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毎日問答無用で更新します!
皆様は作者の宝です!決して蔑ろにはしないどうか覚えておいてください!いいですねッ!
では本日の更新をどうぞ!
アナスタシア「ふぅん、あの子マスター候補だったのね」
オルガマリー「えぇ。舞台は整ったのでこれから腹パン(^U^)拉致を敢行しようかと思うのですが・・・何か彼とのコンタクト方法に要望はありますか?」
アナスタシア「そうね・・・またからかうのも面白そうね。あの子、まだ牙は折れていないもの」
オルガマリー「・・・やはり、そう見えますか」
アナスタシア「必死に隠しているつもりなのが可愛らしいわね。えぇ、若い頃に我慢なんてするものではないわ。受けた屈辱は万倍返し、雪玉には躊躇いなく石を仕込むが正解よ」
オルガマリー「正解・・・?」
アナスタシア「ともかく事情は解ったわ。彼をらかえばいいのね?マスターに不義理は働きたくないので、仮契約までなら協力しましょう」
オルガマリー「ありがとうございます。具体的には・・・?」
アナスタシア「庶民派アピールで、親しみやすさを押し出しましょう。私に任せておきなさい──」
「えっと・・・確か、ここだよな・・・」
ある日の事。オルガマリーから突然謎の依頼を受けた少年、カドック・ゼムルプスはメモ帳を片手に歩いていた。カルデアの乾坤一擲たるマスターの座をレフに阻まれ、治療され、そして当然の様にカルデアから送り返されたAチーム。その一人であるカドックに、以前の休暇以来のオルガマリーのコンタクトがやってきたとなれば無下にするわけにもいかないと無視する事なく、待ち合わせの場所へと向かったという筋書である。目の下の隈は若干薄くなり、カルデアのマスターの座への未練もどうにかこうにか割り切り、飲み込めた矢先にこの誘い。僕をからかって遊んでいるのだろうかと思ったが即座に打ち消した。自分が知るオルガマリーは、もっと必死で哀れな感じだった。他人を苦しめて楽しむような歪みは無かったと、思う。自信は無いけれど
「カルデア大冒険の語り聞かせとかだったら伝票叩き付けて帰ってやるからな・・・!」
他人の自慢話ほどこの世でつまらないものはない。次は他人の夢の話だ。支離滅裂な体験や世界観を話されてどんな反応をしろというのか。壁とでも話していてくれと切って捨ててやりたくなるのだ。時計塔の魔術師の連中の、家柄や血統にあかせた自慢話など。
「・・・そういえば、彼女は元気だろうか」
妙な宿に拉致された時に会った、妙な店員。従業員と言うべきだろうか。礼儀やマナーの欠片もなく、気安くて、デリカシーが無くて、なんの気負いもなくズケズケとものを言うあの、白い肌の少女
「君につけてたクレームの方が、御世辞やおべっかより何倍も楽しかったなんて皮肉だな」
あの時はなんて店員だと憤慨したものだが、今にして思えばあの時は悲観や卑屈などとは無縁の会話が出来ていたような気がする。無礼千万ではあったけど、何一つひねくれずに会話や対話を楽しめたのは、本当にあれが久しぶりで・・・
「・・・カルデアにいるんだろうか。あの子」
いたとするなら、まずはあの時の態度を糾弾した後に改正を要求する覚悟と準備は出来ている。あんな態度が通じるのは自分だけだ。僕がきっちり、マナーというものを教えてあげなくちゃだろう。オルガマリーに聞いてみるのもありかもしれない。あんな従業員を野放しにしていてはいけないのだ。──そんなこんなの内に、カドックは待ち合わせのカフェに辿り着く
「アーネンエルベ・・・こんな場所にあったか?こんなカフェ・・・」
いつのまにか出来ていたようにしか見えない見慣れないカフェ。確認してみたが待ち合わせ場所は此処で間違いない。変な所を見つけたな、彼女・・・そんな所感の下、扉に手をかけ入店する。チャリンチャリンと、カドックを来客を知らせる鈴が歓待する。そして───
「
「なんだ君・・・」
髪を後ろ一つに束ね、青いARTSタンクトップに短パンという見るからに涼しげな格好をした白き肌の美少女が、拉麺・・・熱く湯気が立つ拉麺を一心不乱に啜っている姿を目の当たりにしたカドックの第一声がそれであった──
らーめんは めがねをはずして たべようね
「ふぅ、ご馳走さま。喫茶店で食べるらーめんは格別ね。これが洋と中のマリアージュというヤツかしら。これでロシアは百年戦えるわ」
「意外と豪快にかっこむんだな、君」
「麺は盛大に音を立て、スープは一滴も残さずこぼさず。らーめんを食べるにおいて当然のマナーよ。また一つ賢くなったようね、カドック」
どんぶりのらーめんを完食し、上品に口元を隠しながらしーしーする青タンクトップの少女。カドックには見覚えがあった。格好は涼しげだが間違いない、あの時の・・・
「名乗っていたかしら?私はアナスタシア。らーめん大好きアナスタシアと覚えなさい。この格好はラフな私服。薄着でいられるって最高よね、カドック。半裸でロックに興味はある?」
