人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン「いやー、ラクダプレゼンはお腹いっぱいだよ・・・あんまり実利は無いけどシバがやりたいならなぁ・・・うーん・・・」

オルガマリー「気付いたら全てが終わっている系の犯罪が彼は好みなのね、なるほど・・・あら、天草さん。此処で何を?」

天草「おや、お疲れ様です。オペレート訓練ですよ。試しにやってみたいと思いましてね」

オルガマリー「聖杯の場所は秘密ですよ」

「僕はそもそも知らないんだけどね!レオナルドが教えてくれないんだチキショウ!」

天草「正解です。知らないということは最高のセキュリティですからね。そのままのゆるふわでいてください」

ロマン「バカにされてる!?」

天草「仕方ありません、地道に行きましょう。まずは聖杯を拾ってくると噂の鮮血魔嬢の増殖を試みますか・・・」

オルガマリー(聖杯さえ絡まなければ、まぁいい人なのに・・・)


楽園の手紙

「皆様、大変お疲れさまでした。『最初の呪本』・・・ここに、確かに回収致しました。皆様の協力にて、確かに・・・」

 

紫式部の言葉通り、そこには確かに一冊の本が収められていた。騒動の元凶たる本は確かに調伏され、ここに波乱のブックハントは幕を閉じる。カルデア文化の部(数名除く)の奇妙な共同作戦は、無事成功にて幕を下ろしたのだ

 

『魔力量、奪われた魔力と一致致します。やぁ、無事に終わった様で何よりですね。聖杯の欠片でも欲しかった所ですが、今は皆様の無事を安堵すると致しましょう』

 

「はい!後方も前方も完璧な後輩の活躍は如何でしたか!頼りたくなりましたか!マシュっとしたくなりましたか先輩!押し倒してもらって、添い寝してもらっても構わないんですよ先輩!」

 

「パイセン、私の肝心な時にしか役に立たない後輩に何か一言」

 

「人間らしくなったわね、ホント。ま、ちぎれんばかりに振ってる尻尾が見えるのは気のせいにしておくわ」

 

「ぐっちゃんさんも、守護の際には是非ご一報を!シールダー・キャプテンNSBはあなたの親愛なるメイン盾ですので!」

 

「アッセンブルしそう」

 

素直で元気で、なんやかんやで構いたくなる愛されポジティブ後輩に、カチカチな堅さのマシュマロ後輩の漫才にぐっちゃんは呆れながら笑う。その笑いは嘲笑ではない。気安い友愛のものだ。

 

「終わったか。即興にして暇潰しにしては重厚な一幕だった。御苦労キアラ、やはりお前と俺は相性がいいようだな」

 

同時にキアラに紅茶を入れさせているアンデルセンが即興ソファにどっかりと座り込む。そして放たれた爆弾発言に、キアラが唐突にあたふたと慌て弁明するという、彼女の墜ちた一面を知るものあらば驚天動地のやりとりにて、騒動の終了を雄弁に告げる

 

「えっ!?いえその、申し訳ないのですが私は生来純潔の誓いを立てている修行中の身でして、申し出は嬉しいのですが、その・・・」

 

「何を勘違いしている。主従の話だ!作家がバフを撒き散らしマスターが暴れまわる!リッカやお前は是非俺が取り立てたいマスタートップ2に入る型破りだからな!」

 

「まぁ・・・それは光栄です。お任せください。いつか世を惑わす聖杯あらば、必ずやアンデルセン様と聖杯戦争を勝ち抜きましょう。人が歩み、人が織り成す歴史の紋様、王ならざる者の手に全能は早すぎますからね。ズルはダメ、ですわ。うふふっ」

 

 

シェヘラザードと紫式部も、同時に互いを労り御礼合戦を繰り返している。腰が低いものならではの愉快な光景だ。絶世の美女同士がやる故絵面は壮観である

 

