人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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今日で作者は誕生日を迎えました。また一つ大人になったと言うことですね

年齢を重ねるに至って怖いのが、価値観がヒネて良いものや素敵なもの、ハッピーエンドを受け止められなくなると言う事ですね

未だ頭にネタが浮かび続け文も捗り『次はどんな話にしようかな』と楽しんで執筆できていますが、歳をとるごとに希望や夢を斜に構えて見てしまうようになってしまうのかな、というのが強いて言うなら怖いところです

皆様がこの物語に求めているものはなんなのか。王の笑顔や姫の愉悦、リッカのパワフルさを曇らせてはいないか。

どんな時もそれを忘れず、慢心せずに精進していきたいと思います

姫を見守り!リッカを好これ!(りあむ並感)王に愉悦を捧げよ!(アルトリアガチャで返却されます)

これからも、フレッシュな叙事詩を届けられるよう、頑張って参ります!届ーけよー、届ーけよー投稿を届ーけよー

これからも、よろしくお願い致します!!


天草『マスター、マシュが姿を消しました』


リッカ【!──そっか】

天草『えぇ、伝えましたよ』

【──うん!】




ブックハント・エンドマーク

「楽園を騒がせし怪異、此処に討伐つかまつる!覚悟!!」

 

剣を翻し、勇猛果敢に攻め込む美貌の剣士蘭陵王。ぐっちゃんのサーヴァントとしての誇りと自覚を力に変えて誉れ高き戦いに身を投じる。その身に絆と信頼、正しい願いがある限り。彼の突撃に迷いと躊躇いは無い。どんな死地にも危機にも立ち向かう決意が、今此処に結実している。ちょっとずれたマスターの指示を的確に読み取り、巨大なブックドラゴンに接近していく

 

【援護するよ!蘭くんちゃん!】

 

「やる気に満ちているわね・・・いいわ!あえて何も言わない!思うがままにやってみなさい!」

 

おまけに彼女が自由意思に任せた事も効を奏した。後方の射撃、魔力の攻撃にてブックドラゴンの妨害を蹴散らしながら、懐に飛び込み決定的な一打を狙う。ブックドラゴンのいる空間は約10mほどの奥行きと天井、スペースがあり白兵戦を仕掛けるには十分なスペースがある。そして同時に、ブックドラゴンはその図体のせいで蘭の動きに対応できていない

 

「───殺った!!」

 

振るわれた尻尾をきりもみでかわし、瞬く間に体を登り抜け頭部と首を斬り落とさんとした瞬間──群集ならではの驚くべき習性を呪本は戦闘に転用したのである

 

「なんと!?」

 

攻撃の瞬間、『ブックドラゴンがバラバラに弾けとんだ』。本のページが舞い飛び、雄々しき竜の姿が瞬く間にほどかれたのである。その予想外な回避方法に一瞬だけ判断が鈍る処へ、更に姿を『大蛇』に変えた──言うなればブックスネークが蘭に痛烈な尻尾の一撃を見舞う

 

「ちぃっ!!」

 

しかし蘭は歴戦のセイバー、そんな事態にも当然のように反撃を行う。叩き付けられる尻尾の軌道を把握、感知し、そこに剣を振るい斬り落とさんと試みる。その予測は確かに的中し、カウンターの形で尻尾は切り落とされる・・・が。

 

【それもだよ、蘭くんちゃん!!】

 

「ッッ!」

 

斬り落とされた尻尾が、無数の猛禽に姿を変え蘭に殺到する。鋭き爪と牙にあわや蹂躙される所を、キャスターとリッカらの援護射撃にて致命的な損害を受けずに遣り過ごすことが叶う。

 

それだけではない。ワニ、ゴリラ、獅子・・・『強者』と呼ばれる動物の様々な形を取り、遠近に万能に対応してみせる。対するこちらの攻撃は、被弾箇所をバラバラにほどいて無傷にしてみせる強かさを存分に発揮してくるのだ

 

【ゲッターロボのオープンゲットみたいな避け方してくる・・・!!】

 

「集合体だからか、拘りの定形は無いようだ!データを読み取り最適な形を取る、なるほど勤勉だな!本が学ぶ、いいネタになるやもしれん!」

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!戻ってきなさい、ら」

 

「っく、お──!」

 

蘭、と呼び掛けられる前に吹き飛ばされる蘭。仮面に一撃を食らった様だ。ビシリとヒビが入った仮面を抑え、マスターの前に帰参する蘭が告げる

 

