『手紙が置いてある』
『ソーマ風呂の副作用、頭痛と吐き気と気持ち悪さと気だるさが抜けないので日曜日はトイレにこもり御休みです』
『えぅ~・・・・・・・・・』
『また明日、お逢いしましょう。御酒風呂なんて、真似しないように』
「まーホントはこっち、アタシの管轄じゃないんだけどさー。リップが倒されたって聞いて、アタシ思ったわけ。『あんたら野放しにしとくのヤバくない?』って。教会に立て籠ってるって聞いてピンと来たわけ。『サクッと殺っとくが一番っしょ!』てわけ!かしこまり?理解できた?」
突如静寂と安堵を切り裂き、天より現れた鈴鹿御前。どうやらリップを無力化した藤丸らマスターを本格的に脅威と認め、先んじて始末するために奇襲を仕掛けてきたと言うことらしい。安全地帯などあってない。このセラフに安全地帯は存在しないと。生け贄たるマーブルの犠牲を以て彼女は示したのだ。JK衣装に身を包みJKムーブに勤しむ天魔の姫が、手にした刀を藤丸へと突きつける
「『職員は全滅していて、生き残りは誰もいない』・・・なーんてBBが言ってたのに生きてる変なヤツ。アタシとこれからヤろうって時に足を引っ張るお荷物抱えるとかマジ有り得ないし。だから殺ってあげたってワケ!スパッとさっくり、現世にお別れってヤツ?」
「──非戦闘員たる者をまずは狙い殺すとは。どうやら麗しいのは見目のみ。性根は完全なる魔物と堕ち果てていましたか」
「・・・そう。BBはそう言ったのね。生存者はいないと。だからこそ、其処に生存者がいるのはおかしい、と」
彼女はこのセラフのセンチネルであり、万人であり守護者である。だからこそ、BBの指示には従いバグを是正しに現れたのであろう。故にこそ彼女は禁忌すらも踏み越えたのだ。そこに快楽や欲望は介在していない。ただ、己の職務を全うするためだけに人を殺めたのである。──リッカの知る鈴鹿御前と、その生真面目さは一切異なる箇所は存在していないのだ
【鈴鹿・・・御前】
「?気安く呼ぶじゃん?見合いや顔見せしたっけ?そのヨロイ、ごつごつで物騒だから会ったら忘れるわけないんだけどー・・・」
鈴鹿。メイヴに並ぶ自分の女子力を高める役を買って出てくれた大切な友人。楽園カルデアにおいて、俗世にて何が流行っているのか。どんな流行があるのかを独自にサーチしてくれて教えてくれる最先端のJK仲間であるとリッカが自負している存在である。
彼女は自分に必要な魅力を掴むため、磨くために己を模索し高める生真面目さを持っている。チャラけているようでいて決して手抜きや怠惰を否定し続ける女子の先輩なのだ。自分のJK磨き、そしてリッカの女子力修行を付き合ってくれる大事な存在なのである。そんな彼女が万人を、守護者を名乗るならば、『彼女はどんな事も行うだろう』という確信をリッカは持っていた。故にこそ、この結果は彼女が本気になった瞬間に導かれる結末に他ならなかった
「──マーブルさんっ・・・!」
真っ二つに切り裂かれ、物言わぬ屍となったマーブルにすがり、藤丸は慟哭していた。彼女の正体がなんであろうと、中身がどんなものでも。彼女は藤丸にとってマーブルであり、そこになんの生命の貴賤は存在していないのだ。彼にとっては彼女は最後まで、救助対象に他ならなかったのだから。
「・・・──オレは・・・!守れなかった・・・っ!」
血を吐くように呻き、床に拳を叩きつける。自分の迂闊さ、無力さ、そして目の前で喪われた生命と理不尽に憤り、そして涙を流す。彼はあくまで普通の人間であり、痛みを哀しみ、嘆きを表す普通の感性と感覚を持ち合わせている。そんな彼が、目の前で保護対象を殺されれば・・・それは無力感と悔恨に心を苛まれる事となる。だからこそ、一般人で理不尽に涙を流す彼だからこそ、彼はかの人類悪を討ち滅ぼす事が出来たのだ。無惨な亡骸に成り果てたマーブルの亡骸の近くで俯き無念に憤る藤丸。──だからこそ。『彼は見逃した』。その、背筋の凍るような変化を
【──・・・・・・】
・・・『マーブルの亡骸の瞳が微かに動き藤丸を見つめ、そして嗤ったのである』。──其処でリッカは、正しくキアラの目論見を理解した。理解してしまったのだ
『希望と使命感に満ちた少年に挫折と絶望を突き付け、その苦悶を堪能する』という愉しみに転換したのだと。【その為に、自らの死そのものすら演出したのだ】
『悪趣味すぎる』
『・・・これがはくのんさんが打ち倒した魔性菩薩、ですか。おぞましいほど自由なんですね』
はくのん、カーマも気付いたようだ。いや──もしかしたら、三人に気付かせるように仕向けたのかもしれない。それほどまでに、彼女の真意は読めず、理解が及ばない程に錯綜し混沌としている。・・・だが、少年には涙を流し立ち止まる事すら許されない。進むべき血路は、既に立ち止まる事すら許さない
「・・・え、まさかガチボレしてた?ラブロマンス悲恋にした?アタシ・・・それは、ちょっと悪い事したかもだけど・・・」
「安心なさい、最初から最後までソレはただの無力な一般人だったわ。──立てるわよね、立香」
