リッカ「大丈夫、半端に苦しませはしない・・・必ず仕留める!!」
『伝説の海賊、黒髭。彼はどうやら誰かの伝記を借りていたらしい』
セイバーオルタ「む。相も変わらず奔走しているな、ご苦労。私はいま小説に嵌まっていてな」
『小説投稿サイトの人気作品を読み耽っているらしい。無論矛盾点や稚拙さをあげつらいレビューに評価一を叩き付ける為だ』
ランスロット(剣)「私もやましい事などしておりません。ただ、単にマシュと仲良くなるために・・・」
『女性の口説き方、なぁなぁで元サヤに収まる方法を借りていた様だ。努力のアプローチが絶妙にズレているランスロットであった』
「時にマスター、荒事ばかりではいけません。たまには私と読書を嗜むというのも・・・」
マシュ『は?』
「それはまたの機会に!!では失礼!!」
ぐっちゃん「・・・人間って本当に色々いるわよね・・・」
マシュ『彼には人間を名乗って欲しくないです』
リッカ「辛辣ゥ!」
『お疲れ様です先輩!先程のなんか歩く穀潰しは忘れましょう!地下図書館のめぼしいところは回りましたが成果はまちまちですね、行っていないのは通常立ち入り禁止の書庫を残すのみ!これをクライマックスが近いと見るか骨折り損と見るかは先輩次第です!』
「圧が強い解説ありがとなすび。んー、これだけ回って最初の呪本は見つからない・・・画竜点睛を欠くって言うんだっけこういうの」
マシュの言葉通り、粗方の捜索を行えど本題なる最初の呪本にはたどり着けていない一行。ホワイトデーの魔力リソースを吸収したお騒がせな本がまだ見付かっていないのである。端役、呪本の派生は回収したものの、奪われた魔力リソースには到達していない。まだ、大本がいるということだ
「・・・・・・」
紫式部の表情は暗い。ここまで尽力してもらい、迷惑をかけていながら何一つ事態を好転させられない自身を責めているのだろう。不可抗力であり気にすることは筋が違いはするが、そういった繊細な感性にて作家は作品を作る。変えろと言われて即座に変わりはしないだろう
「ふん、凄まじく莫大な魔力ではあるだろうが、賄えない訳ではない。──最悪な愚作ではあるが、リソースの賄いを請い願えばいい。まず間違いなく不興を買うだろうがな」
困難に屈し妥協案にて折れる。楽園の旅路で一度も行わなかったそれを切るのはまだ早い。言うだけ言ってみただけだと告げ、アンデルセンは続ける
「主人公として、困難は自覚と動機を持った当事者が超克すべきだ。そうだろう?式部」
「はい!勿論でございます!ここで見付からないのならば隔壁を開けていただき、私はカルデアを再び探す所存です!」
『短慮は浅慮ですよ。まず私とマシュが地下図書館を
任せた、とリッカの声に元気よく答えるマシュ。そしてそのスキャンは30分程かかるという。手頃な休憩になる時間ではあるが・・・
「あ、そういうことでしたら。受付の裏へどうぞ。休憩にはもってこいかと存じます」
「作家のプライベートルーム、ってやつ?しっかり片付けてるわよね、片付けができないのは人間としてアレよ?」
「精霊パイセン、人間を語る!」
「一般論よ、一般論!・・・私もそれなりに疲れたし、マスタープログラム習い直すし、案内してくれない?」
「分かりました。それではこちらへ・・・」
紫式部に導かれるままに、一同は束の間の休息として彼女のプライベートルームへと脚を運ぶ──
さっきまで かゆかったけど おさまった 松尾芭蕉
「まぁ・・・これが、紫式部さまのお部屋・・・?」
一同が招き入れられた紫式部のプライベートルーム。其処には畳や襖に仕切られた和風の部屋・・・ではなく。キングサイズのベッドや、シックで格式高い調度品、公共使用のパソコンが置いてある・・・高級スイートホテルルームであった
