人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
『クライマックスなのでマハーバーラタを読み返している。放送時間に気付いていないようだ』
(・・・・・・ぐぅ)
『・・・・・・居眠りしていただけだったようだ』
「ふはは!来るであろうと確信はしていた故余裕綽々で撮影などに励んでいたが貴様らもまた裏切るは予想のみであったな!それでこそ我がマスター、それでこそ我が同盟者と認めた女どもよ!誉めてやろうではないか!」
精巧に作られしエビフ山セット、檻をミニチュアウルクに変化せし張本人たる御機嫌王なりしギルガメッシュ・・・『銀幕王』とプリントされたシャツにメガホン、いい感じの帽子を着用せし愉快な王が二人を労う。どうやら先の単騎突撃など運動にすらなっていない様だ。何故か広がる青空、流れる河に草原がその有り余るゴージャスぶりを雄弁に語り尽くしている。
「一応制作フィルムは出来上がってるし、公開版とディレクターズカット版で編集しておくよ。『超巨大戦線バビロニア~イシュタル最期の日~』を早速皆に先行公開してくるねー」
フリフリと手を振り、フォウと一緒にカルデアへと戻っていく全能スタッフ、エルキドゥ。スタッフと機材を同時にこなす神々の最高傑作の力により出来上がったG級大スペクタクル映画の完成フィルムを持っていくその顔は笑顔である。先程の作成はディレクターズカット版ではカットされる予定のエビフ山崩落のシーンである為だ。あった方が絶対いいよと力説され二つ返事で認可されたシーンである
「【「(ポカーン)」】」
「おい。お前ほど愉快に生きれない存在三人に説明責任を果たしてやれ。お前達は此処で何をしていたのか、などをな」
「なんだ、見て解らぬのか?先行し創造主にも今回の腐肉にも目を向けられぬ渇愛の化身、キングプロテアの業を満たす為に映画撮影をしていたという成り行きだ。目で見たものと感じたものを信じずして何を信じるというのだ。我が財に同盟者とあろうものが嘆かわしい」
「いやいや、其処で何故映画撮影なのかを聞きたいと感じている筈なんですけど・・・」
カーマの言葉にこくこくと頷くリッカ、はくのん。どうしてアンデルセンが言う超危険生物が怪獣として満面の笑みで撮影の主役としてはしゃいでいたのか。そこのところが知りたいのだ
「察せよ!」
「無理です。教えよ」
懐かしいやり取りよな、と喉を鳴らし王が笑う。プロテアの両手のひらに乗っている特注の椅子に座り、はくのんらに王の偉業によるプロテア交友作戦の委細を語る姿勢となる。エアはその間にいそいそと撮影セットを宝物庫にしまう作業に取り掛かっているのだ
「何、お前達とは別の形でこの下らん済度の日取りに幕を引こうと考えた我等はな。一足先にこの空間・・・つまり最下層に到達し渇愛の化身を拝見しにやって来たのだ。我等が整地した後だ、踏破は容易かったであろう?」
『shortcut』
──出現を上回る速度で殲滅し、止めにマルドゥーク神の七次元貫通対界拳による天地合一。王と神の逢わせ技により、文字通りこの空間は一つとなったのです
「インドみたいな事していますね・・・」
「たわけ、総ての神話は我より通ず。貴様らの模倣ではない、原典の誇示をしたまでよ」
そのゴージャスプレイにより出逢ったのが、正座してゴージャス玉座を支えしプロテア、愛を求める巨大な少女であったと言うのである。それが自らに仇なすものか、それとも脅威となる無用の長物か。確かめに赴いたとされるその際に・・・
「こやつが我等に乞うのでな。とある願いを叶えんと面倒を見ていてやったまでよ。怪物を人間に変えるは此度の我等の仕事ではない。我等が取り組むは恙無い戦力の締結だ。故に──」
その堕天の檻にて、王と姫はプロテアと出逢い。映画撮影をした決意に至ったのである──
『愛して・・・愛して・・・愛して・・・ください・・・』
「ふはははははははははは!!!」
プロテアを目の当たりにした時、姫は目を見開き、王は腹を抱えて笑ったものである。ティアマトを彷彿とさせるまさにキングスケール。胎児にも劣る自立性の乏しき自己主張。それらのアンバランスさに、辺りを歪ませる圧倒的質量
「成る程、あの蛭と毒虫が見てみぬフリを決め込んだのはこれが理由か!認めよう、確かにコレは生半可では手に負えまい!邪気がなくとも存在自体が悪であるとは我の言葉であったな!」
──体育座りでも五メートル近くあります・・・!?これでレベル1なのですか!?オーバーフロウではなく!?
