人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『布団でふて寝するカーマ』

カーマ「zzZZ」


『立て札』

(日曜日なのになんで大嫌いな連中の元ネタを必死に調べているのかと気付いたら馬鹿馬鹿しくなったので今日は御休みします。また明日おあいしましょう)

カーマ「..zzZZ」


カオス・ドラゴン・アンニュイ・カーマ

「ガウェイン!前線を押し上げるんだ!メルトはスキルを使ってくれ!ロビンはフォローとカバーを!距離を縮めたら離れないように食らい付くんだ!」

 

遂に始まったサーヴァント戦、トリスタンと生命を懸けた戦いに持ち込んだ藤丸がマスターとしての腕前を披露し、数と指示を頼みに無力化を図る。スターティングメンバーはガウェイン、メルトリリス、そしてロビン。やる気のないカーマ、そして諸事情で鎧にヒビが入ったリッカがサブ、控えメンバーで戦場の俯瞰とマスターの防衛を同時にこなしており、戦いの行く末を見守る形だ。

 

太陽の熱量たる聖剣、メルトリリスの苛烈なクライムバレエ、ロビンの地味ながら堅実なサポートを懸命に纏めあげる藤丸。トリスタンの不可視の弓矢をマスターに通すまいとするサーヴァント。その相互理解にて、セラフ側に呼び出され霊基が異なるトリスタンの猛攻をしのぎ互角以上に持ち込んでいるのである

 

『・・・──いいマスターだね、彼』

 

「はい?」

 

魔力で生成した治癒テープでベリベリと鎧のヒビを補修しているカーマが白野の言葉に反応する。彼女、月の新王からして見て。藤丸の戦いぶりはいいもの、好ましいものという印象を懐かせた。

 

【あ、解る?懸命でいいよね、彼】

 

「・・・懸命ぃ?」

 

そんなの誰でも一緒じゃないんですか、と治癒テープをベリベリ貼るカーマの無言の説明の要求に、はくのんが補足を加える。彼はとにかく『生き残ること』『多人数のサーヴァントを運用をすること』に長けているのだとはくのんは分析する

 

『戦場を掌握するレベルではない等身大のマスターではあるけど、要所要所のサポートが抜群にうまい。あ、ここで回復してほしいなって時に。あ、ここは攻め時だなって時に必ず藤丸くんのサポートが届く。痒みに効くムヒみたいに。スーッと』

 

【穴を埋めたり、フォーメーションとかの不備をカバーするのが抜群に上手いよねー。何て言うのかな、三つの違うものを調和させるのが凄く上手!】

 

回す魔力、使用する術式は一般なれど。培った経験とサーヴァントを理解し戦場の機微を把握する力が抜群であるとリッカにはくのんは藤丸を評価する。苦難を苦難と認めているため油断や自惚れは微塵もない。魔術師特有のサーヴァントを使い魔と侮る傲慢さもない。一人一人を仲間として、一人一人を大事な戦力として信頼を置き、不足と困難に挑む姿を以て『良きマスター』であると断定したのだ

 

はくのんのような六手までならば完璧に見切り抜く圧倒的な洞察力による対人戦における『無敵』。リッカの様な無尽蔵の魔力とマスターとしての概念を覆す規格外のスペック、楽園のバックアップによる相撲の『電車道』やアメフトの『北南ゲーム』に準ずる【それが出来れば苦労はしない】といった出鱈目とも違う『等身大』の理想系。開位を与えられるに相応しい人理の旅にて培われたその腕前に、リッカもはくのんも高い評価を与えたのだ。マスターとしての正しき模範、とすら言えるかもしれない程の素直さである

 

『fate界のサトシの称号に相応しい』

 

【あ、解る解る!一人一人を大事にしてくれる所とか凄くそんな感じかも!なつき度を大事にするところとか!】

 

『藤丸の指揮のお陰でサーヴァントの士気が高い。──指揮だけに』

 

『何か いま 言いました?』

 

『ごめんなさい。・・・受けなかった。無念』

 

【帰ったらギルに聴かせてあげようね!あ、カーマ、治癒テープありがと!】

 

『いえ、それは別にいいんですけど・・・』

 

カーマからしてみればこの状況はあまり好ましくないものではあった。藤丸とそのサーヴァントが戦い、当たり前のように勝つ。敵を蹴散らし勝利する。それであるならば楽でいい、楽でいいのだが・・・ここにいる存在は自分だけではない。少なくとも、藤丸リッカである彼女がいるのだ

