人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『置かれた紙の裏に、何か書いてある・・・』



『たくさん愛してくださって、ありがとうございました。・・・ちゃんと伝えますね』

『皆様の事、愛しています。でも・・・ダメになったりしないで、ちゃんと頑張ってくださいね。また必ず、続きはしますから。待っていてくださいね』


グッバイ・セイ・グッバイ──エピローグ──

「・・・ッ、う・・・ここ、は・・・」

 

全てが激動にて流れ行き、第三の獣を巡る攻防の果てに少年は目を覚ます。恋と愛、その終着を迎えた藤丸が見た景色。それは・・・目に優しいとは言えない、ピンク色のスタジオ。憎き小悪魔が根城とする・・・

 

 

「BB、病院・・・?」

 

「イエース、オフコース!祝!ビーストⅢ/R殲滅!セラフと共に沈んでいく皆さんを強制転移で救出した、あなたのBBちゃんなんです!」

 

そして、散々苦しめられ散々助けられたグレートデビル、BBの朗らかな声がその意識を現実へと引き戻す。あの一件の攻防は全て終わり、ビーストは確かに討ち果たされたという。・・・──そう。こちらの勝利で。カルデアの最後の希望は、確かに勝ったのだと

 

「おはようございます、立香さん。脳波も脈拍も正常です。お化けじゃないので、安心してくださいね」

 

「あいったぁ・・・頭、ぐわんぐわんだし・・・」

 

「よくぞ戻ったアナザー御主人。アタシらは後方にて御主人らの帰還を信じ、帰る家を護っていたのだナ」

 

二人の麗しきビーストではないけもの、キャットにスズカも藤丸を労り歓迎する。・・・見知らぬところでスズカはムーンセルクラスの演算にて『あの』超焼却からこの空間を守護していたのだ。意味消失ならぬ意味焼失に

 

「御疲れさんだ、坊主。色々と例外だらけだが・・・よくやった。いい根性だったぜ」

 

「む、何ニヒルに決めているんですか緑茶さん。あなたが魔神柱を狩り尽くしていれば話はもっと楽でしたのに。海底を突き抜け内核に到達してください」

 

「新しいビースト案件じゃねぇか!ゴメンだぜ、あんな頭のおかしいスケールにぶん殴られんのは!」

 

「・・・ぁ・・・」

 

あの超兵器、あの、男のロマンの全てを注ぎ込んだ最終兵器。BBが用意したのだろうか?メルトリリスに令呪を託した後は転移を果たしてしまい、最後がどうなったのかは解らないのだが・・・

 

「BB、あの兵器はどうなったんだ?すっごいでかくて、すっごい強い、なんというか・・・すっごい拳は・・・」

 

「・・・──レガリオン・パニッシャーの事ですね。ビーストⅢを完全に滅却したあの拳は・・・」

 

浮かぬ表情を顔に出し、BBは告げる。嘘はつけないAIとして、確かな事実を客観的に報告するのだ

 

「特異点を滅却後、別次元へと飛ばされました。使用者達も含めロスト・・・この座標では、確認出来なくなっています。消滅、と言ってもいいかもしれません」

 

爆炎は、全てを焼き尽くした。ビーストⅢも焼き払い、そして自分自身をも・・・

 

「そんな!・・・そんな・・・」

 

消滅した。消えてしまった。ここにいないと言うことは、カーマ・・・そしてクリシュナはあの兵器と共に・・・

 

「・・・まだ、お礼も・・・さよならも言ってないのに・・・」

 

視線を落とし、拳を握る藤丸。確かに助けてくれた。自分の無茶に、快く頷いてくれた。悪態をつきながら、確かにサポートしてくれた。今回の作戦は、あの二人がいてくれたから成功した。皆がいてくれたから勝てたのだ。・・・そんな大切な功労者に、何も伝えることなく別れなくてはいけないなんて・・・

 

「・・・ですがセンパイ、気を落とさないでください。もう一人の、大切な頑張りやさんはちゃんと、そこにいますよ」

 

そっと教鞭を振るい、藤丸の前にとあるサーヴァントが呼び寄せられる。そこにいたのは、このセラフにおける藤丸の相棒であり、確かな主役であった彼女──

 

「メルトリリス!無事だったのか!」

 

「っ、ぁ・・・立香?・・・ここは、BBの管理人室?どういうこと・・・?私、どうして・・・?」

 

消え去る覚悟で放った跳躍。帰還など望まなかった全身全霊。何故自分は此処に?全身を覆う鎧を呆然と見つめる少女に、声をかけるもの・・・すなわち彼女を救い上げた存在が現れる

 

「無事でしたね。イゾルデに酷似した少女。それにしてもイゾルデに似ている」

 

「トリ!?それにサンシャインゴリラも・・・!?」

 

「ははは、心も身体も貧しい罵倒はお止めなさい。我等が引き上げた貴女の輝きを曇らせてしまう。私はともかく、トリスタンやエミヤ殿には礼を一言くらいは告げておくものです」

 

どういうこと?と目配せで告げるメルトリリスに、リップは告げる。エミヤの用意したワイヤーを、トリスタン・・・そしてガウェインが共に引っ張りあげたと言うのだ

 

