人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『それでも、俺は彼に。捧げるべき命がある』


──捕捉。

不死身の肉体、頑強な剣の要塞。竜殺し、あらゆる希望を背負い続けた英雄

ジークフリート

『だから、オレはもういいこの解釈が間違っていたって構わない。勘違いだって構わない。誰よりオレが納得した。だから、もういい』

──捕捉。

円卓の騎士、叛逆者、アーサー王伝説を終わらせるもの、赤雷の英雄、王位簒奪者、騎士王の呪い

モードレッド


『あぁ!君も、頑張れ!』

──捕捉

シャルルマーニュ伝説、トラブル製造業者、理性蒸発者、善性に寄り添う者、奇跡の騎士

アストルフォ。

残り三騎。もう少し、もう少しで。




──楽しかった。

どんなアニメが好きか。どんなキャラが好きか。どんなタイプが好きか。どんな性癖が好きか。

百年、千年、あるいは一万年。人類が踏破することを信じて待つ。そんな一人きりの待ち合わせに、彼は付き合ってくれた

ぼんやりと星空を眺め。華に包まれながら眠り、時おりやってきた差し入れを、大聖杯を利用し閲覧したりして

彼は本来、人が持つあらゆる悩みや苦しみから解脱し、世界を救う資格を得たと大聖杯に認定されながらも、座に刻まれる事を選ばず不定形の幽霊で在り続け、自分に寄り添ってくれた。

『そうですか、待ち人を。ならば一人では寂しいでしょう。拙者が話し相手となりましょうぞ』

・・・自分の後悔を、彼は見抜いてくれたのだろう。誰かの話を、一人になってしまう前に聞きたかったと。そんな、他愛の無い願いを

大聖杯は俺の持ち物ではない。だから、奪われないように護るのは当然だ。──だが、それだけではない

大聖杯を通じて、彼が教えてくれた文化に触れた時間、話した時間。『親友』と過ごした思い出が、大聖杯には詰まっている

だから──取り戻したいと。俺は願っている

そして同時に・・・彼が悟りに至らない理由、正確には己を幽霊足らしめている理由。・・・生の答えたる彼女を見守り続けていられることが・・・

とても、羨ましいと思った。


竜の陣営

「ほう、随分と大所帯になったものよ。ゴージャスたる我と肩を並べる大戦に招かれし英霊ども・・・。野良で見繕ったにしては上出来な顔触れよ。良き縁に恵まれたな、マスター?」

 

ミレニア城塞に帰還の後、朝風呂を終わらせバスローブに身を包みし黄金の英雄王がリッカの肩に手を起き労う。いよいよもって大多数となった陣営の戦力。元凶に刃を向けるには充分な戦力が着々と揃っていたのだ。更に追加された三騎はというと・・・

 

「また貴方は失言を行いましたねアキレウス。少女に体重の話題を持ちかけるなど実にギリシャ(直視できない不適切な表現の意)です。些か教育が必要のようですね。このように」

 

「ぉあぁあぁあぁあいでででででごめんなさいすいません悪かったって先生ェ!コブラツイストマジでいてぇ!」

 

「謝るべき相手が違うでしょう?ほら、あちらです。マスターに謝るのですよアキレウス」

 

「悪かった!もう重いとか美しいとか言わねぇから許してくれぇ!!」

 

「あ、時と場合にて美しいとは言いましょうね」

 

「どっちだよ先生ェ!!」

 

「ぎゃはははははは!!おもしれーおもしれー!ドツき漫才とか面白すぎんだろ!もっとやれー!」

 

師弟の微笑ましい触れ合いに腹を抱えて笑い転げている赤雷の騎士、モードレッド・・・

 

「やぁ!『はじめまして!』シッダールタくんにジークくん!」

 

「・・・・・・はじめまして、だな。アストルフォ。俺は大聖杯のなんかこう、預かり人のジーク。そしてこちらはシッダールタ。ホムンクルスの使用人だ」

 

「よろしくお願いいたしまする、アストルフォ殿。いやはや、やはり騒がしいくらいが一番ですなぁ」

 

『初対面』の挨拶をジークやシッダールタと交わすアストルフォ・・・

 

「・・・まさか、邪竜が大聖杯の管理者とは。実に数奇な運命だ。いや、竜とは本来・・・財宝を護るものだったな」

 

ファヴニールの本体を見つめ、彼のみの感慨にふけるジークフリート。意識の戻った三騎も、この城塞にて無事に自己を確立した様子である。戦力の充実は喜ばしい事なのだが・・・

 

「だがまぁ、腐乱した樹木の枝葉を元に戻したところで腐蝕は止まるまい。邪竜めの大聖杯の占有率、今なお磨り減っているが現状よ。最早局地療法では話にならん。──抜本的解決を図る局面、最終決戦という事よ」

