人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ『犯人は現場に戻ってくるといいます!受付です!』

アンデルセン「シェヘラザードは真面目な輩だ。借りた本を返さないということはあるまい。見ろ」

紫式部「どれどれ・・・アラビア語ですね・・・いと難し・・・」

リッカ「えーと。『司書様、不在のご様子。本は自らで戻しておきますね』だって」

ぐっちゃん「読めるの!?」

「伊達に手当たり次第勉強してないよ~。12ヶ国語なら行ける!」

ぐっちゃん「・・・学生ってすごいのね・・・」

【おぞましき教育──である。話せる国のほとんどを、彼女は知識で──知っ──いない】

紫式部「・・・ノイズが酷いです・・・こんなことは初めてで・・・」

アンデルセン「・・・そういえば紫式部。お前は習字や作文の教室を開いていたな」

「はい。綺麗な文字を書きたい、感じるがままに己が心の在処を紡ぎたい──そういった想いを抱いた方々の力になれればと」

「ふっ。アイツが言っていたのはそう言うことか。・・・まぁ、それは今はいい。何処かの本棚に本を戻しているのだろう?」

紫式部「・・・御待ちください。メモを残されたのは。御一人だけではありません!」

『では私も』『あたしも』『私も』『拙者も』『私も』

「・・・。面倒な!入ったのか全員!」

ぐっちゃん「追いかけなきゃダメよね、これ!リッカ、隔壁閉鎖!」

リッカ「ふんっ!!!!」

天草『この手に限りますね』

ぐっちゃん「手で下ろすものじゃないわよねそれ!?」




トラブル調伏!スーパー菩薩ウーマン!

「まぁ!アンデルセン様に、我等が楽園のマスター様も!部屋から飛び出し、絆を結ばれ共に行動をなさっているようで何よりでございます!」

 

図書館にてシェヘラザードを捜索している一同。隔壁を下ろし二次被害を避け、そして自らの手で返却しているというメッセージのままに本の場所へ向かった一行を待っていたのは意外や意外、セラピスト菩薩、キアラであった。アンデルセンが無言で目を逸らす。何処にでもいるが何処にいるか解らないのが、この女であり。真っ当に善行を積んだ彼女の行動の予測は不可能なのである。目のつく出来ることは全てやる求道者なのだから

 

「皆様・・・?我が女王、そして御世話になっております、紫式部様。借り出していた本を、自らの手で返却する旨を文面だけで御伝えする無礼を御許しください・・・」

 

深々と礼をする語り手、シェヘラザード。彼女はこの図書館の早期の利用者であり、安心できる場所として一日本を読み耽っていたりする、重要利用者であったりするのだ。だから紫式部もまた、彼女をよく知っているのだ。

 

「・・・まぁ、お前の行動を今更把握し尽くす事は出来んだろうが一応尋ねよう。何をしている?この図書館で次はどんな徳を積んでいた?」

 

「まぁ。徳だなどと。これは人として当然の振るまい・・・単なる手助けでございます」

 

ね?と制服姿の聖人が語り、語り手が頷く。そう、彼女は偶然歩いていたところ、前が見えない程に本を抱えていたシェヘラザードと鉢合わせ。その余りにも危険な様子に、声をかけ申し出たのだ。『私がそれらをお持ちいたしましょう』と

 

「楽園の余りの安寧ぶりに、つまづきや前方不注意の死の危険を忘れていたとはなんたる不覚・・・でも、怖くはないのです。こうして、楽園には死の恐怖を和らげてくれる仲間達がいてくださいますから」

 

「死とは安らぎであり、次代の生命へ居場所を譲る儀式。過度に怖がるものではないと私は説いております。ですが教えだけでは恐怖は拭えぬもの。こうして身をもって、和らげ寄り添う事も必要不可欠でございましょうや」

 

ソワカァ・・・と溢れる徳により目が瞑れんばかりに照らされ吹き飛びかけるリッカ。時代を放浪するなかで数人見かけた導く者たる本物のオーラをぐっちゃんもまた垣間見出す。まだまだ覚者には遠いものの、教え、導くものの資格は十分に得ているのだとアンデルセンは王に説かれた事を思い出す

 

「アンデルセン様もマスターらと共に在りし様で何よりでございます。アンデルセン様は中々作家仲間に恵まれぬ故、部屋に訪れし王とギルガシャナ様と楽しげに話すばかりで心配でございました。もう少し、交友の輪を広げ気分転換を成すべきではと・・・」

 

「お前は俺の母か!えぇい、聞かれてもいない俺の身の上話などいい、問題は別にある!さっさと説明しろ、リッカ!」

 

「ホアッ。・・・あ、はい!えっとですね!そうですね・・・なんでしたっけ?」

 

「後輩!しっかりしなさい後輩!なんでアンタ徳や善意や友好にこんなに弱いのよ!反動なの!?楽園限定なの!?」

 

ぽわぽわしながら酩酊状態めいたリッカは話す。本が、魔力を吸って、とらぶるぅ・・・ですかねぇ・・・などといった、極めてふわっふわした所感を説明する。彼女、徳や尊さには4倍クラスに刺さるのであるは周知の事実だ。無敵の防御など嫌味でしかないという現れなのだろうか

 

「そうでしたか・・・本が魔力を吸い上げ、男性職員の皆様のお返しを。悪気や悪意のない事件の解決の奔走、大変お疲れさまですわ・・・」

 

