──捕捉。
ギリシャ神話の英雄、疾風の担い手、アルテミスの奉仕者、アルゴナイタイの勇者、魔獣を狩った弓兵、孤高の獣
アタランテ。
『両足を無くした程度で、私は止められない』
──捕捉
あらゆる圧制を跳ね除ける巨駆の男、笑いながら破壊する反逆の徒、闘技場にて無敵を誇った不退転の怪物
スパルタクス。
『わたしと、いっしょに、こい』
──捕捉。
フランケンシュタイン博士の偉大なる遺産、雷と共に蘇りし少女、継ぎ接ぎの体、憤怒の心を宿した人形
フランケンシュタイン。
三騎の霊基情報を確立。終わらない、終わらせない。終わってたまるものか。
~
ギル《エア、大聖杯の占有率はどうなっているか。あの邪竜めの支配下には未だあるであろうが、順調では決してあるまい》
──はい。少しずつですが相手側に奪取されており、止まる気配がありません。どうやら霊基情報が確定する度に少しずつ・・・
(向こうが陣地を広げてるって?大変じゃないか!何だか対策した方がいいんじゃないかな?)
《よい、捨て置け。むしろ我等の全霊はシェアを奪われてからが本番と心得よ。神性を獲得した今、戦いに愉悦を見出だす方が難儀であるのだ。愉しみの切り口を変えねばな》
──聖杯大戦といえば陣営の戦い。ワタシ達オリジナルの陣営など、出来たら痛快ではないでしょうか!
《然り。──フッ、せいぜい日の目を見ぬ様に足掻けよ、邪竜。我等にそれをさせたら最後、戦いが成立すると思わぬ事だ──!》
フォウ(さーてと、プレシャスパワー伝授の準備しとこ!楽しみだなぁ、キュアリッカになるのかなぁ?)
──・・・それにしても、ビックリしました。スパルタクスさん。まさか・・・
~
『圧制の究極なる王よ。──君達は、最後である』
~
──覚えていて、くれたんですね・・・あの時の、約束・・・
《フッ、懐かしいものよ。よもや座にすら刻まれていたとはな。やはり対話は最高の武器よな、エア?》
──はい!マスターの意向に添えて、良かったです!
フォウ(スパルタクスはグランドルート保持サーヴァントだった・・・?)
「それでは、手を合わせて。せーの」
「「いただきまーす!」」
リッカの部屋・・・といっても、王の超絶改築によりVIPルーム並に広くなった部屋の観点ではあるが。其処でリッカ、シッダールタ、そしてジークが食卓を囲み挨拶を行う。全員でご飯を食べようとシッダールタが提案し、料理をジークが作ってみたのだ。リッカの故郷たる日本の和食。ご飯に鮭、卵に味噌汁といった簡素ながら定番のメニューだ
「やっぱりご飯に鮭は鉄板の組み合わせだよねぇ!日本女子の胃袋に染み渡ります!ひじょーに身体に染みますねぇ!」
「しかしジーク殿、そのヴィジュアルで料理も出来るとは。実に女子受けが良さそうで何よりですな。可愛い系男子は中々貴重だと存じておりますれば、いやはや有り難し有り難し」
「俺もオトモンとして何かアビリティの一つでも披露しなくちゃと思ってな。味付けはどうだろうか。俺は味覚がアッカリンで、ヴェルタースオリジナル並に甘くてクリーミーじゃないと解らないんだ」
「超贅沢!ううん、ちゃんと美味しいよ!鮭の焼き加減とかチョーイイネ!サイコー!」
「そうか、良かった。大聖杯の管理権限は問題ないようで何よりだ。少しくらいならまぁ、神や仏のどちらかは許してくれるだろう」
「えぇ問題はありませんな。施しにケチをつけるほど狭量ではありますまい。聖杯クッキングとはまた新しい・・・」
様々な事情があり、彼女らは真っ当な食卓を囲めなかった経験がある者達。その穏やかな団欒の有り難みを噛み締めながら箸を進める。そして話題は自然とリッカに集まる。彼女が歩んできた旅路、ゴージャスなる軌跡に興味が集まり重なるのだ
「壮絶な人生だ・・・。だが、君が英雄王を召喚した事により、この世界にパラダイムシフトが起きたんだな。本当に良かった」
「心を通わせた母上との死合、怨念となりし肉親との決別・・・凄惨な出来事がありながら、痛快無比な旅路であれたのは。あの王と姫が全ての鬱フラグをクラッシュしてくださっていたからなのですな。いやはやなんとも。奇跡というのは皆様にこそ相応しき」
「大袈裟だよもぉ~!でも私達の旅路はこれからだよ!いつか私達、星を飛び出して宇宙に行くんだから!地球を脅かす脅威を全部片付けた後に、ね!」
そう。リッカの旅路は痛快なれど容易でも安易でもなかった。王と姫が切り拓いたのが黄金の活路なら、リッカが歩みしは暗澹なる闇から光へと走る道筋だ。笑顔を浮かべるばかりの出来事では無かったのは、自分の生まれがちょっと特殊だからと彼女は笑う。自分はちょっとだけ、皆より苦労してるのかな?と思った事は何度かあると。でも、それでも凄く楽しい人生であり自分だけの生き方が出来ているから満足し納得しているともリッカは朗らかに告げるのだ
「二人も良かったら来なよ、楽園!すっごく楽しいよ!冗談抜きで、人間があったらいいなと考えるもの全部あるから!真祖だって永久安住の地にするくらい!もうスゴいんだから!」
「あぁ、そうだな。待ち合わせが終わったら、是非そちらに遊びに行こう。些か・・・かなり・・・いや結構時間がかかるかもだが」
