人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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視点

――一つの魂が、世界を視た

 

 

 

絶対者の視点のもと、魂は広がる世界を視た

 

 

 

 

 

突き抜ける空、逞しき大地。そこに広がる営み

 

 

 

生き物の営み、人の営み、果てなき旅の一歩にて、魂は世界を視た

 

 

愛を視た。尊さを視た。決起を視た。矜持を視た。覚悟を視た。誇りを視た

 

――絶対にして原初なる、王威を視た

 

 

――魂は、世界を『美しい』と感じた

 

 

天が、地が、世界が。無垢なる魂を暖かく迎え入れた

 

――世界に臨みし王の庇護の下に、一つの魂は世界の在り方に触れた――

 

 

――もっと、視てみたい

 

 

 

魂はそう無銘に刻んだ。願わくば、この世界に触れてみたいと

 

もっと視たい。空を、海を、大地を。広がる世界を視てみたい

 

自らが、いつか挑めるように。営みを送る人達を視てみたいと願った

 

 

王と共に

 

 

友ではない、駒でもない。同盟者でもない。

 

 

ただ、『在る』だけの魂と共に歩む事を赦した王と共に

 

 

――魂は、世界を視たいと願ったのだ

 

 

 

――王がいた

 

 

あらゆる悲劇を目の当たりにし、あらゆる悲劇を受け止めながら、ただ笑う王がいた

 

 

 

親を殺し、親を殺され、愛を知らず、愛に捨てられ、矜持をにじり、矜持に殺され、孤独を求め、孤独に棄てられ――あらゆる悲劇を眺めながら、ただ笑う王がいた

 

只人ならばそれでよい。だがこの王は違う

 

かの王には解決する力があった。それを果たせる威光もあった

 

過去と未来を見渡す眼を持ちながら、ただ薄く笑う残酷な王がいた

 

 

我等は悲劇を見続けた。我等の眼球を抉り続けた

 

 

もう嫌だ、うんざりだ。許してくれ、これ以上、こんなものを見せないでくれ

 

悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、

 

 

 

なんとかできるならしてほしい。この哀しみを救ってほしい。我等にこんなものを見せないでほしい

 

――もう、うんざりだ。何故オレ達が、こんなモノに付き合わなければならないのか――

 

 

悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た、悲劇を視た

 

 

 

堪えきれない、耐えきれない。耐えきれない

 

我等の総てが嘆願した。我等の総てが懇願した

 

『あなたはなにもしようとは思わないのですか!』

『この悲劇を、救おうとは思わないのですか!』

 

我等の問いに、王はこう返答した

 

『いや、まぁ。別に何も?』

 

 

 

――この理不尽を許してたまるものか

 

この王を許してたまるものか

 

 

我等の総てが――そう、結論付けた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――目を、覚ます

 

 

 

意識を目覚めさせる。器はまだ眠っている。疲れているのだろう。身体を起こす

 

 

――なんだったのだろう。今のは

 

解らない。今の観点は一つは、自分のものだ

 

単純な感想。世界を視たいとおもった漠然とした願い

 

オルレアンを駆け抜けて、英雄と人間の奮闘を目の当たりにした、他愛ない、ほわっとした所感

 

 

もう一つは、憐れみだった

 

悲劇を憐れみ、嘆きを憐れみ、無能を憐れみ、無為を憐れむ

 

 

憤慨と決意を以て決起した、何者かの視点だった

 

 

 

 

――この器が、また。遠きモノを視たのだろうか

 

 

 

 

(酷いかおだね。おはよう)

 

ふとみると、傍らにフォウがちょこんと座っていた

 

(ソイツはまだ寝てるみたいだね。起きているのはキミだけだ)

 

「珍獣……」

 

(ヤツが眠っていた方が、こうしてキミに話しかけやすくて都合がいい。そのまま楽に聞いてくれ)

 

アーサーと似た響きの声が、頭に響く

 

 

(まずは第一の旅、お疲れさま。キミの奮闘は確かに、奴等のしかけた爆弾を取り除いた)

 

――フランスの事か

 

(キミはいくつかの哀しい悲劇を粉砕し、旅を楽しいものへと彩ってくれた)

 

(キミに感謝を。ボクは、とても晴れやかな旅路に参ずることができた)

 

 

――それは、自分のみの力じゃない

 

カルデアの奮闘があり、英雄の助力があり、王の威光があった

 

自分は、ただ……目の前の事に『決断』を下したにすぎない

 

(・・・)

 

――だから、違うよ。フォウ

 

無銘な自分でも、これだけは言える

 

 

あの旅路の一歩は、一つの足跡は。――善き人達皆でつかみとったものなんだ

 

――自分は、それを『視てきた』のだから。間違いないと断言できるとも

 

 

(――そうだね。ソイツ一人なら、笑顔なんかあるもんか)

 

ピョコンと跳ね、肩にフォウがのる

 

(その様子だと愚問になるだろうけど、一応形だけ聞いておこう)

 

耳元で、囁く

 

(苦しければ、止めていいんだよ?)

