人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「え・・・ピアス渡したんですか。自分自身の鎧の一部を?本当ですか?マジですか?」


カルナさん「きっと似合う筈だ。オレはそう信じている」

カーマ「いやそれは私も思いますけど!チョコの御返しにしては重すぎると言うか、リッカさん困惑しちゃうと言いますか・・・!」

(プレゼント吟味とアドバイスを受け持つべきでした・・・!ですが今更どうにもできません・・・!ラーマさん、くれぐれも軽めでお願いいたしますよ・・・!)

アルジュナ「・・・よし、決めたぞカルナ。渡すべきものをだ」

カルナ「それでいい。胸を張って、誇りと共に渡すがいい」

「勿論だ。・・・落胆や失望はさせん。決してな」


ハヌマーンブランドバナナ

「マスター!リッカはいるか!余だ!ラーマだ!少し時間をいただきたいのだが、構わないだろうか!」

 

ホワイトデーの濃密すぎる一日は続く。インドの初手KOパンチに直撃しグロッキーなリッカに、更なるインドの刺客が現れる。インドの有名な叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公にしてコサラの王、ラーマがリッカの下を訪ねたのだ。

 

「む、それはカルナから貰ったピアスだな!よく似合っているぞ、リッカ!やはり君を美しいと感じる者達の目に狂いは無かったと言うことだ!」

 

「ふんぐっ──!!っぐ、ぬぬっ・・・!!」

 

あ、ありがほわぁあぁとなるところをリッカは気合いと根性で粒子昇華を耐え抜く。ホワイトデーとは返される側にも覚悟の準備が必要であると痛感したリッカは、ピアスに懸けて相手の気持ちを受け止める前に消えはすまいと根性にて奮い立つ。決して半端な事はしない。それがリッカの生きざまであるからだ。それにしてもジェットストリームインドはいつまで堪えられるか極めて微妙な処なので御手柔らかに御願いしたいのが正直な処である

 

「む?どうした腹痛か?もし辛いならば秘伝の霊薬を持ってくるが・・・」

 

「い、いいの大丈夫・・・!大丈夫だから・・・!そ、それでラーマ、御用件を伺っても?」

 

そうだそうだ、御用件だった!こほんと咳払いし、ラーマはリッカに懐いていた所感を思うままに告げる。その身体は少年なれど、纏う気風は紛れもなく王のものだ

 

「それでは。──バレンタインデー、余とシータの顔チョコをくれてありがとう。本当に美味しかった!シータも同じ気持ちだ!余は素敵なマスターに恵まれた果報ものだ!」

 

本来なら決して出逢えない呪いを、女神の崇高な犠牲と引き換えに奇跡の再会を成し遂げたラーマ。それだけでも激萌えポイントPPP案件であるのだがそれだけでは飽きたらず、リッカは二人がいつまでも幸せであるようにと想いをこめ、ラマシタチョコを作ったのだ。いつまでも御幸せに、と祝福を込めて

 

「ひいては御機嫌王、シータと仲良くしてくれる英雄姫にも返礼すべきではあるのだが、彼等を召喚し招いてくれたからこそ今の奇跡が、楽園がある。ならば君に真っ先に御礼をすべきだと考えてな!本当にありがとう、マスター!コサラの王として、君に豪華絢爛な贈呈品を用意したい気持ちでいっぱいだ!」

 

「いやいやあのあの、御気遣いなく!チョコに見合ったものでいいんだよラーマ!深く考えないで軽く!軽くでいいの!」

 

円卓の椅子や国や星などといったものを進呈されてしまうような事態は身に余りすぎる光栄なので先んじて断っておくリッカ。皮肉なるかな、特異点で戦うよりよっぽど苦戦し必死なのである。善意に弱い龍とは、こういうものなのだ

 

「ふっふっふっ。リッカがそういう事は実は予想済みだ。王として、贈り物の重さ軽さはきちんと理解しているとも。心配しないでほしい!」

 

「ふぁ?」

 