「予想外でした。紫式部さんがホテルルームを御気に入りだとは・・・私は駄目です。倒壊や、火災で逃げ遅れたりしたらと思うと・・・」
「は、はい。実は・・・これは王の計らいで、サバ☆フェスで滞在する予定のホテルルームの『れびゅー』を仰せつかっておりまして・・・」
サバ☆フェスにおける拠点、作家が産み出す宝の山に万全を期すことを目論む王は日本の作家の頂点に位置する紫式部を最高のモニターと定め、部屋の心地を堪能させていた。彼女が創作や文化に触れられ快適ならそれでよし。違和感を覚えるならホテルを買い取り一人一人に合わせた部屋を作ると定めているが故である。再現し、部屋としてホテルを使用しているのはそういった理由なのだ
「よし、俺は休む。歩くのも重労働だ、ベッドの一つは俺が貰うぞ」
そういって靴を投げ出しベッドに倒れ込むアンデルセン。キアラは投げ出された靴を整え、御茶を入れに一礼し引っ込んでいった。シェヘラザードもまた、それに続く形で歩き出す
「そういえば項羽さんとどうやって一緒に寝てるの、パイセン」
「え?それはあんた・・・項羽様の背中よ」
「背中!うわぁパイセン大胆!」
「ふふん。真に気持ちが通じ合っていたらずり落ちたりはしないわよ。あんたもそんな相手を見つけなさいよね」
「うんうん。私の相手かぁ・・・サバ☆フェス、兄貴たちとレジャーしてみよっかなー」
そんな気楽に、思い思いの憩いを堪能するなかでも紫式部の顔色は良くない。優しくしてもらえれば優しくしてもらえる程に、その申し訳無さで頭が下がる・・・といった様子だ
「おおっ・・・式部さん顔色悪いよ?大丈夫?リッカメシ食べる?」
アンデルセンに無言で服の袖を引っ張られ、会話を促されるままに声をかける。ちなみにリッカメシとは肉を山盛りにし卵をかけマヨネーズとニンニクをモリモリにしたパワーフードである。体重計に乗らないという覚悟をしなければ女性は食べることは許されないものだ
「は、はい。実は──・・・どうしても、取り戻したいものがあるのです」
「取り戻したいもの・・・?」
「・・・書庫で『最初の呪本』と遭遇した折に、私はあるものを奪われました。それは、大切な手紙・・・万の財より価値があり、億の賛辞に打ち克つ至言がしたためられた、大切な手紙を・・・」
それはとある者から受け取った手紙。それを所持し、大切に保管し、誤字や脱字を見逃さず届けることこそが、楽園に来てからの大任だったと語る紫式部。──だが
「肌身離さず持っていたというのに、あっさりと奪われてしまい・・・──呪本を回収するのを、何より優先すべきなのに・・・」
「え?手紙も呪本も取り返せばいいじゃない」
リッカの言葉に顔を上げる紫式部。本を元に戻す、そし手紙も回収する。それを両立することになんの不都合があるのだろうか。
「任せてよ。どっちか、じゃなくてどっちもを目指そう!最善の解決って言うのはそういうもの。強さって自分の我が儘を通すことだから!」
「リッカ様・・・」
「あんたはサーヴァントなんでしょ?マスターがこう言ってるんだから、信じてあげなさいよ。なんの根拠も無いくせに、信じることができる。人間ってのはそういうへんな生き物じゃない」
「・・・虞美人様・・・はい。そのお言葉だけで・・・」
「──式部、起き上がる体力も無いので寝転がったまま訪ねるが。何故だ?何故手紙なんぞが食われる?」
呪本の怪物らは自己防衛として反攻するのみで、自分から積極的に捕食しようとする素振りは見せない。そこには関係があると、アンデルセンは睨む
「お前の手紙に、呪本。そしてホワイトデーの魔力リソース。・・・ここになんの関係が紡がれている?」
そこには必ず何かがある。そう告げたアンデルセンの問いに、静かに紫式部は応える
