人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「このコーナー需要あるんでしょうか。インド夫婦ネガティブ・・・」

「・・・もうインド神話全体でいいです。カーマのインド神話エピソード~。そろそろシヴァのエピソードもキリにしましょうか。ではどうぞ」



長いので割愛しますけど、バギーラタと云う王様がいたんです。その王様が仙人に不敬を働いて、従兄弟が皆殺されたんです。その魂はガンジス河でしか供養できないとの事で、その為に天からガンジス川を地上に降下させる為に苦行を行いました。

知っていましたか?ガンジス河は元々天のもので、地上に落ちたものなんです

ガンジスの女神は苦行を認め降下を決めたが、大地を打ち抜く可能性があった為、「誰か受け止める者が居なければいけない」 と語りました。人間には出来ない、出きるわけない無茶ぶりですね

バギーラタはシヴァさんしかその役をこなせないと考えていたので、苦行を重ねシヴァに祈願し、その役目について貰える事になりました。基本、苦しい目に逢えばなんとかなるんです

しかし、タカビーなガンジスの女神は約束したにも関わらずシヴァみたいな田舎者では自分を受け止められないと考え、地上を滅ぼすつもりでシヴァの頭上に落下させました。・・・こういうところ、なんというか書き記した人間の限界を感じますよね


……が、流石のシヴァはその高慢なガンジスの女神の企みを見抜いていまして、逆に豊かな髪の中に捕らえ女神を閉じ込めてしまったのです。意外、ソレは髪の毛です

シヴァ【高慢の業、その場にて贖うべし】

女神「髪が!髪が我を捕らえるぅうぅう!」

しかし、言い出しっぺの自分を無視した神々の小さな争いを憂慮したバギーラタがまた苦行してシヴァに懇願したのでガンジス川が遂に地上に降りましたとさ。めでたしめでたし



「・・・分かりましたか?ガンジス河を受け止め、世界を流転させ、全てを破壊する神。それがシヴァです。ストイックで愛妻家。圧倒的な力。だから人気なんでしょうけど」

「私は大嫌いです。私は大嫌いです

「・・・じゃあ、今日はここまで。また明日お逢いしましょう(貰った胃薬服用)」


デッドエンド・バッドエンド・クラッシャー

「!その服、カルデアの制服ね!やったわ、やっと救援がやって来たのね!こんにちは、はじめまして!もう今すぐ助けてください!私はマーブル・マッキントッシュ28歳!マニピュレーターの扱いならセラフィックス一の職員です!」

 

慌てて姿勢を正し、合流を喜び助けを求めるマーブル・・・を名乗る何者か・・・が、一同に合流を果たす。何も知らぬ、当事者たる者には生存者にしか見えぬタイミングと立ち振舞いに、一様に警戒を解し安堵を示す。はくのん、カーマ、リッカを除いてではああるが。

 

『怪しい、とか態度に出したりしちゃダメですよ。正体はもう分かりきってはいますが、引き出せる情報は引き出すべきです。彼女が何処から来たのか、とかね』

 

『・・・もしソレが化けの皮を被ったキアラだとしても、私は彼女の行動の一切を理解できない自信がある』

 

【え、そんなに・・・!?】

 

『彼女はムーンセルを取り込むために月に来たとき、計画そっちのけで保健室でイチャイチャしている二人を出歯亀したり、ムラムラしてきたと言う理由でダンジョンに脚を運んで惨殺されたりしてる。愛欲>>>>>>倫理的行動なキアラの思考を読み取るなんて不可能に近い』

 

新王、マーブルの皮を被った何者かをキアラと断定しかつ理解に匙を投げる。艶のあるモンスター☆と茶化しはするも、その目は全く笑っていない

 

【えぇ・・・私の中のキアラさんと微塵も合致しないんだけど・・・】

 

『魔神がやらかしましたからねー。よりにもよってうじゃうじゃいる人類からキアラを選ぶとか運が悪すぎて面白すぎます。滑稽、と続くんですけど』

 

「あ!でも素敵!笑顔が凄く素敵!ガウェインさん、と仰るんですか?あの、御職業は?年齢は?年収は?それとこれが大事なんですけど、妻帯とかしていらっしゃいませんよね!?」

 

『あ、ガウェインに死亡フラグが。好みだったみたい。キアラがテンション上がったら真っ先にパクリンチョされる』

 

【突然の窮地・・・!?でも大胆すぎる・・・まさかこんな方法で取り入るなんて・・・】

 

そう、死体を被り生者としてカルデアに接触すれば、無力の殻を被れば。敵対者、黒幕の容疑からは真っ先に外れる事になり自由に活動が行える。それを考慮して来たならば想像以上の策士である。獣というだけあり、狡猾さは折り紙つきであるのか・・・

 

『キアラそこまで考えてないと思うよ』

 