「生憎だが、礼は不要だ。・・・オレを再起動させた輩は、まとめてビーストⅢと共に燃え尽きたのだから」

 

「・・・じゃあ、トリは何故?どうして私を助けたの?嫌っていたんじゃなかった?」

 

「・・・はぁ。我が分身ながら・・・トリスタンさんははじめからずっと、貴女を護ろうとついてきていのに」

 

「はぁ!?なんでよ!?」

 

「最初から貴女が無理をしていたのは気付いていました。あなたが両腕に怪我をしていることを。それをマスターに隠しているのは何が事情があると見ましたが・・・それにしてもイゾルデに似ていたもので。あれほどの傷を負って戦うには理由があったのでしょう?それにしてもイゾルデに似ていたもので。アルターエゴであろうと、少女に違いはありません。その真意を見定め・・・それにしても」

 

「私がイゾルデに似ていただけじゃない!?」

 

「ははは、まさしく。ですがそれは彼にしか解らない基準であるのでお気になさらず。どちらにせよ、そんな理由は後から来るもの。あなたの消滅を見逃せなかった者の照れ隠しとしてお受け取りを」

 

ソーラーナイトがフォローせし、トリスタンの真相。まぁ、イゾルデに似ていたもので。照れ隠しに喜びの琴を鳴らす様に、いつも通りと息を吐く

 

「・・・まぁ、それはともかく。この鎧をくれた相手に心当たりは無いの?BB」

 

「・・・あったとしても無意味です。その人達は、もうこの次元には存在しないのですから」

 

この次元には存在しない。最早手の届かない所へと行ってしまったと。最早再会は絶望的であると。念を、念を押して告げるBB。その鎧は餞別だ。『此処にあるメルトリリス』を、カルデアへと持ち帰る為の処置。後は適当にBBに対処を任せ、顔も知らない何者かは。──誰も欠けない結末を、望んだ何者かは

 

 

「メルトリリス。・・・その、オレ・・・」

 

「──何も言わないで、藤丸」

 

何かを告げようとした藤丸を、そっとメルトリリスは遮る。その口から称賛や、労りを受けることは──最後の、矜持として。

 

「私は、あなたにとってただのアルターエゴ、ならそれでいい、それでいいのです」

 

「メルト・・・」

 

「労りも、労いも、感謝も。本当は私が受けとるものではないから。・・・私はそれでいいのです」

 

愛してもらいたくて戦ったのではない。あなたに求められたくて戦ったのではないから。だから、そう。その言葉は、消えてしまった『わたし』に与えられるものだから

 

「・・・私は、恋をするために湖から飛び立ったのだから。だから・・・あなたは、何も私に告げなくていいのよ。藤丸」

 

「──・・・・・・」

 

「・・・好きな子がいるんでしょう?精々愛想を尽かされないように頑張りなさい。・・・──応援していて、あげるから」

 

表情は、解らない。纏った兜は輝きを隠すもの。生き残ろうと、愛を乞う無様な真似はしない

 

彼女は──舞台を降りるまで。誰にも触れられぬプリマ。そして、愛の水面から飛び立った孤高の白鳥なのだから──

 




藤丸「──、・・・?・・・レイシフト・・・?」

BB「はい。オペレーション・CCCが完遂された以上、アナタを拘束する必要は無くなりました。用済みなので、さっさとカルデアに帰ってください」

藤丸「!・・・皆は・・・!」

スズカ「ん、まぁ座に帰るだけっしょ?いち参加者にしては頑張ったほうっしょ?会いたくなったらまた、連絡寄越すし!はいこれメアド!じゃ、チャオ!」

キャット「さらばだスズカ!オリジナル殺す絆にて巡り会おう!ではさらばだ御主人。カルデアにて待っているからワン!」

ロビン「・・・ま、御疲れさんだ。カルデアの少年。まともなマスターってのはどこでも大変なワケだ。オレも次は、マスターを褒めてやるかね」

ガウェイン「私も、それではカルデアにて。──何故だか分かりませんが、この挨拶には万感の想いを込めるべきだと感じています。あなたの健闘に、心からの称賛を、藤丸」

トリスタン「ガウェイン卿をよろしくお願いいたします、マスター。彼はその、些か天然なきらいがあるので」

「その言葉、あえて言いましょう。──どの体で言うのか、トリスタン!」

エミヤ「──仕事は果たした。お前も精々、青臭い時分は悔いの無いように過ごすんだな。死後も掃除をさせられるような人生は嫌だろう?」


藤丸「・・・うん。皆、・・・みんな。本当に、ありがとう。・・・」

BB「センパイ・・・」

「・・・カーマ、クリシュナ。・・・君達にも・・・御礼が言いたかった・・・」

『言えば良いじゃない』

「「「!?」」」

『まだまだ終わらないぞぅ。もうちょっとだけ続くんじゃ』

「え、誰!?どちら様!?」

『知らぬならば答えよう。ついでにレイシフト開始。コード──』

BB「──はい!というわけでぇ!ボーナスタイム!スタートです!」

『決戦のパーティー会場へ。コード・・・──』


『フラン』

ビシッ

『シスコ』

ビシッ

『ザビエル』

藤丸「ざ、ザビエル──!?」

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