 

いなくてもいい、いてもいなくてもいいなどといった評価を下されてしまっては実に宜しくないのだ。・・・正直、自分は今の問題がどう転ぼうがどうでもいいし、獣にたぶらかされて死んでいった者達の安否や尊厳など心からなんでもいいと思っている。自分が与える前に誰かの愛で滅んだ者などになんの感慨を浮かべろと言うのか?救うならご勝手に。負けようと滅びようと御自由に。だって愛するとはそういうものでしょう?自分達が挑まんとしているのはそういう獣なのだから

 

だが・・・目の前にいる治癒テープまみれの黒い子は例外である。この見ているだけで自分の矮小さを、卑屈さを見せ付けられるおぞましく忌々しい彼女にかけられるものに、そんな一生分受けたであろう無関心など味わわせる訳にはいかないと、カーマは無感情の下の情念を再認識する

 

・・・──だから。自分がやることは見えている。決まっている。私が助けてあげるべき、愛してあげるべきは一人だけ。ならそのように囁いて、指し示して・・・──

 

「・・・元気になりましたか?マスター。これで強度は元に戻った筈ですけれど」

 

【ん、ありがと!よーし、藤丸くんを護衛に──】

 

「いいえ、マスター。はくのんさんも。『これから、やるべき事をお教えします』」

 

カーマの珍しい提案に、驚きの表情を浮かべるはくのんにリッカ。カーマはその華のごとき表情を微笑みに染め、指をさす

 

「『ちょっと、驚かせてあげましょっか』」

 

『ちょっと』

 

【驚かせる・・・わわっ】

 

ぐいっ、とリッカを引き寄せ、こしょこしょと耳打ちするカーマ。その提案とは──

 

「・・・ね?サブにはサブなりに、出来ることはあるんですよ?」

 

──実に、実に。インドスケールとしての片鱗を演出するものであったのだ。

 

 

「やりますね。善きマスターに善きサーヴァント達。ただし毒婦を除く皆さま方と注釈が入りますが」

 

「イラつく減らず口ね・・・あなた、余計な一言で誰かに嫌われる、傷つけるタイプでしょう?」

 

ガウェインのヘビーな一撃、その揺り戻しとフォロースルーをメルトリリスがカバーし、弓矢を奏でる手をロビンが制限する戦法にてトリスタンに食い下がる藤丸達。円卓に連なる高名な騎士に互角以上に持ち込めているのは、一重に一丸となったチームの強さであるためだ。みな、藤丸の指示の下に全力を引き出せている

 

「私は悲しい。その様に加虐にて人を害する有り様こそ毒婦そのもの。──やはり赦してはおけませんね」

 

「おあいにくさま、性分なの。私が踊るにはその演奏は合わないし、このまま終わらせ、て──」

 

トリスタンが、メルトリリスが。共に距離を取り詰め直した──その時であった

 

「・・・──あのですね。たかがサーヴァント一人にどれだけ手こずっているんです?異変を解決する気、ありますか?」

 

「!カーマ・・・!?」

 

カーマの言葉と共に発せられるもの──それは、一同に戦慄を刻み込ませ、人体と化したセラフを犯す癌と呼ぶべきものである【黒】であった

 

「仕方ないですから。──活路を開いてあげてますね。ね?【クリシュナ】」

 

【──】

 

カーマの言と共に。無言にして黒き龍・・・アヴェンジャー、クリシュナの力の一端が一帯を覆い尽くし、染め上げ、そして──塗り潰していった

 

「!?」

 

「これは──!?」

 

「え、これ・・・」

 

藤丸がソレに触れれば魔力と傷が癒され、形成されるテクスチャが触れれば一色に塗り潰される。サーヴァントが染まれば即座に還元され汚染される。足下の影より伸び、溢れ出るソレ・・・それは虚数の属性にして、総てを犯し汚染する悪性の泥。クリシュナの肩に乗り自慢気に笑うカーマの嘲笑と共に、クリシュナが口を開く

 

【──戦け、慄け。この黒こそは人の業】

 

「これは──なんという・・・!」

 

【悲しみの妖弦の弾き手よ。──私は、お前の【死】そのものだ──】

 

際限無く拡がり行くクリシュナが披露する混沌の泥。メルトリリスとトリスタン、その他のサーヴァントを分断し・・・御膳立ては整ったとカーマがぴしりと指を差す

 

「今ですよ、サラスヴァティ。さっさとじゅわっと溶かしちゃってくださーい」

 

「──後でソレがなんなのか説明してもらうわよ、カーマ!」

 

クスクスと笑うカーマと、サーヴァントと呼ぶにはあまりにも禍々しきクリシュナに危機意識を懐きながら、メルトリリスはトリスタンに駆け疾走する──!