「防衛本能に従い襲い掛かる・・・恐ろしきものです。今、こうして無事でいられるのは・・・楽園、どんなシェルターよりも安全なのですね。安心です・・・」

 

「いつもの邪気の無い後光を撒き散らす言動と安全芸御苦労。で、どうだ。何か変わった事は無いか?」

 

「知らない本などが増えたりしていませんでしたか!?本が浮いたり、変身したり・・・!」

 

「怪物になったり・・・」

 

「変形合体したりしない?最低最悪の魔本になったりしてないかしら?」

 

「本とは、なんでしょう・・・」

 

シェヘラザードの呟きと同時に──キアラ達が返却していた本が、一斉に浮かび上がる。その返答に応えるように、本が敵に、自己保存本能に従うままに攻撃と反攻たる行動を選択し襲い来るのだ

 

「まぁ・・・!これが皆様の仰っていた現象なのですか?確かに、邪な魔力と気を感じます。良くない流れを吹き込まれてしまった、本・・・」

 

「吹き込まれた・・・多分あれも外れだね、式部!でも、放っておく訳にもいかないよ!」

 

見ればシェヘラザードとキアラを取り囲む形でいくつかの呪本が敵対エネミーとなっている。このままでは・・・

 

「これはあれだな。今までの観測や行動パターンからすると、奴等が襲われるだろうな。距離的に真っ先に狙われるだろう」

 

「ちょっと、やけに冷静じゃない・・・!アンタの嫁さんじゃないの!?」

 

「バカを言うな、ファンに手を出す作家がいるか死活問題だ!アレは真っ当な人だ、俺の気の迷いの相手ではない!」

 

撃破しなくば、安全は確保できない。なればこそ一行には最適かつ最短の対応が求められる。一刻も早い対象の鎮圧と制圧が──しかし

 

「それよりも、だ。そう心配する必要はない。アレが俺の知る殺生院キアラであるならば・・・」

 

そう言ってアンデルセンは自らの宝具たる本を開き、簡単かつ効果的なるバフをかける。その相手は、リッカでも・・・

 

『ましてやポンコツのぐっちゃんでもない!アンデルセンが託し、バフを渡す相手は他でもない・・・!』

 

「今の解説必要!?」

 

「ほ、本が・・・!だ、大丈夫です。こんな時の為に私が習得した『エネミーを遣り過ごす108の方法』、まずは──」

 

素早く最敬礼すなわち御辞儀の体勢を取るシェヘラザード。──その傍らに立つキアラこそ・・・

 

「失礼。応供(おうぐ)四顛倒(してんどう)──」

 

超高速の、目にも止まらぬ肉弾数連撃。同時に一瞬で文字通りに四体いた呪本エネミーが撃破・・・否、『調伏される』。驚愕に目を見開くリッカにぐっちゃん。その驚愕を、解説祭が後押してくれる

 

『仏敵調伏!キアラ氏の鍛え抜かれた護身術、仏法闘法・至尊流!驚くなかれ、この闘法は元気にしてくれたお医者様への感謝の拝み、感謝、体捌きの鍛練の結果──』

 

そして、流れるような動作でシェヘラザードを庇い、速やかに懐に入り込み速やかに手を本の下に添え──

 

「──渇破!!」

 

『修行にて!山の熊すらも打ち倒した実績も持つのである!!』

 

「「嘘ぉおぉお!!!?」」

 

速やかに魔力反応を振り払い、紫式部がするよりも早く呪本の魔力を静め、本に変化させたモノを拾い・・・

 

「こちらでございましょうか?どうぞ、御持ちくださいませ。皆様の仰有られる・・・最初の呪本でございましたか?どうか、皆様の善行が実を結ぶ事を願っております」

 

「は、は、はい!ありがとう、ございました!キアラ様・・・!」

 

「そして・・・」

 

「・・・──フン」

 

「・・・ふふっ。言わぬが華、ですね?」

 

彼女がいつも以上に力を振るえた理由。青髪にて露骨にその理由を・・・あえて。キアラは口にしないのでありましたとさ。




マシュ『呪本回収です。・・・が!魔力の量が奪われた四分の一にも満たされていません!つまり!』

天草『最初の呪本ではない、という事ですね。大本にはまだまだですか。・・・聖杯への道は潰えていないようですね』

シェヘラザード「・・・申し訳ありません。こうした荒事に、サーヴァントでありながらまるで対応出来ず・・・これでは、あまりに・・・」

リッカ「大丈夫!」

シェヘラザード「え・・・」

リッカ「シェヘラザードは、いてくれるだけで嬉しいから!」

解説【その言葉、その物語こそ、この楽園にて大切で必要なもの。戦う必要なんてないし、そんなものは求めていない。あなたがそこにいてほしい。それが、リッカの偽り無い本心である】

シェヘラザード「・・・我が女王・・・」

アンデルセン「ハッピーエンドめいた雰囲気には完全無欠が足りん。さっさと行くぞ。返却に来た連中の本を軒並み確認だ!じゃれあうな、行くぞ!」

キアラ「ふふっ。えぇ、貴方がそう言うのなら」

「違う!お前ではない!──面倒な奴を拾ったものだ!」

ぐっちゃん「・・・これが、漫才・・・」

『妙なイメージを手にしたぐっちゃんであった!』

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