人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「マシュも色んな人にチョコ配ってたし、今ごろ御返しを受け取ってる頃だよね。大丈夫かな、きちんと受け取れてるかな」

じゃんぬ「大丈夫よ。レオニダスからは貰えるわ。私教えたもの。マシュマロの形とか作り方。メモとってたわよ」

リッカ「あ、納得!レオニダスさんからかぁ!どんなマシュマロになるんだろ!」

「チョコマシュマロにしておきなさいとは言ったけど・・・どんなアレンジを加えたのかしらね。若干興味あるわね・・・」


自室

リッカ「ただいまー」

『お裾分けです!私と一緒に励みましょう!』

『アイアン・マシュマロ×10』

「えぇ・・・?」


アビシャグに捧ぐ愛

「・・・・・・」

 

オルガマリーは見られていた──

 

楽園を歩く中、所長たる存在オルガマリー・アニムスフィアは先程から感じる視線の対処に追われていた。確かに自分は見られており、何か、アクションを起こすことを待っているといった様子の静観、傍観を受けているとはっきりと見てとっているのである。

 

(何かしら・・・私が気付いているのくらい気付いて然るべきなのだと思うけれど・・・)

 

その視線の主には覚えがある。というか、よく知っている。彼──それは自分に経済や王政その他もろもろのビジネス力を教えてくれた師匠の一人であり、自分を育ててくれた──

 

「・・・なんて事だろう。そういうパターンは想定してなかったな」

 

ダビデ王である。王としては振る舞わず、気楽な羊飼いとして楽園にて牧場経営に勤しむ人類最高クラスの偉人であり、同時に『ダビデの様な人になれ、ダビデの様な男にはなるな』と釘を刺される類いのアレな逸話を保有するダビデその人が、自分を見つめてやがて首を振る

 

「やれやれ、奥ゆかしく覇気が無いのも困り者だ。仕方ない、僕の方から助け船を出すとしようかな」

 

そう言って軽快な足取りで、物陰から歩みより近付いてくるダビデ。なんとなく無視や邪険には出来ず、あくまで私は気付いていませんでしたといった体を装い、そして気付いていることに気付いているダビデはそのままペースを崩さずに。お互いは爽やかに初邂逅し笑いながら挨拶を交わす

 

「やぁアビシャグ。こんにちは。元気そうで何よりだ」

 

「アビシャグではありませんオルガマリーです。ダビデ王、本日もいいお日柄で」

 

気楽と言えど彼は師であり、確かに偉大なりし王である。気楽と言えど完全に砕けていい相手ではない事を承知し理性ある対応を忘れない。礼節が身に付いているね!とダビデはオルガマリーの礼節対応な為、それだけで上機嫌になるのである

 

「そう畏まらなくていいとも。今日は素晴らしい日だ。バレンタインから連なる商業的かつシステマチックなワンセット。実に趣味が合う」

 

バレンタイン、そしてそのお返し。彼はその在り方を実に好ましいと考えていると言う。発祥は地中海であり、極東ではチョコレート大販売セールとして発展、根付いた催しとして彼はそれを好ましく思っているのだ。相手に感謝を示す所感に、経済を潤す実益。全く無駄の無い催しとして。ゴリアテの首飛ばしにゴリアテ自身の剣を使用したダビデならではの所感である

 

「地中海、極東に南米。言うなれば世界規模で商業的価値が上昇するイベントですね。確かにダビデさんが好きそうなタイプの欲張りイベントですね」

 

「そうなんだアビシャグ。僕は認めてるよ。バレンタイン。いい、かなりいい」

 

それは感謝を伝える日・・・だけでなく。幅広く想いを伝える日でもあるのだから否定する気は無いとダビデは言う。基本的に神様は平伏してなすがままな存在を好むので、誰かに何かを伝える心を育んでおけば最後の審判の日に困らずに済むと思うな、などとダビデは茶化す。実に無駄がないシステマチックさがかの王的に好印象だと言う

 

