人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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今日はレイドイベなので、投稿時間を大幅に前倒ししてお送りいたします。執筆や感想打ってる暇はありませんからね!



──フン、誰の味方かだと? 決まっている。サーヴァントはマスターに味方するものだ

分かりきった事を訊くな。地獄の底まで共にする。それがサーヴァントというものだろう。


──愛は求める心。そして恋は、夢見る心だ

恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる

 それがまっとうな男女の関係だ。死ぬ間際だが、それこそ心に刻んで反省しろ──


ファイナル・クライマックス

「見せてあげるわ!文字通りに地の底から舞い戻った私の意地を!」

 

『メルト、リリス・・・!』

 

火花を散らし、舞い踊るメルトリリス。今度こそこの獣を討ち果たし、自分の想いを護り抜く。その決意を胸に戦う彼女の気迫はその銀色の脚の冴えを何倍も鋭く、繊細に研ぎ澄ます。一撃一撃が、ビーストの身体を穿ち貫いていき決して緩くないダメージを刻み込んでいく

 

「メルトリリスだけじゃありません!私も、私達も!」

 

「何度も遅れをとっては円卓の名に泥を塗ります。太陽は中天にはありませんが、それであろうと我が忠義に揺るぎなし!」

 

「私は嬉しい。今度こそ、皆と誉れある戦いに挑める事そのものが」

 

プリマの跳躍に引き続くサーヴァント達。斬撃が、拳が、演奏の刃が。ビーストの力を、権能を、資格を少しずつ削り取り剥奪していくのだ。それは獣の毛皮を剥ぎ取るのと同じように、致命的に彼女を追い詰めていく

 

『私の力が、私の権能が殺されていく・・・!まさかBBが、私だけを殺す算段をこんなにも早く整えていたというのですか・・・!?』

 

攻撃の一つ一つに、狂気にも到達せんとする情念を感じる迫害が身体を穿つ。一つ一つの攻撃が、自分と言う存在を完膚なきまでに引き剥がさんとする凄まじい気迫を宿している。情欲を際立たせる能力を潰し、溢れ出る愛欲を根絶やしにせんとする強大な決意を感じ取れる。それは、AIになど再現できない強力極まりない『人の意志』そのものであった。そしてこの意志は、自分という存在を全心全霊で拒絶し、討ち滅ぼさんとしている

 

『ですがまだ、玻璃の刀で何が──ッ・・・!』

 

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】

 

もしここにいるものが藤丸らだけならば、彼女はBBの背後にいる存在が何者か把握できたかもしれない。真相に、裏で自分を害する相手が何者かを掴めたかもしれない。だが──先に言ったように、虫と言うにはあまりに雄々しく、邪悪で、純粋な生存競争のみを望む障害が吼え猛っていた

 

『未知の、獣・・・!どれほど私の邪魔をすれば気が済むのです・・・!』

 

【決まっています。貴女が跡形もなく海の藻屑となるまでですよ、ビーストⅢ!】

 

BBの制御下に置かれ、吼え猛る邪龍の写し見。上級AIのバックアップのままにキアラを害し、互角にぶつかり合い、身を呈して藤丸らを護る。キアラが産み出す無名の魔神柱を喰らい、噛み砕き、勝利に向かって全力で貢献する。

 

味方など何処にもいない。人間は己一人と、人間は我が身一つと豪語していたビーストⅢに手を貸すものなど何処にもいない。まさに因果応報、自業自得。疲弊し損傷した状態のキアラの力が、加速度的に低下、減少、霧散していく

 

「皆!宝具だ!一気に決める!」

 

アジ=ダハーカの頭部に乗る藤丸にも躊躇いはない。未来を護るため、未来を掴むため、紡がれた歴史から託されし奇跡であるサーヴァント達に、勝利の為の指令を下す

 

確実に、このままでは押し込まれる。討ち滅ぼされ全てが水泡に帰す。まだ満足などしていないのに、まだ満たされてなどいないのに。それだけは──

 

『──何故です・・・!?何故あなたは、ケダモノ達の為にそこまでするのですか!?』

 

時間稼ぎ、それもある。それもあるが、本当にキアラには理解できなかった。この世界を護る?この世界を救う?何故?なんのために?

