電力
数多くの英雄を招きし楽園、カルデア
これから遥かに続く旅。彼方の未来を取り戻す足跡を……共に歩む仲間たち
――だが、数多の仲間たちを率いれた代償として、とある一つの問題が頭をもたげていた……
「こちらが、カルデア使用維持に利用された電力となります。リストを」
「うむ」
オルガマリーから資料のリストを受け取り目を通す
リスト一覧にはカルデアの使用電力、利用リソース、使用火力、英霊を維持する配布供給魔力……その細かな使用子細がグラフとして表示されている
――その中で、群を抜いて使用グラフが伸びているものが一つ
「人員補強の弊害ゆえ、解りきっていた事だが……奴等を維持する電力をくっているな」
頷くギルガメッシュ。オルガマリーがモニターを開く
「はい。更に魔力供給も、大幅に増えた需要に追い付けていません」
「確か、英雄どもの維持にはカルデアの4割のリソースを割いているのだったか」
「はい。特注の機関を使用はしていますが、それがカルデアの機能を両立させるギリギリのラインです」
――4割、か。4割も、ではなく、4割で英霊を賄えるというカルデアの凄まじさを称えるべきだろう
「……カルナめは魔力を食らうであろうからな。うむ、後先考えず英霊どもを招きすぎたか?ははは」
――器は笑うが、中々にこれは看過できない事態だ。いくら極上の楽園といえどリソースなくば立ち行かない。上質な機能運用には、上質な動力が必要となるのだ
「申し訳ありません、ギル。これは、英雄を招く想定を甘く見ていたアニムスフィアの落ち度です」
深く頭を下げるオルガマリー
……流石に、彼女を責める恥さらしな真似はしない
この施設は、父、或は祖父の時代から引き継いだものなのだろう。設計が親ならば、運用以外で彼女が責められる謂れはない
「まったく、自己評価の低さは欠点であるぞ、オルガマリー」
ぽん、と、頭を撫でる
「貴様が総てを背負う必要はない。過ぎた責務を背負えば、たちまち腰は砕けよう」
「ギル……」
「この問題は『動力』を賄えなかった親元の落ち度よ。貴様はただ胸を張り、咲いていればそれでよい」
――シバのメンテ、カルデアスの調整、オペレート、魔術礼装の開発
その労働、貢献……ロマンと並び――君は最高のスタッフだ
「勤勉、大儀である。我に、二度を言わせるでないわ。馬鹿者」
「――っ、はい。――はい……」
目に涙を潤ませる、オルガマリー
「暫し様子を見よ。実害が訪れれば、その時に対処するまでだ」
「はい、直ぐにあなたに伝えます」
「良い、許す。では我は行水に赴く、お前も程ほどにしておけよ?肉体は聖杯とは言え、過労死は辛いぞ?」
ひらひら、と手を振りブリーフィングルームから退出する
「まぁ、そう直ぐに実害など訪れは――」
――――否、それは直ぐに訪れたのだ
「――~ふはは、やはり我のデザインは完璧よなぁ?この広さ程なければ、満足な水浴びなどできまい!」
上機嫌に身体を流し、湯に漬かる英雄王
「ふはは、英雄ども!存分に謳え!此処が!我の誇る地上の楽園!カルデアである!!」
―――だが
カルデアを、――闇が包む
目の前を、暗闇が襲う
「ッ!?何事か!?」
なにも見えず、何も聞こえず――周りをただ、静寂が包む
「ロマン、オルガマリー!えぇい、繋がらぬ!この無反応ぶり――」
――間違いない。このタイミング、そう言うことだ
「おのれ『電力』が落ちたか!――マスター!」
素早くマスターとの念話に切り替える。それは電力とは関係ない。マスターとの繋がりさえあれば、会話は可能だ
『よかった、ギル!』
「これは如何様か!カルデアの火は消えてはいまいな!」
『それは大丈夫!只の、停電だから!』
「停電――!?チィ、こうも早く実害か!なぜこう我は旗の屹立に定評があるのだ――!」
――言霊も王だからではないですかね……
「原因はなんだ!」
『サーヴァントの皆が、運動したいっていって、シミュレーションで……戦って……すごい際限なく、いじって、宝具も……』
「――たわけ!何故止めなかった!奴等を賄う魔力の案は未だ確立しておらぬ!遥かな需要に供給が追い付かぬのは自明の――」
歩きながら出口へむかう。――が
つるり、と石鹸らしきものの感覚が脚を滑らす
「ぬ――――!!?」
盛大に暗闇にて横転する器
そのまま――
「――ぐぉあぁああっ!!!」
転倒し、頭を派手に打ち付ける――!
『ぎ、ギル!?大丈夫!?ギル!?』
ぐわんぐわんとする中、マスターの声が聞こえる
――大丈夫、死ななきゃ安い。麻婆に比べれば、これくらい……
「――――良かろう」
『え?』
むくりと起きあがり、真紅の瞳をギラリと輝かせる器、ギルガメッシュ
「改築せし楽園に足りぬもの――それは動力機関!」
やがて非常電源に切り替わり、薄暗い灯が、カルデアにともる
「我が手がけし楽園――これをより一層!磐石にしてくれるわ――!!」
血塗れの英雄王が、今猛り狂う――!
