評のあるインド神話の最高神が一人に纏わる神、それがカーマなのた
【酷い話!でも神様って理不尽なものってオリオン言ってた!・・・じゃあなんで・・・】
「質問ですか?はい、どうぞ。口を開くのも面倒なんですが、快く答えてあげますね。なんでも聞いて構いませんよ。舌打ちしながら笑顔も添えます」
丸聞こえであったようだ。白野との会話をしていたリッカの肩に肩車の形にて乗り、くすくすと疲れた笑顔で対話を促す。では、せっかくなのでとリッカは質問することにしたのだ
【カーマはどうしてここに?】
まずはそれだ。カーマは神、神霊である。であるならばそう易々と使役される存在では無いと予想を立てた意見である。その問いに、カーマは具体的な計画と抽象的な理念をもって返答した
「あぁ、私がここにいる理由ですね?割と簡単ですよ。私、とある施設を作ろうと思っているんです。ですからここにいるものを参考にして見学に来たんです」
『施設・・・?』
「えぇ。ただ気持ちよく、ただ幸せでただ溺れていられる素敵な空間・・・入った人が永遠にいたいと願うようなそんな場所を作ろうとしているんです。ほら、私愛の神ですから」
【健康ランド!スパ!?】
「それは考え中なんですよね・・・でも、『私が作ろうとした時空』の其処は、もう警備も防御も完璧すぎてどうにもならなかったので。プランの洗いだしと計画の建て直しを余儀無くされてしまったのです。・・・磐石過ぎて蟻の一穴もないとか、流石は都市国家の原典なだけありますよね」
だからこそ、別のアプローチを模索するついでに『閉鎖した空間』の見学という名目でこのセラフに脚を踏み入れたというのだ。この時空にて羽化せんとするビーストの姿、在り方を参考にするのだと
「それで、完成した暁には此処の世界で試しにやってみようかと思っていたんですが・・・そもそもビースト顕現してしまったら実験も何も無いじゃないですか。あの無駄に大きい身体で私が狙いをつけた人間を潰されたらプランが無駄になります。練習台として狙いをつけた人間を殺されるのは癪なので、どうせなら邪魔してやろうと思ったのです」
【邪魔・・・ビースト顕現を阻止って事だね!】
「そうなりますね。そもそも天秤を『傾かせる』事が出来るならそれはそれに越した事はありませんし。アレがいると仕事がやりにくいんで思いきり邪魔してやるかと思っていた最中、あなた達が来たので丁度いいなと」
自分の目的は、獣たるビーストⅢRの討伐であり、目的が同じであるリッカ達と共闘するのは吝かではないという。だからこそこうして案内しており導いている、やる気はないけれどと付け加えながらカーマは事のあらましを説明したのであった
「と言うわけで、目的が一致した二人に協力するのは自然ななり行きと申しますか。ぶっちゃけ一人では面倒臭くて死んでしまいそうなので力を貸して欲しいと言いますか。そんな感じです」
【成る程!えっとじゃあ、女性の姿なのは・・・】
「あぁ、この姿ですか。これは口にするのも嫌な恋愛脳の女神が持っていった少女の負の部分を担当しているから・・・みたいな感じですね。理不尽、迫害、巻き込まれ。淀みに澱んだ因果がいい感じに紡がれていたから繋がった、みたいな」
要するに依り代としての存在に最適であったから、という事らしい。華のような愛らしさに勤務に疲れ果てたOLのような雰囲気の不思議なカーマはそうやって形取られた様だ。一通り説明し、カーマは改めて問い掛ける
「どうですか?出来ればあの無駄に大きくなったビーストを倒してもらいたいんで協力してほしいんですけれど。サポートと奉仕と献身は約束しますよ?」
『【お願いします!】』
即答である。別に幼女のサポートに釣られたわけではない。急を要する事態のため協力を断る余裕など無いだけの話だ。神の助力ならば百人力と言うものである。願ったりな事に変わりはない