 

この世界に救うべき存在など何もない、何処にもそんな人間はいない。救うべきは、救われるべきは我一人。我という人間一つ。それら以外を救う理由も義理も、どこにもありはしないはず。

 

『称賛など皆無、礼賛など皆無!誰の目にも触れず、誰の感謝など受けず!あなたの偉業を畜生たる衆生がただ甘受する!そのような酔狂な真似を、何故!?』

 

もっと簡単な快楽などどこにでもある。堕ちれば心地よい悦楽などどこにでもある。それに浸ればいいのに、浸かればよいのに。楽土にて微睡めば、苦行など、生の苦しみなど味わわずに済むというのに

 

快楽天──私という愛に沈めば、極楽の境地にてあらゆる苦から解放されるというのに。身体を害されながら、生命を脅かされながら。その疑問を、キアラは問わずにはいられない。虫のような存在でありながら、あまりにも鮮烈に困難に、苦行へ挑む理解しがたい存在に。人類最後のマスターに問い掛ける

 

『あなたは、気持ちよくなりたくないのですか!?』

 

「オレはまだ!女の子とキスもしたことないんだ!!(事故はノーカン)」

 

『なっ──』

 

快楽など、気持ちよさなど知ったことかと藤丸は吼える。オレの交際経験は彼女いない歴=年齢。童貞街道まっしぐらな男の子だと。そんな自分がイメージする快楽など、マッサージチェアで癒される事くらいしか知らないと藤丸は応える

 

「だけど!幸せになってほしい人がいるんだ!未来で生きてほしい人がオレにはいるんだ!他人がいなきゃ自分がちっとも気持ちよくなれないお前なんかと一緒にするな!」

 

『な、何を・・・』

 

「一緒にいるだけで幸せなんだ!笑ってくれてるだけで幸せなんだ!お腹いっぱいに食べてくれるだけで幸せなんだ!声をかけてくれるだけで、そこにいてくれるだけで幸せなんだ!」

 

藤丸が想うその娘が、生きていてくれるだけで。未来に進んでくれるだけで嬉しい。そこにいるだけで嬉しい。それだけでいい。それ以外は何も望まない。彼女が幸せでいてくれるなら、どんな困難の先にも彼女がいてくれるなら、それが頑張る理由になる。踏ん張って、転んでも立ち上がれる理由になるのだから

 

「オレが護りたいのは、顔も知らない誰かの未来なんかじゃない!会ったことのない誰かのためなんかじゃない!──彼女が生きる、未来のために!世界を救うんだ!その為にオレは、ちっぽけなオレの総てを懸けるんだ!」

 

『──、・・・──』

 

「そして──救った世界で!手にした未来で思いっきりマシュを抱きしめたい!キスしたいんだ!そんな未来を、そんな夢を!人類悪(おまえ)なんかに奪われてたまるか──!!」

 

それが戦う理由。稚拙で、幼稚で、初めて懐いた気持ちに殉じているだけの、ちっぽけな男の矜持。・・・だが、だからこそ。そんなちっぽけな想いだからこそ

 

「あなたは否定できないでしょう、キアラ。『彼は快楽なんて微塵も求めていない』。心から、大好きな人との未来を夢見ているのだもの。そこに・・・『快楽(わたしたち)』の入る余地なんて無いのよ」

 

『───』

 

そんな経験、そんな体験。自分にはこれっぽっちも分からない。体験したこともない。そんな子供のような気持ち、微塵も与えられなくて・・・

 

「だから──邪魔をするな!!オレはこの手に、マシュとの未来を掴むんだ──!!」

 

【⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】

 

藤丸の咆哮、龍の咆哮と共に。一斉攻撃がキアラに叩き込まれる。キアラはそれを、防ぐことができなかった

 

──いくら夢見ても与えられなかった、求めし当たり前の(ユメ)。・・・いつかの世界で、それがなんなのかを、教えられたような

 


 

「だがおまえは、もはや人ではない。それ以外の化け物になりさがったのだろう?

 ならば、それも悪くはない。おまえが神であるのなら、愛してやるのも一興だ」

 


 

・・・──そんな。皮肉と嫌味たっぷりに手の甲に口付けを行った、何者かの記憶が脳裏に過った刹那に

 

『あ、っあ、あぁあぁあぁ──!!』

 

無数の音の矢、転輪する勝利の剣、愛の両手による圧殺、渾身の膝打ち、そして──

 

「人理、倫理剣!──取ったぁっ!!」

 

龍より飛び出し、獣に止めとなる必殺の一閃。それを叩きつけ、切り裂かれ──

 

『っ、あ・・・──私に、ここまでの、傷を。なんて──乱暴な・・・』

 

最早逆転の目など不可能な程に、不可逆の損傷を受けるビーストⅢ

 