「マスター、皆さん!かの呪本に有効な部位は存在しておりませぬ!絹の豆腐や暖簾を斬っているような手応え・・・!」

 

「そ、そうね!よく戻ってきたわ!よく戻ってきたわ!」

 

本であるがゆえ、ページであるが故に部位などなく、同時に束ねるが故に強靭な攻撃が叶い、更に不定形であるがゆえ柔軟な戦法を使ってみせる。中々に強敵であると判断を下すに相応しい実力を見せ付けてくるのだ。遠距離攻撃を分離、離散、そして再構築ですかしてしまうのもあり、厄介きわまりない

 

同時に地の利もあちらに取られており、かの本たちを吹き飛ばせる極大範囲攻撃は総じて図書館に被害を与えかねないものばかりであるのだ。情報と司書の被害は避けられない。うねりをあげる本が、驚異的な知恵を発揮させる事に一同は驚きを隠せない

 

「困りました・・・これでは千夜一夜日です・・・」

 

「千日手をシェヘラザード様なりに変えたものですね。終わりがない、という意味でとても洒落ていると感じますわ。今の状況に相応しいかと」

 

「最初の呪本が吸い上げた魔力が良質な為、これ程の性質を持っているのでしょう。──おそらく、これらを統率している呪本こそが最初の呪本。──御覧ください」

 

紫式部の筆が宙に振るわれ、鮮やかに呪詛を描く。するとそれに呼応し、ブックドラゴンの頭部が鮮やかに輝き出す

 

「頭脳体を司るものこそがかの呪本。あれらを取りだし、私達三人のキャスターの力を合わせ回収術式を発動させれば──」

 

「辺りの本に気を取られずに済むと言うことか。芋づる式と言うやつだ!だが難点はある、ヤツもそれは把握済みで絶えず核の位置を変えているだろう、確保するのは至難の技だぞ!」

 

かの本は強度と柔軟性を兼ね備え、変幻自在な素材が如く変化してみせる。それらを肉とし、骨や皮膚とし心臓たる呪本を護っているのだ。それを貫いて呪本を回収するのは尋常ではなく、同時に現実的ではない。

 

【あのオープンゲットさえなんとか出来れば、私があの本をブッこ抜いて皆にパスできるのに!関節も無いんじゃ極められないし打撃も暖簾には効かないし・・・!】

 

どうすれば・・・そう唸る一同に、ふとキアラが過去に至るある出来事を思い出す

 

「・・・そう言えば。昔本を読んでいるとき、誤って水をこぼしてしまった事があります。慌てて乾かしましたが、それは元通りにはならずガビガビになってしまい・・・」

 

キアラの漠然と行われし昔話。アンデルセンが諌める前に紫式部が顔を上げ頷く

 

「──!はい、いくら姿を変えようともあれは本、燃やすことや水には弱い筈です!大きさと偉容にて、本と言う特性を見ておりませんでした・・・!」

 

媒体は紙である。有効なのは焚く火か、水にて洗い流すか。それを行えば活路は開ける。肉を焼き払うか、柔軟性を奪い去るか。今回は被害を鑑み、濡らすと言う手段に方針を定める。

 

【よし!じゃあ蘭くんちゃんが周りの本を抉って削いで、私があの本を抉り出す!そしたらキャスターの皆で回収して!──えっと、どうやって濡らそう・・・!】

 

屋内ゆえ、濡らすと言うならスプリンクラーだが。この書庫には万が一も備え水気のあるものは用意されていない。落ち度ではない、ここで戦闘に至る事こそが異例なのだ。水が、それも巨大な集合体を濡らし尽くす量の水が要る。活路の前に手段が見当たらぬその時──

 

「私に任せなさい。ちょっと荒業だけど、必ずアイツを水浸しにできるわ」

 

名乗り出たのは──虞美人であった。活路がある、勝機がある。そう信じた覚悟の瞳。同時に・・・決死の覚悟を魅せる眼差しにてリッカを見つめる

 

【パイセン・・・】

 

「大丈夫よ。私が死ぬはず無いんだから。ちょっとは体を張らせなさい。先輩ってそういうものでしょ?」

 

「マスター、それは・・・!」

 

それは荒業だ。虞美人にのみ許された、地球環境と核を同じくするからこそ叶う再三言われてきた『自爆』・・・否、呪詛を使用した『天候操作』である。いつもなら形振り構わず最大出力で爆散するが、今の彼女にはその暴虐を抑える理由がある、自らを破棄しない理由がある