泣いている暇はない、涙している暇はない。挫ける自由すら許されない。藤丸は決して歩みを放棄することは許されない。だって彼は、人類を救う最後のマスターなのだから
「──わかっ、てる・・・マーブルさんの為にも、絶対にセラフを元に戻す・・・!」
哀しみを背負い、前に進まんとする藤丸。無念と悔しさをバネに泣きながら進む事こそ彼の誓い。彼はもう、決して挫けない。いや・・・挫けても、挫けたままでは決していないのだ
「・・・へー。カッコいいじゃん」
鈴鹿、髪をいじりながら藤丸の魂の輝きを認める。そう、その魂は平凡なれど、磨きがいのある原石であると彼女は評価した
「決めた!アンタ、私のものにしてJK磨きの物差しにしたげる!アンタを骨抜きにできれば、とびきりのカレシに会っても安心じゃん?」
「え、はぁ──!?」
【おぉ、モテモテ・・・】
本人的にはノーマークであったが、涙を拭って眼を腫らしながら立ち上がった姿がキュンと来たようだ。リッカの呟きの通り、ロックオンされたようである。予想外の展開に声をあげる藤丸だが・・・
「ん、まぁそれなら周りのサーヴァントは全員邪魔じゃん?いたらアタシがそのコ連れて帰れないっしょ?──だから殺すし、皆殺しだし。目障りなサーヴァント、一網打尽でしらみ潰しに消してあげるし」
一人で結論を出し、一人で納得し殺気を撒き散らす鈴鹿御前。どのみち殺し合いは避けられず、一触即発の空気は避けられない。そんな刹那の殺気に臨戦を余儀無くされるサーヴァント達。そして、藤丸の一行。だが──
『どうですか先輩!鈴鹿さんを焚き付けて無事にキアラの除去に成功しました!これで迂闊にサーヴァントを食べられる心配は無くなりましたよ!』
自信満々に語りかけるはBBであった。彼女が適当な理由をつけ、魔性菩薩の暗躍から彼等を引き離す事を考案したというのである。よかれと思ってのBBなりの判断に、はくのんは誉めるべきか怒るべきか極めて曖昧な表情を浮かべるを得ず──
『そんな事より!天体室に向かいますよね!じゃあ善は急げです!【そのままひっくり返って、裏側に向かってください!】』
『・・・裏返る?──何を言ってるんですかあなた』
『・・・まさか・・・そういう?』
『そういうことです!【セラフをひっくり返して向かうのです!】だから早く!発情した鈴鹿さんを切り抜けて脇腹のポイントに向かってくださーい!』
BBの先輩への献身が新たなるステージへと導く。その指示と同時に──
「──ッ!何者・・・!」
轟く銃声、弾き飛ばす鈴鹿。更なる混迷と混乱が、一行を誘う──
エミヤ・オルタ「──急所を狙ったつもりだったが、やはりセンチネルか。一筋縄ではいかないらしい」
【・・・──エミヤ・・・!?】
はくのん『何度でも言わせてもらう。嘘やん』
『あ、サーヴァントと職員を始末していたアーチャーさんですね。裏側から帰ってきたのでしょうか』
BB『彼には先んじて裏側のサーヴァント、そしてとあるセンチネルを除去してもらいました!此処は彼に任せて脇腹のポイントに行ってください!』
【──藤丸。裏に行こう】
「・・・、・・・解ってる」
メルトリリス「──裏に行くなら脇腹ね。ここら任せるわよ、ドンファン擬き!」
「好きにしろ。どのみち始末はお前たちがする事になる。オレがやることはただの足止めだからな」
鈴鹿「──邪魔する気?」
「邪魔するとも。オレは貴様ら悪の敵だからな」
メルトリリス「──行くわよ!」
全員がそれに賛同し、一斉に教会から駆け抜ける。背後にて響き渡る剣と銃の音に、決して振り向く事なく──
~脇腹エリア
タマモキャット「おう、来たかイイヒト選手権主席のマスターと仲間たち!キャットは待ちに待ちわびた。具体的には一分だワン!」
BBの指示のまま、脇腹エリアにやってきて待ち構えていたのは、楽園に初めて招かれた真の良妻、タマモキャットであった。彼女の能天気な掛け声に、一同は一瞬全てを忘れて困惑した
はくのん『人選』
BB『き、気かないでください!だって楽園では彼女より優秀なタマモさんはアマテラスさんしかいませんでしたし・・・い、今はそんな事より!』
『おうさ、皆まで言うな裏ボスパーティー。アタシは策謀渦巻く海にて光輝く善のタマモ。異なる世界の御主人であろうと分け隔てなく助けるぞ』
【キャット・・・!!】
カーマ「また色物ですか・・・」
うんざりするカーマを他所に、タマモキャットはBBより託されたとあるものを高く掲げ誇示を行う
「これは秘密兵器、くすぐりハンド。──人体を裏返すために行うこと、最早言葉は無粋であるナ」
藤丸「・・・え、まさか」
ガウェイン「・・・なんと」
「そーれ、こちょこちょである。まさにこれ、脇腹を擽ってやればこれの通りに!」
こちょこちょとタマモキャットの擽りに呼応して、藤丸らの介在する空間が狂おしく振動する
ザビ『これは』
『つまり・・・』
【──ダンジョンが・・・裏返るッッッ】
文字通り『反転』するセラフ。その天地鳴動は、藤丸ら全員を呑み込み──
【裏返ったァッッッ──!!】
一同を、次なる戦いと正道へと導く──
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