「もっと言えば、週に一度くらいあってもいいんじゃないかと思うけどね。ほら、ソロモン・アーキマン。あいつ端から見てても奥手で消極的だろ?あの麗しきシバの女王をやきもきさせるとか男としてどうかと思うときがあるよ。あったんだよね」

 

「あなたに男の在り方を説かれるなんて死んでもごめんだとロマニは言ってましたけど・・・」

 

「ははは、あいつはそういう事を言うよね。だけど心配しないでほしい。息子が極上の美女を貰うとか明日から最前線行き案件で合法的に僕が独り身の妻を慰めるシチュエーションだけど、彼女にそんな事をするつもりはないよ。残念だけど、身長が好みじゃないからね」

 

可愛らしければ、愛らしければ大体アビシャグ。だがそれには例外がある。それは自分より高身長であることだ。巨人ゴリアテとの戦いで深くトラウマを刻まれたダビデは、自分より一センチでも身長が高い相手はノー・アビシャグとしてアウト判定をもたらすのである。ゴリアテとの相手は二度とごめんだと言うほどに、辛い戦いだったようだ

 

「アイツが定期的に愛を囁く日としてソロモンの日なる休日を作るべきだと僕は思うけど、まぁ何事も慎みは必要だ。商売にも契約にも、戦闘にも愛情にもね」

 

まぁそんな訳で!と手を叩き、オルガマリーの手を取り爽やかなスマイルを振り撒く。数多の妻を獲得してきた必殺のムーブメントによるペース掌握の後・・・

 

「そういう訳で、思慮深い僕は返礼を忘れない。バレンタインにチョコレートをくれたろう?そのお返しだ」

 

そうして包みを渡し、開けてみてくれるかい?とオルガマリーに促す。ダビデ王からの返礼を促されるままに拝見すると・・・

 

「・・・──」

 

凄い、や素晴らしい・・・とかではなく、ただ絶句した。言葉を喪い、二の句が告げられなくなっていたと言うのが正しい。

 

蓋を開ければ、ダビデの顔がずらりとならんでいた。今目の前にいる美青年ではなく、ダビデ像の方のダビデ顔である。それらを象ったお菓子が、箱の中から自分を見つめている。たくさんのダビデが見つめているのだ。ダビデの顔のお菓子が

 

「なんと。感謝のしすぎで震えているとは。群からはぐれた子羊のようだ。でも大袈裟に受け止めないでいい。気楽な方が僕も楽だからね。いつも不肖の息子を支えてくれる素敵なアビシャグに、心からの贈り物さ」

 

なんだかんだで彼は弟子たる彼女にプライベートでも感謝しているのである。息子が人間らしくあれたのは、なんだかんだで君の醜態を支えたいと奮起したからだとダビデは言う。お墨付きで、彼女は父に息子をありがとうと告げたのだ。育児放棄したけれど

 

「とはいえ、君がどうしてもアビシャグしたいようなら僕は全然構わないとも。さしあたって誰の目にもつかない個室に向かおうか」

 

「・・・目が笑ってないんですが、ダビデ王」

 

「ははは、いやだなぁ。ははは。──当然さ!だって本気だからネ!!」

 

・・・──この後、謎のミスターダンディが予め頼んでおいたメデューサと治安維持パトロールのヒッポリュテの活躍により、ダビデはフェルグス預かりとなった。

 

そんな親の醜態をロマンに伝えたところ。帰ってきた返答は──

 

「え?僕に父親なんていないよ?」

 

と、目が全く笑っていない魔術王の英断即答であったと言う──

 

 




リッカ「オルガマリーも色んな人にチョコ配ってたし、今ごろ御返しも受け取ってる頃だよね。大丈夫かな、きちんと受け取れてるかな」

じゃんぬ「えぇ・・・?(なんで鉄?と困惑)」


「ダビデさんとすれ違ったんだけど、もう渡したんだって!どんなお菓子なんだろ!興味あるなぁ!」

じゃんぬ「えぇ・・・?(食べられるの?と手に持っている)」


自室

リッカ「ただいまー!」

『いつもお疲れ様。あなたにもあげるわ』

『ダビデの顔菓子×10』

リッカ「えぇ・・・?」

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