「そうですなぁ。地上の涅槃だというなら脚を運びぐうたらするも悪くは無し。──二人を見守る、と言うのも王に相談すれば如何様にも・・・」
そう、シッダールタとジークがリッカの言葉に頷いたその時だった。中庭の方面にて魔力の放出が散見される。攻撃性を孕むもの・・・決して穏やかではない雰囲気の魔力だ。
「何者かが攻撃を仕掛けようとしている!何にだろうか?」
「朝の鍛練とかじゃなくて?」
「それにしてみては随分と剣呑ですな。ともあれ目の当たりにしてみましょうぞ。あ、食器は私が片しましょう」
慌てて急行する三人。穏やかな時間は少なくはあれど、今度こそ三人の誰かが欠けると言うことは起こり得ないのが救いである事には間違い無いのであった──
~
「ウゥウゥ・・・ウゥウゥ!!」
『・・・・・・』
三人が見た光景。それは花畑の中央に陣取るジークの本体に、フランがぷんすこと威嚇している微笑ましいようなそうでないような妙な光景であった。一体何事か・・・と顔を見合わせるリッカとジークに、フランの話を聞いたシッダールタが真意を告げる
「花畑は自分のもの、きょじゅーけんを主張すると告げておりますな。どうやら御気に入りの場所としたようで」
「あ!対話チャンス先んじられた!解るんだシッダールタ君!」
「解りますともぉ。動物達に悟りの説法を練習した逸話は伊達ではありませぬ。ジーク殿、少しばかり移動なさって差し上げてはいかがか?」
「OK牧場。歪みねぇスライドするとしよう」
邪竜に意識を動かし、身体を持ち上げズシンズシンと隅に寄る邪竜を見て満足げに頷くフラン。改築で大きくはなったが、真ん中は譲れないようである
「ふむ。そう考えると竜は圧制──?」
「ノーです!ノー圧制!ノーウォーモンガー!」
庭園にて鎮座していた筋肉、スパルタクス。圧制の気を感じとりむくりと起き上がり邪竜をじっと見つめている。笑顔で。リッカの嘆願により、笑みを絶さぬままに哲学に更ける
「圧制、圧制ではない。難問である。しかし私は戦うためにこの地に降り立ち、打倒するために此処にいる。かの圧制の極致、英雄王は世界の全ての圧制を滅ぼしてから挑むとして・・・してみるとやはり邪竜こそが圧制の象徴では?」
「ウー、ウ」
「・・・おとなりさんのトラブルであり圧制ではない?ならば、私は待とう。いずれ圧制がやってくる。その時私は動きだし凱歌を歌うのみである。具体的にはこの花畑で待つことにしよう。
「ウゥウ!?」
「どうどう!フランちゃんどうどう!」
せっかくどかしフリーになった花畑の中央に筋肉、鎮座。大の字にてイビキをかき始め囁くような寝言を放ち始めるスパルタクスに雷撃かまそうとするフランをリッカがギリギリでなだめすかし安定させる
「さぁ圧制者よ・・・!汝らの栄光が潰え我等虐げられし者達の咆哮が響き渡る時が来たぞ・・・!!」
「これ寝言?これ寝言なの?」
「ただし黄金なりし王は最後である・・・私ならざる私が、そう誓った故に・・・契約違反は圧制・・・zzZZ」
「流石は理性と蜂起、反乱の英雄。どこまでも律儀ですなぁ。いやはや助かり申した。笑えない爆発オチとならず本当に」
「チョコレートは圧制」
「起きてるの!?やっぱり起きてるのスパさん!?」
「ウゥウゥ~!」
なんでもいいから静かにしてほしい・・・!フランの言葉なき叫び、虚ろなる庭園エンジョイ者の嘆きは空しく天に消えていくのみでありましたとさ──
アキレウス「・・・・・・」
アタランテ「何だ、アキレウスとやら。私の人相に何かを見ているのか?」
「いや。親父が言ってたアタランテは、アンタで間違いねぇよな?」
「あぁ、そういえばペーレウスの息子であったな?私がレスリングでぶん投げた男ならペーレウスで間違いない」
ケイローン「アタランテ、申し訳ありませんが共に罠の作成を。森の仕掛けなら狩人なるあなたが適任でしょう」
アタランテ「心得た。・・・しかし災難だなアキレウス。相手は全員神性持ち。その優位性が発揮されないとは」
アキレウス「ハッ、嘗めないでくれよな。カカトをぶち抜かれ心臓に矢を穿たれようが敵軍を道連れに暴れまわった最期は伊達じゃねぇぜ。カカトを射抜かれてからが本番も言い過ぎじゃねぇ!」
アタランテ「弱点とは?」
ケイローン「それは素晴らしい。ではカカトに矢を刺したまま戦いますか?火事場の馬鹿力が常時出せるなら更に無敵でしょう」
アキレウス「すみません言い過ぎでした!最速の韋駄天でいさせてください!!」
アタランテ「アキレウスと言えば・・・あぁ。敵に出た私の死体を引きずり回すなよ?」
アキレウス「思い出すのよりによってそれ!?しねえよ!あれやるなら間違いなくクラスはバサカだからな!大分アホな事やったなとは思ってるからな!」
アタランテ「ふふ、冗談だ。・・・聖杯大戦では味方同士だったと聞く。私達はこうして、くだらぬ事を言い合っていたんだろうな」
アキレウス「せやな。──やべ、ジークのが移った。俺としても一度はアンタに会ってみたかった。親父がよく話してくれたしな」
アタランテ「・・・止めろ、なんか照れる」
ケイローン「若いと言うのは、良いものですね・・・」
アヴィケブロン「サーヴァントには年齢関係無いのでは?」
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