「大変お疲れさまでした、紫式部様。これにて図書館もまた再開が叶いましょう。もっともっと、沢山の方に楽園の資料を知っていただける機会を増やせたら、よろしいと思います(ぺこり)」

 

「そちらこそ、大変お疲れさまでした(ぺこり)そして何より、皆様のお力添えに心から感謝致します。──大切な、大切なお手紙も、確かに此処に」

 

紫式部が手にしている手紙、それは如何なる技術か音声認識と指紋認識が施されし黄金の便箋であった。金糸細工による精緻な飾り付けに、珍妙な七色の獣のイラストが書かれた、とんでもなく高貴で豪奢なものだと一目で理解が及ぶもの──

 

「これが、私が楽園に至った際に最初に賜った命・・・確かに、この手に」

 

「うわっ、すっごい綺麗な手紙!角度で色が変わるよ、すごーい!」

 

「フン、少しはマメな所があるか。──まぁいい、誰が誰に出したかなどそれはプライバシーの問題だ。よし、さっさと解散しろお前達!一清掃終えた後にだがな!」

 

「なにその俺は手伝わない発言!?アンタもしっかり手伝いなさいよね!ワンフォーオールとかあるんでしょ!」

 

「まぁまぁ、作家はペンより重いものは持てないと申すではありませんか。ここは私とマスターで、二人分働きましょう!」

 

「うぬぬ・・・」

 

「パーイーセン!パーイーセン!いいとこ見っせて、パーイーセン!」

 

「ぐっちゃん先輩のたぐいまれなる清掃能力を見てみたいです!人間など及びもつかないその力を此処に!」

 

「そ、そう?しょうがないわねぇ・・・!よし!さっさと終わらせてゴロゴロするわよ!あ、当然アンタも手伝いなさいよ。──私の後輩でしょ?アンタは」

 

「もっちろん!項羽様に自慢の先輩って報告するね!」

 

「フフン。持つべきものは、素直な後輩ね」

 

「先輩の後輩の座は渡しませんからね!」

 

「どうやったって奪えないし渡されたって困るわよ!」

 

「・・・──」

 

『・・・今回、自分がかけた迷惑は多彩にて甚大、楽園に招かれたサーヴァントとしては致命的な失態だ。此度の騒動は、自分の力だけで解決するものだったであろう

 

だが・・・不謹慎だが、この騒動に立ち向かうことができて、自分は良かったと思う。何故ならこうして、楽園の輝かしさや素晴らしさ、助け合い手を取り合う『物語』のような奇跡を目の当たりにすることが出来たのだから。自分自身も、その輝きに寄り添い、皆と一つとした目的に邁進することが出来た。

 

(自分はきっと、このような方々が集う場所だから、招かれたいと強く願ったのやも知れません)

 

自らを第一にする人の心が、誰かの心を感じ、支え、揺さぶる。そして繋がった心が、様々な奇跡を起こし困難を乗り越える。誰もが夢中になって読み進め、本をたたんだ後ですら爽快感を感じるほどの問答無用の痛快娯楽。魂を揺さぶる、豪華絢爛な英雄譚にして最新の叙事詩

 

それにこうして、こんな形で触れあう事が出来た。楽園の皆様と、細やかなれど絆を紡ぐことが叶った。それはきっと、自分にとってのこの上ない贈り物にして、手にすることが出来た報酬

 

(・・・当世では物語は記さず、読むのみと決めていましたが・・・いつか、皆様としたためるのも良いのかもしれません)

 

いつか、誰もにこの物語を知ってほしいと気持ちが昂った時に、作家の皆様やマスター達に声をかけ、大合作として作るのもよいのかもしれない

 

読んだだけで、見ただけで人を愉快な気持ちにさせるこの物語・・・最新の『ぎるがめしゅ~ごぉじゃす叙事詩~』なる命題の物語を──』

 

「それはいい。その際には声をかけるがいい。天才作家、紫式部の監修ならば凡作にはなり得ないだろう。ゴーストライターとしては贅沢に過ぎるがな!」

 