 

王は告げる。戦力は充分であり穴熊を決め込む局面は過ぎた。総力をかの『空中庭園』に注ぎ込む時であると。それ故に、決戦の機運を高める指示をジークに飛ばす

 

「邪竜。貴様の大戦においてかの庭園にはどう攻め入ったのだ?」

 

「あぁ。黒側のマスターらが飛行機を用意した。アストルフォはヒポグリフで攻撃をすり抜け、エクストラクラスであるルーラーが防御術式による砲撃の大半を防いでくれた」

 

「メチャクチャ贔屓してんじゃねぇか。なーにが裁定者だよ笑わせんな」

 

「きっと色々な事情があったのでござろうなぁ。ルーラーが赴かねばならないほどの事情が恐らく」

 

突入は果たしたという。ならば簡単な事だ。『もう一度同じことを為せばいい』。あらゆる飛行手段を総結集させる事により、強行突破にて突撃を果たすのだ

 

「マスターは我が運ぼう。先行し庭園の防御を固めるサーヴァントを先んじて掃除し道を切り拓いてやろうではないか。あぁ、黒幕や元凶は貴様らにくれてやろう。催しは愉快であるが、役者に用は無いのでな」

 

先の夜に、可能な限り防護を破壊していた英雄王。後は夜に再配置されるサーヴァントを始末してしまえば突入は容易になる筈と目星をつける。どれ程徒党を組んでいようが、神性を保有している時点で豪華なスケルトンのようなものである。王にとっては敵と認識する価値もない些事なのだ。選別する姫やヴィマーナを操作する獣は別の話だが

 

「ならば俺は本体にてシッダールタや飛べない皆を運ぶとしよう」

 

「あぁ、万が一庭園の防御が起動しても御心配なく。私の転輪曼荼羅がきっと防護に役立つでござるよ」

 

シッダールタが目を閉じ祈ると、浮かび上がる巨大な曼荼羅。一つ一つが衆生を照らす光の照射装置即ちビームであり、対人宝具の一端である事を伺わせる。いよいよもって訝しむべき提案であるが・・・『誰一人、彼の裏切りや背信を思い浮かべる者はいなかった』。それだけの慈悲や誠実さが、シッダールタの言葉には溢れているが故である

 

「なら俺の戦車とアストルフォの鷲・・・鳥・・・なんかでフォローしてやるぜ。任せとけ、お前だけに無理はさせねぇよ・・・っつーか曼荼羅ってなんだよ、何者だよお前・・・」

 

「任せて任せて!バッチリ護っちゃうから!頑張ろうね、シッタカブッタ君!」

 

「ははは、シッダールタにござるよ」

 

「吾輩は留守に──あぁダメですな、竜牙兵に斬殺されます。では詩でも作りましょう!特にリッカ殿には可愛いとサブリミナルに告げるソネットを!是非反応が見たいものですなぁ!」

 

「止めてぇ!私ようやく踏ん張れるようになったのに死んじゃう!」

 

「では僕は・・・そうだな。この城塞でゴーレムでも作ってみようか。空中庭園で何かあった時や、空中庭園そのものを攻略するときに役に立つだろう。リッカ君の教えてくれた機動兵器の実証だ」

 

シェイクスピア、アヴィケブロンもサポートに同意する。前線に立たせず補助に回らせれば、彼等は極めて頼もしい戦力である。シェイクスピアは前線に立ちながら戦わないという非常に困った存在ではあるが・・・

 

「ねぇねぇアタランテ!アルテミスから聞いて知ってるよ!貴女のイノシシモード飛べるんでしょ?」

 

「イノシシ・・・あぁ、カリュドーンの毛皮か!そうだ、アレは本来そう使うものだったな。・・・しかし、アルテミス様から聞いた・・・?直接?御告げか何かでか?」

 

「LINEで!」

 

「らいん・・・?」

 

「おかあさーん!わたしたち、霧を出しちゃう!」

 

「あージャックはそうだねぇ!ジャックちゃんは選んだ人を包める酸の霧を出す宝具を持ってるんだよね!じゃあジャックちゃんはジーク君を護ってくれる?」

 

「はーい!おかあさんが喜んでくれるなら、がんばっちゃうから!」

 

ジャック、アタランテもそれぞれの為すべき事をリッカにて見出だされる。マトリクスが開帳されているというのはこういった利点がある。相手ならば手の内を見抜き、味方ならば力を最大限に引き出せるのだ

 

「おいフラン。お前だお前だ。オレらは組むぞ。地上に残ってくれるか」

 

「ウ?ゥウゥ?・・・」

 

