フォウ(ほいっ)
──もう片手!
(ほいっ)
──伏せっ
(はいっ)
──お腹ごろん!
(ほいっ)
──ラマッス!(後ろ足立ちの意)
(ほい!)
──良かった!何処にも怪我は無いよ、フォウ!
《っ、くく・・・あぁ笑った笑った。常日頃笑っている我ではあるが今回は格別であったな。これだから特異点の攻略は止められぬのだ。アクシデントとは実に愉快なものよな!》
フォウ(笑ってるばかりでもいられないぞ!早くヴィマーナ直さなきゃ!)
──動力部には何の損傷もありません。修理は可能です!ありがとう、フォウ!
ギル《いや、よい。必要はあるまい。暫くお前たちも含め休ませるとしよう》
──え?良いのですか?休息に異論は全く無いのですが・・・
《構わぬ。いずれ大聖杯一帯全てが地獄となろう。地に堕ちたならば、天の星より輝けば良いだけの事。醜くもがくは我等には似合わぬ》
フォウ(つまり・・・なんなんだよぅ)
《直ぐに解る。今は休むが最良と心得よ。──仕損じるなよ、マスター?》
──あ!シッダールタさんのサンドイッチが残っていました!
《でかした!よし、ヴィマーナ不時着地をキャンプ地とする!》
(危機なのか呑気なのか解らないなぁ!今更かぁ!)
「~っぶねぇ・・・割と父上がそこまで手招きしてたぜ・・・」
紅き星、雷となりてカッ飛び空中庭園へと殴り込みを無事(?)果たしたモードレッド、そしてフラン。まぁご覧の通りに自滅一歩手前の奇策にして荒業の極みであるために安全性の保証など微塵も無いわけで・・・
「ひど、すぎ、る・・・!」
空中庭園の中庭を引きずり転げ回り引きずり回しの減速にてボロボロになったフランが言葉にて抗議する。彼女は喋るのに多大な労力を使う。それくらい物申したいのだ。このクレイジーレッドアタック作戦のハチャメチャぶりを
「お、珍しくしゃべりやがった」
「むちゃ、くちゃ!」
「気にするな気にするな!こうやって庭園に来れたんだ。アホで無謀でも最後に勝ちゃあいいんだよ勝ちゃ!──お?見ろよフラン。どうやらオレら以外にもバカはいたみたいだぜ」
「いっしょ、に、するな、!」
ぷんすこ怒るフランを気にせずモードレッドが指を指す。庭園に展開されていた防備ゴーレムや竜牙兵が蹴散らされ吹き飛ばされていく。戦闘中の直中にある味方のサーヴァントがいるらしい。それは──
「おぉ!無限に圧制の波が訪れる!耳を澄ませば遠くより圧制者のほくそ笑みが聞こえるようだ!待っているがいい。理不尽!圧制!潰えるべし!!」
【あ!モーさん!フランちゃん!やっほー!】
スパルタクスであった。マスターたるリッカと共に、一足早く体勢を整え存分に暴れ狂い防備を蹴散らし吹き飛ばしている。若干意識が飛びかけたけれどスパルタクスの熱い微笑みと激励にて目を覚ましたのである。笑顔とは本来攻撃的なものであると言うことを大変強く理解できたリッカなのだった。
「やってんなマスターに筋肉ダルマ!そっちはどうだ、楽しかったか!」
【久しぶりに死ぬかと思いました!フランちゃん!大丈夫だった!?】
「こん、りん、ざい、ごめんだ」
【喋るくらい嫌だったんだ・・・というかなんだか突撃してるときにぶつかったような気がしたんだけど!大丈夫かな!?】