「はい、分かりやすい返答ありがとうございます。でしたらこれより、そちらのアジ・・・あぁ、リッカさんのサーヴァントとして、うんざりするほどに色々やらせていただきますね」
こうして、カーマの協力を取り付けたリッカと白野。カーマが案内するはカルデアのマスターの場所。検討と目星はついているという。サラスヴァティ・・・弁財天なる同僚の気配を辿り最適解を選ぶのだと。そんな中・・・
「──あぁ、先に言っておきますね。これははっきりとしておかないと」
振り向き、華のような仕草にて鎧姿のリッカに向き直り、自分のスタンスを告げるカーマ。それは──
「この場には私が
【?】
「此処には嫌いな人間が三人います。そして特にリッカさん。──嫌いです。虫酸が走るほどに大嫌いです。一緒にいると舌を噛みきりたくなる程に大嫌いです。そして、恋愛相談とか絶対止めてくださいね。私、あなたと一緒にいるだけでどうにかなっちゃうくらいに胸焼けがするんですから」
突然の罵倒かつ拒絶の言葉。愕然と目を白黒させるリッカに──
「同時に、貴女は私の目標です。みていてくださいね?いつか必ず、心も身体も永遠に愛して、愛して、愛し抜いてあげますから──」
その言葉と共に蠱惑的に笑うカーマ。──彼女にとっては、どちらも同じなのである
愛欲の獣を滅ぼすことも。未知の龍を堕落させる事も。そしてその『ついで』に藤丸立香を助けることも。──それが、自分の為すべき事なのだと・・・
リッカ【・・・──(ションボリ)】
ザビ『見るからにしょんぼりしている。大丈夫?プレミアムロールケーキ食べる?』
リッカ【仮面の下を涙を拭う案件・・・初対面で敵視されたり警戒されるのは腐るほどあったけど、まさか好感度がマイナス突き抜けてるとはたまげたなぁ・・・】
『なんか拗らせてる感覚がすごい。大丈夫大丈夫、もうすぐ『リッカたんだいすき!』しか言えなくなる身体になるから』
【その根拠は!】
『対話(物理)』
【幼女に拳は絶対に振るいません~!】
カーマ「あ、もうすぐですよ。準備はいいですか?あ、リッカさんは口を開かなくて大丈夫です。私が適当にとりなしますから」
【ファッ?】
「・・・脳味噌筋肉ですね、本当に。そんな禍々しい鎧でそんな声優やれるような可愛い声で喋ってどう誤魔化すんです?」
【えへへ可愛いって言われたぁ~(テレテレ)】
『やったねリッカ』
「喋らない謎のサーヴァントでキャラは通してくださいね。私が適当に口を開きます。クラスもアヴェンジャーとして・・・──」
話していた瞬間、その一瞬──リッカは素早くカーマを『庇い』、その奇襲を防いでいた
カーマ「・・・はい?」
リッカ【──!】
メルトリリス「──残念。やっぱり鈍っているわね。こんなサーヴァント一人倒せないなんて。プリマドンナとして屈辱だわ」
弾き飛ばすリッカ。奇襲したサーヴァント──メルトリリスに対しカーマを庇い構える
【・・・下がってて】
「は?あの・・・何してるんです?」
【カーマを護っただけだけど?】
「・・・はぁ・・・」
サーヴァントを庇うマスターとか意味不明である。盾の代わりに傷付く戦士が何処にいるのか。不満を溢そうとしたその時──
「メルトリリス!気をつけるんだ!そのサーヴァントは・・・普通じゃない・・・!」
【・・・!!】
メルトリリスの側に立つ、同い年くらいの少年。──右手に輝く令呪からして、間違いない
「まずは出方を見よう!あの真っ黒のサーヴァントとは、戦ったら終わりな気がする・・・!」
【──藤丸、立香・・・】
「・・・え?何で、オレの名前・・・」
ザビ『いかん』
カーマ「・・・どうやって誤魔化しましょうか・・・」
早速訪れた困難。──対立か共闘か。カーマは自分の胃がキリキリと痛むのを感じていたのだった・・・
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