「・・・ん!モーさんは嘘はつかないから大丈夫!騙して悦に浸るみたいな狡い騎士じゃないから!」

 

「解ってんなマスター!オレに空を飛ぶ逸話はねぇが、カッ飛ぶ事は出来るぜ。ミサイルやロケットみたいにな!」

 

「ほう、つまりそれはアルトリアが得意とするアレであろう?バスターの威力が上がり多種多様に派生しており今や本家が色褪せの憂き目にあっているという、具体的には魔力放」

 

「しー!しー!ナイショなんだよ黙っとけ金ぴか!つーかなんでアルトリアとか馴れ馴れしいんだよテメー!」

 

「どれだけ我が貴様の王を引き当てたと心得るのだ!!未だに運命に出逢えておらんわ!!」

 

「いや知らねぇよ!?」

 

モーさんに秘策あり。そこはかとなく嫌な予感がするフランであったが、まぁなんとかなるだろうと了承する。・・・割と後悔する羽目になる選択だと気付くのは後の話である

 

「それでは、私はアキレウスの戦車に同乗しましょう」

 

「了解ですよと。本来戦車は複数で乗るもんだからな」

 

「じゃあジークフリートはヒポグリフに乗りなよ!後一人分なら行ける行ける!」

 

「──解った。バルムンクは俺が必ず防ごう」

 

「となると・・・後はコイツだけだな。おい、スパルタクス」

 

「断る」

 

「何でだよ!?」

 

スパルタクス、拒否。何故か?決まっている。『乗るしかない』という圧制に反逆するが為である

 

「目標地点は理解した。別行動にてたどり着こう。このスパルタクスに不可能は無し。空中に在りし障害も打破してみせよう」

 

──なんという自信と確信に満ちた物言い!凄く見習いたいです!あっせい!ワタシは人類の未来を奪うものに反逆します!

 

(アバブッ──(あっせいコールが可愛すぎて華になり消滅))

 

「吼えたな反逆者。志は認めるが実際に貴様はどうかの庭園に辿り着くと言うのだ?よもや重力に反逆するとでも宣うか?」

 

鳥になろう。そう、空羽ばたく繊細にて優雅な小鳥に・・・」

 

「・・・スパさん、鳥の種類は?」

 

鋼気煌々(コケコッコー)!!」

 

「飛べないヤツじゃないですかやだー!!」

 

「はぁ・・・仕方あるまい。マスター、令呪を三画貴様に渡す。それを使いスパルタクスめを飛翔させよ。圧制の庭園に突撃させる提案として行使するのだぞ」

 

「えぇえぇぇぇ・・・無茶だよぉ・・・コマンドーのメイトリックスだってやらなかったよフライハイ・・・」

 

「提案。ならば圧制ではない。被虐の極致、圧制に反逆を吼える龍よ。共に──行こう」

 

「いやあの!ヴィマーナに乗せてください!!」

 

「コイツの圧制判定イマイチわかんねぇ・・・トリ野郎でももうちょい分かりやすいぞ・・・」

 

「良し。これで庭園に乗り込む算段は整ったと見て良かろう。──劣勢かつ窮地に変わりはないが、それを覆してこその英雄と心得よ!貴様ら人理に名を刻みし者の矜持、我等に見せつける時と知れ!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

算段は整った。後は突撃するのみ。迫る決着の時に、一同は王の号令の下、気運を高めるのであった・・・──

 

 




──出発となると、この城塞も引き払わなければなりませんね・・・王の改築により、本来の姿に戻った事が、せめてもの手向けでしょうか・・・

フォウ(そうだね。・・・キミ達は決して何かを粗雑に壊さない。それはとても、素敵な事だと思う)

《フッ、宿とはそういうものだ。郷愁は再訪の動機となる。その所感は愛着の証よ、念入りに手向けの掃除を行えると言うものであろう?》

──はい、そうですね!埃一つ残しませんとも!

《・・・懐古と言えば、行き場の無いものが一つ残っていたな。ヤツめに貸してやるとするか》



ジーク「・・・?」

(これは・・・)

『かるであのみなちんの旗』

ジーク「・・・──あぁ。そういえば君は、文字の読み書きが不得手なんだっけ。──変わってないんだな、そこ」

(・・・カルデアの君は、カルデアの君だ。俺の事など、思い出す必要はない)

・・秘めたる想い、相手が幸福な日々を送ることを願う。・・・俺が大切な人に懐く特別な感情は・・・それでいいんだ。きっと

だって──

シッダールタ「持ち物、忘れ物はないでござるかー?」

リッカ「なーい!」

ジーク「・・・・・・」

・・・そんな在り方が、何よりも美しく素晴らしいものだと。俺は一番近くで見てきたんだから・・・

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