ー
「集まっているな!ダ・ヴィンチ!メディア!」
管制室に二人を呼び出し、モニターを展開させる
「もちろん!次は何をやらかす気だい?ゴージャス!」
「解りきった事を問うな!この有り様を見よ!」
ほの暗いカルデアに、王が叫ぶ
「たかが英霊がはしゃいだだけでこの始末!この脆弱さはいかなることか!我としたことが、リソースの確保を怠っていたわ!故に!」
――あぁ、そう言うことだ
「新たな動力源を――我が用意する!調整と管理はダ・ヴィンチ!メディア!貴様等の役目よ!」
「ダ・ヴィンチは解るけど……なんで私?科学の機関の整備なんてできないわよ?」
「うつけが!それはダ・ヴィンチの仕事だ!貴様には、魔術の動力をくれてやるといったのだ!」
「魔術の……?」
不思議そうに聞くメディア
「然り!――此より我は、我が玉座『ヴィマーナ』を解体し、無限動力精製機関へと転じさせる!」
「えっ!?」
――自分も、器の閃きを聞いた際にはたまげたものだ。あまりにも大胆な資材使用に、開いた口がふさがらなかった
「……これは天才も驚きだ。君は自らの至宝を、ばらしてカルデアに捧げるというのかい?」
「カルデアは既に我の財だ。これは破棄ではない!財に財を掛け合わせ、よりよい財を産み出すだけのこと!この我が、背中を気にするような水浴びなどやっていられるか!」
バン、と机を叩く
「ヴィマーナの核となるメインエンジンを改良し、真エーテルを生成し魔力とさせる無限動力機関とする!解体した資材は燃え尽きぬ薪としてくべつづける素材へと変わる!エーテル自動生成装置も予備電源として設置だ!その他に核融合炉、相転移エンジン、コスモリアクター諸々をカルデアの運営に回す動力としてまわす!それら総ての火として、ヴィマーナを余すことなく使用せよ!メディア!貴様の神代の手腕を以て、これらの管理を一任する!」
「嘘みたいに気前がいいわねあなた――!?やれるわ、というかやっていいの!?」
「その為の貴様だ!使える魔術師という点において貴様程の人材はいまい!」
「――嬉しいことを言ってくれるわね。いいわ、見せてあげてよ?私の腕前!」
――悪ぶっているような気がしたが、根はいい人だな、メディアさん
「産み出した魔力を回す管理はダ・ヴィンチの仕事だ!的確に魔力を運用し、過不足なくカルデアを回せ!莫大にして無尽蔵なる魔力の発露、見事運用して見せるがいい!」
「もちろん!任せてほしい、未知なるエネルギーや機関を制御だなんて、天才の私以外にできようか!」
「決まりだな――貧困に訣別せよ!貴様らの生活は、我が保証する――!!」
ヴィマーナを召喚する――あれ?微妙にフォルムが違うような?
「英雄王、これはもしやあれかい?まさかとは思うけれど・・・」
「――そのまさかよ。我は!『ヴィマーナを二機所持している』のだ!今回使用するのは火力を重視している二号機よ!過剰火力により陽の目を見ないであろうからな!生まれ変わってカルデアエンジンの先駆けへと変われ!」
「君あたまおかしいなやっぱり――!」
――ヴィマーナも二つあるとか……呆れ果てるばかりだな、この王に不可能は無いのだろうか
「何度も言わせるな!我に、不可能は無い――!!」
――これで、少しでも皆の生活が安定するだろうか……
そうして作られた新型魔力精製エンジン群『バビロン』を、ヴィマーナを大改修して誕生させた英雄王
従来の12倍の魔力精製効率を発揮し、カルデアへ行き渡る魔力の総量も12倍以上の効率を誇る事となった
シミュレーション、電力、火力――人ならざる神秘の極致――宝具を原材料にして産み出され、神代の魔術師と天才の制御にて誕生した無限の機関を手にいれたカルデアは大幅に進化を遂げ
「――祖父の苦労って一体……」
――向こう千年の連続稼働を可能とする『無限人理保証リゾートカルデア』が、誕生したのであった――
「見よ!ふはははこの輝きを!我には劣るが悪くない輝きだ!これで二度と、停電などには悩まされまい!」
上機嫌で湯船に漬かるギルガメッシュ
「ふはははは!我のカルデア!英雄王の本拠地に相応しき輝きよ!賛美せよ!凡夫雑多の英霊よ!そして――賛美せよ!ふははは!はーっはははははは!!」
ーそうして、サーヴァント達の運用に、なんの憂いもなくなりましたとさ
「完璧だ・・・後は、直流さえあれば!」
「いや、地上の楽園を完成させるは交流!」
「あ?」
「は?」
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