また、彼女は破れたのだ。儚く現実に破れる─しかし、求める心を無力にする、純粋無垢なる恋の心に




藤丸「勝負ありだ!」

メルトリリス「舞台を降りる時が来たようね、殺生院キアラ」

キアラ『──えぇ。認めましょう。此度の戯は、貴方たちの健気な努力が実を結んだと。ですが、最終的な勝ち負けはこれから。人である私が、蟻などに負ける道理がありませんもの』

ガウェイン「!この振動は・・・!」

トリスタン「離れなさい、藤丸!メルトリリス!ビーストの周囲が『抜けます!』」

瞬間、藤丸らはセラフより『弾き出される』。セラフにかかりし重力を、キアラが総てカットしたためだ。すなわち、彼等は無重力に放たれたと同義になる

藤丸「セラフが、キアラが・・・!遠ざかっていく!」

それだけではない。辺りに満ちていく。増殖していく。無数の、無名の、セラフに根付く無数の魔神柱なる存在が──!

キアラ『ふふ、うふふ──私を追い詰めた事は称賛いたしましょう。おめでとうございます、藤丸様。あなたこそ正しく聖杯戦争の勝者。ですので、どうぞお帰りを』

藤丸「──!」

『貴方たちは晴れて、セラフから・・・私から解放されました。あとはそこでゆっくりと御鑑賞くださいませ。私という女が、総てを手に入れる一部始終を、じっくりと』

沈んでいく。沈んでいく。手の届かぬ場所へ、地球の核へ目掛けて獣が沈んでいく

万事休す──その時

はくのん『──私がそんなヌルい結末を許すと思うか、アバズレ』

キアラ『──!!!』

忘れるはずがない。キアラの記憶にて、唯一無二たる宿敵。自分を討ち果たした、最悪の──

『見せてやる。月の新王にまで上り詰めた、あなたの宿敵の力を。メルトリリス』

メルトリリス「えぇ。分かっているわ。──短い間だけど、助けてもらって・・・ごめんなさいね」

はくのん『・・・綺麗になったね、メルトリリス』

メルトリリス「──。さて、立香。お願いがあるのだけど、いい?」

藤丸「──あぁ。さよなら、メルトリリス」

総てを察し、藤丸は彼女に、令呪を託す。総てを、魔力リソースとして

「──BB、聞こえているわね!皆の回収を!そして・・・──」

リッカ【待ってたよ──この瞬間をッ!!】

待ち構えていたクリシュナ──否、ビーストIFたる藤丸リッカが吼え、力の限りに重力を振り切り、飛翔する

【アトロシアス!ディザスタァァーッ!!】

今こそ、ラプチャーとの戦いに終止符を打つために・・・彼女は今、英雄神のリンクを開始する!

BBスタジオ

BB「先輩!予測通り、ビーストⅢラプチャー、セラフよりセンパイ達を切り離しました!重力圏、低下中!」

ムーンセル

はくのん「我ら人理を紡ぐ者。冠位使命を果たす時がきた」

レガリアを輝かせ、今こそ新王は告げる。月の不始末、獣となりし悪魔への制裁を

「──総員、フォーメーションEX、発令!」

『『『『了解!!!!』』』』

「・・・『桜』!カーマから託されたリソース、プロテア・・・そして溜め込んだサクラメントを!」

『はいっ!行きますよ、先輩!!』

はくのんのレガリア、BB──桜のチート機能である『十の王冠』の象徴たる教鞭を、高々と掲げる

『「人理の未来と、完全無欠の結末の為に!!」』

その号令の下──

『レガリオン・パニッシャー!──発動!』

承認され、今こそ月よりの天罰が降臨する──!! 

「承認。(すぅっ)──これが、勝利の鍵だぁッ!!