【バッサリいった・・・】

 

気持ちよければいい、自分が楽しければいい。それだけが理念なためはくのんは最初から理解を放棄している。大方、カルデアの四苦八苦を間近で楽しみたいとかそんなんだろう。リビドーが限界突破しなくば害はあるまい。それはそれで時限爆弾を抱えたのと同じ──

 

「って!あわわわわわそんな事話してる場合じゃありませんでしたー!!逃げましょう!皆で逃げましょう!アイツには勝てないわ!だって、だって──」

 

突如、響く地響き。何かをガリガリと削るような耳障りな音。空間総てが軋むような圧倒的質量。踏み締められたセラフが悲鳴をあげているのだ。巨人の闊歩を思わせる『ソレ』が、ゆっくりと近付いてくる──

 

「アイツは『さっきやってきた新しい128騎のサーヴァント、全部をまとめて潰した怪物なんだもの』!」

 

「・・・お行儀が悪いにも程があります。よくもまぁ、そんな勿体無いことを・・・──」

 

カーマのうんざりげな呟きを、すべてかきけす程の圧倒的質量の化身。──その怪力と巨大なる破壊の権化が、姿を現す

 

「──、ア。ァア、ア──」

 

「・・・な・・・・・・」

 

絶句する藤丸。無理もない。神を前にした人間が祈りを捧げることしか出来ないように。究極を極めた存在にはただ畏怖を捧げることしか出来ないのだ。圧倒的な、ただただ圧倒的な──

 

「な・・・──なんだあの胸は──!!?

 

世間一般の巨乳など意にすら介さない、頼光やブーディカのバストが、普通にすら見えてしまうほどのビッグボイン。昔読んだ漫画にいるビッグボインぐらいしか対抗できない超絶スケールに、少年はただただ圧倒される。ギネスクラスである。女神の山脈は格が違ったのだ

 

「えぇ、恐るべき相手です!あれほどのものはブリテンにも例を見ません!」

 

「そこじゃねぇだろ恐るべきところ!いや、分かりますけどね!?爪だ爪!爪に注目しなさいって!」

 

無垢で可憐な少女の身体にはあまりにも不釣り合いな、巨大かつ絢爛な両手。人体比率に換算して30%程を占めると言えば驚愕の度合いが伝わるだろうか。女神を複合し生まれた、インドの戦女神たるドゥルガーを変換した十の剣たる爪、両掌が見るものを戦慄させる。先程伝えたマーブルの言が、決して間違いではないと雄弁に語っている

 

【おぉっ、本当に凄い!おぉっ、相変わらず本当に凄い!!】

 

『何故二回言ったし』

 

【解る?二度目は木霊だよ、中でほらぁ・・・】

 

「アアァアァアァアァア!!」

 

(・・・やっぱり、拘束されているのね・・・辛いでしょうけど、待っていて、リップ)

 

メルトリリスの思慮、それは届かず。パッションリップは右腕を振り上げた。そこにあるのは防衛の反射、意思はないただの傀儡としての責務のみの、力任せの木偶の一撃

 

「──!!!」

 

だが・・・稚拙なそれは、稚拙であるが故に一同に絶望にも似た戦慄を叩き込んだ。巨大なる右腕を、ただ振り下ろした。ただ、それだけで──

 

「え・・・エリアが、引き裂けた・・・!」

 

ブレストバレーへ続く通路、そして小部屋。それらをただの一撃で紙屑が如くに引き裂いた怪力の一撃。その威力を直撃したらどうなるかなど、最早語るが愚かなり

 

──戦っていい相手ではない。少なくとも、此処で悪戯に相手にしていいモノではない。なんの対策も無しに挑めば、全滅は免れない・・・!

 

「撤退するわよ、立香!今見たものはほんの一部に過ぎない。このまま此処にいては確実に殺されるわ!」

 

「で、でも!彼女、拘束されてないか!?」

 

藤丸の言う通り、彼女は目を隠され、自意識を封じられている。少女の人格を圧し殺され、近付くものを総て押し潰す防衛機構と成り果てているのだ

 

「自我を・・・それは、なんと惨い・・・」

 

「なんとか助けられないのか・・・!」

 

『──リップ・・・ごめん』

 

【・・・、──!】

 

「今は無理よ!奇跡だとか活路だとか、そんなものを求める前に潰されてしまう!──しっかりなさい、藤丸立香!あなたが死んだら誰がこのセラフを元に戻すと言うの!?」

 

「──っ・・・」

 

・・・藤丸立香の旅路にて、何度も突き付けられた事だ。自分には大義がある、世界を救う責務がある。だから多少の犠牲には目を瞑れ、為すべき事を為せ。だからこそ自分だけは生き残れと。今もまた、その選択がやってきたのだ。囚われの少女を救いたい。けれど、自分には今その手段がない。だから逃げろ、自分を優先しろと。・・・でも、だけど──