その物言いはリッカには意外なものだった。王と言えばとにかくハイパースケール。とにもかくにも自らが絶対の物差しである存在であるのだから仕方ないとリッカは覚悟を決めていたのだが・・・

 

「日頃の礼として渡された品に豪華絢爛な返礼はあまりに重すぎるだろう。受け取る側を疲弊させては元も子も無いからな。そこのとこ、シータにきっちりと説明されたのだ、うん!」

 

「シータちゃん・・・!ありがとう、ありがとう・・・!!」

 

これで恐縮で五体倒置しなくていいんですね!ヤッター!などと喜ぶリッカを満足げに見つめ、ラーマは頷く。これなら、きっと喜んでくれるはずだと確信している様子で何度も頷いているのだ

 

「だから今から渡すものは気楽に受け取ってくれて構わない。本当は僕が持ってくるべきだったのだが、シータがどうしてもと言うのでな。・・・そろそろ来る頃だと思うのだが・・・」

 

そうしてラーマが辺りを見渡そうとした、その時であった。がらがら、と、なんだか台車を運ぶような音が響き渡り・・・

 

「ラーマさま~、マスタ~。お待たせしました~」

 

「おぉ!来たかシータ!見てくれ、あれが余とシータの返礼、大好物だ!」

 

白のワンピースに麦わら帽子の現代風シータが引いてきた台車に積まれたもの、それは黄色く房として実った、おやつにはいるかどうか永遠の議論の的である・・・

 

「バナナ!バナ、バナナ!」

 

「うむ、そうだ!ハヌマーンブランドバナナだ!まさに、そんなバナナ!だな!」

 

「ハヌマーンの皆が選び、厳選してくれたバナナです。とってもとっても美味しいんですよ。マスターや、マシュさん。カルデアの皆さんとお召し上がりください」

 

たくさんのバナナが手渡される。ストラップにはシータの意匠が施されておりとても可愛らしい。いつかラーマとシータが再会した暁に、とハヌマーン達が集めていたバナナであり、込められた想いはきっとリッカに相応しいと、二人で話し合って決めたものなのである

 

「こ・・・こういうのでいいんだよ、こういうので・・・!」

 

会うたび会うたび国宝クラスのものを受け取るリッカに渡されたバナナ。これはまさに理想的な釣り合いの重さに相違ない。シータちゃんありがとう。こんな気の利いた軽さのバナナをくれる王様はラーマ君だけだよとよくわからない称賛と賛美を口にせずにはいられないリッカであった。

 

「ハヌマーン推薦だ、味は保証付きだぞ!冷凍庫で凍らせて、シャーベット風でもいい!」

 

「お祭りの屋台でラーマと食べた、チョコバナナも美味しいんですよ。是非とも食べてみてください。・・・一緒に食べますか?」

 

「うん!バナナ食べりゅ!素敵で気軽なお返し、ありがとう!二人とも!」

 

「喜んでもらえて何よりだ、マスター!よし、では早速食して見るとしよう!行くぞ!二人とも!」

 

「「おー!」」

 

こうしてリッカは、一息つけるバナナパーティーにてのんびりな一幕を過ごすことが出来たのである。ラーマとシータの気遣いと、仲睦まじい様子には、バナナの美味しさも相俟って思わず感極まり涙を浮かべてしまうほどに得難く素晴らしいと感じるリッカであった──

 

 




リッカ「あー!バナナ美味しかったー!ご馳走さま!二つの意味で!ラーマとシータに祝福あれ!ありがとう!!」

バナナを食べ、とってもご満悦なリッカ。よーし、これからもヘビープレッシャープレゼントに堪えるぞー!と気を入れ直す

(インドの皆がぶっ飛んでる訳じゃないんだ。こうして等身大の御返しだって出来る!警戒しすぎたかも!)

そんな風に考えるリッカに、声をかける者が一人──

アルジュナ「・・・もし。わがマスター。少し御時間、よろしいですか?」

リッカ「あ!アルジュナだ!やほー、いいよー!」

──その数分後、リッカは思い出した。インド神話のスケールの重さを

授かりの英雄に、彼自身に施しを与え、彼が導きだした答えの意味を──

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