人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ランスロット狂「⬛⬛⬛」


女性スタッフ「ありがとうございます、荷物まで運んでいただいて・・・」

女性スタッフ「いつも手伝ってくださって・・・あの、たまには御茶でも・・・」

「・・・⬛⬛⬛」

「マシュが待っている・・・?し、失礼しました!」

「おきをつけて!ありがとうございました!」

「⬛⬛⬛ノシ」

「素敵ね・・・狂っていても紳士だなんて、流石ランスロットさん・・・」

「マシュもお父さん、お父さんとなついているし・・・きっと理想な親子よね・・・」

「そういえば私、呼ばれているのよ」

「あら、あなたも?」

「「ランスロット卿に・・・」」


いと気高き希望の花よ

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「⬛⬛⬛・・・」

 

正座、正座。一対一の空間にて向かい合う騎士と騎士。紫の鎧の精悍な男性たる騎士に、カルデア一般の制服に身を包んだ少女。それを心配そうに見守る、狂気の黒騎士。四畳半の特設空間にて語り合う事となった経緯はそれなりに複雑である

 

 

「⬛⬛⬛・・・」

 

「え?・・・ランスロット卿とお話を、ですか・・・?」

 

セイバーのランスロットが召喚されたものの、マシュとの交流は中々にぎくしゃくしており一様に進んでいなかった。セイバーのランスロットはマシュに遠慮しているのか中々時間を取ろうとせず、マシュ・・・そして、ギャラハッドもまたそんな煮え切らない父に思うところがあるのかノータッチを貫く。微妙にして絶妙なすれ違い、不干渉。・・・これはよくない、よくない傾向である。ランスロット狂はそう確信したのである。狂っているとはなんなのか

 

このようなギクシャクな関係では日常や戦闘では勿論、楽園の和気藹々とした空気にもよくないものをもたらしてしまう。それはよくない。辺りの者達に、自分達のいさかいや問題をもたらすのは騎士として恥ずべき事だ。狂えるランスロットはそう考えたのだ。狂っているとはなんなのか

 

「⬛⬛⬛!」

 

ならば一念発起、自分が親子関係の架け橋たらん。円卓の騎士として、娘の笑顔は自ら取り戻すのだと、ランスロットはエプロンをたたみマシュに問いかける。その際、マシュの将来の為に彼女には資格の勉強をさせていた。資格は大事である。魔術の世界などより、マスターと光溢れる世界で生き抜いてほしい。だが資格は侮れない、極めれば聖杯戦争で憂鬱展開をブレイクできる・・・かもしれないのだ

 

「え?・・・セイバーのランスロット卿と?会話?・・・何故です?」

 

「⬛⬛、⬛⬛⬛・・・」

 

「・・・私にあまり用はありませんが・・・ランスロットさんが、そこまでいうなら・・・」

 

ランスロットの懸命な説得により、マシュはランスロットと話をすることを決意し踏み切る。そう、それでいい。異なる人物なれど、君はかの騎士を宿した身。どのような理由であれ、いがみ合い、その表情が険しいままでは、せっかくの麗しい美貌が台無しになってしまう。それは、自分も望む事では無いのだから

 

ウキウキで準備を行うランスロット。──クラスを理解しているものは何度も思うだろう。狂っているとは、なんなのだろうか。父としての振る舞いを全うする彼を見るものは、一様にそう思うに違いない──

 


 

「・・・ちょうどいい。私もまた、きちんと君に向き合うべきだと考えていたよ、マシュ君」

 

「ランスロットさんに諭されてだなんて、随分と優柔不断なのですね。ナンパや口説きに勤しんでいたのですか?楽園にて人妻に手を出すことは死を意味しますよ」

 

決意を込めたランスロットに対し、マシュは辛辣である。辛辣であるが・・・決して無視や無関心ではない。彼の為すこと、彼のすべてに関心を向けているのだ。それを理解できない程、人の心ではないと自負し、言葉をランスロットは紡ぎ続ける

 

「君の旅路はとても愉快で、楽しげなものだと聞いている。・・・その旅路に参ずる事ができなかった御詫びの品、渡せるものは今は何も・・・」

 

「・・・大丈夫です。あまり、期待はしていませんから」

 

「・・・それでも、健やかに育ち。快活に育ってくれた君に込められる念はある。──そして、それを表すものを、こちらに」

 

そういって、ランスロットはマシュにそっとそれを手渡す。唯一無二の念の込もったもの、それは・・・一輪の、華であった

 

「これは・・・」

 

「アイリスというのだ。花言葉は・・・『希望』あるいは『良い便り』などだそうで。君や、この旅路を進む皆に相応しいものだと選ばせてもらったよ。・・・息子に選ばれし少女にこのようなものしか贈れないのは心苦しいのだが・・・」

 

それでも、君にと。心を込めた華をそっとマシュに手渡す。このようなものとは言うが一切妥協はしていない。それが息子・・・そして、息子が選んだ少女に報えるものだと信じて選びに選び抜いたものであるのだから。ちなみにそれを選ぼうと提案したのもランスロット(狂)であるのだ。共に、花屋の店先で色んな華を見ていたのである

 

「・・・ランスロット卿・・・」

 

 

「喜んでもらえているかどうかは解らない。・・・だが、これだけは。枯れたとしても、どうか嘆かないでほしい。・・・サーヴァントは戦い、そしてその果てには退去し、消滅してしまうもの。受肉の一つでも成せれば話は違うが・・・それでも、君の傍に、いつまでいれるかは誰にも解らない」

 

そう、サーヴァントは強靭であれ儚い。現世に関わることは原則として最低限であり、エーテルの肉体は、核を砕かれれば消え去ってしまう。だが・・・

 

「──我々サーヴァントは消えてしまえば無くなるもの。だが、その華に・・・そこの華に込められた親愛は、きっと・・・永遠でしょう」

 

「⬛⬛⬛(こくこく)」

 

 

そう、そこにある華が枯れるとも、そこに咲いた華が枯れるとも。そこに込められた愛は、想いは・・・きっと、未来永劫のものだ。渡した者を、渡されたものが覚えている限り

 

「花も、また同じ。この瞬間、確かに我々は情を紡いだ。花が枯れたとしても、それは永遠だと・・・信じている」

 

「・・・はい」

 

マシュはそこに込められた想いを受け止められない程愚かでは無かった。父たるものの想いを込められた花を、神妙に見つめており、いつもの様な辛辣な言葉は、鳴りを潜めている

 

「⬛⬛⬛・・・」

 

ほっと胸を撫で下ろすランスロット狂。しっかり伝える事が出来た自分に、今の自分が言葉に出来ない言葉をマシュに伝えることが出来た事を、静かに噛み締めているのだ

 

「・・・そうですね、・・・では、これからも・・・」

 

ようやく、マシュに誠意ある対応が実った・・・そっと親子の団欒を見届けんとしたその時・・・

 

 




女性スタッフ「あ、いたいた!ランスロットさーん!」

ランスロット「⬛⬛?」

女性スタッフ「あの、この華!ありがとうございました!」

「この華、大事にしますね!枯れたとしても、その親愛は永遠・・・私、感動しました!ありがとうございます!」

マシュ「・・・は?」

ランスロット「あ、いや、その。これはだねマシュ。案内してもらった礼としてであって・・・」

マシュ「・・・──良いですか、お父さん」

ランスロット狂「b」

「ま、待ってほしい!待っ──」

マシュ「この──股間魔剣卿!!

「とぅはぁっ──!!!」


「⬛⬛⬛・・・」

ダメだこりゃ・・・静かに首を振る、誇り高きランスロット狂なのであった・・・

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