《これだから生と言うものは面白い!生きると言うことは未知を知ること即ち愉悦!我が庭の地下にこの様な可憐な土竜がいるとは愉快の極みよな!》
マルドゥークが構え、プロテアが王と英雄神を見つめ譫言のように呟く。──その言葉の一つに、王は是正すべき事実を告げたのだ
『わたしは・・・ただ愛してほしいだけ、なのに・・・誰にも、愛してもらえ、なくて・・・』
「うむ、当然であろうな。『貴様は誰も愛せず、愛そうとしていない』。己のみが愛されたいなどと言う稚拙な願いなぞ、世界は容認すまい。我以外はな」
『・・・──ふぇ?』
王が口にした『誰にも愛されない理由』。その理屈を衝撃と共に受け止めたプロテアの衝撃は、そのスケールを本心たる少女にまでダウンさせる衝撃であったのだ。
『・・・愛、って・・・欲しがるだけのものじゃ、ないんですか・・・?』
「無論違う。愛とは単独ではなし得ぬ概念、相互理解の証左だ。貴様はその特異性から誰とも触れ合わず封印されていたのだろう。貴様は愛など求めていない。『まだその段階にすら至れていない』」
──愛とは、相互理解の証左・・・
情緒的に敬愛を懐くのみのエアには荷の重い論説であるため、全面的に王が言葉を紡ぐ。この世の総てを背負いし王。愛など当然のように知っているし理解しているが故に
「よいか、愛とは傷つき、恨み、憎み、騙し、蔑み、悪しき感情と共に紡がれるものだ。憎むべき他人を理解しようと努め、理解を投げ出さず触れ合うことを諦めず他者を理解しようとしたもののみが掴み取る未来を紡ぐ資格であり証、生命を未来に繋ぐ感情の機微よ。それを知らず、それを感じられぬばかりの貴様などが愛を語るなど百年早い」
『・・・そんな・・・じゃあ・・・私はなんで生まれて来たんですか・・・誰に、愛してもらえばいいんですか・・・許してください。私のいのちを、ゆるしてくだい・・・』
愛されたい。許されたい。生きていていいと言ってほしい。それだけでいい、それだけでいいのにと告げるプロテア。ただ、誰かに認めてほしいのだと、そこにいてくれていいのだと。
誰にも、親にも。触れ合いすらも許されなかった無垢なる少女の願い。それを──御機嫌王は当たり前のように掬い上げたのだ
「当然であろう。誰もが愛せぬならば我等が愛してやろう。世界の総てが貴様を拒むならば、我がその稚拙な渇愛を癒してやろう」
『・・・え?ほんとう、ですか?』
「無論であろう。気付かぬのか?我等が此処に来た意味はな、『貴様に逢いに来たのだ』。即ち、貴様を必要としている事に他ならぬであろうが」
その言葉を受け止め、理解し、飲み込むのにプロテアは大層な時間を要した。巨大で、傍迷惑で、誰かに愛してほしいばかりの私に逢いに来てくれた。その意味は・・・
『・・・愛して・・・くれるん、ですか・・・?』
「それはこれからの貴様次第よ。──そうさな・・・、エア!」
──はいっ、ギル!何を成すべきかは貴方の言葉にて理解しました!
そのままエアはキングプロテアを愛し、そして『キングプロテアが皆を愛する』手法を選別し差し出す。それは映画のセットであり、撮影器具であり・・・
「見るがいい。貴様は『誰にも愛されない』とほざいたな?──それは思い上がり、杞憂と言うものだ。人間は時に、度しがたきものに想いを馳せるものなのだ」
『これ、は・・・』
キングプロテアに見せたもの。それは『大怪獣図鑑』であった。大きく禍々しい怪獣達が事細かく、また希望と愛に満ちた言葉にて紹介されており、一体一体にファンや制作者のコメントが寄せられている決定版だ。
それだけではない。怪獣を可愛くデフォルメし、女体化し可愛いマスコットに仕立てた人類の発想力も遺憾無く発揮されている。キングプロテアと同じスケールの存在は、こうして愛される対象なのだと王は事実を以て告げる。
「貴様は愛されないのではない。『まだ愛されるに足りていない』だけに過ぎんのだ。貴様はこれからの貴様次第で存分に愛を受けとる事が叶う逸材である。その為にはまず、『貴様が誰かを愛さねばならぬ』」
『ど、どうやって・・・ですか?わたしも、ここに書いてあるみんなみたいに・・・?』
「決まっていよう。自らを愛するものに愛を振り撒け。自らの魅力を、巨大さを、美徳に変え目の当たりにするものに売り込むのだ。簡単に言えば、愛されるに足る行動を起こせばよい」