 

「・・・それでも、なんとかしたい・・・!なんとかしてあげたいんだ・・・!!」

 

今まで歯を食い縛って口にしなかった『仕方ない』『どうしようもない』。それを今、突き付けられても。藤丸は血を吐くように呻く。助けたいと。なんとかしたいと。我が儘であることは解っているけど、それでも。それでもだ。だって困っている人や誰かがいるなら、それをなんとかしたいと思うのが人間の心だと信じているから。ソレを貫く事を止めてしまったら、自分はただ、サーヴァントに甘えて英雄気取りの自惚れ屋という存在でしかない

 

自分のしたいことは、きっと見えないゴールに繋がっている。そう信じて、目の前の存在にも気をかける。それが自分の戦いなんだ。たとえ、それが不可能でも──少年の無謀で稚拙な懇願は、現実の前に儚く折れるものでしかない。彼女は今では、どうしようもないのだ──

 

【──なら、なんとかしよう】

 

「──!?」

 

──しかし。今は

 

【・・・──私が彼女を保護する。西の礼拝堂で落ち合おう】

 

このCCC(例外処理)には──そんな少年が手にした、たった一つの⬛⬛⬛(規格外)が存在していた。




藤丸「クリシュナ・・・!?」

クリシュナ【救いたい。なんとかしたい。──その気持ちだけで十分。なら、それを何とかするのはこっちの領分】

メルトリリス「無理よ!彼女の前にスケールや実力なんて意味を持たない!そもそもあなたが命を懸ける理由なんてあの子には無いでしょう!?」

【命を懸ける理由はない】

「なら──!」

【だが──命を懸けたい意地はある】

「・・・──!?」

【・・・別に、彼女を救っても構わないでしょ?】

「・・・──あなた・・・」

カーマ「はぁ。・・・そう言うわけなんで、先に礼拝堂で待っていてください」

パッションリップ「ア、アァ・・・アァ・・・!」

「アレ、助けてから向かいますから。──足手まといな事を自覚して、相応の対処をしていただけます?」

ガウェイン「・・・行きましょう、マスター。クリシュナ殿の意に応えたいならば、此処は凱旋を信じ待つのみ」

藤丸「クリシュナ・・・!カーマ・・・!」

トリスタン「──先の失言、どうか御許しを。謝罪を告げるためにも、どうか無事の帰還を」

ロビン「──マスターの事は心配しなさんな。無事に礼拝堂に送り届けますよ」

【お願い】

メルトリリス「あなた・・・あなたたち、一体なんなの・・・?」

カーマ「分かりませんか?どうしようもない・・・」

「アアァアァアァアァア──!」

「吐き気のするほど眩しい、私の大嫌いな存在です♪」


背後より離脱していく藤丸達の足音を聞き、クリシュナ・・・リッカは囚われのリップに向き直る

はくのん『思いきった事をする。──藤丸くんに感銘?』

【ぶっちゃけ鎧が砕けかけた。・・・まぁそれもあるけど単純な話。『楽園の仲間を貶められてるのが気にくわない』】

楽園で顔を合わせる仲間たち。それとは別人であっても。同じ存在であるのなら

【それに・・・はくのんも彼女、ほっとけないでしょ?】

『・・・ばれてたか』

パッションリップは彼女の心残りだ。彼女の心を暴き愛を否定し、或いは見逃したが故にキアラに身代わりにされた。自分は彼女を否定し、傷つけてばかりだった

そんな彼女を、また誰かが曇らせようとしている。そんな理屈を、そんな道理を。──この龍と化した少女が、見逃す筈など有り得なかった

【カーマ、大丈夫?先に行ってても良かったんだよ?】

カーマはそんな自分の我が儘に付き合う形で残っていた。肩車から降り、背後にてリッカを見ている

「は?なんでどうでもいい人を、大嫌いなあなたより優先しなきゃいけないんです?あなたが挑むなら、私はそれを愛します。当たり前でしょう?」

【カーマ・・・!(ヒュバァ)】

『クーデレ辛辣世話焼き献身ロリヒロインとかなにこの欲張りセット』

「あなたが死ぬなら私もそこまでだという話です。どうせ、死ぬつもりも無いんでしょう?なら──」

「アァア──!」

「──ちゃんと見ていてあげますから、頑張ってくださいね。みっともないところ見せたら、幻滅しちゃいますよ?」

【──負けられない理由が増えた!!】

『サポート、任された。行くよリッカ。──リップ』

悔恨を、嘆願を、愛を背負い龍は吼える。──囚われの少女を、取り戻さんが為に──

【待ってて、今楽にするから!】

鎧の下の決意を燃やし、単身にてリッカは救うための戦いに挑む──!


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