「あぁ、金ぴかの船が落ちたらしいな。笑いながら落っこってたぞ」
【ギルー!!姫様ー!?まさかの反逆大成功とか嘘でしょぉ!?】
カムバックプリーズ!と全力で叫ぶリッカ。流石にギルはこんな事であっさり潰れる筈が無いという信頼はあるが、フォウくんや姫様はそうとは限らない。今すぐにでも安否を確認に行きたいところだが・・・
「心配は無用だ反逆の龍よ。かの王は決して潰えない。かの王は決して盟約を違えはしないだろう」
【スパさん!その根拠は・・・?】
「かの王を潰えさせるは私である」
アイツは俺が倒す。だから決して倒れはしない。反逆基準における熱いライバル思考を展開し再び防備機能に突撃していくスパルタクス。そう、座に刻まれた『虐げられし者と言葉を交わした王』は彼にとって特別なのである。無論──圧制の究極として打倒するという意味ではあるが
「そして彼は城塞にて分け隔てなく笑顔を与えた。その心意気に報いるは当然の事。さぁ行こう!!世界全ての圧制を滅ぼし、かの王の前へと立ち塞がらん!!」
「ウゥウウゥウァアァア!!」
もう面倒だから暴れよう。フランも思考を停止し暴走を始める。これくらいしなければ先の暴走に振り回されただけになってしまう。バーサーカーとして回りを振り回すくらいはしなくてはとの律儀な思考が、フランの最後のシンキングであった
「大丈夫だって。我が王にまだ会えてねぇんだろアイツ。なら問題ねぇ、未練や悔いがある王様ってのは無駄にしぶといもんだ!」
【──信じるしか無いか・・・!よぉし!!】
スパルタクスの反逆、フランの鬱憤ばらし、モードレッドのぶっぱに連なり、リッカもまた矢をつがえる。夜闇であるならば、剣よりも槍よりも弓矢が強い。神の祝福とはそういうものだ。研鑽も間合いも総てを無視し望むものを頂点に立たす。神とは自然、理不尽の擬人化である故に。
・・・──だが。
【えっ!?あ、ちょ!?】
弓矢を放とうとした瞬間、展開すらしていなかった筈の『アルジュナの矢』が独りでに燃え上がり、猛烈な速度で駆け抜けていく。誰を狙っているのか、何処へ向かうのか。リッカは微塵も考案、把握していない一矢であった
【アルジュナから貰った大切な矢がぁ!】
「矢なんて戻らねぇのが当たり前だろ!──来やがったぜ、集中しろ!」
そして更なる展開が襲う。目の前に現れしもの、それは──この庭園の支配者であり、赤の陣営のアサシンたる・・・
【セミラミス・・・!自分から出てきたの!?】
『・・・』
「ケッ、だんまりかよカメムシみてーなナリしやがって。モルガンに似てるってのかな。クソ程気に食わねぇ・・・!きっと同じ陣営だろうが殺しあったんだろうな!」
毒婦にして悪女。そういった側面を持つ女帝なればそれはブリテンに巣食いしかのモルガンに通ずる。故にこそ、モードレッドが気に入る道理など無いのだろう。即座に宝具を発動しようとし──
【!?あれ・・・もしかして──!】
手にせし小瓶、激烈な障気をたぎらせるそれ。余りにもおぞましく余りにも恐ろしき雰囲気を漂わせる『それ』。その瓶には見覚えがある。カルデアにて戯れにセミラミスが見せてくれたのと同じあの瓶はまさか・・・!
