人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

7 / 3000
誉めて伸ばし、キチッと叱り、部下を伸ばす

王として当然の心構え


報償

どうやら、この炎上した冬木に蔓延るシャドウサーヴァントはあのアーチャーだけではないらしい。

 

そも、サーヴァント同士を戦わせる聖杯戦争……とやらは、七騎の英霊達を集め行われる殺し合いというのがオーソドックスな形だとロマンは言う

 

ならば、残りのクラス……セイバー、ランサー、キャスター、ライダー、アサシン、バーサーカーがまだこちらを狙っている可能性があるということか

 

 

「医師。マシュの様子はどうだ」

 

『大丈夫だよ。直撃は避け、防ぎきっている。マスターも所長も、傷ひとつない』

 

「盾の役割は果たした、か。女だてらにやるではないか」

 

本当に、大したものだ。己の身体一つで、護りたいものを護る

 

その初志を貫く事の、なんと難しいことか。藤丸には、素敵なサーヴァントがついている。

 

「よし」

 

 

その貢献に、自分も見合う戦果をあげねばなるまい

 

『ど、どうしたんだい王様』

 

「マシュには引き続きマスターの護衛を任せよ。我は仕事の続きだ」

 

『仕事?君は王様が仕事じゃないのかい?』

 

「たわけ、今の我はサーヴァント。マスターの障害になる存在を一掃する事に決まっていよう」

 

『えぇ!?まさか、一人で行くつもりかい!?』

 

「……?」

 

『いやいや!その「当然だが?」みたいな顔は止めてくれ!何処にどんな脅威が残っているか解らないんだぞ!万が一君が消滅するような事になったら、こちらの戦力はがた落ちだ!』

 

彼の言うことはごもっともだ。未知の魔境、炎上する特異点。如何なる罠が待ち受けているかは全く以て未知数だ

 

 

「たわけめ。我が路傍の石に命を取られると思うか。ここで座して待ち脅威が訪れるのを待つか、自ら脅威を取り除き一刻も早く態勢を整えるか。賢明な策はどちらだ?」

 

『それは……』

 

「それに、人類最後のマスターを失うか、たかがサーヴァント一騎不慮に失うか。これより先の行脚で重大な損失になるかは考えるまでもあるまい」

 

『……それは確かにそうかもしれない。けれど……』

 

未だ言い淀むロマン。どうやら本当に性根が甘い……いや。優しい人なんだろう

 

「案ずるな。我には単独行動のスキルがある。マスターの負担になるような真似はせんよ。王の言葉だ。信じるがよい」

 

『王の言葉、ときたかぁ。……よし、解った。変に食い下がって君の機嫌を損ねたらそれこそおしまいだ。残るシャドウサーヴァントの殲滅、引き受けてくれるかい?』

 

「無論だ、たまには汗水垂らす下々の感覚を味わうのも悪くない」

 

これより先、自分に敗北は許されない。少しでも経験を積み、マスターを護りきれるようにならなくては

 

 

「……うむ。功労には報償がいるな」

 

ふと呟き、出立の前に身体を休めているマシュに声をかける

 

 

「マシュ」

 

「あっ、英雄王!すみません、こんな気の抜けた姿を……」

 

「敵もいないのに気を張る必要もあるまい。真面目な奴よ」

 

「は、はい……すみません」

 

どうも彼女は、自己が消極的なようだ。自分がマスターを護った!どうだ金ぴか!ぐらい言ってもバチが当たるわけでもあるまい

 

「先の戦い、よくマスターを護った。手柄だぞ、誉めてつかわす」

 

「えっ――あ、いえそんな!英雄王に称賛されるなんて!お、畏れ多い、です」

 

 

「奥ゆかしさは島国の美徳、であったか?確かに我の強い女ほど鬱陶しいモノはない。女神とか本当によくない、うむ」

 

……今のはギルガメッシュの所感なのだろうか、女神という単語に関して、沸き立つような殺意が燻ったような気がした

 

「だが、お前の成したことは紛れもない功績だ。王たるもの、正しき働きには報いねばならん」

 

そうだ、こんな年頃の少女は、本当なら戦場に立つべきではない

 

もっと、違う生き方……せめて、美味しいもの食べたりするくらい良いはずだ

 

 

黄金の波紋に手を伸ばし、手のひら大の物質を掴みとり、マシュに差し出す

 

「飴をやろう。舐めると甘いぞ?」

 

「あっ、飴?ですか……?」

 

「マスターと、あの勤勉な小娘にも分けてやれ。我は今から運動に行く」

 

「運動……!?で、でしたらマスターと私も!」

 

「たわけ。シャドウサーヴァント一体に翻弄されていた貴様に何ができる」

 

「っ……」

 

「今はまだ、生命を擲つ時ではない。貴様には貴様の正念場が必ず訪れよう。意思と気迫は、そこまでとっておけ」

 

「……はい」

 

見るからに肩を落とし、うなだれるマシュ

 

今はこれでいい。考える時間、自分を見つめる時間が作れるならそうすべきだ

 

思春期というのは、そういうものだから。こんな異常事態でも、その当たり前の生き方を忘れないでほしい

 

 

「では行ってくる。王の帰還を楽しみに待っておけ」

 

 

「え、英雄王!」

 

「ん?」

 

出立に行く刹那、マシュに呼び止められる

 

「あ……」

 

「ありがとうございます。この飴……味わって食べます……!」

 

「大袈裟だ、たわけ」

 

フッ、と零れる笑みを隠すことなく、ギルガメッシュは飛び立って行った

 

 

「……本当に、ありがとうございます。英雄王」

 

辛辣ながらも、確かに身を案じるその言葉と行動に、マシュの心に、温かい感覚が沸き立っていた




至高の飴ってどんな味がするんだろう。なんでもうまいしか言えない自分にはとんと解らぬ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。