此処にある用具はその為にあるという。現実や電脳では疎まれていようが、人の技術にて恐怖を『表現』し、巨大さを演出と愛嬌に『昇華』した時。怪物は、怪物であるがまま愛されるのだと王は説く
「誰もが要らぬと言うならば我が貰う。誰もが捨てるならば我が拾う。──キングプロテアよ!その巨体を持て余しているならば我等に与するがよい!楽園最高の『怪獣少女』として我等が星の旅路に参ずるのだ!」
『かいじゅう・・・しょうじょ・・・!』
「星の海ならば貴様がいくら巨大であろうが意に介す者などおらぬ。我等は何れ星を飛び出し未来へ漕ぎ出す!その際に貴様の力は、如何なる未確認の存在にも立ち向かう大いなる力となるのだ!故にこそ──我等は貴様を欲する!価値を認め、貴様と言う怪獣を愛するが故にだ!」
『・・・い、いいんですか・・・?いっしょに、行って・・・いいんですか・・・?』
「無論だ!──我等と共に来るがいい!唯一無二の怪獣少女よ!今こそ我等が楽園の怪獣ポジションとして、痛快無比な旅路に参ずる時だ!」
『──わぁい!わぁーい!やったぁ!そのためには・・・!』
──まずはこの問題を解決し、現実世界へと帰参しましょう。電脳世界では限りが無いので、ブラックホール現象が発生してしまいますからね
「そしてイメージビデオ『
『わたしが、みんなを愛する・・・!はい!王さま!プロテア、やります!楽園の怪獣として、一生懸命頑張ります・・・!』
「シドゥリ!楽園のエルキドゥとフォウに連絡を取れ!マスターらが来るまでとことんまで撮影を進めてくれるわ!!」
『・・・わたしも、なれるでしょうか・・・みんなに愛される怪獣少女に・・・そしていつか、お嫁さんに・・・』
──あなたが、本当の愛を知ることが・・・愛とは与え、与えられるものだと知れたなら。かくいうワタシも、敬愛以外の愛はまだ勉強中なのです。どうか一緒に、学び!変わりましょう!
『はい!よろしく、お願いします──!』
・・・こうして、愛し、また愛される存在の第一歩として。『恐ろしき怪物』から『愛すべき怪獣』としての道を示したがゆえに。プロテアは懸命に撮影に勤しんでいたのだ
今まで経験できなかった女の子らしい手作業も、マルドゥークの快い協力により同スケールで可能となり、プロテアはみるみる内に情緒を明るくしていったのである
「マスターの真似事ではないが、言葉にて決する戦いもある。そも無知は罪ではない。問い導くも王の甲斐性よな」
──はい!・・・ギル!
《ん?》
──ワタシも、もっともっとギルに・・・色んな愛を捧げられるよう、頑張ります!
《──フッ。敬愛の一つでは足りんと申すか?つくづく姫の名に相応しき強情な魂よな、エア!》
・・・そして、ティアマトの『前々から考えていた人類悪としてメソポタミアはこう壊す』という視点により再構成された『渇愛キングプロテア』の脚本を書き上げ、王達は撮影を通じて、キングプロテアを愛していたのである──
ギル「事のあらましはこんな処だ。キングプロテアは楽園の怪獣として大々的に売り出す予定なのでな。それでプロモーションビデオが無ければ寂しかろう?怪獣はフィルムで輝いてこそ。これも奴に与えるべき愛であろうさ」
はくのん「想像以上に利に叶ってた。おみそれ」
リッカ【そうか!怪獣少女としての道がプロテアちゃんにはあったんだ!そっかぁ!!】
「勧誘は大体終わっているが・・・後は貴様らがヤツを受け入れるかどうかのみだ。ヤツのヒュージスケール、そしてグロウアップグロウ・・・対遊星の鉄槌に不可欠であろう?」
「うん。・・・リッカ」
【ん!・・・プロテアちゃん!】
『あ、マスターさんですね。はくのんさんも・・・!プロテアです!その、わたしも、楽園の皆さんをいっぱい愛して、たのしませたいです。だから・・・』
【うん!】
『・・・いっしょに、いっていいですか?』
【もちろん!私も、私達も!あなたが好きで!!あなたが欲しい!!】
『・・・!』
【一緒にいこう!おいでよ!楽園へ!】
『はいっ!よろしくお願いいたします!マスターさん!はくのんさん!』
はくのん「・・・良かったね、プロテア。・・・ありがとう、ギル。皆」
マルドゥーク『KAMAHEN、KAMAHEN』
ティアマト『彼女の面倒は、私が見ます。娘のような、ものですから』
「フッ、同盟としての責を果たしたまでに過ぎん。──そして、分かっているな?」
「うん。──総ての鍵は、揃った」
カーマ「ふふっ。後は・・・藤丸さん次第ですね?」