メルトリリス「隙を見せたわね、色男!」

トリスタン「っ、しまっ──!」

本能的な畏怖すら呼び起こされる黒き汚染に気を取られたトリスタン。メルトリリスに組み付かれ、完全なマウントに持ち込まれる。最早勝負は決した。後は、メルトリリスがトリスタンの胸を腕で切り裂けば終わりである

「・・・正体が掴めぬと思いましたが、ここまでとは。あのクリシュナとされるサーヴァント・・・一体何者なのですか?」

「・・・・・・・・・」

「いえ、これから死す私には詮無き事。──・・・・・・・・・いつまで敗者をいたぶるのです。早々に止めを・・・、?」

「・・・・・・・・・、・・・・・・っ」

「・・・待ちなさい。そんな状態で戦っていたのですか、貴女は」


腕を震わせ、振り下ろさんと構えていたメルトリリスは、やがて起き上がる。一瞬だけ見せていた必死さを、ふたたび取り繕いながら

「・・・興が醒めたわ。間近で見たら好みでもないし、私がドレインする価値もない。それに・・・」

【・・・──】

「・・・御膳立てしたのはあなたでしょう。生殺与奪は任せるわ、クリシュナ」

ロビン「おいおい、アレ見た後で任せますかねフツー・・・いや、適任、なのか?」

【・・・・・・】

「・・・──好きにしていいですよ、クリシュナ。お任せします」

肩に乗るカーマ、頷く藤丸。それを受け、クリシュナはトリスタンに歩みより・・・

【・・・・・・マスターを、助けてあげてほしい】

「・・・なんですと?」

【あなたも持ちサーだ】

「・・・、・・・・・・凄惨に補食されると覚悟をしてみれば、勧誘だなどと・・・読めない方だ、あなたは」

メルトリリス「はぁ!?ちょっと、私の話聞いてた!?シマツよ、シマツ!排除しなさいって言ったのよ!」

藤丸「メルトリリス、大丈夫だよ。クリシュナ、ちょっと怖かったけど・・・」

メルトリリスに手を差し伸べ、助け起こすクリシュナ、肩に乗りぺちぺちと抗議の意思を見せるカーマを見ながら・・・


「・・・信じるって決めて、クリシュナは応えてくれた。今は、きっとそれだけでいいんだ」
    
ガウェイン「えぇ。今は一騎でも戦力が欲しい。おぞましき悪ではないかと考えましたが、彼は間違いなく藤丸の意志を汲むサーヴァントだと確信が持てました」

メルトリリス「・・・なんなのよ、この流れ・・・藤丸のサーヴァントは私だけという流れでは無かったの・・・?」

嘆くメルトリリスを他所に、トリスタンは共闘の意志を敗者の責務として受け止める。つまり──



『──トリスタンが なかまに なった』

カーマ『てーぬーるーいーでーすー。マスター手緩いです、優しすぎます。素敵なリソースだったのに!』

【あいたた!でも藤丸くんの助けになってほしかったし・・・!というかあの台詞はいったい】

『ゴルドルフ所長輔佐の【レースで言ってみたい決め台詞500選】から検索して引用しました』

【ゴルドルフ所長輔佐ー!!ごめんね台詞使っちゃった!なんだかキメッキメだと思ったら!】

『まだまだいっぱいあるよ。クリシュナのキャラ付けはこれでいこう』

カーマ「・・・無視されるのは腹が立つと思ったから行動を起こしましたが・・・悪手でしたでしょうか・・・」

『次は『ぶたさんのような鳴き声をあげろ』とか良くない?』

【今日がお前の命日だ・・・とか!?】

カーマ「・・・まぁ・・・あなたが楽しいなら、いいです」

【?カーマ?】

「このぽんこつドラゴンさんには躾が必要みたいですねー(グギギギ)」

【ほわぁぁあくびがしまるぅうぅ】

藤丸(仲良しだなぁ・・・)

はくのん『リッカ、決して暴力ヒロインにはならないというゲッシュを立てているが故に無抵抗なのであった。まる』

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