エレシュキガル『ビーストⅡ・ティアマト御母様!ケイオスタイド・注入するのだわ!』

ティアマト『今こそ、愛すべき子供たちの為に』

ツールのインパクト部分、其処に骨子となるティアマトのスキルが、流体金属として注入される

シドゥリ『ビーストⅢ・ラプス、シヴァフレイム点火』

カーマ『はい。──あとは、リッカさん次第です』

カーマを焼きし、シヴァの焔。一撃必殺の威力を付与するエンチャントとして、彼女自身──形なき者が組み込まれる

BB『キングプロテア、ヒュージスケールグロウアップグロウ、付与!』

プロテア『よーし!やります!私達の、大きな第一歩!』

全体のスケール、質量を補強し的確なスケールへと補正、調整する

BB「クリシュナ、マルドゥーク、モーションリンク開始!」

マルドゥーク『щ(゜▽゜щ)came on』

メルトリリス「あなたはセラフの重力を、防御を自ら脱いだ。無敵の衣装を投げ捨てたのよ。今のあなたは磁場の無い地球と同じ──」

サポートロボット『座標、ケイサン。誤差、シュウセイ。サイシュウケイサン、カイシ』

シドゥリ『ティアマト・ラプス、増殖、点火。続いてプロテア、拡大構成します!」

総ての要素を整え、蒼焔に燃える漆黒の掌──否『鉄拳』が海上へと浮かび上がる。そして──

「全リソース、注入完了!」

「サクラメント、転送!!」

それらを総て起動し、総括する莫大なリソース。カーマがサーヴァントを変換し、BBが溜め込んだサクラメントの総てを叩き込む。起動、起爆の材料として──

BB「リッカさん!接続のやり方はぶち抜き式ですよ!得意ですよね!そういうの!」

はくのん「元ネタ遵守。──リッカ。ガッツで思いっきりやっちゃえ」

【オッケェ!!】

マルドゥーク『GAAAAAAAAAAAーーッ!!!』

転送されたマルドゥークと、リッカのモーションがリンクし、黒曜の鉄拳に、今火が入る!

【パニッシャァァ!コネクトォォッ!!!】

リッカとマルドゥーク、二体の楽園の財が接続した瞬間、翡翠の神気と黒曜の泥が鉄拳を包み、魂を叩き込まれた愛の拳が今──

【──レガリオンッッ!パニッシャァァァァアァアァアーーーッ!!】

蒼き焔に包まれ、総てを焼き尽くす破壊神の拳・・・英雄神が振るう天罰降臨の全容が開帳される──!

《レガリオン・パニッシャー》…正式名称『カルマファージ・パニッシュメント・ビーストバスター・グランド・ツール》

本ツールは 月の新王が造り上げたレガリオン・パニッシャーの骨子部分に
『ビーストⅡ・ティアマト』のケイオスタイド、それを流体金属に転用し全体の補強

『ビーストⅢラプス・マーラ』を焼き払ったシヴァの焔を逆説的にカーマが使用し燃料として転用

『キングプロテア』のヒュージスケール、グロウアップグロウによる電脳スケールの無制限化を実現し電脳世界における制約を総て『踏破する』形で無理矢理顕現する

その三体から構成され、起動にはフォーメーションEX(はくのんのノリ)を発令、発動キーである【レガリア】そして総てのデメリットをBBの【十の王冠】にて『なかったこと』にすることで発動される。

楽園最大最強の英雄神に完全に適合する規格は今の人類には再現不可能な為、パニッシャーコネクトする際にコネクター部を文字通りマルドゥークが力づくでパニッシュ。

マルドゥークの内部に急遽用意されたモーションリンクルームに招かれた人類悪、この世総ての悪である藤丸龍華の力により、同化、拡張、取り込みを得意とする泥にて一時的に全システムを汚染(ジャック)。レガリオンパニッシャーを強引に支配接続することで使用するのだ。まさにはくのんの言う通り、規格の違いなどの障害を気合いと叡知、ガッツでカバーしたのである

ナックル前部、フィンガー部分五基の火焔放出フィールド形成ユニットへと分離。
全長10km、全高全幅5kmの拳型業火フィールドを展開する。(このサイズは拡張かつ電脳体時のみ無制限)

これを敵に叩きつけることで、対象に宇宙を焼き尽くす超新星爆発に等しい温度加熱を与え、破壊神がもたらす概念レベルの存在焼却を誘発させるのである。

理論上これに耐えうる概念、神格は存在せず、単純に出力だけを見ても単独顕現持ちの人類愛二体、そして無限に拡張するキングプロテアの質量と英雄神マルドゥークの半分出力(全力の際はギルガメッシュ・エアの二人が必要)という、膨大で過剰とも言えるエネルギーを得ており、これにより発生する業火変換効率は瞳からのみ発せられるシヴァの火焔とは比べ物にならない。

加えて、火焔生成放出フィールドを除いたツール自体のサイズも直径0・5kmという巨大なサイズであり、
このツールに対する防御は困難というレベルを超える。

しかも藤丸龍華が使用した際には、 アジ=ダハーカの泥という人類総ての情念というによるダメ押しでさらにパワーアップしているというとんでもないものであり──

人類の脅威ビースト、ひいては遊星ヴェルバーを迎撃するため、そして月の新王の揺るぎ無い決意にて開発された、ムーンセル陣営最後の切り札である──!!

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