「・・・私は、想いを綴る英霊です。人が人を想う心をこそ、私は綴り、したためます。・・・それ故に、私が形を与えた本たちは想いにとても敏感で・・・」
確かなことは、はっきりしない。でも、きっとそこにはおぼろげながら裏付けられる。想いに触れようと本が動き、そして・・・
「呪本が、想いを食べてしまうのは。・・・思えば、かの手紙に込められた思いはそれほどに万感だったのでしょう。手紙のみを、食べてしまったのは・・・」
だから、必ず取り返さなくてはと紫式部は言う。それは、必ず。渡される方の目につくべき大切なものであるのだから──
アンデルセン「ウェイクアップ!ならば話は早い!リッカよ、呪本の特性をどのように聞いている?」
リッカ「情報パクパク魔力うめうめ!」
「そうだ。魔力、情報を呪本は捕食する。だがそれは無差別ではなかった。そうだな、式部の言葉を借りるなら──」
キアラ「『想いの籠った情報と魔力を食す』。前者は手紙、後者は数多のホワイトデーにて用意された感謝の魔力・・・ですね?」
アンデルセン「そういうことだ。まぁ行方はわからんが理屈は通った。厄介ではあるが、かの本は無差別ではない。魔力炉、聖杯、霊核をかじるといった致命的な悪戯をしたりはせんということだ。・・・こんなもの、今までの困難に比べれば大したものではない。だから・・・まぁ。お前の大切な手紙を取り返すくらいの余裕はあるということだ」
紫式部「・・・!」
キアラ「はい、顔色が綺麗になりましたね。アンデルセン様の御言葉は決して拒絶ではなく、根底にあるのは・・・」
アンデルセン「余計な印象を流布させるな、漂白菩薩見習い。・・・しかし想いの手紙か。あながち他人事でもない。レターというのは、渡された側に必ず何かを知らしめるものだからな」
キアラ「えぇと、ロンドン?の時に貰ったレターを何度も・・・」
「余計な印象を流布させるなと言っているのだバカめ!」
天草『・・・確かに、それでは聖杯にはかぶりつきませんね。無念です・・・やはり私は無理ゲーに挑まなくてはならないのですね・・・今度聖杯管理担当足る天の聖杯の少女たちに話を聞いてみますか・・・』
ぐっちゃん「ほんっと不屈ね、アンタ。日本兵が世界を驚かすのも解るわ・・・」
シェヘラザード「一段落したなら、御茶を飲みましょうか。素敵な味がいたしますよ。天に登る・・・では死んでいますね、いけません」
マシュ『スキャンはもうすぐ終わります!終わったら、すいーつじゃんぬで乾杯しましょうね先輩!』
リッカ「はいはい、ちゃんと出来たら頭を撫でたげる」
マシュ『今こそ私のレベル上限が100になるときが来たようです・・・!!』
ぐっちゃん「ちょっろ」
紫式部「・・・・・・なんと、暖かい。これが王の財、輝ける人類史の価値たる楽園の善性・・・」
キアラ「ふふっ。私は信じております。人類は未だ未熟なれど、いつか必ず悟りに至り。この宇宙にその叡智と希望を振り撒く日がやって来ると」
紫式部「・・・はい。私も、そう信じたいです。本当に・・・」
──世の中を なになげかまし 山ざくら 花見るほどの 心なりせば──
・・・詞や歌を、物語を素晴らしいと感じる事が出来たのなら。
それはきっと、そう受け取った方々の心が。素晴らしく在るからなのでしょう──
どのキャラのイラストを見たい?
-
コンラ
-
桃太郎(髀)
-
温羅(異聞帯)
-
坂上田村麻呂
-
オーディン
-
アマノザコ
-
ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
-
崇徳上皇(和御魂)
-
平将門公
-
シモ・ヘイヘ
-
ロジェロ
-
パパポポ
-
リリス(汎人類史)