「誰がするか!いやなんで君がここにいるんだ、オルガマリーと待ち合わせしていた筈なんだが!?」
「まぁ。こんなロシア系美少女を差し置いて他の女性に興味がおあり?次の春先まで冷やし中華のイメージキャラになる気はあって?」
「相変わらず話の通じない子だな君は!だからオルガマリーと待ち合わせしていたんだってば!」
「ふふっ。卑屈に呻いているよりそちらの方が顔が見えて素敵よ?」
「なっ・・・からかっているのか、僕を・・・」
「当たり前でしょう。皇女の夫になるには覇気が足りないわ。あと数十センチ背を伸ばして出直しなさい」
「こいつぅ!」
完全にペースを握られたカドックが顔を赤くしたり怒ったりしている様子を楽しげに笑うアナスタシア。さて、と咳払いをして本題を提示するまで数分間。それだけで、カドックの本来の側面を引き出してみせたのだ
「まぁそんな事はいいわ。オルガマリーに言伝を頼まれていたのがここにいる理由。そしてらーめんを食べていたのは私の嗜好。お分かり?」
「意外と庶民的なんだな・・・つまり君はメッセンジャーガールか」
「えぇ。同時にあなたに覚悟を問うものよ」
覚悟・・・?そう言う間にアナスタシアがカドックの鼻と鼻が触れ合う程に顔を近付け、カドックの瞳を覗き込む
「カドック・ゼムルプス。成すべき時に成すべき事を出来なかった狼さん。『あなたに、世界を救う証明は出来て?』」
「えっ、え・・・?」
アナスタシアの瞳にいる自分のように、あわてふためくカドック。テーブル向かいで座っていたアナスタシアが身を乗り出す形になっており、少し目線を落とせば肉体年齢に見合わぬ豊かな丘の谷間が拝めるのだが、カドックはアナスタシアの言葉と美貌から目が逸らせなかった
「あなたがもしカルデアに、私達に敵対する時が来たなら、思ってもいない卑屈さを吐くでしょう。『僕らならもっと上手くやれた』なんて苦し紛れの負け惜しみを」
「・・・う・・・」
・・・言う。必ず言うだろう。死ぬほど苦労して、苦労して、手に入れた座を。世界を救うという大役を。『たまたま無事だった』マスターに奪われたならば、自分は必ずそう言うだろう。・・・自分だって、自分だって出来たんだ、と言う妬みや嫉みを、せめてもの武器として
「負け惜しみを自負と自信にする決意と覚悟は出来ていて?私のマスターの決意と覚悟に比肩できると、本当に証明できるかしら?」
「いや、それは・・・」
「即答しないの?出来ないの?卑屈なまま、惨めなままで生きていくのかしら?」
言葉は冷たい。態度も凍えるようだ。だが彼女の瞳は侮りも憐れみもせず、カドックの言葉を待っている。
「・・・僕は・・・」
・・・どんなに卑屈や嫉妬を懐いても、自分の境遇を変えることは出来ない。自分は五体満足で無能の烙印を押されたマスターかぶれの魔術師で、目の前にいるのは顔も知らないカルデアのマスターのサーヴァント。自分が出来ることなんてない
「僕は・・・」
そうだ、言ってしまおう。出来ないと、どうせ無理だと。諦めていると。ああすれば良かったと、僕ならもっと、と。この眼に告げてしまえば楽になれるんだろう。そのまま、逃げるように席を立てばいい
「僕は──」
・・・逃げる?何処へだ?逃げて、なんの意味もない自己弁護を繰り返すのか?一生後悔を抱えて、意味のない日々を送るのか?
なんのためにオルガマリーは自分を呼んだ?わざわざサーヴァントたる彼女を呼んでまで?何故だ?
・・・──自分の、自分勝手な観測が当たっているなら、それはきっと・・・──
「・・・証明したい。僕にも、世界を救えるって。だって、その為に・・・」
「・・・」
「その為に、僕は頑張って来たんだ。・・・カルデアのマスターじゃなくても、僕は・・・マスターであることを、諦めたくない」
・・・チャンスが、もう一度。自分のような者に与えられたという事なんだ。なら、それに手を伸ばすくらいは・・・
「──そう。それでこそね」
──負け犬にだって、許されてもいいだろう?
アナスタシア「やはり牙は折れていなかったわ。以前ロシアで見た死にかけの狼にそっくりだもの。アマテェラスとは似ても似つかない痩せ狼だけれど」
カドック「待て、なんでグーを握る?なんで小銭握った?待て、おい──!」
アナスタシア「あなたの決断にこれから付き合ってあげようというのよ、この私が。さぁ行くわよ、歯を食い縛りなさい」
カドック「待て、待っ──」
アナスタシア「うらー!!」
「がっはっ──!!?」
『あなたもマスターよ』。その言葉を耳にしたことを最後に、カドックの意識は遠く、遠く。加齢臭のするバーテンマスターの許へと──
アナスタシア『頑張りなさい、カドック。面白おかしく付き合ってあげるから』
そして、なんかごそごそと服を用意する音を立てるアナスタシアの微笑みと共に──
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