 

――再び投げ掛けられるその問い

 

魂に伝わる、甘い提案

 

(キミはあらゆるモノを奪われた。だけどまだ一つ、赦されているものがある)

 

――それは

 

(それはまだ言わない。君が求めた時に、その答えは分かるだろうから)

 

(キミの研鑽は、いつでも止める事ができる――もう一度言うよ)

 

――囁く。甘い、安らかな声で

 

(苦しければ、止めていいんだよ)

 

――優しい声音。だが

 

「――たわけめ。この我が、自ら始めた仕事を投げ出すと思うか」

 

はっきりと拒絶する。どんなに甘い誘いでも、そんなものに用はない

 

 

自分の願いは変わらない。何かを為すこと、成し遂げること

 

まだ、自分には銘すらない。ここで止めて、何を成し遂げたというのか

 

 

自分は進む。未来へ向かって

 

自分は護る。今を戦う皆の道を

 

 

自分は決める――自らの、旅の終わりを

 

自らの終着点くらいは、自分で決めてみせる

 

それが無銘ながらの、無銘だからこその。当たり前の決断だ

 

 

 

(――そうか。なら、キミの物語はまだ続く)

 

ピョコンと、出口へ歩いていくフォウ

 

(キミの決断は、キミだけのものだ。どうか健闘を、無銘の魂)

 

――振り返る

 

(――新しい⬛⬛⬛に出逢わぬことを祈っているよ。ボクはキミがお気に入りだからね)

 

ゆっくりと、フォウは部屋をあとにした

 

 

「……なんだったのだ、あの珍獣は」

 

――自分に語りかけてくる、美しき獣

 

 

彼は、一体何者なのだろうか……

 

(あ、そうだ言い忘れてた。ボクが手掛けたカルデア大冒険日記を置いておくよ。オルレアンで出逢った者達の美しさをボクのコラムつきで掲載さ。フルカラー、カップ数、スリーサイズ、弾力や張りなどを網羅した自信作。七部作だから期待してほしいな。感想をきかせてくれたらうれしい)

 

ピョコンと立ち去るフォウ。

 

 

――本当に、なんなのだろうか




次回予告



「ふはは!総督とは出世したものよなマスター!」



「物凄くキャラがかぶっているではないか!」
「たわけめ、我が起源だ!」


「嘘よ、まさか。こんなはずじゃないのに・・・!」
「私達も半人前!一緒に頑張っていこうよ!」



「圧政者――巡り逢えたぞ!黄金なりし圧政者ァアァア!!」

――・・・えっ!?


「メドゥーサを出しなさい。可愛がらせてもらうわ」 
「そんなぁ」


「スパルタだぁ?かまいやしねぇ――行くぞ、てめぇら」
「誠の旗の誓いの下に――!きたれ『新撰組』!」
「全隊抜刀!!皆殺しだぁあぁあぁあ!!」




「貴様は愚かだ!無駄の極みだ!奇跡を起こす聖杯を、あんな小娘にくれてやったのだ!無価値、無意味!ゴミを汲み取らせるとは無意味の極み――!」
――黙れ!!お前なんかが、オルガマリーの価値を語るな――!!!


「遊星の手先、巨人の残骸か・・・――よいぞ。古き神々の屈辱、多少なりとも返してやろうではないか!」
「――破壊する。総てを、世界を――」



――この乖離剣の真価を――皆の未来を切り開く力を!


『軍神の――』
『天地乖離す――』

――皆を照らす、星の輝きを――!

「固有結界、範囲投射!――ギル!!決めて――!!」


『剣――!!』
『開闢の星――!!』



――第2研鑽『カルデア大進撃!ローマ踏破物語』



「正しきものが残るのではない。――我が価値を認めた者がのこるのだ」
「英雄王・・・」

「貴様はどうだ?ネロ・クラウディウス」



――近日、投稿予定

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