 

「──構わん。肝心要にて怖じ気つく恥を曝す様な醜態を晒す気はない。終生にて漸く出来た安息の地、そして・・・」

 

【──】

 

「・・・今を生きる定命の後輩に、カッコいい所を先達として見せてあげなくちゃ。・・・そんな顔しないの、リッカ」

 

そう。大丈夫だ。犠牲の内には入らない。何故ならば自分が──

 

「──私が、死ぬわけないでしょ?」

 

リッカの頭に手を置くぐっちゃん。──そう。触れあって、交流を兼ねて、一つだけ、彼女には悔いが生まれていたのだ。

 

人類はどうでもいい、文明も社会も、未来も人理も別にどうでも良かった。だが、たった一つだけ、悠久には些細な、それでいて先輩としての心残り

 

【・・・──勿論!分かってるよ、パイセン!】

 

「よろしい。──しくじるんじゃないわよ!私の後輩なんだから!」

 

【勿論!『被害を気にせずやって』!絶対、絶対大丈夫だから!】

 

・・・──人理焼却の時(後輩が大変な時)に、先輩としての自分はなにもしてやれなかった。そんな、先輩としての細やかな見栄と労りが・・・

 

「蘭!最早語らぬ、我が同胞として──心命を賭せ!!」

 

「はっ──!!」

 

今、こうして。彼女を『誰かの為に』奔走させるのだ──

 




キアラ「では、参りましょうか。皆様、御奮闘なさいませ!──渇!

キアラが印を組み、丹田に力を込めた渇波が空気を揺るがす。ビリビリと揺らぐ空間に共振し、振動にて動きが止められる

アンデルセン「今だ!キアラに合わせろ!」

虞美人「──今を生きる者……我に安らぎを与えた大恩を背負わせし者達よ」

虞美人の魔力が暴走寸前まで高められる。自爆ではなく、生存ギリギリの魔力だけを残し、他の総てを出力に変える

「我が返礼!」

歯を食い縛り、今ある形をひたすらに意識し帰属し己を犠牲にせぬと全力を込めて──

「我が安堵!!」

今、一息に解き放つ──!!

「この決意を以て知るがいい!──気迫の発露にて!活路を開け──!!!

真紅の霧が、真紅の雲が、凄まじい衝撃が辺りを吹き飛ばす。──同時に、部屋一帯に降り注ぎしは真っ赤の呪詛たる雨──

『・・・──!!』

絶え間無く降り注ぐ雨が、ブックドラゴンを叩きつける。柔軟性を、紙の利点を削ぎ落とし、呪詛にまみれさせる

蘭「我がマスター、その決意に応えます!──いざ!!」

完全に動きを止められ、停止した一瞬にて瞬時に間合いを詰め、瞬速の剣技にて紫式部が用意した共鳴に従い、剣技にて抉り落とし削ぎ落とし──

【ぜぇえぇえやぁああぁあぁあぁ!!!】

飛翔したリッカが、こめかみに拳を叩き込み、右腕を捩じ込み呪本に手を伸ばす、ひたすらに核に手を伸ばし、龍の手甲、龍の爪を食い込ませ──

【───殺ったァアァアァッ!!!】

竜から引きずり出した、核たる呪本に向けて──

シェヘラザード「魔力を譲渡します、紫式部さん」

アンデルセン「〆はお前だ!ピリオドを打て!」 

紫式部「はい!──清明さま、お力を・・・!」

祈りを込めて、星を描き回収術式を起こし、呪本を手に収め──

「──呪本!回収致しました!!」

全てに、決着がつく。回収を果たし、崩れ行くブックドラゴンの中・・・

ぐっちゃん「・・・久々にやったわ、これ。やっぱり痛いわ・・・」

落ちてきたぐっちゃんを、抱き留めるリッカ。全霊を尽くした先輩を、確かに受け止める

リッカ【──お疲れさま、ぐっちゃん。あと──】

あれほどの爆発で、キャスター陣営に傷ひとつ、水滴ひとつつけられなかった理由を──

マシュ「──私を呼びましたか!先輩!」

リッカ【別に呼んでないよ。──呼んでなくても来たじゃない?】

マシュ「勿論です!私は──先輩だけの後輩なのですから!」

後輩が、護ってくれていると。リッカは最初から信じていたのである。

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