【──ヒュドラの毒だ!アレを撒かせないで!皆死んじゃう!!】
「何ッ!?」
すんでの処で踏みとどまるモードレッド。ヒュドラの毒とはギリシャ神話の中で最悪にして最凶の劇物である。この毒を利用したヘラクレスはあらゆるものを討ち滅ぼし神々すらも戦慄する戦果をもたらした。強烈無比な神経毒であり、決して身体から抜け出る事はない。かの医神すら一目身体に入った患者を前にし
「何故身体に入れた?何故身体に入った?最早手遅れだが、自殺に『コレ』を選んだ脳の疾患だけは把握しておきたい」
と治癒と匙を投げる程に凶悪な代物であるのだ。──先にヘラクレスが討ち滅ぼした者は、師匠たるケイローン、そしてヘラクレス自身も入っている。『堪え難き苦痛に、不死を返還し死す』という手段を取ることによって
「さ、流石にヤベェなそれは。クソ、自分ごとマスターを殺す気か!」
セミラミスは自らもろともマスターを毒殺するつもりなのだろう。再現体である自分は消えようが問題ではない。だが、リッカが毒にて滅べばその時点で陣営は、人類は敗北を喫する事となる。木偶一つと引き換えに無二の龍を討つ。恐ろしいまでの合理にて、リッカとモードレッドを封殺したのだ
【私、一応毒は効かないっぽいけど・・・ヒュドラクラスの毒なんて吸った事ないし、試したくないよ流石に・・・】
「だよな。ヘラクレスも無理とか人類には無理なんじゃねぇか?いや、我が王にはアヴァロンあっから大丈夫だろうけどな!」
【効いたよね、早めのアヴァロン・・・!】
『・・・・・・』
そして──転機は訪れた。セミラミスが腕を振り上げ、ヒュドラの毒の小瓶を振りかざす。その行動の意味は・・・
「やべぇ!割る気だ!!」
【──!!!】
地面に叩きつけ、毒を解放しようとするセミラミス。割られたら、少なくとも三騎のサーヴァントが滅びマスター一人が治癒出来ぬ毒と苦痛を患う。己を質に入れた、一殺にして多殺の毒の女帝の一計に、弓矢と剣を構え阻もうとするリッカらであったが──
「其処にいたか!!圧制者ァアァア!!!」
『!!』
姿を、反逆者の前に晒した愚策のツケを払わせる事となる。ゴーレムらを砕き散らし猛進してきたスパルタクスに、猛烈なタックル・・・そしてベアハッグの直撃をうけたのだ。筋肉の中でくまなく全身を破壊されるセミラミス。落ちる小瓶を
「うぉおぉおぉ間に合えオレの騎士道ぉおぉお!!!」
魔力放出にて再びモードレッドがカッ飛び、ヒュドラの小瓶をナイスキャッチにて確保する。これで最悪の事態は避けられた──が、それだけでは終わらなかった。
【え!?あ、ちょ!?】
アルテミスの弓矢が振動し、空中の月へと飛来していく。そして月の輝きと共鳴するかのように、独りでに弓が引かれ、輝き総てを束ねそして──
『──!!!』
極大の『ムーンライトレーザー』となり、セミラミスを完膚無きまでに蒸発させたのである。リッカの持つ弓矢はアルテミスの端末でもあり、生命の危機を感知した際に、自動的に弓矢が起動しアルテミスの『月の権威』そのものを照射する事が可能であるのだ。夜、一日一回のみ訪れる月の神罰。無慈悲なる月の狂乱は、今リッカを護る為に放たれたのである
【( ゚д゚)】
ただし、二つ齟齬があるとすれば・・・持ち主たるリッカに、何ら説明が無かった事であり
「おぉ・・・月が私を癒すか──」
辺りにいるものを巻き込んで神罰を下すか、面倒なので癒すかは、完全に二分の一である、と言う事だろうか──
ジーク「リッカ!皆!無事か!」
リッカ【え?あ、うんなんとか・・・うん!大丈夫!】
ジーク「?どうした?なんだか驚いているようだが・・・」
リッカ【ううん。・・・ギリシャ凄いなって。お供え物しなきゃなって】
シッダールタ「よい心掛けですな。あ、こちらリッカ殿のものでしょう」
『矢』
【あ、これ!】
シッダールタ「いやはや凄まじいですな。カルナ殿が体勢を整えた瞬間、この矢がカルナ殿を貫いたのでござる。おかげで皆命拾いいたした」
リッカ【・・・──カルナさんを・・・!?・・・あ・・・そっか・・・】
ジーク「まるで必ずそこに当たるかのような速さだった。リッカが射ったのか?」
【・・・ん、そうだね。私だよ、それ】
ジーク「そうか。・・・セミラミスとカルナを倒したんだな。では、そのうち味方に入るだろう。いよいよ、黒幕が近いか」
【・・・アルジュナ、ありがと。・・・ごめんね、カルナさん。あと・・・】
リッカは月を見上げ、祈りを捧げた。『粛清神罰があるって、早めに教えてほしかったよアルテミス』、と──
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