「えぇ、その際の語りは是非私にお任せください。感動にてショック死しないギリギリの全力にて、語らせていただきます」

 

「えぇ、勿論です。皆様是非・・・、──あ、あれ!?」

 

まるで心を見透かされたような物言いにひたすら面食らいあわあわしだす紫式部。彼女の心は、確かに皆に伝わった。何故ならば──

 

「式部さん、式部さん!出てるよ!流しっぱだよ!か、い、せ、つ!」

 

「──!?い、いつから・・・!?いつから流れていましたか!?」

 

「『・・・今回』の辺りからですね!強いて言うなら・・・」

 

「最初からよ、最初から。アレね、ポエミーなのね、アンタって」

 

「あ、あわわ・・・あわあわ・・・あわわわわわぁ~!」

 

「あっ!式部さんが本棚に突撃を!奇行種かな!?」

 

「そっとしておけ。作家は頭にネタの泉があり、そこから創作を作り出す。それを読まれたならばまぁ、死ぬしかあるまいよ。俺以外はな」

 

『最後の最期で、大爆発芸で自らの心の内をさらけ出す事が出来た紫式部なのであった!』

 

「・・・私が今まで生きてきた中で、一番悪辣な術かもしれないわ・・・」




そして、ホワイトデーの準備は無事再開され、男達の感謝の思いは、お返しとしてつつがなく


図書館も従来の繁盛を見せ、紫式部は無事に楽園の一員として受け入れられた。──余談だが、麗しの作家令嬢の隣には、手伝いとして白衣と青髪の少年に、白と桃色のカルデア職員の服を着た美女、オリエンタルな褐色美女が侍っているらしい

楽園は万事、問題なく回り続ける。──そして


紫式部「・・・大変、大変お待たせいたしました」

?「フッ、良い。此度の騒動、我を存分に楽しませた。やはり一石を投ずるならば初々しき反応を醍醐味とせねば見応えなどあるまい?」

「はい。皆様との触れ合いにて、貴方が何故人を見続けるのか、歴史を見続けるのか・・・理解が、及んだ気がします。・・・それはともかく、心よりの謝罪を。粗相と御無礼、不敬の限り・・・」

「よい、赦す。失態や失敗は起こして当然よ。肝要なのはどう挑むか、どう向き合うかだ。逃げず、抗ったお前の奮闘と克己に免じて不問と処してやるともさ」

「──暖かき恩情、誠に感謝を。では、手紙を・・・他ならぬ、貴方に。添削、そして吟味を終えた状態のままで、鞄に仕舞われていた一通。今こそ、お返しいたします」

「御苦労。・・・フッ。我ながら酔狂だが、これもまた愉快な試みならば挑むが道理。よもや我が直筆などするとは久方ぶりよ」

「・・・招かれておりながら、この不始末。二度とこのような事がないように細心注意いたします。どうか、これからもよろしくお願いいたします」

「うむ、励め。人類史が刻んだ文学の英霊よ、その言の葉に筆、我等を彩り紡ぎ続けるがよい──」

「はい。・・・どうか、無事に届けられますように──」



・・・そして。ホワイトデーの最中か、始まりか終わりかの些細な箇所に

《エア、受け取れ》

──これは・・・手紙?

《読むもよし、読まぬも良し。・・・まぁ、なんだ。感想や所感は伝えずともよい。胸の内にしまっておけ。──そら、アレだ。アレであろう》

フォウ(聴こえないな、もっとでかい声で言えよ!もっと熱くなれよ!)

《えぇい、読めば解る!よいな、やはり読め!そして差出人の名前を見て戦くがいい!感想は要らぬぞ!よいな!》

──はい!確かにお受取り致しました!ギル!

普段には絶対に見せない、彼女だけが知る王の表情と共に。姫は、かけがえのない御返しを受け取ったという──

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